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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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県立延岡病院、医師6人退職
県立延岡病院で、医師が6人も
退職するみたいっすね。

今の時代、医局の力なんて、
そんなに大きくないのに。
医師が撤退するのは医局のせいだ。
医局が悪いんだ。
という論調は、
はっきり言って間違いです。

病院から医師が出て行くのは、
病院側の問題も大きいんですよ。

特に、県立延岡病院の場合は、
ずっと前から、医師の労働環境が
悪いから改善してくれ。
って言っているにも関わらず、
病院側は、対応していませんから。


それで医者が辞めたら、
医師医局の責任ではないでしょ。
それって、病院側の責任でしょ。

たしかに、このブログでも何回も
書いていますけど。
日本の医師数は少ないですよ。
他の先進国と比べたら。

でも、医師の数自体は
増えているんですよ。
少しずつですけどね。
医局の力は衰えたけど、
まだ地方の病院に一定の医師
派遣する能力は持っています。

ただ、医局に属する
医師の数が減ったから、
医師に対する待遇の悪い病院から
医師を引き上げている。

というのが現実です。

医師の数が少ないんだから。
今までどおりの病院全てに、
医師を派遣する事は不可能ですよね。
物理的に。

だから、医師への待遇の悪い病院には
医師を送らないで。
待遇の良い病院から派遣していく。
というやり方は、普通ですよ。



医師の待遇というのは、
単に給料の事だけではありません。
医師のやりがいだとか、
働きやすさだとか。
医師から改善の声が上がった時に、
どれだけ意見を聞いてくれるのか。
とか。

そういった要素も
結構大きいと思います。
にも関わらず、都合が悪くなったら、
医師個人や医局の責任にする病院

そんな病院に、これから来たい、
っていう医師は少ないでしょうね。



延岡病院医師確保問題

■“患者不在”の
派遣協議労働環境整備難航

3月末までに医師6人が
退職の意向を示している
県立延岡病院(楠元志都生院長)の
後任医師確保が難航している。

背景には、同病院の過酷な
労働環境に対する派遣元の
医局の不満や、医局の複雑な
内部事情がある。

医師がいなくなれば
最も困るのは患者だが、
派遣協議は医師が働く
環境整備に議論が集中し、
患者不在”のまま進んでいる。

 
医師が退職すれば、4月以降、
病院では腎臓内科と
神経内科が休診に追い込まれる。
腎臓内科の患者は、心臓、
肝臓病などとの
合併症患者がほとんど。
年間の患者数約200人の
およそ7割が救急患者だが、
休診になればこの受け入れが
完全にストップする。

県北地区にはほかに
対応できる病院がないため、
急患は宮崎市や県外の病院
約2時間かけて
搬送されることになる。

延岡市腎臓病患者会の
岩田数馬会長(55)は
「(医師不在で)どんな状況になるか
非常に不安だ。
万が一という事態があり得る」
と懸念する。

 
神経内科では、年間約250人に
上る脳梗塞(こうそく)患者
対応できなくなる。
このため、両内科に入院している
患者約40人は、3月末までに
宮崎市などの病院への
転院を余儀なくされる。

両内科には、延岡病院
関連病院と位置づける
宮大医学部に4つある
内科の医局医師
派遣してきた。
医師確保について、
ある医局関係者は
「内科全体で前向きに
話し合っている。
早く結論を出したい」
と説明する。

 
しかし、派遣協議は難航。
延岡市内には深夜帯
(午後11時―午前7時)に
軽症患者を診る医療機関がなく、
本来は重症の救急患者
対象の同病院の当直医が
受け入れているため、
夜間当直を輪番で担う
医師の負担が重いことも一因だ。

近年は新医師臨床研修制度の
影響で同病院医師総数が
減っていることから、
医師1人当たりの当番回数が増え、
昨秋には、宮大が医局に戻す
予定の腎臓内科医が
過労で倒れた経緯もある。

 
内科医局関係者は
延岡病院は労働環境が悪く、
10年前から県や病院に
待遇改善を求めてきた。
が、聞き入れてもらえなかった。
それでも医師を派遣してきたが、
今は誰も行きたがらない」
と明かす。

ただ、当の内科医局
医師を相次いで引き揚げたことが
労働環境悪化に
つながっている事実もある。
同大は今回の6人中3人のほか、
昨年4月以降だけでも
消化器系内科医1人と
腎臓内科医1人を
大学に戻したため、
消化器系内科は休診となった。

 
後任医師が決まらない一方で、
内科医局は民間病院には
医師を派遣している。
ある関係者は
「大学内のほかの医局や、
ほかの大学の医局なら、
民間病院医師を減らしてでも
医師不足の公立病院
派遣させる」
と内科医局の対応に
納得がいかない様子だ。

 
既にアルバイト医師の派遣、
医療秘書採用などで
医師の負担軽減策を
図っている県病院局は
「九州内の大学に独自に
医師派遣を要請しているが、
厳しい状況。
あとは(宮崎)大学からの
返事を待つだけだ」
と同大の対応を見守っている。


『2009年2月8日:宮崎日日新聞』


本文にも書いてある通り、
10年以上前から医師の待遇改善を
要求している。
それにも関わらず、何の対応もしない、
過労で医師が倒れるような病院


こんな病院で働きたいと思う
医師がいると思うんでしょうか。
医局っていうのは、大事な医師達を
預かっているところですよ。

そんな病院に大事な医師
派遣したい医局なんて
なくて当然です。

医局医師を派遣してくれないから、
医師が減るのは医局のせいだ。
なんて言っている病院病院ですが、
その意見を鵜呑みにして
記事にする新聞も同罪ですね。


ちなみに、県立延岡病院は、
病院医局から院長が辞職勧告
受けたりしていますし。

98年の開設時から
救急救命センターの看護師数が
不足しているのに、
嘘の申請書を出し、麻酔科医が
辞職しても専任の医師が存在する
と誤摩化していた病院です。

前にも同じような事があった病院
言い方悪いけど、
前科」があるんですよ。

証拠として、県立延岡病院関係
過去の記事を出してみましょうか。



[余響]宮崎県立延岡病院
麻酔医一斉退職
地域医療のあり方考える契機に

西日本新聞社
2003.03.12 西部夕刊 7頁 


大分医科大から派遣されていた
麻酔医五人全員が一斉退職する
という異常事態に直面した
宮崎県立延岡病院(延岡市)。

応援医一人しかいなくなった
救命救急センターの
取材をしてから、救急車の
サイレンを聞くたび、
「大事にならなければいいが」
と胸が締めつけられる。

麻酔医たちによると、
救急体制の充実を病院幹部に
再三具申したが、
受け入れられなかった。
だから、地域医療の向上を願って、
退職という強硬手段に出たという。




県立延岡病院
麻酔医5人辞表提出 
院長、副院長の辞任要求

医局会 /宮崎 毎日新聞  
02年12月14日


延岡市の県立延岡病院
麻酔科の医師5人が今月末での
辞表を提出している問題で、
病院医師で組織する
医局会(金山壽一会長、64人)は、
本田正之院長と児玉英昭副院長の
辞任を求めた要望書を
県と院長に提出した。
【椎葉昭夫、奥田伸一】


