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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
労働者酷使法(ホワイトカラー・イグゼンプション)
大変だー。
ちょっと、ちょっと、ちょっとー。
サラリーマン勤務医などの労働者にとって、
とんでもない法律が出来ちゃいますよー。

ま、厳密には新しい法律ができるんではなくって、
適用が除外になるって事なんですけどね。

ホワイトカラー・イグゼンプション(適用除外)」
って言葉、最近新聞やテレビなんかでもよく出てくるので、
聞いたことある人も多いでしょうけど。
横文字だからわかりにくいと思いますが、
まずはこの記事をご覧下さい。


年収1千万円以上を軸に 労働時間規制の撤廃要件  

「1日8時間、週40時間」の労働時間規制を撤廃する
ホワイトカラー・イグゼンプション(適用除外)」の導入を
検討している厚生労働省が、対象労働者の要件として
年収1000万円以上を軸に検討していることが11月25日、分かった。
同省の年収要件案の数字が明らかになるのは初めて。

国税庁の昨年の民間給与実態統計調査によると、
年収1000万円を超える民間の給与所得者は4・8%だった。

適用除外をめぐっては、厚労相の諮問機関、
労働政策審議会の分科会で使用者側委員が「400万円以上」
として要件を緩やかにするよう主張。
一方、労働者側委員は「長時間労働を助長する」として
制度の導入そのものに反対しており、
厚労省の年収要件案にも労使双方の反発が予想される。

厚労省は年内に結論を出し、来年の通常国会での
労働基準法改正を目指しているが、
審議にはなお曲折がありそうだ。

厚労省が10日の分科会に示した素案は、
対象者の要件として
(1)労働時間では成果を適切に評価できない仕事をしている
(2)重要な権限と責任を相当程度伴う地位にある
(3)年収が相当程度高い−などを挙げた。

年収要件の設定に当たって厚労省は、
労基法で有期契約労働の期間の上限を
通常の3年より長い5年としている
「高度で専門的な知識等を有する者」の基準に着目。
基準に該当する職種として政省令で医師や弁護士のほかに、
年収1075万円以上のシステムエンジニアや
デザイナーなどを挙げていることから、
適用除外でも1000万円を軸とするのが妥当と判断した。

高度で専門的な知識があり1000万円程度の年収があれば、
一般的に重要な権限と責任を伴う地位にある
との要件にも合致するとしている。

厚労省は6月、適用除外を盛り込んだ中間報告素案を
分科会に提示したが、労使双方が反発して中断。
8月に再開し、厚労省は11月10日、
あらためて素案を示した。


参照:『北海道新聞:2006/11/25 』


日本だけでなく世界中で、
人を雇う方(資本家)よりも雇われる方(労働者の方が
立場が弱いので、労働基準法という法律で、
労働者の立場が守られていたのですが。

今度それが、なし崩し的に、変えられようとしています。
それが、
ホワイトカラー・イグゼンプション(適用除外)」です。
横文字になってわかりにくいですが、簡単に言うと、
労働基準法除外になるわけですから、
労働者酷使して、いくら働かせても問題ない。」
と、法律でお墨付きを与えるものです。

ホワイトカラー・イグゼンプション
という名前ですから。
ホワイトカラー(管理職)の人間が対象になるんですね、本来。
管理職というのは、部下がたくさんいて、直接する
仕事よりも管理の方に重点を置く仕事なので。
ずーっと職場にいても、いなくてもある程度の自分の「裁量
で仕事を決める事ができるから、時間外労働手当
払わなくても良い。
というのが、本来の主旨です。


しかし今回、厚生労働省は、この対象労働者の要件として
年収1000万円以上」を軸に検討しているようです。

「私、年収1000万円もないから、関係ないわ」
なーんて思っちゃ駄目ですよー。
これが施行されたら、なし崩し的に適応が広がって、
800万円、600万円、400万円
下がっていくに決まってるんですから。

消費税だってそうだったでしょー。
最初は3%でこれ以上は上げない、って言っておいて。
今はどうなりましたか。
いつの間にか5%になって、参議院選が終わったら、
間違いなくまた上がりますよ、消費税
法人税下げる方向で検討しているみたいですけど。

今のところ「ホワイトカラー・イグゼンプション」は、
高度で専門的な知識等を有する者」ってのを基準にして。
基準に該当する職種として医師や弁護士のほかに、
年収1075万円以上のシステムエンジニアやデザイナー
などを考えているみたいですが。

これ、医者が狙われているのかもしれませんね。
厚生労働省医師不足を決して認めず、
医師偏在化しているという立場なのですが。
その厚労省役人が国会の答弁で、労働基準法
医者に適用したら、今の2倍の数が必要だ。
と認めていますから。
この法案が成立したら、医者労働基準法
適用されないから、堂々と医者2倍働いて当然で、
医師不足ではない、と言い切れますからね。

