現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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輸入ワクチンは危険?
なんか、ものすごいドタバタで、
新型インフルエンザワクチンが、
医療従事者とか優先患者に
打たれる事が決まったけど。

直前に決まったから、我々医療従事者にも
全然情報が入っていないんですよ。
残念ながら。

なんだか良くわかんないけど、
適当に人数決めて、それに合わせて
ワクチンも輸入した、とか。

感染の危険性もすごーく高まるのに、
10ml入りのワクチンを作ったとか。

もう、めちゃくちゃですね。


輸入もの」っていうだけで、
危険」、「信用できない」っていうのは、
天然物」だから安心、おいしい。
養殖」だから、心配、まずい。
って言っているのと同レベルです。

おいしい」のか「まずい」のかは、
自分の舌」で先入観をもたず決める事です。

そもそも「和牛」って、ものすごーく高くて、
おいしい、っていう評判でしょうけど。
あれって、言い方を変えたら「養殖の牛
なんですよ。

魚の場合「養殖」っていうと、なんだか
ワンランクも2ランクもダウンする、
とかって話になるようですけど。
今は技術も進歩していますからね。
必ずしも「養殖」だから、レベルが下がるとか。
国産なら大丈夫、おいしい、とか。
そういう事はないんですよね。

ワクチンも「国産」なら安心。
輸入もの」なら心配だ、とか
そういう訳ではないんですよ。

そもそも、現在、日本で使われている薬の
ほとんどは、外国で作られた物ですし。
医療機器なんかも、ほとんどは外国製ですよ。
くだらん「規制」とかのせいでね。

それなのに、突然ワクチンだけ、
輸入ワクチン危険だ、
っていうのが何の根拠もないんですよ。

一見、根拠ありそうな理由が羅列されていますけど。
その程度の危険性は、「国産ワクチン」でも
同じくらいありますからね。

きちんとした理由を書くべきだと思います。

ちょっと前のMRICに載っていた記事と、
その続編がおもしろかったんで。
ここでも紹介させていただきますね。





*************************************
東京大学医学部医学科 4年
篠田 将

2009年9月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
http://medg.jp



「危険」らしい輸入ワクチン

東京大学医学部医学科
4年
篠田 将


~イントロ~

突然ですが、最近聞いた「話」を紹介します
(既にご存知な方は、すみません)


~~~~

「DHMO」と呼ばれる化学物質があり、
その化合物の主な性質は次の通り。

・重篤な熱傷の原因となりうる。

・多くの素材の腐食を進行させる。

・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される。


しかし、その危険性に反してDHMOは
身の回りで用いられている。一例として

・工業用の溶媒、冷却材として用いられる

・原子力発電所で用いられる

・発泡スチロールの製造に用いられる

・防虫剤に用いられる。洗浄した後も
 DHMOは農作物に残留している。

・各種のジャンク・フードや、
 その他の食品に添加されている。


このDHMOという化合物の、家庭内での使用を
禁止する法的規制を実施すべきか。

Yes / No

~~~~


ここまでお読みになり、この話の
「結末」が見えた方は
いらっしゃいますでしょうか。
殆どの方は「結末」に気づかれないと思います。
私も気づきませんでした。


結末:

DHMOは、Dihydrogen Monoxideの略。
すなわち、「一酸化二水素」のことでした。
要するに水(H2O)のことですね。

実はこれ、米国の有名なジョークで、
90年に考案され、97年に中学生による
調査によって米国で
有名になったそうです(wikipediaより)。

極端な環境保護運動などを
揶揄するときなどに使われるそうです。


このジョークが示している教訓は、
「事実だけを述べたとしても、表現方法によっては
聞き手を誤ったほうに誘導することが出来る」
ということでしょうか。



~世間の関心を集める、
新型インフルエンザワクチン

さて、ここからが本題です。

最近、新型インフルエンザに対する
世間の注目が高まっています。

特に、ワクチンに関する事柄(たとえば、
いつから接種できるのか、費用はどれくらいか、
ワクチン副作用は、ワクチンの効果は、など)
が9月中の関心事であったように感じます。