◇対応への不信隠さず

13日に延岡市で会見した
医局会の落合隆志外科部長は
要望した理由を
「県も病院も今回の事態に
至った経緯を何も説明していない」
と話し「対応次第では別に
退職する医師が今後出
てくるかも知れない」
と県、病院側への不信感を
隠さなかった。

麻酔科医の5人は年明けからの
就職先が決定しているという。

落合部長ら医局会は
「麻酔科問題はこの5月からだが、
病院の改善問題は
以前から出されていたようだ。
県と病院幹部の対応では
麻酔科医の撤退はやむを得ない」
としている。

また、医局会は本田院長と県に
質問状も提出。
院長には麻酔科医の
退職に至った経緯と後任人事の
説明を求め、県には今回の事態に
対しての認識や今後の対応、
医局会との意見交換の場の
設置を要望した。




ヨーク考えて04年には
前知事まで頭を下げたのですが、
現状はこの通りです。

一度ならず、二度も同じような事を
繰り返す病院
に、
更に医師を派遣する医局
あるんでしょうかねー。


大学の医局に頼るのは
無理なんですよ。
ずーっと前から労働条件悪い
って言ってるのに変らない。
じゃー、しょうがないですよ。
医者が来なくなっても。

患者不在ってなんですか?
じゃー、医者にひどい労働条件で
働きつづけろって事ですかね。



1年くらい前の新聞記事ですが。

延岡の選挙区の県議会議員は、
東国原知事に、地方への
医師の強制配置を
法律化するように、陳情した。


と書いてあったそうです。


どうやら、悪いのは病院だけ、
って話ではないようですね。

県立延岡病院の詳しい話は、
Yosyan先生のブログも参考にしてね!

『宮崎県立延岡病院』
『何処も同じ論説委員』


誰のせいで、日本の医療は
崩壊しているんでしょうかねー。

→ 
誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実


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医療安全にはお金が必要
日本人は、水と安全は無料だ
って思っていた時代がありましたけど。
それは、もう昔の話ですよね。

医療でも、安全にはお金がかかります。
『医療ミスの確率』
『医療ミスの確率2』
の記事でも書いたけど。
医療ミスの確率は、ゼロにはならないんですよ。
どんなに頑張ってもね。

テレビなんかに良く出ている
神の手を持つスーパードクター」とかでも、
医療ミスの確率はゼロじゃないんですよ。

今の日本では、世界一安い医療費で、
平均寿命も周産期死亡率も世界一。

っていう、ものすごくコストパフォーマンスの良い
医療を、国民全員が受けられていますけど。
これは、ホントに特殊な状態なんですよ。

医療でも安全にはお金がかかるって事に関して、
ちょっと良い記事を見つけたので紹介しますね。



【対談】
医療安全を育む文化は醸成されたか


高久 史麿氏(自治医科大学学長 
医療の質・安全学会理事長)
石川 雅彦氏(国立保健医療科学院 政策科学部長)

________________________________________


1999年,国内で医療事故が相次いで発生したことなどを契機に,
より安全医療の実現に向けた取り組みが本格化した。

以後,年々,国民からの医療の質に
対する要望も高まっているが,
安全性の確立こそがその質を担保する
最大のファクターといえるだろう。

これまで,法整備や医療安全情報の
集積をはじめとするさまざまな試みが続けられているが,
医療者のあいだに医療安全を醸成する文化は
確実に根づいているのだろうか。

また,日々,高度化する医療のなかで,
医療安全のリーダーやスペシャリストを
どう育てていく必要があるのだろうか。

本紙では医療安全の現状を検証する目的で,
2005年に設立された「医療の質・安全学会」
理事長の高久史麿氏と医療安全教育の
第一人者である石川雅彦氏による対談を企画した。

________________________________________

“To Err Is Human”,患者取り違え事件を契機に

石川 近年,医療安全が社会的な問題として
捉えられるようになり,医療安全の視点から
医療の質を高めるさまざまな取り組みが続けられています。

本日は,学会そして大学のトップのお立場から
医療安全推進に携わられている高久史麿先生に,
現在までのわが国における医療安全に向けた取り組み,
そして今後求められていく事柄について
お話をお伺いしたいと思います。

まず,これまでのわが国における医療安全
関する取り組み,文化の醸成について
どうお感じになっておられますか。

高久 私自身が患者を診ていた頃には,
医療の質や安全について,
語られることはほとんどありませんでした。

転機は横浜市立大学附属病院
患者取り違え事件の発生年であり,
米国の医学研究所(IOM: Institute of Medicine)
医療の質委員会から
“To Err Is Human: Building a Safer Health System”
が発行された年でもある1999年ではないでしょうか。

ちょうど時期が重なり,メディアが医療事故のことを
大きく取り上げるようになって,
厚生省(当時)もさまざまな対策を開始しました。

その後,2005年に
“Five Years After To Err Is
Human-What Have We Learned?”
という有名な論文が“JAMA”に掲載されましたが,
このなかに「“To Err Is Human”が発行されるまでは,
医療安全が語られることはあまりなかった」
という記述がありました。

それまでは診断と治療がmain issueで,
その後に医療安全が加わったと。
そう考えると,この約10年で,
ずいぶん風土は変わったのですね。

石川 エラーなどの有害事象の原因を
個人からシステムに,事故対策も
リスクマネジメントからセーフティマネジメント,
クオリティマネジメントという視点に変わってきました。

高久 当然のことに気がついたともいえますね。
個人を追及しても防止策にはつながりませんからね。
やはりシステムから修正して,
全体の質を高めていく必要があるでしょう。

石川 システムにはソフト・ハード両面の問題がありますが,
さまざまなファクターが関連してきますね。

高久 医療安全には,医療に関わる
すべてのファクターが絡み合っています。

看護師の労働環境に関しても,
IOMのナースの労働環境と患者安全委員会から,
“Keeping Patients Safe: Transforming
the Work Environment of Nurses”
が2003年に発行されました。
このなかでも,看護師が忙しすぎると
医療事故が起きると指摘されています。
やはり絶対数としてのマンパワーがないと難しいですね。