医者年収は、普通の人に比べたら、高いです。
本来それは、「高度で専門的な知識」が必要だから、
時給が高い、というものであったはずなんですが。
最近は、なし崩し的に医師には時間外手当
払わなくても当然というような風潮になって。
結局、人の2倍働いて、人の2倍
給料を貰っているという感じになっています。

医師は普通のサラリーマンと比べて、
総額は高いが、時給は良くて同じか、多分それ以下。
そこらへんが現状ではないかと思います。
しかも、当然のごとく訴訟のリスクはついて回るし。
給料には反映されていませんが、365日
24時間待機
というのも含まれます。

たしかに、医師は「高度で専門的な知識
が必要な職業ですよ。
でも、それでも所詮は雇われる立場の「労働者」です。
しかも、ほとんどの医師は労働組合に入っていません。

高度で専門的な知識」を持っている。
年収が1000万円以上
という事と、
裁量労働」が行えるという事には、関係がありません。
労働者」としての立場の弱さにも、関係ありません。


ある医者の一例を挙げてみると。

午前中から、昼過ぎまで、50人外来患者を診察。
そして、午後から10人入院患者を診て、
検査データー等を処理して、
2人検査(心エコーとか胃カメラ等)をしました。
そして、10人患者書類を書きました。

仕事のできる(早い)医者であれば、これらの仕事を
朝9時から午後5時までの間で、なんとかこなせるとします。
一般の人にはわかりにくい例えなんですがね。
正直言って、これだけの仕事をきちっと午後5時まで
にできる医者は「相当できる医師」だと思いますよ、私。
私は、かなり仕事が早い方(できるかどうかは別)だと思いますが、
ここまでのスピードでできるかどうかは、自信がないです。
もちろん、によっても違いますけどね。

それが、仕事が丁寧、遅い、あまりできない、
という理由で同じ内容の仕事午後7時までかかった。
それだけであれば、確かに時間外労働手当は、
必要ないのかもしれません。

実際、こういったルーチンの仕事午後5時までに終わる医者
というのは実際には非常に少なく、殆どの勤務医
午後7時とか9時とか、もっと遅くまで、毎日働いています。
土、日、祝日も働いています。

しかし、医者プライドが高い人が多いので、
こういったルーチンの仕事をして、結果的に遅い時間
まで働く事になっても、その分の時間は
時間外労働手当を要求しない医師が多いです。
しかし、別に医局で新聞読んで、ネットしていた時間の分、
残業代を請求しているわけではなく、本来の仕事をして、
労働時間が伸びているわけですから、
本来、時間外手当は貰っても良いものです。

しかし、医師の「プライド」と「善意」によって、
ほとんど請求がなされていない、というのが現状です。

上のルーチンの仕事を、とても仕事のできる医者がやって、
午前9時から午後5時までかかるとして。
更に急患が来て、2時間かかったとすると、
仕事のできる医者でさえ、終わるのは午後7時になります。
当たり前ですね。

しかし、ルーチンの仕事ではなく、急患が来たとしても、
その患者が来た時間が、午後5時よりも前であれば、
その患者のせいで仕事が終わるのが遅くなって、
残業をしたにも関わらず、時間外手当を請求しない
医者の方が多いです。
これも、単に医者の「プライド」と「善意」によるものです。

午後7時患者が来て、9時まで2時間働いたら、
さすがにほとんどの医者残業代を請求すると思いますが。
残業代は一切払わないという、病院もありますし。
何時間働いても1人1000円とか、そういう病院もあります。
明らかに労働基準法に違反していますけどね。


で、医者の業務が「裁量労働」かって話なんですが。

>外来患者50人
これは、外来に患者が来ているので、
「俺は昼から仕事」、っていう訳にもいかず。
病院に来た患者を、あまり待たせずに診るので、
医師裁量の入る余地はありません。

>入院患者、検査
入院患者は夜もいますから。
入院患者診察(回診)は夜でも、いつでも
医師裁量で決める事はできますが。
看護師は昼は日勤で多いのですが、夜勤になれば少ないですし。
検査技師や放射線技師、事務員は日中しかいませんから。
実際には、救急の処置、検査以外は昼間にやらなければならないので、
裁量の入る余地は少ないです

>書類書き
書類を書くのは、ほとんどの医師が、自分の裁量で、
日中ではなく昼間の勤務が終わった後とか、当直中とか、
自分の昼休みを潰して書いているので。
これには裁量の入る余地はあります。

しかし、時間外に書類を書いて、時間外労働手当
請求する医師は、まずいませんけどね。
貰ってもよいはずなんですけどね、ホントは。
事務員は、夜まで事務仕事したら残業代貰ってるでしょ。
書類書きも立派な医師の仕事ですからね。
病院」として、これは認めないとする病院が多いですが、
これも労働基準法違反ですね、本来。

>時間外の急患。
これは、全く裁量の入る余地はありませんね。
当たり前ですけど。


ということで、医師という仕事には、
専門的な技術や知識」が必要です。
しかし、医師裁量で決められる事は少ないです。
人の2倍働いているから、給料の総額も2倍多い、
単なる肉体労働者というのが、現状です。

