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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
医療に安心できますか2
『医療に安心できますか1』の記事の続きです。

10/14にNHKで放送された
日本の、これから 「医療に安心できますか?」の感想なんですが。

前半は、勤務医の現状の話が一つ。
そして、医師が増えると医療費が増えるって、
20年以上前の「間違ってる」って事が証明された理論を元に、
厚生労働省医師を減らそうとしてる話でした。


Q2,医療費をおさえるために、医師の数を抑制する

賛成、605
反対、6619
どちらともいえない、1082


厚労省の事務次官は医師を抑制するのではなくて、
今のペースで増やすって、いい訳ばっかしてましたけどね。

医師が増えると医療費が増えるって間違った理論の直後に
アンケートを採ったにもかかわらず、医師の数を抑制する
今の厚生労働省の方針に賛成って人が、1割もいなかったので。

思ったよりも、視聴者は賢いのかもしれませんね。
マスコミの間違った報道に流される人達ばっかではないんですね。

で、その後

ジャーナリストの伊藤氏と、八代氏が美容整形や眼科などを
他の科に回せば医師は足りる、というような、
医師は足りている、偏在だ、という話が出て。

本田先生が、医師不足だ。
美容整形は保険診療じゃないし、医者の数を増やさないと
問題は解決しないって話が出て。

伊藤氏が、医者でもないのに私はいろんな勤務医と話を
しているから、医者の気持ちもわかる。
医者の事は医者しかわからないというのは、傲慢。
って発言をして、本田先生と激しいバトル。

ここら辺の話は某掲示板でも話題になっていましたね。

そして、医療費の問題が第2部から始まります。

医療費、2004年 32兆円
何もしないと、3%台の伸び
厚労省の試算だと、2025年 65兆円 
うち高齢者 30兆円

社会的入院をなくすと、4000億円の医療費削減が可能。
これを実現させるため、今年の7月から診療報酬の仕組みを変えて、
医療の必要性の最も低い区分1だと、一律49万円→36万円に
大きく削減されました。
その結果、区分1の患者を無理矢理退院させないと、
病院の経営が成り立たなくなった。


というVTRが流れます。

貴重な医者を介護病棟に縛り付けるのはおかしい。
医療と福祉が分断されて、縦割り行政が問題。

って話も伊藤氏、八代氏から出ていて。
その事自体は正しいです。

だとしたら、まず介護施設老健施設など、
病人ではないが、自宅には帰れない人達の受け皿を作る。
ヘルパーをたくさん養成したり、介護保険のシステムを
もっと充実させる


そして、十分だという判断ができたら、
病院から施設に患者を移す。
という事をやれば良いんですけどね。

いきなり、診療報酬削減をして。
病院は潰れ、老人は行き場を失ってるんですよ、実際。

サラ金の上限金利を下げるのまでに移行措置で、9年とか。
国民から大反発をくらって、5年位にするとか。
そういう事をサラ金じゃなくって医療でもやらなきゃ駄目でしょ。


Q3,あなたは高齢者医療費を抑制することを、どう思うか?
やむを得ない、2838
抑制すべきではない、4885


その後、医療費の無駄を省くって話が出たんですが。
医療費の無駄っていうと、医者が余計な検査をしたり、
無駄な薬をもらって、家に貯まって飲んでないって話が
患者や視聴者から出たんですが。

たしかに、開業医の中には過剰な検査をする人もいますけどね。
勤務医はたくさん検査したからって給料増えるわけじゃないし。
多くは、患者が心配だから検査してくれって言われて、
こっちは検査するんですけどねー。

薬を貰っても飲まないから無駄って。
必要だから薬を出しているんですが。
悪いのはその薬を飲まない患者なんですが。
その結果、悪くなってまた病院に来て治療したら、
それを医療費の無駄って言うんで。
薬の内容もわからず、飲んでない薬が無駄って事はないんですよ。

そして、医療費無料だからって受診して、貴重な医療資源を浪費している。
不要な受診を抑制するって方向からも見直さなければ。
って、まっとうな視聴者(医者?)からの意見も出ていたんですが。
完全にスルーされていましたね。

何が無駄かって、それを判断できるのも現場の医者とか、
医療の事を本当にわかっている人しかいないと思うんですけどね。

それは置いといて、この事務次官、次に
今度の厚労省の改革で生活習慣病予防を重視。
血管の病気は徹底予防できる。
内臓脂肪が多くなければ予防できる
、って断定してましたけど。

残念ながら、それはです。
私のメルマガ「やぶ医師のひとりごと」でも、
予防医学に重点を置いていますしね。
予防に重点を置くって、厚労省の姿勢は良いんですよ。

確かに、カロリーが高かったり、体重が大きければ
糖尿病高脂血症になりやすいですし。
塩分を摂りすぎれば、高血圧になりやすいし。
運動をすれば、それらの病気になる確率が減るのは事実ですよ。

でも、確率が減るだけで、完全に予防できるわけではないんですよ。
内臓脂肪が全ての諸悪の根元、みたいな言い方をしてましたけど。
それも原因の一つだけど、それ以外にも原因はあるんですよ。

