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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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震災後、南相馬市を守ってきた医師がSOS
事故を起こした福島第一原発で
南北に分断された福島県の浜通り。

その分断された北側の南相馬市原ノ町で、
震災後も産婦人科・内科の医師として、
分娩を含む被災地の医療を守って来た
一人の医師がいる。

原町中央産婦人科医院
(福島県南相馬市原町区橋本町1丁目3−2)
の理事長 高橋 亨平 先生。
http://www6.ocn.ne.jp/~syunran/

その先生がに冒され、一人で維持してきた
医院を閉じる瀬戸際となり、
引き継いでくれる医師を探しているという
ニュースを、先ほどNHKで紹介していた。

私にはHPの片隅にある
「2012/8/12 私の体の現状と医師募集のお願い」
の(PDF)を紹介することしかできません。
皆さん、読んでください。
そして拡散紹介してあげて下さい。
http://www6.ocn.ne.jp/~syunran/isibosyuu.pdf



私の体の現状と医師募集のお願い

                          
平成24年8月12日
                            
医療法人誠愛会
                         
原町中央産婦人科医院
                            
理事長 高橋 亨平


外なる敵と戦っている間にも、という内部の敵は
決して手加減はしてくれなかった。
そして又、抗がん剤の副作用に耐えられなく、
もう治療はやめようと思い、
やめてしまった人もたくさんいると聴いた。

確かにその理由も分かった。
自分でも、何のためにこんな苦しみに
耐える必要があるのかと、
ふと思う時がある。

しかし、この地域に生まれてくる子供達は、
賢く生きるならば絶対に安全であり、
危険だと大騒ぎしている馬鹿者どもから
守ってやらなければならない。

そんな事を思いながら、もう少しと思い、
原発巣付近の痛み、出血、の緩和のため、
7月25日から、毎日放射線治療を開始、
通院している。

午前9時から12時まで自医院の外来診療、
その後、直ちに車に乗り
1時間20分かけて、福島医科大学放射線治療科へ、
そこでリニアック照射を受け、直ちに帰り、
3時から再び自医院の外来診療を6時まで、
しかし、遅れる事が多かったので、
最近は3時から4時に変更した。

そんな私の我侭に対しても、
患者さん達は何も言わずに、
ちゃんと待っていてくれた。

それでも、多い日は100人以上、
少ない日でも70人は下らない。
産婦人科医でありながら若き日の信念から、
全人的医療(holistic medicine)
を目指し、現在に至っている。

原発事故後、分娩できる施設が無かった
南相馬市も、南相馬市立病院の産婦人科、
西潤レデイスクリニック等
今年の4月から分娩を開始した。

私の役割は終わったと思ったが、
どうしてもという患者さんは断れない。
もういいかなとふと頭をよぎる誘惑に、
頑張っている20名の職員の笑顔がよぎる。

こんな医療法人誠愛会から
全国のドクターにお願いがしたい。

こんな診療所ですが、勤務していただける
勇気あるドクターを募集します。
分娩は止めて、ももう大丈夫だし、
婦人科、内科、消化器科、循環器科、
総合診療科、なに科でも結構です。
広く学ぼうとする意思と実践があれば充分です。

との闘いながら、頑張ってきたが、
あまくは無いなと感じることが多くなってきた。
何時まで生かられるか分からない・・
神の思し召すままに・・
と覚悟は決めていても、苦しみが増すたびに、
もし、後継者がいてくれれば
と願ってやみません。

私の最後のお願い、
どうか宜しくお願い致します。

※連絡は下記へ、忙しい時間帯は
対応出来ない事もあります。
電話:0244-24-3355
(自宅も、かしの木ホールも、職員寮も転送可能)
FAX:0244-24-6910



「うろうろドクター」さんも
ブログに書かれていますので、
ご参考までに。

『命を懸けて患者を助ける産婦人科医の最後の依頼 』



南相馬市 自らも。命を懸けて患者を助ける
産婦人科医の最後の依頼

南相馬市のある産婦人科医の戦い

医療法人誠愛会・原町中央産婦人科医院の理事長である
高橋亨平さんは自らがと闘いながらも
毎日多いときは100人以上、少ない時でも
70人は下らないという多くの患者の治療を続けている。

高橋さん自身は7月25日から
毎日放射線治療のために通院している。

午前中、自分の医院の外来診療を終えたあと、
車で福島医科大学放射線治療科まで急ぎ、
放射線治療をする。

その後はまた医院へとんぼがえりし、
午後4時から6時まで再び患者たちの診療にあたる。

南相馬市という東日本大震災で甚大な被害を受け、
いまだに原発の恐怖から抜けることのできない
この地域で彼が命をかけて戦う理由は
いったいどこにあるのだろうか?