ですから、私は「ホワイトカラー・イグゼンプション
という制度にも、元々反対なのですが。
特にこれを医師に適用するというのは、大反対です。

ホワイトカラー・イグゼンプション(適用除外)
ではなく、全くそれとはかけ離れた法律
労働者酷使法」。
これが最も、事実を反映していると思います。

さすがに、正しい法律の名前にしたら、
国民から大反対をくらって、自民党も選挙で負けますから。
分かりにくい横文字にして、最初は年収1000万円以上
そして、医師とか弁護士などで、労働者4.8%しかいないから、
と言って、反対すると思われる人たちを何とかごまかして、
そして制度を導入してから、なし崩し的
年収等の用件を緩和させるという作戦です。

役人政治家の常套手段ですね。
ごまかしたりとか、話を別の方にもっていく、とか
言い訳とか、そういうのは彼らは天才的ですから。


これ、導入したら、儲けるのは「企業」だけです。
景気が良くなっているとか言ってますが、
企業」が儲かって設備投資が多いから、
数字としては、景気が回復しているにすぎないのにね。
日本で一番金を持っている「企業
そして、「企業」からたくさんの献金を貰ってる「自民党」。
そこらへんですかね、得をするのは。

まずは、年収の用件を厳しくして、医師等を狙い打ちして、
そして、だんだん年収の用件を下げて、ほとんどの
サラリーマン(労働者をこれに適用させて、
労働者酷使しようという、企業側の作戦です。

横文字にして、本来の意味をわからなくして、
労働者をこき使おうというのは、
今に始まった事ではないんですがね。

サラリーマン」という言葉も、本来は
賃金労働者」と言えばわかりやすいですし、
最も現実を反映するんですが。
いつのまにか、横文字にされてますし。

ホワイトカラー・イグゼンプション」も、
最も適切な言葉は、タイトルにも書いた
労働者酷使法」なのではないでしょうか。

今は労働組合の力が弱く、企業の力が強いですし、
小泉ー安倍ラインでは、企業優遇の政策を
取っていますから。
このままいったら、この法案も成立しちゃうかもしれませんよ。

医療費削減と共に、重要な話だと思いますが。
いつの間にか、法案が通っちゃうんですかね。

声を上げた方が良いですよ、皆さん。


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小児科医の遺言状
まだ「医療崩壊」が、日本中で叫ばれる前の1999年8月。
都内の民間病院小児科部長代理の中原利郎医師(当時44歳)は、
激務から欝病を発症し、勤務する病院の屋上から身を投げました。

しかし、他の医師も同じくらいの当直をこなしても死んでないから、
過労による自殺じゃない、とかいう理由で労災却下されています。

残念ながら、この時の教訓は全く生かされず、
今、日本の小児科医は、更に大変な事になっています。

中原医師のご冥福を祈って、ここにその遺書の一部を掲載します。

文頭には「少子化と経営効率のはざまで」と題が付されています。


「少子化と経営効率のはざまで」

都内の病院小児科の廃止が相次いでいます。
私も佼成病院に奉職して12年が経過しましたが、この間、
近隣病院小児科の縮小・廃止の話は聞きますが、
中野・杉並を中心とする城西地域では新設、
拡充の連絡は寡聞にして知りません。

もちろん一因として世界に類を見ない早さで進展する
わが国の少子高齢化をあげる事ができます。
小中学校には空き教室が目立ち、
都立高校の統廃合の計画も明らかになりつつあります。
しかし、小児科消滅の主因は厚生省主導の
医療費抑制政策による病院をとりまく
経営環境の悪化と考えられます。

「生き残りをかけた病院は経営効率の悪い
小児科を切り捨てます。
現行の診療報酬制度(出来高払い)では、
基本的には薬は使えば使っただけ、
検査を実施すればしただけ診療報酬が上がり、
病院の収入となります。

例えば大人の場合は、だいたい注射アンプル1本分が
通常の投与量となります。
しかし、体重も小さく代謝機構も未熟な小児では、
個々の症例で年齢・体重を勘案しながら薬用量を決定し、
その分量をアンプルから注射器につめかえて細かく、
慎重な投与量を設定しなければなりません。
検査にしても協力が得にくい小児の場合には、
泣いたりわめいたりする子供を
なだめながら実施しなくてはなりません。

例えば大人なら2人3人分のCT撮影がこなせる
時間をかけて、やっと小児では、
CT写真一枚が撮影できるという事も珍しくなく
医師・放射線技師泣かせです。

現行の医療保険制度はこのように手間も人手もかかる
小児医療に十分な配慮を払っているとは言えないと思います。

常勤医6名で小児科を運営して参りましたが、
病院リストラのあおりをうけて、現在は、
常勤4名体制で、ほぼ全日の小児科単科当直、
更には月1~2回東京都の
乳幼児特殊救急事業に協力しています。