確かに、ワクチンは予防の手段の1つですので、
私もワクチン接種に関心があります。



~厚労省による、ワクチン接種へのパブコメ募集~

さて、そのような中、対策に取り組んでいる
厚生労働省がワクチンに関しての
「パブリックコメント」を募集していました。

パブリックコメント(以下、パブコメ)とは、

「行政が何らかの規則を制定し、
または事業を行う際に、国民から広く
意見を募り、集まった意見を規制や
事業に反映させ、より良い行政サービスを
実施する仕組み」
のことです。


大まかな手順としては、

1. まず行政が実施しようとしていることに関して、
 行政自らが素案を提示します。

2. 提示された素案を読み、素案に対して
 意見がある国民は、意見をパブコメとして
 行政に送ります(送付する期間や送付方法は
 行政から事前に提示されます)。

3. 締め切り後、集まったパブコメを行政が読み、
 素案の修正などを行います。


つまり、パブコメを送る際には、
素案が極めて重要なものとなってきます。当然
ですが、素案とまったく関係のないことを
書いても意味がありません
(たとえば、ワクチン接種に関するパブコメ
「年金記録問題に不満がある」
「ダム工事凍結に賛成」などと書く、など)。

素案を読んで、素案に対して意見を書くのが
パブコメの目的・方法と言えるでしょう。



~提示された「不可解な」素案~

さて、その重要な素案を読んでみました。

「新型インフルエンザワクチンの接種について」



すると、気になる点を見つけました。


6ページ

4.留意事項

(1)安全性の確認について

イ.輸入ワクチンの承認時の安全性、
 有効性の確保について

には以下のように書かれています(一部を抜粋)。


(前略)

輸入ワクチンについては、

1 現時点では国内外での使用経験・
 実績(臨床試験を除く。)がないこと

2 国内では使用経験のないアジュバント
 (免疫補助剤)(*)が使用されていること

3 国内では使用経験のない細胞株を用いた
 細胞培養(*)による製造法が
 用いられているものがあること

4 投与経路が筋肉内であること

5 小児に対しては容量が異なること

など、国内ワクチンとは異なる。
有効性については、
ある程度期待されると判断される。
一方、わが国で大規模に接種した場合の
安全性に関しては、
国内製品よりも未知の要素が大きく、
その使用等に当たっては、より慎重を期すべき
との懸念も専門家から示されている。

アジュバント(免疫補助剤):
ワクチンと混合して投与することにより、
目的とする免疫応答を増強する物質。

これにより、同じワクチン量でもより
多くの者への接種が可能となる。
一般的に、副反応の発生する確率が
高いことが指摘されている


* 細胞培養:ワクチンの製造方法の一種。
鶏卵による培養よりも、
生産効率は高いとされるが、
インフルエンザワクチンではこれまで
世界で広く使用されるには至っていない。

また、一部の海外のワクチンについては、
製造に使用される細胞に、がん原性は
認められないものの、
腫瘍原性があるとされており、
使用等にあたっては、特に慎重を期すべき
との懸念も専門家から示されている。

(以下略)


この部分を読むと、「輸入ワクチン
極めて危険で、おまけに
効くかどうかも分からない。」
という印象を受けます。
しかし、立ち止まって一文ずつよく読んで
みると、不思議な点がいくつか見当たります。


>1 現時点では国内外での使用経験・
 実績(臨床試験を除く。)がないこと

これは輸入ワクチンに限ったことではなく、
国産ワクチンも同様に現時点では
使用経験・実績がありません
(何せ「新型」インフルエンザのワクチンですので
「使用経験・実績」が存在するはずがありません)。

しかし、同素案の国産ワクチン
関する部分には
同様の記述は出てきません。
つまり「国内ワクチンとは異なる」
わけではないので記述自体は
誤りであると考えられます。



>2 国内では使用経験のないアジュバント
 (免疫補助剤)(*)が使用されていること

なお、ご丁寧にアジュバント
注まで付いていて、注では

>一般的に、副反応の発生する確率が
 高いことが指摘されている

と言っています。


さて、立ち止まってじっくり読んでみましょう。

>2 国内では使用経験のないアジュバント
 (免疫補助剤)(*)が使用されていること

この文は、「輸入する特定の
ワクチンに添加されている、
特定のアジュバントに対しての安全面での懸念」、
と解釈されます。


それに対して

>一般的に、副反応の発生する確率が
 高いことが指摘されている

こっちは、「一般的に」とあるように、
アジュバントという添加物の
一般的な性質に関して、
「誰か」が指摘した、と解釈できます。


しかし、「一般的に」に注意して読まないと、
この注が「今回輸入するワクチンに入っている
アジュバント副作用が出やすい」という風に
読めてしまう恐れがあります。
斜め読みは危険ですね。

例)

Aさんはドイツ人(*)です。

* ドイツ人:ドイツ人は一般的にまじめで
 職人気質の人が多い。

質問:Aさんはまじめで職人気質な人ですか?