そう考えると,現在の医療費抑制政策のなかで,
安全対策を実施するというのは難しいですね。

石川 2006年の診療報酬改定において
医療安全対策加算が新設され,それに伴って,
医療安全管理者の業務もクローズアップされてきています。

高久 しかし,額については十分とはいえないですね。
300床規模だと,加算で得られる額は
月に20万円くらいだそうです。
そうすると,専任を1人雇えるかどうかですから。
段階的に整っていくのでしょうが,
もう少し集中的に評価をしてくれないと,
安全な医療の保障は難しいですね。

いまのように,病院経営そのものが厳しく,
過酷な医療現場である病院から
医師がどんどん逃げ出しているような状況では,
かなり大変です。
ソフト・ハードともにシステムをしっかりする
ということになると,お金がかかります。
それで現場が困っていますね。

石川 人間はエラーを起こすということを前提に,
可能な限り,事故を未然に防止する
システム構築が運輸や製造などの
業界では行われています。

同様の考え方を医療に取り入れて,
エラーの誘因となることをなるべく
減少させる取り組みが求められています。

高久 鉄道に置き換えてみると,
JR西日本の福知山線で脱線事故がありましたが,
新幹線では脱線事故はないですよね。
だけど,新幹線の安全運行のためには
在来線の数十倍のコストをかけて
システムを構築しているでしょう。
このように,安全の実現のためには,
お金がかかるものなんですよ。

石川 事故防止のためのシステムの問題,
それにかかるコストの問題は,今後,
大きく議論されていくことになりそうですね。

高久 そうです。コストについて議論しないで,
安全だけを求められても,
それは医療者にとって負担になるばかりです。

もちろん,教育や心構えは必要だけれども,
精神論だけで防ぐのは,やはり無理です。
それこそ,竹槍でB29にはむかうようなものですね(笑)。

このことについては,国民にもよく理解していただき,
コンセンサスを得ることがひとつの課題だと感じています。


わが国における医療安全に関連する主なできごと

1999年 東京都立広尾病院で消毒薬点滴事故,
      横浜市立大病院で患者取り違え事故が発生

2001年 厚労省が医療安全対策検討会議設置,
      医療安全対策ネットワーク整備事業
      (ヒヤリ・ハット事例収集等事業)開始

2002年 特定機能病院・臨床研修病院・一般病院・ 
      有床診療所における安全管理体制の強化。
      安全管理指針・院内報告制度の整備,
      安全管理委員会の設置,
      安全に関する職員研修の実施を義務付け(*)

2003年 特定機能病院および臨床研修病院における
      安全管理体制の強化。
      医療安全管理者配置,医療安全管理部門・
      患者相談窓口設置を義務付け(*)

2005年 医療の質・安全学会が設立される

2006年 診療報酬改定において,50点の
      医療安全対策加算(入院初日)が新設。
      施設基準は研修を修了した
      専従の医療安全管理者の配置,
      医療安全管理部門の指針・業務内容の整備など

2007年 無床診療所における安全管理体制の強化。
      安全管理指針・院内報告制度整備,
      安全に関する職員研修の実施を義務付け(*)。
      医療安全対策検討会議の作業部会が
      「医療安全管理者の業務指針および養成のための
      研修プログラム作成指針」を整備

      *=医療法施行規則改正


“日本版100Kキャンペーン” いのちを護るパートナーシップ

石川 高久先生は,2005年に設立された
医療の質・安全学会」の理事長を務められています。
学会発足のきっかけについてお聞かせいただけますか。

高久 2004年に医療安全をテーマに
クローズドのシンポジウムを開催しました。
わが国の医療安全研究の第一人者である
東北大学の上原鳴夫先生をはじめ
医学・看護関係者,薬学や工学関係者など
30名ほどでディスカッションを行いました。
このシンポジウムが学会発足のきっかけになっています。

先ほどのコストのお話に関連しますが,
医師だけが「医療安全実現のためには,
経費の担保が必要である」と声高にいっても
理解は得られにくいので,学会をつくり,
システム工学などさまざまな分野の
方に入っていただき,学際的な研究のなかで
国民に理解を求めていくことも必要だと考えたのです。

石川 昨年11月に行われた
第2回学術集会も非常に盛況でした。

高久 最近は,産科や救急など
安全な医療の提供体制に関する問題が山積して,
国民共通の関心事となっています。

学会の名称となっている「医療の質・安全
というキーワードは,医療の問題を
すべてカバーします。
研究者の集まりではありますが,
実地に役立つさまざまな提案をしていく,
研究成果を社会にプロポーズしていく,
ということを大きな使命としています。

学術集会でも,医療者,他領域の専門家や
メディア,患者・市民団体まで多彩な分野から
集まって学際的なディスカッションや提言を行いました。

最新の取り組みとしては「いのちを護るパートナーシップ」
キャンペーンを今年5月から来年12月まで
行うことを決定し,準備を進めています。
 
米国では,医療の質改善研究所
(IHI:Institute for Healthcare Improvement)が主導し,
「10万人の命を救えキャンペーン(100K lives campaign)」
を全米で展開しました。
医療過程で生じる有害事象による
死亡者をできるだけ減少させようという呼びかけに
3100施設(急性期病床数の78%に相当)が応じ,
自主改善に取り組みました。

石川 この日本版の100Kキャンペーンは,
今後,どのような展開をお考えですか?

高久 「いのちを護るパートナーシップ」は,
有害事象による死亡者の1万人削減という目標を立て,
病院から医療事故による死亡を減らす運動です。

日本医師会や日本病院協議会など
各種の団体や各病院,行政そして地域社会にも
広く自主的な参加を呼びかけます。
日本医学会も協力します。


今後求められるシステム,教育のありかた

石川 先生は,自治医科大学の学長をお務めです。
医療者に対する医療安全教育に関しては
どのようにお考えでしょうか。

高久 学生は,あまりにも覚えなければならないことが多くて,
それに追われているのが現状ですし,研修医として,
患者を受け持つようになって初めて,
医療安全の意味を実感するものです。

やはり患者に責任を持つようにならないと。
学生のときの臨床実習は,ほとんどが見学ですから,
なかなかピンときませんね。

石川 自治医科大学の臨床実習は,以前から,
クリニカル・クラークシップが特徴的だったと思いますが。

高久 そうです。それでも侵襲を伴うことは
学生にはできませんから,実効性のある
医療安全教育は研修医になってからですね。

石川 教育も,医師だけではないと思います。
医師,看護師,薬剤師と,それぞれ違う学校で
教育を受けてきて,卒業すると,
患者に安全で良質な医療を提供するという
同じミッションに携わるわけです。