急患患者数では、小児の方が内科患者を上回っており、
私のように四十路半ばの身には、
月5~6回の当直勤務はこたえます。

看護婦・事務職員を含めスタッフには、
疲労蓄積の様子がみてとれ、
これが"医療ミス"の原因になってはと、
ハラハラ毎日の業務を遂行している状態です。
(中略)24床のベッド数を誇ってきたわが病棟には、
最近では高齢の方の入院が相次ぎ
小児・老人混合病棟」の様相を呈して来ました。
つい最近、緊急事態宣言が出された結核の院内感染を
おこさないか否か、また、心配のタネが増えています。

間もなく21世紀を迎えます。
経済大国日本の首都で行われているあまりに貧弱な小児医療
不十分な人員と陳腐化した設備のもとで行われている、
その名に値しない(その場しのぎの)救急・災害医療。
この閉塞感の中で私には医師という職業を
続けていく気力も体力もありません。


参照:「「小児科医の遺言状」:九鬼伸夫/中原のり子」

少子化と経営効率のはざまで」は、
上の文で唐突に終わっています。
1998年の時点で、日本の小児科の現状は、
こうだったのですが。
行政厚生労働省は、この8年間で、
何か手を打ったのでしょうか。

医療訴訟では、医師ミスでもないのに、
医療ミスとマスコミに騒がれ。
裁判官は医学の知識もないのに、
とんでもない判決を連発し。

小児科だけでなく、ほとんどの医師、特に勤務医
もう限界に来ていると思います。

日本で自殺する人の数は、ご存じの方も多いと思いますが。
世界でもトップクラスで、年間約3万人

日本の医師自殺率は、一説によると
一般の方の約1.5倍
医学的な知識があって、鬱病なども早期発見、
早期治療ができると思われる医師でさえ、
これだけの自殺率です。

おそらく、ここ数年だけだと、もっと増えているでしょう。
正確な統計がないので、はっきりとはわからないですが。

自殺まではいかないまでも、過酷な勤務条件から
何も言わずに立ち去る、「立ち去り型サボタージュ」。
そして、残った医師には、更に負担がかかるという悪循環

医師個人の力では、もう限界を超えているのに、
まだ医療費削減、医療の効率化を叫ぶ行政。

一体、この国はどこへ行こうとしているのでしょうか。

20年以上前に、「医療費亡国論」という、
くだらない論文があったんですが。
それは、医師の数が増えると、それと比例して
医療費が増えて、いずれは国を滅ぼすという内容です。

医学部の定員は減って、新たに医師になる人の数は減っているのに、
それ以上の伸びで、医療費は増えており、他の国の例でも、

医師の数と医療費は比例しない」

と証明されているにもかかわらず、
かたくなに自説を曲げない厚生労働省

今やっている、「無理な医療費抑制計画」によって、
近い将来、世界一の日本の平均寿命は徐々に下がり、
子供の数も減り、日本の人口も減り、
本当に国が滅びるかもしれませんね

私はそれを「医療費亡国論」と名付けました。
役人だけ生き延びられれば、国はどうなっても良い、
とでも言いたいんでしょうか。


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過労運転と過労で医療
今日は勤労感謝の日ですね。
祝日なのに、働いていた方、お疲れ様でした
今日は休みだった人も、いつも働いている方、皆さん。
お疲れ様です

私も、当然の如く、朝8時半から病院で働いて、
午後4時半くらいにやっと仕事が終わって帰ってきました。
ま、週末悪かった患者が良くなったので、良いんですけどね。

ところで、こんなニュースがありましたね。

長時間運転命じた会社社長らを逮捕

茨城県常陸大宮市で今年5月、トラックが対向の軽乗用車などに
衝突し6人が死傷した事故をめぐり、大宮署などは20日、
トラックの男性運転手(24)に長時間運転を命じたとして、
道交法違反(過労運転下命)の疑いで北関東運輸
(栃木県大田原市)の社長と、の両容疑者を逮捕した。

調べでは、両容疑者は5月25日夕、運転手に安全運転ができなくなる
恐れがあるのに、長時間運転を指示し過労運転をさせた疑い。

運転手は5月26日に大田原市を出発した後、神奈川、栃木、岡山、
兵庫、茨城各県を回り、約2500キロを連続して運転。
帰社途中の同月28日に居眠りで事故を起こし、
業務上過失致死傷罪で禁固2年8月の実刑判決を受け服役中。
事故までの約59時間に、10分から1時間の休憩を
計約5時間半しか取っていなかった。


「2006年11月20日 nikkansports.com」


これって、医者にも同じ事が言えるんではないですかね。

医者に安全な医療ができなくなる恐れがあるのに、
長時間医療を指示し過労状態で医療をさせた疑い。


でも、医者をたくさん働かせて医療事故を起こさせたと言って、
訴えられた病院院長って、いないんじゃないですかねー。
公立病院なら、市長や知事、って事になるんですか。

このニュースの場合は、道交法違反(過労運転下命)
って事になりますけどね。


ご存じの人も多いでしょうけど、道路交通法は、2002年6月1日に改正され、
を飲んで運転するなどとんでもないのに、
今までは悪質・危険な違反行為に対する罰則等が軽すぎた。
って事で、ようやく今度の改正で罰則が強化されています。