さて、ここからは記載内容に関して見ていきます。

確かに国産ワクチンには
アジュバントが使われていません。
その意味では記述自体は「正しい」でしょう。
しかし、国内で使用されていないからといって
安全性に問題がある、と言えるのでしょうか。

なお諸外国では同じアジュバントが添加された
ワクチンの大規模な治験が既に行われていて、
安全性が確認されています。

 「国内で使われていない」添加物だから危険、
と言いたいのならば危険性の
根拠を提示すべきであり、
もし提示できないのであれば、単なる
非関税障壁ではないでしょうか。

根拠を提示せず「国内にないものは危険だから
輸入しない」、という主張が通るのであれば、
コカコーラやハーゲンダッツ(これらの食べ物は
日本には元々なかったものです)を外国から
最初に輸入した会社は
「テロリスト」と言えるでしょう。

私はよく食べていますが、
現在これらの食品による
健康被害は(私に限れば)発生していません。



>3 国内では使用経験のない細胞株を用いた
 細胞培養(*)による製造法が
 用いられているものがあること

こちらにも、丁寧に注が付いていて

>また、一部の海外のワクチンについては、
 製造に使用される細胞に、がん原性は
 認められないものの、
 腫瘍原性があるとされており、
 使用等にあたっては、特に慎重を期すべき
 との懸念も専門家から示されている。

これだけ見ると、細胞培養で作られたワクチン
非常に恐ろしいものに感じられます。


しかし、先ほどの例と同じく、注の
「腫瘍原性」は「一部のワクチン」で
確認されたものです。
これも斜め読みすると間違えやすいですね。

例)

Bさんはお医者さん(*)です。

* お医者さん:今日の新聞に、
ある医者の犯罪が記事に載っていました。

質問:Bさんは犯罪者ですか?


ここからは内容を見ていきます。

文中に出てきた、「細胞培養」とは何でしょうか。

グーグル先生で調べてみましたところ、
細胞培養によるワクチンとは

遺伝子組換え(簡単に言うと、設計図の「改造」)
を行った動物由来の細胞により、
抗原(たとえて言うなら「練習用の標的」)を
作る製法により製造されたワクチン

を指すそうです。

もし、この製法が「危険」と言うのであれば、
同様の製法を用いて製造されるインシュリン
(現在では、インシュリンは遺伝子を組み替えた
大腸菌に作ってもらっています)も
危険であると言えるでしょう。

この記述にも根拠の提示が
必要なのではないでしょうか。
懸念を示した「専門家」に根拠を聞きに行けば
教えてもらえるのでしょうか。



~素案をもとにしたパブコメの結果~

さて、このように不可思議な点が
素案中にはいくつか出てきました。
このような「不思議」な素案を元に
パブコメを募集しているわけです。

さて、どのような意見が寄せられたか
気になるところですが、厚労省による
集計結果が出ていました
(新型インフルエンザワクチン
関する意見交換会で資料配布)。
それを見てみますと

輸入ワクチンの安全が不明確

・子どもには国産ワクチンを接種してほしい

ワクチン輸入に反対

という意見があったそうです。
これらの意見が寄せられたのは当然です。
なぜなら素案に「輸入ワクチンは怖いですよ」
と書いてあるのですから。



~要望~

その1:意見を言うときは根拠を出す

私は、「輸入ワクチンは安全ですよ」
と言うつもりは全くありません。
また、輸入ワクチンが安全か危険か
私には分かりません。

ただ、「危険ですよ」と言うのであれば
根拠を示すべきである、と考えます
(もちろん?安全ですよ?と言う際にも
同様に根拠が必要だと考えます)。


その2:判断材料ください

国産・輸入問わず、ワクチンには副作用
一定の確率で発生してしまいます。
つまりワクチンはノーリスクな
予防法ではないわけです。
リスクが少しでもあるのであれば、
ワクチンによるリスクとベネフィットを
比較考量するために、