高橋さんは言う。

この地域に生まれてくる子供達は、
賢く生きるならば絶対に安全であり、
危険だと大騒ぎしている馬鹿者どもから
守ってやらなければならない。

高橋さんのこの戦いは自分のためではなかった。
この地域でこれから生まれまた育っていく
次の世代へと笑い声と希望にあふれた
未来を託すために今自分にできる
精一杯のことをしているのだ。

自分の治療を続けながら、
患者と向き合っていくことは
生半可な決意や根性で
達成できることでは決してない。

南相馬市は原発事故の後、
分娩できる施設がこの医院以外になかった。

しかし、今年の4月から新しく分娩ができる病院が
2つ与えられ、彼は自分の役目はもう終わり、
自身の治療に集中できるのではないかとも考えた。

彼をそうさせなかったのは自分を待っていてくれる、
自分を必要としてくれる患者がいるからだ。

また、困難を共にしてきた20名の職員がいるからだ。

彼らの笑顔が高橋さんを前に進ませる
原動力になっている。


2012年08月30日 
PM01:00 Q Life Pro医療ニュース
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患者の死ぬ権利を尊重しよう
患者死ぬ権利(患者の自己決定権)」と
救命(医療上の必要性)」。
どちらが優先されるべきだと思いますか。

患者本人は、もう助からないので無駄な治療なんか
せずに苦しまずに死なせて欲しい。
これが、死ぬ権利患者の自己決定権)
でも、人工呼吸器をはずしたら死んでしまうからダメだ。
というのが救命(医療上の必要性)です。

みなさんだったら、もう助からない事が
はっきりとわかっている、このままだとあと数日しか
命がもたない、とわかった時、人工呼吸器とか
延命治療をしてまで命を延ばして欲しいと思いますか。
多くの人が、そうは思っていないですよね。

でも、今の日本では、仮に医師や医療従事者が
患者本人や家族の希望に答えたい、と思っても、
人工呼吸器がついている患者の人工呼吸器をはずして、
患者が亡くなってしまった場合、殺人罪
嘱託殺人罪・自殺ほう助罪で告発される事になります。


ちなみに、こういう話題になった時に、
尊厳死」とか「安楽死」という言葉が出ますから、
言葉の説明をまずしますね。


尊厳死:末期患者等が自分の意思で延命治療
やめてもらい、安らかに人間らしい死をとげる事。
(その結果、死期を早めることもありる。)

安楽死:苦痛から免れさせるため
意図的積極的に死を招く措置を取ること。


尊厳死というのは、もうこれ以上、延命治療はせずに、
放っておいてくれ、という事。
安楽死は、死が近づいたら、心臓とか呼吸を止める薬を
使ってでも、楽に死なせてくれ、という事です。


日本以外の先進国、例えば、スイスやオランダ、フランス、
アメリカでもイギリスでも、尊厳死(消極的安楽死)に関しては
きちんと法律が整備されて、認められています。

安楽死(積極的安楽死)に関しては、国(アメリカでは州)
によって違っていて、スイス、オランダ、そしてアメリカの
オレゴン州は積極的で、根拠法で一定の条件が
満たされた場合では、安楽死も認められています。

先進国の中で、尊厳死に関しての法律が整備されていない国
っていうのは日本しかないんですよ。

日本では、尊厳死に関しての法律がないので、
人工呼吸器を止めたり、延命処置をやめて患者が亡くなったら、
医師や医療従事者が殺人罪に問われる可能性があるので、
残念ながら今の日本では無駄な延命治療が行われています。

誰のためにもならない延命治療を続けても、
単に医療費の無駄なだけですから。
きちんと法律を作って、無駄な延命治療をやめて、
尊厳死を認めましょう、という事は
以前から言われていたのですが、
やっと法律が出来るかもしれませんよ。