道路交通法では、過労運転というのはどういう罰則になっているかというと。
⇒の前は改正前。
⇒の後ろは改正後です。

過労運転(麻薬等)は2年以下の懲役又は10万円以下の罰金
⇒3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に引き上げ。
過労運転(その他)は6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金
1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に引き上げ
6⇒13点

ちなみに、公務員の飲酒運転に対する処分が甘いとか。
そういうので問題になった酒酔い、酒気帯び運転はというと。

酒酔い運転
2年以下の懲役又は10万円以下の罰金
⇒3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

酒気帯び運転
3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金
1年以下の懲役又は30万円以下の罰金

呼気1リットル中アルコール0.25mg以上
6⇒13点
呼気1リットル中アルコール0.15以上0.25mg未満
0⇒6点

へー、道路交通法でいくと、過労運転というのは、
呼気1リットル中アルコール0.25mg以上の酒気帯び運転
同じ扱いという事になりますねー。

改正前も後も、同じくらいの罰則なので。
おそらく過労運転だと、酒気帯び運転の酷い方
と同じくらい、正常な判断ができないって事なんでしょうね。

へー。

そいで、医者で仮眠5時間で働いている人って、
全国でどの位でしょうかねー。
忙しい時だと、一時間も眠れないで36時間連続勤務とか。
これ以上の勤務をしている医者はたくさんいると思いますが。

医者過労なのに勤務させたといって、
逮捕された人はいないみたいですねー。

テレビなどのマスコミで、呼気1リットル中アルコール0.25mg以上
じゃなくて、呼気1リットル中アルコール0.10mg以下でも
正常な判断が出来ないとか。
呼気1リットル中アルコール0.25mg以上じゃなくて、
呼気1リットル中アルコール0.15mg以上に改正するべきだ。

とか、いろいろ議論されていましたが。

呼気1リットル中アルコール0.25mg以上と同じくらい、
正常な判断が出来ない状態で
働いている医者は、世の中に大勢いるんですよ。

そして、そういう状態で医者を働かせている人間は、
全く罰則を与えられていないんですよ

知っていましたか、皆さん。

決して医師不足とは認めない、厚生労働省の役人ですら、
国会の答弁で、労働基準法通り医者を働かせたら、
日本の医者は今の2倍は必要と言っているんですから。

当然、厚労省などのお偉いさんは、みんな知ってますけど。
こういう人達は、医者労働基準法違反と知って、
働かせているわけですから。

逮捕されはしないんですかねー。


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読者さんの推薦と投票により決定により、日本一を決定しようという、
年の瀬限定のスペシャルイベントです。

このブログを読んでいる皆さんにも、是非とも応援して頂きたいです。
私、Dr. Iのメルマガ、「やぶ医師のひとりごと」は2006年1月に
発行していますから。
新人賞の権利がありまーす。
皆さん、応援よろしくね!

『まぐまぐ大賞2006』
上のURLから、
メールマガジンタイトル: やぶ医師のひとりごと
メールマガジンID: 0000180417

と書いて、推薦理由も書いて頂ければありがたいです。
よろしくお願いします。
推薦期間は11/24~12/4までになっています。

まだ読んだことのない人は、この機会に是非読んでみて下さいね!
ブログとはがらっと変わって、病気にならないように、
予防に重点をおいて、病気の解説を主にしています。

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無過失補償、お産費用増加へ
出産時事故が起こった時に患者に金銭補償をする
無過失補償」というのが、
産科医師負担で導入されそうですが。
騙されちゃいけませんよー。

医者保険料払うんだから、私には関係ないや、
なーんて思ったら駄目ですからねー。
新聞記事をしっかり読んで下さいね!


出産時事故:患者に「無過失補償」導入へ 民間保険を活用

政府・与党は17日、新生児が脳性まひで生まれてくるなど
出産時の事故に関し、医師の過失を立証できなくとも
患者に金銭補償する「無過失補償」制度を、
07年度に創設する方針を固めた。

民間保険を活用、保険料負担は医師に求めるが、
負担増対策として健康保険から支払う、
現在35万円の出産育児一時金を2~3万円増額する。
新生児1人につき2000万~3000万円の一時金を
補償する方向で調整する。

財源に関し、日本医師会は税負担を求めているが、
与党は「国が直接かかわる話ではない」として、
親に支払う出産育児一時金を活用することにした。
一時金を増やせば、
やがて出産費がアップし、
その分医師の収入増につながるため、
医師に保険料を負担してもらう構想だ。

民間保険会社に新たに「無過失補償」の商品を企画してもらい、
産科医が任意加入する形をとる。
保険料の決め方などの詳細は今後詰める。
先天性異常の場合は、補償対象としない。
将来的には、自動車損害賠償責任保険のような強制加入の
制度に移行することを想定している。