そして、もう一つ。
その後に本田先生も言っているんですけどね。
医療経済学の面からいうと、予防医学をしても、
長い目で見たら、医療費抑制の効果はないんですよ。


なぜかって言うと、人間誰でも年を取りますよね。
年を取れば、病気になりますよね。
いくら気をつけても、残念ながら年齢には勝てないんですよ。
長生きすれば、それだけ病院にもかかりますしね。

簡単に言うと、予防医学医療費を先延ばしにする効果はあるけど、
結局、何年か後になって払うので、トータルは同じって事です。
個人が長生きできて、同じお金なら、私は良いと思いますけどね。
でも国全体として、医療費削減って効果自体は、ないんですよ

そいで、本田先生の発言。

厚労省の予測が当たった事はない。
H9年の時も高く予測し、12年の予測が8兆円下がっている
医療費は世界ではGDP比12%くらい、日本は8%弱。
日本は医療費の抑制に世界で唯一成功している。
そこから、更に抑制するのが問題だ。

って発言があり、事務次官がまた言い訳して、
VTRに入ります。

この10年での健康保険の主な負担増

H9年 サラリーマン 1割→2割
H13 70歳以上(一部を除く) 定額→1割
H14 70歳以上(全ての医療機関) 定額→1割
     70(現役並所得) 1割→2割
H15  サラリーマン  2割→3割
    扶養家族の入院 2割→3割
H18 70歳以上(現役並所得) 2割→3割
     高額医療費 上限引き上げ
H20  70-74歳 1割→2割


うーん、これだけ国民の負担が増えているんですねー。

で、その後に混合診療、自由診療のVTRです。

患者さんが入院します。

梅コース、
六人部屋、一ヶ月待って、新人医師が従来の方法で手術。
入院期間は一ヶ月
保険が効くので、費用は10万円

松コース、
明日から即、個室に入院。
専門の看護師がつきっきりで看護。
執刀医はカリスマ医師
最先端の技術で、3日で退院。
10万円+1000万円

儲かる病院ほど患者が来て、医師も一生懸命
勉強するから、医療の質も上がるって話でした。

明らかに、NHK自由診療、混合診療を推進するってVTRでしたね。

その後にもかかわらず、患者医者はまっとうな事を言っていましたが。
オリックスの宮内会長の後釜で経済財政諮問会議に入った八代氏は、
混合診療賛成って、はっきり言っていました。

そして、後半出番が少なくなった本田先生が、アメリカは
混合診療になって医療費が上がったって話をしてるのに、スルー

ある勤務医が、
お金はそんなにいらない。
患者に感謝されればそれで良いんだ。
でも、今は感謝されなくなっている。
それが医者が減っている一番の原因だ。


って本質をついた発言をしているにもかかわらず、司会者スルー

この後ある患者が、私と同じ様な事を発言してましたね。

生活習慣病の場合は、
保険の自己負担割合を上げたら良いんじゃないか?」

これ、結構大事良いこと言ったなーと思います。
私の考えは、生活習慣病の人全員の自己負担を上げるんじゃなくて。
例えば、
毎年健診で異常を指摘されてるのに、病院に行かない人。
タバコを吸っている人。
検査値で異常があって痩せなさいと言われているのに、肥満のままの人。


こういう、このままいったら生活習慣病になる可能性が高いって
わかっていて、それを治すチャンスがあったのに、
自分の責任でそれを放棄した人。

こういう人が生活習慣病になった場合、
私は自己負担額を上げれば良いと考えています。
多分ブログのどっかで書いたんですが、どこか忘れました(笑)


Q4,これからの日本の医療費のありかたはどちらが良いと思いますか?
公的負担が大きくても国が十分な保証をする、3230
市場原理を導入し、公的負担を小さくする、993


視聴者からの意見で、
患者を減らす対策が全くなされてない。
必要のない診療を求める患者、過剰診療を抑える工夫、
予防医療など患者数を減らす工夫が必要ではないか。

一年間一度も医療費を使わなかったら、国が祝い金を出す。
って意見も出てましたが、これも良いですねー。

最後、厚労省、八代氏、伊藤氏と芸能人、NHK混合診療賛成で、
患者医者、視聴者は反対って感じで終わりました。


全体的に見たら、結構良い内容だったと思います。

しかし、それはこの番組に出ていた、本田先生や医者
そして医療現場の事をわかっている患者が良い発言をしたからで。

司会者は明らかに違う方向に持っていきたがっていたし。
問題の本質に入ろうとすると、それには触れないで
って感じもありましたしね。

でも、たいていこういうのは
患者v.s.医者
で、医者が悪者になる事が多いのに、

今回は、
患者医者v.s.厚生労働省、医療ジャーナリスト
のような構図になっていました。

そいで、行政が悪いって感じで、事務次官も明らかに悪役。

10/7の番組でもそうだったんですけどね。
今回は、結果的に患者医師サイドについたからって事なので、
結果オーライなんですけどね。

今後、こういう流れが全てのマスコミでなってくれれば良いんですが。

でも、やはり医療訴訟や必要のない患者の受診、救急外来の事。
そういった事を抜きに、議論はできないので。
今後NHKに関わらず、どこかのマスコミがこれらの事を
取り上げてくれれば良いなーって思っています。

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