呼吸器取り外しも可能に 
議連の尊厳死法案


超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」
(会長・増子輝彦民主党参院議員)は5月31日、
議員立法での国会提出を準備している
尊厳死に関する法案の原案を修正し、
免責対象となる医師の行為を、
人工呼吸器の取り外しなど
「現に行っている延命治療の中止」
に拡大する方針を決めた。

これまでは「新たな延命治療の不開始」に限っていた。
がんなどで終末期にある患者本人が
尊厳死を望む意思を表示している場合で、
2人以上の医師の判断を条件とする点は変わらない。

議連は6月6日に総会を開き、修正案を公表する予定。
障害者団体や医療関係者、弁護士らの意見を聞いて
さらに検討を続け、今国会か次期臨時国会での
法案提出を目指す。
ただ生命倫理にかかわるため、各党には
反対の議員も多く、提出や成立の見通しは不透明だ。

修正案には、障害や重い病気で意思表示が
難しい人を対象外とするため
「障害者の尊厳を害することのないように
留意しなければならない」との文言も追加。
いったん示した意思を撤回することも可能にした。

議連は3月、法案の原案を公表。
患者本人が健康で正常な判断ができる間に
延命を望まない意思を書面にしていること
などを条件に、新たな延命措置を
開始しないことを容認。
医師は刑事、民事、行政上のいずれの
責任も問われないとしていた。

修正の理由について議連関係者は
「延命中止が除外されれば法制化の意味がない
との意見を参考にした」と説明。
「『障害者らの命の切り捨てになる』
との懸念にも配慮した」としている。

共同通信社 6月1日(金) 配信



ちなみに、日本で尊厳死・安楽死に関する判決で、
最初というわけではないのかもしれませんけど、
有名なのが山内事件の判決です。
ここで、安楽死の6要件というのが出されたので、
これが今でも新聞等でも引用されています。


1)山内事件判決(名古屋高判昭和和37年12月27日)

裁判所の判断 ・安楽死の6要件

1)病者が現代医学の知識と技術からみて不治の病に冒され、
  しかも死が目 前に迫っていること。
2)病者の苦痛が激しく、何人もこれを見るに
  忍びない程度であること。
3)もっぱら病者の死苦の緩和の目的でなされること。
4)病者が意思を表明できる場合には、
  本人の真摯な嘱託または承諾のあること。
5)医師の手によることを本則とし、これにより得ない場合は、
  医師により得な いと首肯するに足りる特別な事情があること
6)その方法が倫理的に妥当なものとして認容しうること。


安楽死に関しても、尊厳死に関してもこういう定義だ、
という法律そのものはないんですけど。
裁判所の判例で、そういうもんだ、というのが出たので、
今でもそれが生きている、って事っすわ。

ちなみに、尊厳死に関しては、尊厳死そのものが
争われたわけではないんですけど、
医師殺人罪に問われたはじめての安楽死裁判。

東海大学病院事件判決(横浜地判平成7年3月28日)
ここで、判決が出ちゃっています。

ちなみに、この事件の概要は、こちら。


東海大学病院事件判決(横浜地判平成7年3月28日)

平成3年4月。 多発性骨髄腫の末期患者
昏睡・意識不明の状態にあったが、
苦しそうないびきをかいているのを見た
家族の者から「楽にしてやってほしい」
「早く家に連れて帰りたい」などと
強く懇願されたため、担当医が、
(1)点滴 や薬、フォーリーカテーテルの撤去(延命治療の中止)、
(2)死期を早めるかもしれないがいびきをおさえるための
  鎮痛剤等の投与(間接的安楽死と呼ばれる行為)、
さらに、
(3)塩化カリウム製剤等の注射
  (積極的安楽死と呼ばれる行為)、
という一連の行為の結果、患者を死亡させた事件。
患者自身が死を望む意思 表示がなかったことから、
嘱託殺人罪ではなく、殺人罪で起訴された事件。



裁判所の判断は、
・起訴されたのは、
(3)塩化カリウム製剤等の注射(積極的安楽死と呼ばれる行為)
のみだったんですけど、裁判所は、(1)と(2)
についても、それが適法になる要件について
書いちゃったんですよ。