チーム医療がいわれて久しいですが,
相手の業務,立場を理解したうえで,
各自の専門業務を行っていくことは
非常に難しいと感じています。
医療安全の実現には欠かせないことなのですが。


期待されるリーダーシップ その涵養には課題も

高久 職種間だけに限らず,医師同士でも
コミュニケーションがよくない。
特に医療安全においては,コミュニケーションは
最も重要ですから。
お互いをわかり合う努力が必要です。

そのためには管理者が,医療者間の
コミュニケーションを保つ努力をする
必要があると思います。
診療科の壁がなくなってきているといわれていますが,
職種間のコミュニケーションがよいかどうかは,
病院によりけりでしょうね。
それも,管理者の責任ですね。
1年目の研修医や新任医師の着任時に,
そういった教育もきちんとしておくべきです。

石川 医療安全もリーダーシップ,
まず管理者から,という側面がありますね。

高久 どんなに小さな会社でも,
トップがきちんとしていないと,
その組織はだめになります。
管理者は,このことを常に念頭に置く必要があります。
システムエラーがあったときには,管理者の責任です。

日本ではこれまで,警察が介入することもあり,
個人のエラーを追及しすぎました。
個人に責任がないとはいいませんが,
やはりシステムが個人のエラーの
原因になっていることが多いのです。
また,過労によるエラーも,やはり管理者の責任です。

石川 私が研究しております
インシデント・アクシデント事例の
分析手法である根本原因分析法
(RCA: Root Cause Analysis)は
システムやプロセスにフォーカスをあてて,
システムエラーを発見していく手法です。
システムの脆弱性を見い出し,
改善につなげていけば,医療安全が推進され,
その結果,医療の質向上に結び付く可能性があります。

そしてシステムづくりにおいては,組織の管理者が
決断をし,意思決定をしていかなければなりませんね。
米国でもいわれているように,
“まず管理者からトレーニングを”
ということが重要だと思います。

国立保健医療科学院でも,医療安全に関する
リーダーシップ研修を行い,医療機関の院長・副院長に
集まっていただいています。
ここでRCAも実施しています。

研修の後,参加者にアンケートを行ったところ,
「現在,医療安全における(参加者自身の)
リーダーシップの発揮に関して課題があるか」
との問いに,約9割の参加者から「課題がある」
という回答を得ました。
この結果から,リーダーシップという資質の涵養には
難しい部分があると感じています。

高久 「言うは易し」ですね。
やはり管理者が医療安全にどれだけ気を配っているか
ということと,そのためのシステムをつくるのは
管理者の責任だと自覚していなければなりません。

石川 そうですね。
ただ,病院経営に携わる管理者が常にすべてを
見ているわけにはいかないのが実情ですから,
屋根瓦方式で少しずつ医療安全管理者を育てて,
2-3年で交代することが可能な体制が望ましい
と考えています。


現場を担う医療安全管理者 
新しい専門分野として育成を

高久 現在,医療安全管理者は看護職が多いのですか。

石川 医師も増えてきていますが,
現状では看護職が多いですね。

高久 医師は自分の専門もあるし,
患者も診たいだろうし,医療安全と併任といっても,
なかなか大変でしょう。

石川 ただ,医師が積極的に医療安全管理に参画すると,
多職種の協働による医療安全管理が
うまくいっているという話も聞いています。

高久 そうでしょうね。
石川先生は医療安全管理者講習も
行っておられますが,成果はどうですか。

石川 成果が上がるように努力しています(笑)。
最近では,医師や他の職種の方々の
参加も増えてきています。
研修の中でも,多職種が参加することで
議論の広がりがあり,チームで医療安全管理を行う
必要性を実感しています。

ただ,やはり時間が必要だと思います。
多くの課題に対応して,もっと内容を深めるためには,
現状の1週間程度の短期の研修では
なかなか厳しいため,国立保健医療科学院では,
安全管理の長期コースも実施しています。

今後はさらに,人材育成も含めて内容を検討し,
より充実した研修を実施する予定です。
医療安全をより一層推進するためには,
医療の新しいプロフェッショナルとしての
医療安全管理者の育成,そしてチームで行う
医療安全管理という視点が必要になると思います。

高久 それにはやはり,相応の評価や
認定制度が必要になってきますね。

石川 昨年3月,厚労省の医療安全対策検討会議に
設けられた質の向上に関する検討作業部会で,
医療安全管理者の業務指針および養成のための
研修プログラム作成指針が策定されました。

これを今後,どう運用していくかということは,
特定機能病院や臨床研修病院だけではなく,
2007年の医療法改正で安全管理体制の
整備が義務付けられた無床診療所等も含めて,
検討すべき課題だと思っています。

高久 現状,大きな医療事故が起こっているのは
やはり大規模病院です。
中小の施設は,難しい患者は設備の整った
施設に送りますから,悪性腫瘍などの
難しい手術件数,救急患者数ともに,急増しています。
ますます大規模病院医療負荷がかかり,
当然,医療事故も起こりやすいという構造になっています。

したがって,どの施設においても医療安全
重要な課題であることは間違いないのですが,
病床数や地域でその病院が担う役割に応じて,
医療安全やその質の捉え方,
講じる対策もおのずと異なっていくと思います。

石川 医療安全の全体像から,
細部にわたるまでお話しいただきました。
ありがとうございました。


『医学書院:2008年2月18日』


非常に良い事書いていますねー。
特に前半の部分が。

石川 エラーなどの有害事象の原因を
個人からシステムに,事故対策も
リスクマネジメントからセーフティマネジメント,
クオリティマネジメントという視点に変わってきました。

高久 当然のことに気がついたともいえますね。
個人を追及しても防止策にはつながりませんからね。
やはりシステムから修正して,
全体の質を高めていく必要があるでしょう。


そうなんですよー。
医療ミスした医者はけしからん。
そんな医者は逮捕しろ、
って言うだけで、
医療ミスの確率が減るわけはないんですよ。

この記事にも書いてあったけど、

>“Keeping Patients Safe: Transforming
the Work Environment of Nurses”
が2003年に発行されました。
このなかでも,看護師が忙しすぎると
医療事故が起きると指摘されています。


そのとーり。
忙しいと看護師だけでなく、医者もミスをするし、
医療事故も増えるんですよ。

忙しくて、医療事故が起きた。
っていう場合に。
医療ミスをしたのは、医者が悪い、
って逮捕すれば、医療ミスが減りますか?