ワクチンによる予防効果

ワクチンの副作用とその頻度

新型インフルエンザ自体の危険性

これらの情報が提示されなければ、
ワクチンを打つべきか打たざるべきか
考えることは出来ません
(たとえば、仮に新型インフルエンザ自体の
致死率が極めて低いのであれば、
ワクチン接種は不要で、感染したら
ただ家で寝てれば良いわけです)。

それらの情報を素案中に提示することなく、
根拠を示さず「輸入ワクチンは危険ですよ」
と書いて国民から意見を求める。
これでは、悪徳商法となんら変わらない
のではないでしょうか。


その3:厚生労働省の任務

厚生労働省は、「国民生活の保障」に
寄与するため「公衆衛生の向上及び増進」
を図ることを任務とする
(厚生労働省設置法より引用)そうです。

そうであれば、考える際に必要な情報を
素案中で開示した上でパブコメを求めたほうが、
任務をより円滑に遂行できると私は思いますが、
如何でしょうか。



その4:医系技官の役割

医系技官(医師免許をもつ、医学・医療に
関する専門的能力を背景とした技術系行政官。
医系技官の募集ページより引用)の
募集ページには以下のように書かれています


(前略)

私たち医系技官も、そのような臨床医と同様に、
皆様の人生すなわち我が国の未来に対峙し、
科学的根拠に基づき長期的かつ
総合的な観点から、より良い未来を創ろうと
様々な施策立案等に力を注いでいます。

(後略)


このワクチン接種の素案を書いたのが
医系技官の職員の方なのか、それ以外の職種の
職員の方なのかは不明ですが、医学教育を受けた
専門職の行政官として科学的根拠に基づいた
素案を書くべき、もしくは別の職種の方が
書いたのであれば、専門職の職員として
素案の文面の訂正を行うべき
だったのではないでしょうか。



~おまけ~

最後に、おまけとして、1つのジョークを紹介します。

DHMOと似た話で、
「パンは危険な食べ物」という話があるそうです。


米国での統計調査の結果により、
以下の事実が判明した。

・犯罪者の98%はパンを食べている。

・パンを日常的に食べて育った
子供の約半数は、テストが平均点以下である。

・暴力的犯罪の90%は、パンを食べてから
24時間以内に起きている。

・パンは中毒症状を引き起こす。
被験者に最初はパンと水を与え、
後に水だけを与える実験をすると、
2日もしないうちにパンを異常にほしがる。

・新生児にパンを与えると、
のどをつまらせて苦しがる。

・18世紀、どの家も各自でパンを焼いていた頃、
平均寿命は50歳だった。

・パンを食べるアメリカ人のほとんどは、
重大な科学的事実と無意味な
統計の区別がつかない。


MRIC by 医療ガバナンス学会
http://medg.jp


『臨時 vol 264 「危険」らしい輸入ワクチン』




そいで、その続編がこれっすね。
書いたのは別の人ですけど。



***********************

  ▽ 「情報」と言う「魔術」 ▽

高知医療センター
救命救急センター (21年11月から)
村田 厚夫

2009年10月14日 
MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
   http://medg.jp

----------------------------------------


DHMOについての話がこのMRICメーリングリストに
紹介され、筆者もオリジナルを探しだした。

表現方法や、書き方、知らせる情報を限定するなど、
あることに関する「情報」を「プラス」にも
「マイナス」にも出来るいわゆる
「トリック」あるいは「魔術」であろう。

そこで、実際に、現在勤務している
民間病院の検査技師や薬剤師
(ある程度、科学的知識がある)や、
ER看護師、さらに付属の看護学校の学生
(専門学校なので、1年生から3年生までいる)
とそこの教員を対象に、次の項目を挙げて、
質問してみた。