政府は、出産育児一時金を37万円にアップすれば、
医師全体で約200億円程度の増収となり、
事故一件につき2000万円の補償が可能になるとみている。

政府は補償金に税投入はしないが、民間保険会社の支払い審査、
原因分析といった事務費の半額、数億円を
「少子化・医師不足対策」名目で税負担する。

医療事故に絡む民事訴訟件数は年々増えており、
04年は1110件と10年前に比べ倍増している。
なかでも産科(143件)は、
件数こそ内科などに次ぐ4位だが、
医師1000人当たりでは11.8件と最も多い。
このことが産科医のなり手不足を招いている、との指摘がある。
無過失補償をすることで、被害者の救済に加え、
医師不足対策にもなるというのが政府・与党の判断だ。


「毎日新聞 2006年11月17日」

ま、赤字で書いたからわかった人も多いと思いますが。

一時金を増やせば、やがて出産費がアップし、
その分医師の収入増につながるため、
医師に保険料を負担してもらう構想だ。


って事は、「お産の費用が増える」って事ですからね、
はっきり言えば。
政府は、医者叩きに便乗して、医者の負担でお金が出るから、
この案に賛成しなさいよ。
と言って、国民の賛同を得る作戦なんでしょうけど。

お産って、保険が効かない自由診療ですから。
結局は、費用はお産をする妊婦さんとか、その旦那に
かかってくるんですよ。


そして、政府の魂胆はこんな所にも見え隠れします。

政府は補償金に税投入はしないが、民間保険会社の支払い審査、
原因分析といった事務費の半額、数億円を
「少子化・医師不足対策」名目で税負担する。


その前の文章に200億円って書いてありますから。
今回の事でかかる費用200億円くらいの試算なんでしょうが。
でも、数億円は政府が出すから、権限は俺達にある。
という事を言いたいんですね、要は。

金はちょっとしか出さないけど、口は出す。
という口実ですね、はっきり言えば。
全く政府が何もしないって訳にはいかないから、
アリバイ作りって感じでしょうか。

そして、

民間保険会社に新たに「無過失補償」の商品を企画してもらい、
産科医が任意加入する形をとる。


経済財政諮問会議に、昔、民間保険会社の○リックスの宮○会長
って人が入っていたような気がしますが。
結局こういう人達の利益になるように仕組まれているんですねー。

最初は産科医の負担が大きいから、って話だったのに。
結局負担は産科医患者(妊婦)
儲けるのは、民間保険会社
権限厚労省

って構図はどこにいっても変わらないんですねー。

「少子化・医師不足対策」

って。
お産の費用を値上げして、少子化政策
産科医の負担を増やして、医師不足政策
の間違いじゃないですか。


これから子供を産む可能性のある人や、
その旦那さんになる可能性のある人。
子供は大きくなったけど、今後、孫の生まれる可能性のある人達。
そういう人達は、税負担にするように、
声を上げた方が良いですよ。

自分たちには関係ないと思わないで。

私は、「無過失補償」そのものには賛成ですが、
今回のように、産科医患者(妊婦)に負担させる
やり方には反対です。


話は変わるんですが。
お産保険が効かなくて、酔っぱらいには
保険が効くって、納得がいかないんですけどね、私。

酔っぱらい相手に、かなりの時間と労力を使って。
結局、点滴一本で、病院もたいして利益にならないし。
まして、その少ない額に保険が効くから、
患者は痛くもかゆくもないでしょうし。

更に、救急車になんか乗ったら、交通費も無料だし。

酔っぱらいは、病気じゃないから保険効かない、
って事にならないかなー。

お産にはリスクがつきものなんです。
お産の合併症として、肺梗塞があるんですが。
肺梗塞(エコノミークラス症候群)について知りたい人は、こちら!


→ 「気をつけて!死んじゃうかも!フライトの旅行で注意すべき病気!」

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ライブドアニュースで紹介
うわっ。

前に、朝日新聞、asahi.com、gooで、
私のブログが紹介された事はあったんですが。

今度はライブドアニュースでも紹介されてしまいました。

こちらです

[病気腎移植]「ドナーへの説明不十分」
万波廉介医師認める

宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の病気腎移植問題で、
移植用腎臓の摘出を行っていた万波廉介医師(60)が16日、
毎日新聞の単独取材に応じた。

腎臓摘出時にドナー(臓器提供者)から文書同意を
取っていなかった点について
「僕のミス。今後は同意書を書いてもらう」と述べ、
インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)
が不十分だったことを初めて認めた。(提供 : 毎日新聞 )
[記事全文]

腎臓移植について - 京大医学部
腎移植の現況 - 日本移植学会

・病気腎移植 あまりに疑問が多すぎる -神戸新聞
・病気の腎臓を移植
- 個人のブログより

ライブドアニュース:11月17日(金)22時12分更新

京大医学部、日本移植学会、神戸新聞と並んで、
何故か個人のブログである
私のブログ「健康、病気なし、医者いらず」
紹介されていまいました(汗)