違うでしょ。
忙しいのが原因なんだから。
医師が忙しくないような状態を作る、
って事が医療ミスを減らす、一番の方法でしょ。


>石川 人間はエラーを起こすということを前提に,
可能な限り,事故を未然に防止するシステム構築が
運輸や製造などの業界では行われています。
同様の考え方を医療に取り入れて,
エラーの誘因となることをなるべく減少させる
取り組みが求められています。

高久 鉄道に置き換えてみると,
JR西日本の福知山線で脱線事故がありましたが,
新幹線では脱線事故はないですよね。
だけど,新幹線の安全運行のためには
在来線の数十倍のコストをかけて
システムを構築しているでしょう。
このように,安全の実現のためには,
お金がかかるものなんですよ。


医療以外の業界では、人間はミスをするものだ。
っていう前提で、システムが作られているんですよ。

日本でも。

新幹線では、在来線の数十倍のお金をかけてるから、
事故が非常に少ないんですよ。

アメリカでは、人間はミスをするものだ、
っていう前提で、システムが作られています。

忙しい医者に処方箋を書かせたら、ミスをするから。
処方箋は、薬剤師に書かせる。

って事になっているようですよ、アメリカでは。

日本は、医療ミスをするのは、医者のせいだ。
って、精神論でやっているんですよ、今だに。

あ、これも本文に書いていましたね。

>教育や心構えは必要だけれども,
精神論だけで防ぐのは,やはり無理です。
それこそ,竹槍でB29にはむかうようなものですね(笑)。


なんか、考えてる事、私とほとんど一緒かもw



医師だけが
医療安全実現のためには,経費の担保が必要である」
と声高にいっても理解は得られにくいので,
学会をつくり,システム工学など
さまざまな分野の方に入っていただき,
学際的な研究のなかで国民に
理解を求めていくことも必要だと考えたのです。


これも、非常に重要な事ですね。

医者は、医療ミスの確率は絶対にゼロにはならない。
医療ミスを減らすには、安全にはお金がかかる。

っていう事をわかってはいるのですが。

それ以外の人達は、今だに精神論ばっかりで。
結局、医療安全には金がかかる。
って言っているのは、医者ばっかりになっちゃうんですよ。
医師ブログでは話題になっても、それ以外の
一般人のブログでは、なかなか話題にならないでしょ。

他の業界では、人間はミスをするのが当たり前。
って事はわかっているので。
医療業界、医者以外の人間が入って、
医療ミスを減らして行こう、っていう取り組みが
非常に重要だと思いますよ。



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救急の輪番、8割が厳しい
日本の医療崩壊の最先端は、産科、小児科、救急だ。
って話は、このブログでも何回も書いていますが。
公明党が全国の病院に対して行った調査でも、
救急の現場が相当厳しい事が明らかになりましたね。

Yahooのトップページに出ていましたよ。


救急の輪番、8割が「厳しい」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080130-00000002-cbn-soci

救急スタッフの勤務ローテーションの状況
救急医療体制の整備が求められている中、
救急スタッフの勤務ローテーションの状況について
8割以上の病院が「厳しい」と感じていることが
1月30日までに、公明党の調査で明らかになった。

また、救急医療病院経営にとって
「重荷である」と回答した病院
約7割に上ことなども分かり、
救急医療の厳しい実態が浮き彫りになった。

調査は、公明党の「救急医療対策推進本部」
(総合本部長=木庭健太郎参議院)が
救急医療の実態を把握するため、
入院が必要な患者を受け入れる全国の二次救急病院
1、140を対象に昨年11月から12月にかけて実施。

結果によると、救急当番に毎日就いている勤務医は
54.2%、週に数日就いているのは38.1%だった。

また、不足しているスタッフを尋ねたところ、
病院の75.9%で医師が足りず、
看護師についても62.5%が不足と回答。
医師については10人~15人不足しているとした病院
14.1%にも上った。

これに伴い、救急スタッフの勤務ローテーションに
関する質問では、57.0%が「厳しい」、
27.4%が「極めて厳しい」と答えたほか、
66.0%の病院病院経営の視点からも救急医療
「重荷である」と感じているなど、
現場の厳しい実態が明らかになった。

このような状況の中、救急医療向上のために
必要なこととして、「診療報酬の引き上げ」81.3%、
医療スタッフ不足の解消」75.5%、
「公的支援の強化」66.3%などが挙がった。

その一方で、病院の33.6%が空きベッド情報を
消防に提供するシステムがないことも露呈。

調査と同時期に医師会や消防本部などの
関係団体を対象に行ったヒアリングでは、
「空きベッド数をリアルタイムに
チェックできるようなシステムが必要」
「消防署として医療機関の受け入れは把握が不十分」
などの基盤整備を求める声があった。

公明党は昨年11月、診察の可否や手術準備の
有無に関する表示システムを持つ
救急中央情報センター(仮称)」の創設などを
盛り込んだ要望書を舛添要一厚生労働大臣と
増田寛也総務大臣宛てに提出。

さらに、今通常国会中には、自民党と協議した上、
救急医療対策推進法(仮称)」の法案提出を目指している。


『2007年1月30日:yahooニュース』


私も、今までずーっと救急のある病院で働いていますけど。
やっぱり、かなり厳しいと思いますよ。

老人病院とかで働いている人以外は、ほとんどの医師が、
そう思っているんじゃないですかねー。


救急外来っていうのは、
「入院が必要な重症患者は、時間外でも特別に診る」
っていうのが本来の主旨です。

コンビニみたいに、店員が交代制で
働いているわけではないのですから。

夜でも明け方でも、病気は起こりうる。
そういう時間に、命に関わる事があったら大変だから、
特別に重症の患者は診ても良いですよ。
っていうのが、時間外の救急ですよ。