(1)治療行為の中止

適法になされるための要件

1)、患者が回復の見込みのない末期状態にあること
2)、患者の推定的意思であり、それによって中止できる
  医療の内容はすべての範囲に及ぶ。


(2)死期を早めるかもしれないという副次的効果は
  あるものの苦痛の緩和等が
  主目的とされる間接的安楽死

適法になされるための要件

1)耐え難い肉体的苦痛
2)死期の切迫
3)患者の推定的意思


(3)積極的安楽死

適法になされるための要件

1)患者が耐え難い激しい肉体的苦痛に苦しんでいること
2)患者は死を避けられず、その死期が迫っていること
3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を付くし
  他に代替手段がないこと
4)生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示がある。



この裁判では、(3)について、1)と4)の要件を
満たしていないとして、懲役2年、執行猶予2年。
という判決が出ているんです。

(3)については、まあしょうがないかな、とは思うんですが。
(1)と(2)について、地裁(傍論)と言えども、
公的機関が要件を示してしまったので、
その要件を満たさなければ違法とされるから、
警察や検察は殺人罪の適用を考えざるを得なくなった。
というのが、今の日本の現状です。


それじゃあ困るね、って事で議員立法で
尊厳死に関する法律を作りましょう、
という事だったんだと思いますが。


>議連は3月、法案の原案を公表。
患者本人が健康で正常な判断ができる間に
延命を望まない意思を書面にしていること
などを条件に、新たな延命措置
開始しないことを容認。
医師は刑事、民事、行政上のいずれの
責任も問われないとしていた。



正直言うと、この3月に出た原案だと、
何の意味もないですよ。

今までも、書面で延命処置をしてくれるな
という事をきちんと書いて、延命処置をしなかった。
という事で、裁判で訴えられて負けた医師
というのはいませんでしたからね。

むしろ、延命治療をしてくれるな、っていう
文書があるのに家族や患者本人の意志に反して
延命治療を行っている医者の方が問題
でしょ。
今でも。

困っているのは、延命処置(人工呼吸器)を
止めたら殺人罪が適用されてしまいますよ

って事ですから。

今更、そんな法律を作っても何の意味もありません。


平成10年の川崎協同病院事件や、平成16年の
道立羽幌病院事件、そして平成12年の
射水市民病院事件や平成18年の
和歌山県立医科大附属病院紀北分院事件など、
医師末期患者の人工呼吸器を外して患者が死亡し
書類送検された事件は、その後もいくつかあります。

ちなみに川崎協同病院事件は、人工呼吸器を
はずしただけでなく、その後筋弛緩剤を注射したので、
裁判になって最高裁まで行っています。
そいで、この事件は東京高裁で懲役1年6か月、
執行猶予3年の判決が出て、2009年12月7日に
最高裁が上告を棄却し高裁判決が確定しています。

それ以外の事件では、医師が殺人罪で書類送検は
されたんですけど、結局不起訴にはなっています。


結果的に不起訴になったとはいえ、本人も家族も
望んでいるとしても、末期患者の人工呼吸器を止めたら
医師が殺人罪で書類送検される、という事ですから。
問題ですよね。
もしかしたら、起訴されるかもしれないんですから。

そうならないために、きちんと法律を整備する、
という事は医療関係者にとっては最も重要な事ですし、
患者さんや家族の人にとっても大事な事だと思います。

もちろん、法律を作ったらそれだけで解決する、
という問題ではないんですけれど、
早く法整備されると良いですね。
「トモダチ作戦」日本人女医が先駆け
いつのまにか、東日本大震災から、
もう一年が経ってしまいましたね。
早いもんですねー。

テレビでも、また良くやるようになりましたが、
やっと復興庁が出来たばかりで、予算の執行も
まだまだこれから、ってとこで。
ほんと、日本の政府、役人は腰が重くてダメですね。