この記事っす。
「病気の腎臓を移植」


うーん、喜んで良いのか、悲しんで良いのか。
とりあえず、喜んでおきますか。

わーい、わーい。


前に新聞、ネットに載ったときに、
誹謗、中傷のようなコメントはなかったのですが。

もし、今回あまりにもたくさんあって、荒れるようであれば、
コメント、TBを承認性にさせて貰いますね!
もちろん、反対の意見もあると思いますが、
建設的な意見であれば、きちんとコメント返しますので。

そこらへんは、ご了承下さいね。

ちなみに、朝日新聞で紹介された記事はこちらですよ!↓

「新人脳外科医2割減少」

万波医師は、大学病院でもないのに腎移植してますが。
大学病院について知りたいって思ったあなた。
そんなあなたにお勧めの無料レポートはこちら

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「大学病院のうそ」 ~現役医師(Dr. I)が暴露する、大学病院の秘密 

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救急医療も崩壊3
「救急医療も崩壊1」に関しての、医学的な考察です。
専門用語が多いので、個別の病気に関しては、
「救急医療も崩壊2」を参考にして下さいね。

今回の話は2次救急を行う全ての病院に影響を与える判決、
という意味では奈良の産科医の件よりも、
日本の医学界に与えるダメージは大きいと思うので。
かなりマニアックな話になりますが、話していきますね!

ちなみに奈良の産科医の件に関しては、こちらを参照にして下さい。
「奈良の産婦人科医」
「奈良の産婦人科医2」
「奈良の産科医、詳細1」
「奈良の産科医 詳細2」
「奈良の産科医 私見」


今回の民事裁判の話を要約すると。
交通事故にあった人が、奈良のある二次救急病院
午後4時47分頃運ばれ、1人はまもなく死亡。
もう1人は、いったん入院して、午後7時頃,急変。
結局午後8時7分死亡した。
という事なんですがね。

判決を要約すると、死因心タンポナーデ
であれば、診断をするのに心エコーという循環器医者や、
救急専門医師でないとできない検査が必要だ。
でも、それができなかったのは、救急病院にそういう医者
置かなかった奈良県が悪い。
だから、奈良県は金払え。
という判決です。

今回の判決で、ネット等で問題となっている点は。
日本で2000人しかいない、救急専門医クラスの知識や
技術を持った医者を日本全国の二次救急病院全てに、
24時間体制で配置するのは、不可能だ。
それなのに、そうしていないから、金払えという判決はおかしい。
と、そういう感じです。

で、まあ、それに関しては私も全く同意見なんですがね。
実は、医学的な考察をしたものが、私の知る限りないんですよ。
今回の判決の骨格になる所なのに、誰もその事に言及していないので、
かなり専門的な話になりますが、ここで書いていきますね。
外傷は専門ではないのですが、心臓専門なので。

この裁判官が死因心タンポナーデとした理由はこうです。
「奈良の民事裁判での判決文(高裁)」から抜粋。

F(亡くなった患者)はシートベルトを装着しない状態で、
ブレーキ跡もなくブロック塀に衝突しており、
高エネルギー外傷を受けたと考えられること。
血液生化学検査により、CPKの値が197mU/mlと高い数値を示した事。
受傷後循環動態が安定していたにも関わらず、
午後7時頃に容体が急変した事。
適切な心肺蘇生を施行したが、全く反応がなかった事などは、
急性心タンポナーデであると考えることによって、
F(亡くなった患者)の臨床経過を
最も合理的に説明する事が出来る。

なお、被告人E(脳外科の当直医の先生)は、Fの容体が急変した後の
午後7時頃に胸部正面単純X線撮影では、心陰影の明瞭な拡大としては
捉えることはできないので、上記X線写真で心陰影が拡大していない事
をもって、急性心タンポナーデの存在を否定する事はできない事が
認められ、上記認定、判断を左右するものではない。

また、H鑑定人(病院、医者側の鑑定人)は腹腔内出血が死亡原因である
とするが、証拠(G鑑定人:患者側の鑑定人)によると、
上記胸部正面単純X線撮影で
中心陰影が縮小していないことから、急速な出血が死亡原因とは
考えられず、その可能性は医学的に否定される事が認められ、
H鑑定(病院、医者側の鑑定)を採用する事はできない。


おおざっぱにまとめると

1,CPKの値が上昇したから、心タンポナーデだ。
2,しばらく安定していて、急変したから心タンポナーデだ。
3,適切な心肺蘇生を施行したが、全く反応がなかったから心タンポだ。

という事と、

4,X線写真心陰影が拡大していなくても、
 心タンポナーデの存在を否定する事はできない。
5、腹腔内出血ならX線写真中心陰影(心臓の影)が縮小する
 はずだから、急速な出血が死亡原因とは考えられない。

という点でしょうか。

問題点ACPK

CPKクレアチンフォスフォキナーゼ)というのは、
心筋逸脱酵素とも言われるものなんですが。
心筋梗塞とか、今回の様に外傷とかで、心臓の筋肉(心筋)
にダメージを受けると、その値が上がります。
しかし、CPKと言うものには、もっと細かく分けると、
CPK-MBという心筋由来のものと、CPK-MMという骨格筋由来
のものと2種類あります(CPK-BBってのもホントはあるんですけどね)。