でも、一部か多くかわかんないけど。
患者が勘違いして、病院は夜も開いているもんだと思って、
時間外にも軽症患者が押し寄せて来て、
病院や勤務医は大変なんですよ。

もちろん、看護師なんかのスタッフもです。

だから、軽症患者に対する一定のアクセス制限は必要だ、
って個人的には思います。

そこら辺の詳しい話は、この記事
『時間外重症患者割引制度』に書いたので、見て頂くとして。


これは、あくまで「病院」に送ったアンケートだから。
多分、答えたのは事務長とか、事務員なんですよ。
医師ではありません。

実際に働いていない事務員ですら、

救急の輪番、8割が「厳しい」

っていうのが現状です。

現場で実際に働いている医師だったら、
もっと高い割合でしょう。

それと、病院に送ったアンケートだから。
経営的に厳しいか、って事も入っています。

>66.0%の病院病院経営の視点からも救急医療
 「重荷である」と感じている


当たり前ですね。

救急外来をやるって事は、
患者10人来ても、1人も来なくても
医師や看護師、技師などのスタッフを
一日中朝まで病院に拘束
するんですから。

当然、それだけの人件費がかかります。
それ以外に、光熱費とかもかかります。

お金は間違いなくかかるけど、
収入はいくら入るかわからない。

診療報酬でも、時間外に来た外来患者の料金が
すごく高いってわけではないですから。
やればやるほど赤字、っていう病院も多いんですよ。


その事に関しては、非常に良い記事だと思います。

しかし、この結論はなんなんでしょうか。

>調査と同時期に医師会や消防本部などの
関係団体を対象に行ったヒアリングでは、
「空きベッド数をリアルタイムに
チェックできるようなシステムが必要」
「消防署として医療機関の受け入れは把握が不十分」
などの基盤整備を求める声があった。

公明党は昨年11月、診察の可否や手術準備の
有無に関する表示システムを持つ
救急中央情報センター(仮称)」の創設などを
盛り込んだ要望書を舛添要一厚生労働大臣と
増田寛也総務大臣宛てに提出。

さらに、今通常国会中には、自民党と協議した上、
救急医療対策推進法(仮称)」の法案提出を目指している。



アンケートとは直接関係ない人の意見を書いて。
そして、だから公明党がこういう法案を出しました。
って。
全く、アンケートの意味がないんですが。

そもそも、救急患者を受け入れられない原因は、
病院側のシステムだけではない
んですよ。

医師の数が足りない。
診療報酬が不当に安いから
、ベッドを満床に
近くしないと病院が赤字になるから。
だから、満床で患者を受け入れる事ができない。

っていう原因の方が大きいんですが。


Yosyan先生が例えていた例がわかりやすいんで、
引用させて貰いますけど。

部屋が狭くて、物を収納できない。
だから、収納名人を連れてくる。
っていうのが、コーディネーターを置いたり、
空きベッドがリアルタイムにわかるシステムを作る。
って事です。

それ自体は悪い事ではないんですけど。
そもそも、部屋が狭いんだから。
どんなに収納を工夫したって、限界があるんですよ。

限界を超えたら、部屋を広くするしか
方法がない
んですよ。

以前にも言っていた、原因に対する治療ではなく、
対症療法を行っても、病気は治らない。

って事と似ていますね。

公明党がアンケートを吟味した素晴らしい法案を出しました、
っていう記事が書きたいのかもしれませんけど。

そもそも、このアンケートと今回の公明党の案は、
全然関係ありませんねー。

>救急スタッフの勤務ローテーションの状況について
 8割以上の病院が「厳しい」と感じている


これって、医師看護師の数が足りないから
ローテーションが厳しいって事なんじゃないですか。


>不足しているスタッフを尋ねたところ、
 病院の75.9%で医師が足りず、
 看護師についても62.5%が不足と回答。


って言っているんでしょ。

だったら、医師の数を増やす。
看護師の数を増やす。
っていう法案
を出して下さいよ、公明党は。


救急医療の現場が大変だ、って事を書いてくれた
のはありがたいんですけどねー。


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時間外重症患者割引制度
医療崩壊という言葉が、昨年くらいから、
一般のマスコミでも大きく取り上げられ。
その原因として、最も大きいのは医師不足医療費不足
それらは、政策で決められたことだから、
医療崩壊というよりは政策による「医療破壊」。
と言った方がふさわしいのではないのか。
って話は、このブログでも良く書いていますけど。

正直言うと、今のままでは根本的な解決策が
取られる事はないような気がします。

本来であれば、医師数を増やす、医療費を増やす
という事を、政策で決定する
でも、医学部の定員を大幅に増やしても、
彼らが医者になるまでには後10年くらいかかる。
医療費も、急には増えない

だから、それまでの間
今ある資源、人材をいかに効率よく使うか。
って事が、医療崩壊医療破壊)から日本を守る
唯一の手段
だと思うのですが。
残念ながら、小手先の対症療法ばかりで
一向に改善される気配がありません。

ただ、
政策が変わらなきゃなにも出来ない。
法律が変わらなきゃ何も出来ない。
マスコミの医療報道はけしからん。
軽症患者が時間外に来たり、
文句ばっか言うのはけしからん。


って愚痴ばっかり言っていても、
何の解決にもならないので。
単にマスコミ批判、政策批判をするのではなく、
その替わりになる方法や、抜本的な解決策など、
建設的な意見を中心に書いていこう。

っていうのが、このブログの基本的なスタンスです。


医師数削減政策、医療費抑制政策
変更して欲しいのですが、
とりあえず今できる事として、
限りある人材、資材を有効に使うために
一つ、提案をしていきます。


医療崩壊医療破壊の原因の一つに、
医師の疲弊」という事がよく言われますね。

日本の人口当たりの医師数は先進国中最下位。
そして、外来患者の数は他の先進国の数倍
ですから。
当たり前です。

単純に考えると、この解決策は2つ。

 1.医師の数を増やす。
 2,患者の数を減らす。


これしかありません。
医師の数を増やす為には、医学部の定員を増やすか、
外国から医師を連れてくるか

どっちかしかないのですけど。
今の日本では、どちらも政治的な力が必要ですから。
ここでは、今はスルーするとして。

現実にできる可能性がある、
2の患者を減らす、って事について書いていきます。


患者っていうのは、病気の人の事ですから。
病気、病人自体をなくす事ができれば良いのですが。
現実問題として、それは不可能です。

予防医学っていうのもありますけど。
まあ、予防医学が重要だって事は、私のメールマガジン
「やぶ医師のひとりごと」
でもよく書いている事ですから。
非常に大事な事ではありますけど。
残念ながら、病気をなくす事はできません
病気になる確率を下げる事はできますから。
もちろん、非常に重要な事だと思いますね。

しかし、医療崩壊医療破壊で問題になっているのは、
「病院に来る」患者が多い、って事です。

重症の患者が病院に来るのは、しょうがないですけど。
来る必要のない患者まで、病院に来る。
特に、時間外に軽症で病院に来る患者が多い事が、
医師を疲弊させている大きな要因
になっています。