トモダチ作戦」って作戦をアメリカ軍が行った、
という事は皆さんもご存知だと思いますけど。

実は、日本人の女性医師がその先駆けだった、
って事、知ってましたか。
私は、今回の記事を見て初めて知りました。

この女性医師もすごいと思いますけど、
やっぱり米軍はスピード速いですよね。
行動力あるし。

平時であれば、きちんと手続きを踏んで
じっくり時間をかけてやる、ってのも良いけど。
有事にも同じ事をやられると、困りますよね。

個人的に、すごくおもしろかった記事なので、
ちょっと紹介しますね。



トモダチ作戦」 奔走した日本人女性医師 
「被災地へ薬を」 米軍に直接交渉

 ■祖母の悲報乗り越え任務遂行

東日本大震災では米軍による支援活動
トモダチ作戦」が大きな成果を上げたが、
その先駆けが被災地への医薬品の
輸送だったことはあまり知られていない。

東京・本駒込の日本医師会(日医)に
医薬品が集まるめどが立ったのに、
輸送手段が見つからない。

厳しい局面で機転を利かし、米軍
直接交渉したのは、米ハーバード大学の
人道支援組織の一員として派遣された
有井麻矢(ありい・まや)医師(31)だった。
(河合雅司)

                 

震災発生から1週間もたたない昨年3月16日。
被災地から「医薬品が足りない」
との声が日医に相次いでいた。

製薬各社の協力で確保できたが、
問題は膨大な量をどう迅速に運ぶかだった。
期待した航空自衛隊から色よい回答を得られず、
落胆が広がった。

米軍に協力要請できるかもしれません」。
声を上げたのは、たまたま居合わせた有井だった。

当時、米エール大学に所属していた有井が、
人道支援組織「ハーバード・ヒュマニタリアン・
イニシアティブ」のメンバーとして
一時帰国したのは前日15日だ。
初対面の有井の提案を
日医幹部は即座に受け入れた。

有井は「絶対に成功させよう」と腹をくくった。


 ◆逆に「アリガトウ」

米国を出発する前にエール、ハーバード両大学の
同僚らから紹介された人々に電話や
メールを送り続け、18日未明、
米国大使館から返事が来た。
交渉の末、米軍機による輸送は19日と決まった。

「アリガトウ」。
連絡を取り合っていた米軍担当者からの
言葉に有井は戸惑った。

自分たちが頼んでいるのに、なぜ感謝されるのか。
医薬品輸送は大震災発生後、横田基地からの
支援としては初めての大型作戦だった。
米軍も活躍の場を求めていたのだと感じた。

 
アクシデントが起きたのは輸送前日だった。
横田基地からのメールには
「USAID(米国際開発局)が最終的に
承認しなければ、われわれは動けない」とあった。

輸送要請の申請書を記入してほしいという。
寝耳に水だった。急ぐしかない。
夢中で書類を書き、1時間後にゴーサインが出た。

出発当日の朝、米軍と最終連絡を取っていた
有井に母親から電話が入った。
祖母が亡くなった知らせだった。
輸送機には英語が堪能な有井が1人
同乗することになっている。
「しっかりしなければ」。
5分ほど一人トイレで泣いた。


 ◆各部署の総力結集

集まった医薬品8・5トンは、
横田基地までパトカーが先導した。
横田基地でも特別扱いだった。
ゲートはノーチェック。
荷降ろし、梱包(こんぽう)、輸送機に積み込む
作業にはさまざまな部署から何十人もが駆けつけた。

「私たちはオバマ大統領に日本の
人道支援のためにと集められたチーム。
人命を助ける作戦に参加できてよかったです」
と口々に語った。
米軍兵士の表情は誇りに満ちていた。

 
輸送機は岩手県の花巻空港に無事降り立った。
しかし、次に向かった仙台空港は
闇に包まれ着陸できない。
管制塔とのやりとりが緊迫感を増す中、
誘導の明かりがともった。
自衛隊だった。
自衛隊は降ろされた医薬品を
被災地に陸送する任務も引き受けた。

 
数日後、有井の姿は宮城県気仙沼市の
被災地にあった。
そこには医薬品だけでなく、食料や水、
トイレが足りず、プライバシーが
確保できていない避難所が広がっていた。

当時を振り返って有井はこう語る。
「災害医療では、医療や薬だけでなく、
公衆衛生を含めて現地ニーズを迅速に把握し、
対応できる協力体制が必要。
知識とトレーニング、そして行政との連携が重要です」

   

【プロフィル】有井麻矢

ありい・まや ハーバード大救急科医師
専門は国際救急。
慶応大医学部卒業後、慶応大病院、
エール大病院などに勤務。
神奈川県出身。


『産経新聞 :2012年3月18日』


この記事から推測すると。
3月16日かそのくらいから、
有井先生が電話やメールを送り続け、
18日未明、米国大使館から返事が来た。
米軍機による輸送は19日と決まった。