 配布したプリントをそのまま提示する。



「DHMO」というある化合物に関する情報として、
次のようなことが言われています。
それを読んで、「率直な」回答をして下さい。

ただし、質問することや、ネットで検索すること、
相談することは禁止します。


【この物質の特徴】
1. 重篤な熱傷の原因となる
2. 多くの素材の腐食を進行させる。
3. 末期ガン患者の悪性腫瘍から検出される。
4. しかし、その危険性に反して、
「身の回り」で用いられている。
たとえば、以下の5つのように。
5. 工業用の溶媒、冷却剤として用いられる。
6. 原子力発電所で用いられる。
7. 発泡スチロールの製造に用いられる。
8. 防虫剤に用いられる。
洗浄した後もDHMOは農作物に残留している。
9. 各種のジャンクフードや、
その他の食品に添加されている。

【質問】
A. このDHMOという化合物は、家庭内での
使用を禁止する法的規制を実施すべきか否か?
B. あなたはこのDHMOを飲めますか?

どちらも、YESかNOで答えて貰いました。

【追加質問】として、
a. Aを回答するときに、最も影響した項目は
この9つの中のどれですか?
b. Bを回答するときに、最も影響した項目は
この9つの中のどれですか?

さらに、もしこの物質について、
次の情報が加わったとしたら、あなたの回答は
A、BそれぞれYES、NOが変わりますか?

10. この物質は、無色・透明・無味・無臭である。



看護学生さん達には、追加質問はなく、
結果だけを下に示します。
配布はそれぞれの学年担当の
教官にしていただきました。

質問Aについて
1年生
YES:42人、NO:9人

2年生
YES:33人、NO:14人

3年生
YES:30人、NO:18人

教員
YES:9人、NO:10人


質問Bについて
1年生
YES:0人、NO:51人

2年生
YES:1人、NO:46人

3年生
YES:0人、NO:48人

教員
YES:0人、NO:19人


これから分かることは、まず教員は
主婦など比較的年齢層が高く、この物質を
「必要悪」、生活していく上で必要であるが、
あえて「飲みたくはない」と考えたのだろう。

一方、看護学生さんは、1年生と言えば、
殆どが高校を卒業したばかりで、
まだ医学的知識も殆どないし、
社会的な知識も少ないため、
3年生になるにつれて、教員同様、
「この物質は確かにあまり体に良くなさそうだが、
なくては困るなあ」と考えているのだろう。
「飲めるか」という質問に関しては、
一人を除いて、全員が「飲めない」と答えている。
下の医療従事者とは、少し異なる反応であった。


次に、上のすべての質問を、病院の薬剤師14人、
検査技師16人、ER看護師6人(外来勤務中)に、
今度はボクが直接手渡して周り、
質問に答えて貰った。

その結果、

質問Aについて
YES:24人、NO:12人
質問Bについて
YES:12人、NO:24人

情報が一つ増えたら、
質問Aについて
YES:17人、NO:17人
質問Bについて
YES:11人、NO:23人

と言う結果になった。

この評価には、もう一つバイアスがかかっている。
筆者はERで、急性中毒症例なども専門にしているし、
NBCテロ対策も経験している医師であり、
その医師が配る物質だから、
「聞いたこともないが、多分危ない物質だろう」
という先入観を持たせたかも知れない。

逆に、「きっと何か普通の物質を難しく
言っているだけかも」と、
さらに深く考えたかも知れない。
政府やマスコミの発表や報道でも、
その情報を誰が発表するかで、それを聞く
(読む)人間の判断に影響を与えることが多々ある。

結果であるが、「法的規制」に反対するのが
1/3、さらに10.の情報が加わると、
賛成・反対がほぼ同数になった。
また「飲めるか」に関しては、逆に10.の
情報があってもなくても、
2/3は「飲めない」と答えている。

質問A、Bともに、影響を強く与えた情報は
9.が一番多かったが、これはYES、NO
どちらにも影響している。

「ジャンクフードや様々な食品に
添加されているのだから、仕方がない」
と考えたヒトも多い。

質問Bの「飲めますか?」に関しては、
9.の次いで8.が影響を与えていた。

やはり、食べることが人間の基本であり、
「防虫剤」→「農薬」と考えてしまい、
医療従事者であるから、農薬中毒症例も
知っているため、この物質だけを
がぶ飲みするには抵抗があるのだろう。

ただ、「仕方がないから、飲む」
と答えたヒトも数人いる。

今の「新型インフルエンザ」に関する様々な情報、
ワクチンに関する情報なども、
「表現方法」「情報源」「情報量」「不適切な情報」
など、もし「偏った情報」を、政府やマスコミが
提供すると、もともと「伝染病は怖い」
という文化を持った日本人の多くが
混乱してしまうだろう。