病院っていうのは、他のお店と同じように、
朝9時から夕方の5時まで。
っていう、時間が決まっていますからね、本来は。

ただ、病人や病気は夜や明け方など、
時間外にもなる事もあるので。
そういう「緊急の場合は特別に」、
時間外でも患者を診る、っていうのが「救急外来」です。

だから、
「軽症患者は時間外に病院に来ないで下さい。」
っていう事を、患者の側に啓蒙する事も大事です。
ただ、これだけでは限界があります。


薬局に行って風邪薬を買うよりも、病院に行って
医者に診て貰って、風邪薬を貰った方が安い
もしくは、値段がほとんど変わらない
という事であれば、時間外でも病院に行きたい。
って思う人が多いのは当然です。

だったら、これを変えれば良いんですよ。

簡単に言えば、時間外の患者は
値段を高く設定すれば良いんです



例えば、時間外の患者は、診察や処置料以外に、
時間外加算料として、5000円とか。

薬局に行って風邪薬やポカリスエットとか、
暖かいお茶とかを買っても、1000円位。
病院に来ても、同じくらいの値段だったら病院に来ても。
薬局なら1000円病院なら6000円
だったら、病院に行くのは控えようか
って思う人は多いと思いますからね。

単純に、時間外に受診した患者の料金を上げれば、
時間外に来る外来患者は確実に減ります。



実際に時間外に来た患者の料金を上げた。
っていう病院は、まだほとんどないのですけど。
未収金対策として、時間外に来た患者から、
五千円とか一万円とかを、先に預かる
その後、後日病院に来て貰って、精算して、
余った分があれば、その分のお金は返す。
足りない分は貰う。
というシステムにした病院っていうのは、
結構たくさんあります。

何人かの医師に聞いたところ、多くの病院で
時間外に来た患者から一時金を徴収した病院では、
時間外に来る患者は減ったようです。


ただ、同じ5千円でも、都会だったらあんまり高いと
感じないためか、あまり患者は減らないけど、
田舎だったら大幅に患者が減った。
とかっていう事もあるようなので。
一時徴収する金額をいくらに設定するか
っていう問題はあるようです。


一時金の場合は、料金を先に一時的に預かるだけ、
ですから問題はないのですけど。
「時間外の患者は一律に料金を値上げする。」
っていう事になると、
「重症なのにお金がなくて
病院に来られない人がいたらどうするんだ。」

って話になるんですよ、必ず。

それに対して、埼玉医大では、
時間外に来た患者では、軽症患者からのみ
一律8400円を追加で頂く。

っていう事にしましたね。

軽症患者からだけだから、
重症患者を切り捨てるって事にはならないので
案としては良いと思います。

ちなみに、これは、一年近く前に、
私がブログで書いた案と、だいたい同じ内容です。

この案を考えた時は、これは素晴らしい案だ、
って自画自賛(笑)していたんですが。
実は、このシステムにも問題があります。


どういう事かっていうと、
軽症患者だけ値段が高い、って事になると、
「何で俺が軽症なんだ。
俺は重症だから安くしろ。」

って言って、ごねる患者が出るって事です。

これを時間外にやられると、時間外に対応した
医師の医療以外の負担が増えちゃいます
からね。
こういう輩に対応しなきゃならなくなって、
医師の負担がますます増えちゃいますので。
単純に、この案だけでは駄目だと思います。

埼玉医大は、まだこのシステムを導入していなくって。
結局、マスコミを通して
「時間外に軽症患者が来たら高いよ」
って事を、患者の側に広める事によって、
アナウンス効果だけで、軽症患者が救急外来に来るのを
抑制する効果
があったようですから。
それはそれで、良い使い方だったのかな、
とは思いますけどね。

でも、実際に運用するとなると、欠点が出る可能性があります。
今でも、かなりのクレームが来ているようです。


そこで、その案に更に追加したのが、これです。

時間外重症患者割引制度

時間外に来た患者には、まずは全員
5000円の時間外加算料金
をいただきます。
ま、5000円っていう値段は、あくまで一例ですけどね。

ただし、重症者は割り引くっていう制度です。

軽症患者から割増料金を取るシステムと、
どこが違うんだ、って思う人もいると思いますが。

軽症、重症の判断は、病状とか
現場の医師の判断で決まるのではなく、
単純に、医療費(自己負担の分)だけで決まる。
っていうシステムです。

機械的医療費だけで決まるので、これをやると、
現場の医師とか事務員の労力も減るし、
これにより現場でクレームをつけられる事も
減ると思われます。


具体的にはこんな感じです。

患者時間外に救急外来を受診したら、
時間外加算料として5000円を上乗せする。

本当は、単純に医療費の自己負担が1万円以上なら、
5000円の時間外加算料なし
って事にすると楽なんですけどね。

それだと、元々の医療費の自己負担分が9500円なら、
9500+5000=14500円

10500円だと
10500+0=10500円

とか、って逆に安くなる事があるので。
「だったら、あと一種類、余計に薬を処方してくれ。」
とか、って言われると面倒くさいので。

医療費自己負担が1万円以上は、
1万円を超える分の半分だけ、
時間外加算料を割り引くって制度
が良いかなと思います。


元々の医療費の自己負担分2000円なら、
2000+5000=7000円

自己負担1万5千円なら 
1万5千+5000−(15000―10000)/2=17500円

2万円なら   
2万+5000ー(20000-10000)/2=2万円

こんな感じ。
医療費の自己負担額が2万円以上なら、
時間外加算料は実質「無料」になります。

時間外加算料に関しては。
一泊でも入院したら、医療費の自己負担額は
2万円以上になる場合が多い
ですから。

「時間外患者は、緊急性のある患者のみ」
っていう本来の主旨と大きくは変わらないような気がします。

救急車は更に5000円としても、
医療費の自己負担額が3万円以上なら、
時間外加算料も救急車の料金もただになる計算です。


時間外重症患者割引制度であれば、重症患者に関しては、
時間外加算料(救急車の料金)は無料になりますから。
重症なのに、お金がなくて病院を受診できない。
という事はなくなると思います。


5000円というのは、あくまでも一例ですので。
未収金対策の5000円で効果がない地域もあるし、
そこら辺の料金に関しては
地域差があっても良いと思います。


実はこの時間外重症患者割引制度
これに関しては、今の日本の医療制度でも、
やる気になればできるんですよ。

選定療養」っていう制度がありますからね。

選定療養」っていうのは、どういう事かっていうのを
厚労省のHPから見てみると


○厚生労働大臣の定める「評価療養」及び「選定療養」とは

健康保険法の一部を改正する法律
(平成18年法律第83号)において、平成18年10月1日より、
従前の特定療養費制度が見直しされ、
保険給付の対象とすべきものであるか
否かについて適正な医療の効率的な
提供を図る観点から評価を行うことが必要な
「評価療養」と、特別の病室の提供など
被保険者の選定に係る「選定療養」とに再編成されました。