って事ですから、3日ですかね、多分。
そいで、輸送前日に
「USAID(米国際開発局)が最終的に
承認しなければ、われわれは動けない」。
という事で、輸送要請の申請書を書いたら、
1時間後にゴーサインが出た。

という事ですよ。

横田基地までパトカーが先導した。
横田基地でも特別扱いだった。
ゲートはノーチェック。


というのも、スピード重視って事もあるし。
やはり、こういうのに関しては、
アメリカというか米軍は、
日本よりも数段上ですね、確実に。

日本も、こういうとこ、見習ってもらいたいです。



時間外手当を求め、提訴したわけ
m3で子持ち産婦人科女医、野村先生の話が
話題になっていますね。

このブログでも良く取り上げている、
医師時間外手当に関してのものです。

私を含めほとんどの人が、実際に裁判を
起こした事がないので、詳しくはわかりませんけど。
相当大変だったんでしょうね。
しかも、天下のトヨタ系の病院ですし。

とりあえず、和解で決着したみたいです。
お疲れ様でした。
長くなるので全文は出しませんけど、
全部読みたい人は、後ろのURLを
参考に読んで見て下さいね!



時間外手当を求め、提訴したわけ
橋本佳子 (M3)


子持ち産婦人科女医・当直民事訴訟奮闘記」を
愛知県在住の産婦人科医、
野村麻実氏にご執筆いただきました。

野村氏は2009年4月から9月までの間、
愛知県刈谷市の刈谷豊田総合病院に所属、
その間の所定労働時間外の勤務が、
「宿日直」ではなく、時間外労働に当たるとして、
その手当を求めて同病院を提訴しました 。
2011年12月15日に和解に至っています。

「毎月80 - 100の分娩を手掛けていました 。
週の予定手術件数は8 - 12件で、その上、
緊急手術が入ります。
1日に4件の緊急帝王切開
という日もありました」(野村氏) 。

訴状によると、例えば2009年7月の場合、
月100件の分娩のうち、47件が
所定労働時間外で、1日平均1.5件の
分娩が時間外に発生しています。
当時の産婦人科は8人体制で、うち4人が
野村氏も含めて子育て中の女性医師

野村氏は適正な手当ての支払いを病院
求めても対応がなされず、 労働基準監督署に
相談しても短期間のうちに3人も担当が変更、
提訴を決意しても労務問題に詳しい
弁護士を探すのに苦労。
提訴後も、裁 判官に判決を求めても、
和解を勧められ、最終的には応じています。

野村氏の提訴は、個人的な問題解決と同時に、
実態は通常勤務と変 わらない勤務であっても、
「夜間や土日曜日の勤務=宿日直」
として扱われてきた医療界に、
一石を投じた意味があり ます。

だからこそ、「判決文がほしいのです」
と野村氏は求めていますが、担当裁判官からは、
「和解額を見れば判決と同じくらいの
意味がありますから」と言われる始末。

野村氏が訴状で求めたのは、280万 1290円
(割増賃金合計から、既払金を差し引いた額)。
これに対し、和解金は280万円。
確かに金額だけを見れば、野村氏の訴えが
認められたわけですが、野村氏の当時の
勤務実態が宿日直か時間外勤務かの
法的はなされていません。

なお、今回の和解について、刈谷豊田総合病院に対し、
(1)宿日直扱いか、時間外手当を支払う
対象となるのかの判断基準、
(2)和解した理由、などについて
取材を申し込みましたが、応じてもらえず、
「長期の紛争を続けるのは、当院の本意ではないので、
円満な和解の道を選択した」
との回答が得られたのみでした。

宿日直が時間外勤務に当たるとして、
提訴した例には、奈良県立奈良病院
産婦人科医のケースなどがあります
『時間外手 当裁判、奈良県が上告したわけ』を参照)。

本裁判は、一審、二審とも医師側が勝訴、
しかし、県が上告したため、確定はしていません。

そもそも宿日直問題は、金銭的問題以上に、
医療安全の観点から解決すべき問題。
「宿日直」扱いであれば、労働基準法で言う
労働時間にカウントされず、過労死ラインは
「月80時間以上の時間外労働」 と言われますが、
そこにも含まれません。