実際、全数把握は出来ていないから、
新型インフルエンザ患者がいったい
どれくらいいるか分からない時点で、
死亡した症例だけを発表したり、
基礎疾患があることを強調したり
しているのが、現在の日本である。

「タミフルは出来るだけ早期に予防投与しろ」
とかの情報も、WHOなどの勧告とはまるで逆である。

先日も、ある若い母親が「娘の通っている
幼稚園で新型インフルエンザが流行していて、
閉鎖になった。
私は妊娠しているかも知れないから、
症状はないけれど、タミフルを処方して欲しい」
と受診してきた。

ある妊婦さん(まだ6週目)も、風邪症状が出て、
かかりつけの産科医に電話したら
「内科で診て貰いなさい」と言われたので、
わざわざERに来て、インフルエンザ疑い
患者さん専用の待合いゾーンで待っていた。

それも2歳くらいの子どもを連れてである。
これでは、一家で感染しに
来ているようなものである。

日本人は、いや、すべての人間は、
ある特殊な状況下では、
「情報」に振り回されやすい。

欧米では、すぐに権威のある組織が、
データを持って(なければ、まだ
「正式ではない」と断って)、
その時点での最善策を公開する。

必要な場合は、患者の症状や徴候、
レントゲン写真なども公開して、
一般医療機関の医者にも
「確実な(に近い)」情報を提供する。

今の日本では、キーワードとして、
新型インフルエンザ」→「基礎疾患」→
「死亡することがある」→「早期のタミフル」
となっているのではないだろうか?

そして、「ワクチン」→「接種のプライオリティ」
が報道されていて、これもまた先日の話だが、
昨年重症多発外傷で一命を取り留めた
ご高齢の患者さんが、
「私の場合は、肺にも穴が開いたことだし、
肋骨は何本も折れていたし、
肝臓にも傷が付いていた。
ワクチンは当然先に打って貰えるのでしょうね」
と、筆者の外来を受診された。

「申し訳ありません。今のところ、
どのようなヒトに優先権があるのか、
ハッキリはしていませんし、
ワクチンそのものの副作用についても
明らかではありません」
としか答えようがなかった。

とにかく、「恐ろしい伝染病かも知れない」
と一度思われてしまった以上、今後は
科学的根拠に基づく「情報」を
流して貰うことを切に願うものである。

それが「情報」の「魔術」なのである。



MRIC by 医療ガバナンス学会
  http://medg.jp

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この記事へのコメント
非科学的な……
Dr.I様>
 どうにも、日本では、「非科学的な信仰」が医療分野に介入してきますね。そのあたり、どうにかならないものでしょうか……。
Lich[URL] 2009/10/14(水) 23:18 [EDIT]
>Lichさん
こういうのこそ、きちんと科学的にやるべきなんですが。
どうしてそうならないんでしょうかねー。
残念です。
Dr. I[URL] 2009/10/14(水) 23:38 [EDIT]
不思議ですね
麻疹輸出国日本が、ことインフルエンザだとこうして大騒ぎになる不思議^ロ^;。我先に打ちたい人が大挙していますね。
でも、いくら予防していても、人間、成る時は成るんですよね。身近にそういう症例を観ました。(癌ですが。日常生活から食事からそれはもう奨励している先生方が泣いて喜んで下さるくらいに忠実にやっていましたが、なりました。しかも、時を置いて2回も。)予防しないよりはした方がいいんでしょうが、ヒステリックなのはいかがなものかと思う昨今です。
頑張ってください[URL] 2009/10/19(月) 01:32 [EDIT]
>頑張ってくださいさん
完全に予防することはできませんからねー。
でも、予防した方がしないよりは良いんですけど。
冷静に考えてやるしかないんじゃないですかね。
Dr. I[URL] 2009/10/20(火) 22:42 [EDIT]

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? | 2009/10/15(木) 23:02
情報のバイアス
 Dr.Iさんのブログ「健康、病気なし、医者いらず」の最新エントリーに面白いとい...  [つづきを読む]
つれづれコンサル2 | 2009/10/19(月) 19:59
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