この「評価療養」及び「選定療養」を受けたときには、
療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については
保険給付をし、特別料金部分については
全額自己負担とすることによって
患者の選択の幅を広げようとするものです。


<選定療養>
・ 特別の療養環境の提供
・ 予約診療
・ 時間外診療
・ 200床以上の病院の未紹介患者の初診
・ 200床以上の病院の再診
・ 制限回数を超える医療行為
・ 180日を超える入院
・ 前歯部の材料差額
・ 金属床総義歯
・ 小児う蝕の治療後の継続管理


参照:「厚生労働省:先進医療の概要について」


以前、私は勘違いしていたのですが。
選定療養では、紹介状なしの初診料以外にも、
時間外診療、200床以上の病院の再診料
等も、
病院の判断で決める事ができますから。

特に法改正をしなくても、病院が独自に
時間外診療の加算料金を取る事は可能
です。

救急車の有料化に関しては、法律や地方自治体、
消防とのからみ
もあるので。
また、別問題になりますけどね。


本当は、根本的な医療崩壊医療破壊の原因である、
医師不足、医療費削減政策を変更する。
でも、それまでに時間がかかるから、それまでの
つなぎ」として、今ある資源、人材を有効利用する。

っていうのが、日本を医療崩壊医療破壊から救う
唯一の方法だとは思いますが。

とりあえず、現場で出来る事して、今の医療制度でも
選定療養」を使って、「時間外重症患者割引制度
等を取り入れて、時間外に来る患者の数を減らして、
現場の医師の負担を軽減する病院が
あっても良いのではないでしょうか。

どこか一つの病院だけでもやってくれて、効果があれば
他の病院も続く可能性があると思いますよ。

そしたら、医師の過労や医師の疲弊
軽くなるかもしれないのになー。

21病院で受け入れ拒否=70歳男性、10日後に死亡-救急車内で心肺停止・大阪
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?b=20080112-00000064-jij-soci
『2008.1.12時事通信』

こういうのも、軽症で救急車呼んだり、する人が多くて、
結局受け入れられる病院が少ないから起こるんですわ。
ま、早く病院に着いても、助からない人は助からないので。
この患者の場合は、なんとも言えませんけどね。


皆さんは、軽症なのに救急車を呼んじゃ駄目ですよ。
救急車を呼ぶ基準は、これを参考にしてみてね!

→ 『3分でわかる救急車の上手な使い方』

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日米医療報酬比較
残念ながら、来年度の診療報酬は結局、
診療報酬全体では0.82%下がりました
それは、『診療報酬引き下げへ』の記事に
書いた通りなんですが。
以前から言っているように日本の医療費は激安です。
先進国中最下位です。

医療費(診療報酬の中でも、医師技術料は、
お話しにならないくらい安いです。

具体的にどのくらい、安いのか、ってことを、
アメリカの診療報酬と比べてみてみましょうか。

アメリカの診療報酬の値段は、
アメリカ開業医を営む、DAICHAN先生のブログ
アメリカ開業医の独り言」の中の
『激安な日本医療報酬と自殺問題』から。

日本の診療報酬は、
診療点数早見表、2006年4月版からです。


日米診療報酬比較

○初診料

アメリカの診療報酬
家庭医の場合: 1万2千円
専門医の場合: 3万円から5万円以上


日本の診療報酬
研修医でも専門医でも 2700円



○再診料

アメリカの診療報酬
8千500円


日本の診療報酬
200床未満の病院 570円
200床以上の病院 700円
診療所        710円



○抗生物質筋肉注射

アメリカの診療報酬
5千500円(薬剤費込み)


日本の診療報酬
筋肉注射の処置代 180円
薬剤費(ペニシリンカルシウム 20万単位) 1660円



○気管支拡張吸入

アメリカの診療報酬
4千800円


日本の診療報酬
120円
入院患者は0円
薬剤費(メプチン 0.3cc) 10円



○血液採取と準備費

アメリカの診療報酬
3000円


日本の診療報酬
110円



○心電図

アメリカの診療報酬
1万3000円


日本の診療報酬
1500円



○短いギブス

アメリカの診療報酬
4万円


日本の診療報酬
手、指、足(片側) 4900円



○長いギブス

アメリカの診療報酬
7万円


日本の診療報酬
上肢(手)、下肢(足)(片側) 12000円



○小さいオデキの切開

アメリカの診療報酬
3万円


日本の診療報酬
10センチ未満 4700円



○大きいオデキの切開

アメリカの診療報酬
6万円


日本の診療報酬
10-20センチ 8200円



○小さい傷の縫合

アメリカの診療報酬
2万円


日本の診療報酬
4700円



○大きい傷の縫合

アメリカの診療報酬
3万円から6万円


日本の診療報酬
8500円



○火傷の治療

アメリカの診療報酬
1万円


日本の診療報酬
100Cm2未満 1350円
100~500cm2未満 1470円



DDAICHAN先生のブログを元に、同じ様な内容を
診療点数早見表、2006年4月版」を読んで書いたので。
弱冠違うところがあるかもしれませんけど。

全く同じとは限りませんけど、ほとんど同じ内容で、
これだけ値段に差
があるんですよ。

技術料は、医師技術料だけでなく、
看護師とか技師への技術料も不当に安いですよね。

これ見る限り、平均で10倍くらいでしょうか。
5~50倍くらいの差があるように思えます。


これはあくまで、「診療報酬」の値段ですからね。
例えば、200床未満の病院の再診料570円ですけど。
患者が病院で払うお金は、これの3割とか1割とかだから。
実際に病院の窓口で払うお金は、3割負担なら、171円
1割負担なら、57円って事です。

心電図も、3割負担なら、450円です。

めちゃくちゃ安くないですか、これ。
アメリカ医者と比べて、1/10しか仕事してない
わけじゃないんですよ、日本の医者って。
仕事量だけでいったら、絶対に日本の医者の方が多いし

技術に関しても、日本の医者がアメリカに劣る
って事はないですよ。

100歩譲っても、最先端の医師同士だったら、
アメリカの方が進んでいる場合もあるけど。
1/10って事はないですよ、絶対に。


診療報酬本体部分0.38%上がった
って喜んでいる場合じゃないんですよ。

10倍にしろ、とまでは言いませんけど。
適正な価格にする必要はあるはずですよ。


日本の医療機器は、アメリカ3倍位なんですから。
どう考えても、バランスがおかしいのですけどねー。

どうにかして欲しいです。


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