ほぼ通常業務に近い「宿日直」明けの勤務では、
集中力が落ちるとの報告もあります。
時間外勤務と宿日直の問題は、個人の力に
頼るのではなく医療界全体で、
また司法の力によらず、行政が
解決していくべき問題です。


『2012年01月24日 m3ニュース 』


普通、こういう事例で和解すると、
守秘義務」っていうのを付けて、
金を払うけど内容は公開するな、
病院が言って来る事がほとんどなんですけどね。
ネット上で公にしている、っていう事は
守秘義務がなかったという事なんでしょう。

多分、野村先生の方が和解の条件として
守秘義務をつけない、という事を言ったんだと思います。
このような病院とのやりとりが詳細に公になった、
という事自体、画期的な事だと思います。



病院が患者さん(保険会社)からもらうお金って、
診療報酬という点数で決まっているんですけど。
その中に「勤務医の負担軽減」という点数があります。
それが2012年度の診療報酬改定で、
6項目追加、5項目が新設されて
14項目に拡大されます。

その内容っていうのは、今までは
(1)総合入院体制加算
(2)医師事務作業補助体制加算
(3)ハイリスク分娩加算
(4)急性期看護補助体制加算
(5)栄養サポートチーム加算
(6)呼吸ケアチーム加算
(7)小児入院医療管理料
(8)救命救急入院料

です。

んで、今回新たに
(9)総合周産期特定集中治療室管理料、
(10)小児特定集中治療室管理料(新設)
(11)精神科リエゾンチーム加算(新設)
(12)病棟薬剤業務実施加算(新設)
(13)院内トリアージ実施料(新設)
(14)移植後患者指導管理料(新設)

の6項目が追加される予定です。

もちろん、医療クラークに書類を書いてもらったり、
看護師や栄養士と一緒に仕事をして、
勤務医の仕事を減らすって事も重要ですけど。

それ以前に医師にきちんと時間外手当を払わない。
という、労働基準法に違反している病院
たくさんあって、それが医療崩壊を促進している

っていう現状があるんですよ。

小手先の対策ではなくて、もっと根本的な解決策を
作らないと、結局は改善しないんですけど。
きっと、わかっていて確信犯的にやっていないんでしょうねー。
とても残念です。


参照:
『子持ち産婦人科女医・当直民事訴訟奮闘記◆Vol.1』

『子持ち産婦人科女医・当直民事訴訟奮闘記◆Vol.2』

刈谷豊田産科医時間外訴訟、ほぼ原告の完全勝利
最近忙しくて、あんまりネットで
医療系の情報収集をしていなかったんですが。

刈谷豊田産科医時間外訴訟
いつの間にか決着ついていたんですね。

しかも、この内容を見ると、
原告の産科医側の全面勝利じゃないですか。

結局、裁判になっていないから、
勝訴とは言えないですけどね。


情報元は、Yosyan先生
「新小児科医のつぶやき 2011-12-19」
『刈谷豊田産科医時間外訴訟2・和解の結末』
からです。
いつもお世話になっております。

ここに詳細が書いてあるんで、
私が付け加える事は、ほとんどないんで。
新聞の記事を紹介しますね。



時間外賃金訴訟で和解 刈谷の病院
 
通常の労働をする必要がない当直中に分娩(ぶんべん)や
帝王切開手術などをさせられたとして、
刈谷豊田総合病院(愛知県刈谷市)に勤務していた
30代の女性医師が病院に時間外割増賃金の
支払いを求めていた訴訟は15日、
名古屋地裁で、医師が求めていた
ほぼ全額の280万円を病院が支払うことで
双方が合意し、和解が成立した。

医師は2009年4~9月、この病院に勤務。
夕方から翌朝までの宿直を月3~4回、
休日の朝から翌朝までの日直兼宿直を
月1~2回担当した。

医師によると一度の当直で複数の分娩の処置をし
帝王切開手術をするなど、昼間と同様の仕事をこなした。
しかし、賃金が3~9割増しとなる
時間外勤務とはみなされず、
より安い当直手当しか支払われなかった。

医師は、病院の就業規則で決められた
時間外勤務の割増率に基づいて賃金を計算。
受け取った当直手当を差し引いた
280万余円を支払うよう求め、10年9月提訴した。

厚生労働省の指針では、医師当直勤務は、
病室の巡回や検温などの軽い業務に限るとし、
昼間と同じ労働は時間外勤務として
扱うことを求めているが、浸透せず
全国で過重労働の実態が指摘されている。

女性医師
病院が不当な労働を認識したと和解を受け止めた。
全国では医師の労働環境が悪い病院が多く、
環境改善につなげてほしい」と話した。
刈谷豊田総合病院
「長期間の紛争を続けるのは本意ではない。
円満な和解による解決をした」
とコメントを出した。

中日新聞 2011年12月16日




当直医師時間外手当で和解 
病院側がほぼ全額支払い 名古屋地裁


通常勤務と変わらない仕事をした当直
時間外労働に当たるとして、刈谷豊田総合病院
(愛知県刈谷市)に勤務していた
女性医師病院を経営する医療法人豊田会に、
当直分の時間外割増賃金の支払いを求めた訴訟で、
女性が求めていたほぼ全額の280万円を
病院が支払うことで双方が合意、
16日までに名古屋地裁で和解が成立した。

訴状などによると、原告の女性は
平成21年4月から9月まで同病院
産婦人科医として勤務。
当直中も分娩(ぶんべん)の処置や帝王切開手術など、
通常と変わらない仕事をしたとして、
支払い済みの当直手当を除いた
時間外割増賃金約280万1千円の
支払いを求めて提訴していた。

女性は「医師の労働環境の改善につながってほしい」、
病院は「長期間の紛争を続けるのは本意ではなかった」
とした。

『産経新聞 2011.12.16』



このブログでも、数え切れないくらい書いていて、
上の記事にも書いてありますけど。

>厚生労働省の指針では、医師当直勤務は、
病室の巡回や検温などの軽い業務に限るとし、
昼間と同じ労働は時間外勤務として
扱うことを求めている。


ですからね。
いわゆる、普通の医師当直で、救急外来の患者を診たり、
入院患者が急変した時の処置
をした、とか。
そういうのは、当直業務ではなくて、
時間外勤務」になります。

当直で病院に泊まっているから、当直手当
というのは当然出るんですが。
それ以外に、外来や入院患者の処置が
頻回に必要だ、という場合は、別途「時間外手当」
を支払う必要があります。

天下の厚生労働省もそうしろ、と指針を出していますし。
それ以前に、労働基準法という法律でも、
そういう事が決まっているですが。

日本の病院は、違法行為をなんとも思っていないんでしょうかね。



Yosyan先生のブログに書いてありましたが。


>■和解交渉
私は感覚としてわかり難いところがあるのですが、
280万円の請求事件にしては裁判は
大がかりなものであったそうです。

両陪席を従えた3人制で、被告側弁護人は
東京から遠征の大弁護団が
溢れかえるほどおられたそうです。
原告側弁護人は少なからず
ビビッたとの感想を聞いています。


さすが、天下のトヨタですね。
あのトヨタ系列の病院なら、280万円なんて金、
はした金なんでしょうけど。
これを時間外労働と認めて、他の医師や従業員にまで
広がったら、大変な事になる
、って事で
大弁護団を編成したんでしょうか。

素人相手に、えげつないですねー。
でも、相手をビビらす効果はあったかもしれないけど。
所詮は、裁判なんて証拠を元に判断する場ですから。
弁護士の数がいくら多くても、関係ないんですよね。
裁判が進んだら、このまま行ったら絶対に負ける、
って事がわかって急に手のひら返してきたみたいです。

他の大企業系列の病院でも、未払い時間外賃金の
話し合いがあった時、病院側の対応は
「裁判になったら、素人なんか目じゃないよ。」
というような感じだったらしいですけど。
やっぱ、同じようなもんなんですねー。


個人的には、裁判で最高裁まで争ってもらって、
勤務医にとっては画期的な判例を出して
もらいたかったんですが。

個人でトヨタのような巨人相手に1人で立ち向かう、
というのはとても大変な事ですから。
ほとんど全面勝利の内容で和解を得られたのですから、
素晴らしい判断だったと思いますよ。

遅ればせながら。
女性産婦人科医の先生。
「おめでとうございます。
そして、お疲れ様でした」


うろうろドクター先生もブログに書かれていますから。
興味ある人は、読んでみてね。

『刈谷豊田総合病院の時間外賃金訴訟は、
原告勝訴に近い和解で決着。 』

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