この裁判官、こういう事をわかっていないから、
CPKが上がったから、心タンポナーデだ、って言っていますが。
CPKには骨格筋由来のものもありますので。
筋肉にダメージを受けても、CPKというのは、上昇するんですよ。
今回、車がぶつかって高エネルギー外傷を受けたんですから、
当然「筋肉」にもダメージはあるはずです。
それなのに、CPKが高いから、「心臓」だ、
って言う主張は明らかに間違っています。
間違いなく、「筋肉」にも障害を受けていますから。
心臓が障害を受けた」という根拠にはなりません。

もし、循環器に研修に来ている研修医や学生が、
レポートにこんな事を書いたら、間違いなく落第点ですよ(笑)

CPK―MBか、CPK-MMかっていう心臓由来か、
骨格筋由来かって話もそうなんですけどね。

根本的に、CPK-MB(心臓由来のCPK)って、心臓にダメージが
あってから、4~5時間してから上昇するものなんですよ。
判決文では、午後4時47分頃運ばれた、としか書いてないので。
何時に事故があって、運ばれるまでどの位の時間がたって、
事故から約何分後に採血をしたのか、って事がわからないので、
なんとも言えないんですけどね。
でも、事故から4~5時間は経ってないんじゃないですかね。
だとしたら、CPK197mU/mlって、正常値よりもちょっと高いですが、
この上昇が今回の受傷で上がったものかもわかりませんから。

筋肉のCPKって、激しい運動をしたり、ぶつけたりしただけで、
一時的に上がる事もありますからね。
もしかして、前の日に運動したから上がったとか、
転んだから上がっただけかもしれませんよ。

ま、教科書的には4~5時間って書いてありますが、
実際は2~3時間でも少しは上がる事も多いので。
ちょっと上がっていても、構わないとは思いますがね。
でも、教科書を参考にするなら、
上がるはずはない」、って事になるはずです。

CPKの由来の話、時間の話、いずれにせよ、
CPKが上がってるのは、心臓にダメージを負ったからだ
という主張は、医学的に間違っていますので、
証拠として採用する事は不適切です

ちなみに、心筋梗塞っていうのは、心臓血管が詰まって、
心臓の筋肉がやられちゃうので、CPKが上昇するんですけどね。
その時に、上昇したっていう基準は正常値の2倍以上です。
正常値は施設によって弱冠変わるのですが、この判決文によると、
この病院の正常値10~130mU/mlだそうです。
だとすると、2倍以上というのは260mU/ml以上ですから、
197mU/mlというのは、上昇したとは言いませんね
ま、もう少し時間が経てばもっと上がるはずですけどね、多分。
それが、心筋由来骨格筋由来かは別として。

でも、この数値だけを見て、上がっているかと言われれば、
医学的には、「有意な上昇とは言えない」と思います。

問題点B胸部レントゲン写真

確かにこの裁判官が主張するように、
X線写真で心陰影が拡大していないくても、
心タンポナーデの存在を否定する事はできない。

というのは間違ってはいませんけどね。

基本的に、心タンポナーデというのは、心臓の周りに
水やが貯まる事なので、普通はレントゲン写真で、
心臓の影が大きく見えるんですよ。
この写真でもそうですよね。
「救急医療も崩壊」

一般的には心臓の影が大きく写るのですが、
中にはレントゲンではわからないものもあるんです。

同様に、この裁判官が言っているように、
腹腔内出血ならX線写真で中心陰影(心臓の影)が縮小する
事が一般的ですが、中にはそうでないものもあります。

心タンポナーデでは、一般的にX線写真で心臓の影が大きく写るが、
中にはレントゲンではわからないものもある。

腹腔内出血では、一般的にX線写真で心臓の影が小さく写るが、
中にはレントゲンではわからないものもある。


何故上の患者側の鑑定人の意見だけ採用されて、
下の病院、医師側の鑑定人の意見は採用されないのでしょうか。

その可能性は医学的に否定される事が認められ、
H鑑定(病院、医者側の鑑定)を採用する事はできない。


とまで言っていますが、医学的に否定されるのは、
CPKが上がったから、心タンポナーデだっていう、
この裁判官の意見です。
だいたい、この裁判官、医者でもなんでもないでしょ。
全く医学の事はわかってない、って事は
この判決文を読めばわかりますが。
その人に、医学的に否定されるなんて、言われたくないですよ。

ま、私が言われた訳じゃないですけどね(笑)

2,しばらく安定していて、急変したから心タンポナーデだ。
3,適切な心肺蘇生を施行したが、
 全く反応がなかったから心タンポナーデだ。


これに関しては、腹腔内出血でも言えると思いますが。
何故か、心タンポナーデのところにしか採用されていませんねー。

全く医学に関して知識のない裁判官が、先に結論ありきで
出した判決としか思えませんね、正直。
少なくとも、この判決文に書いてある事からは、
心タンポナーデ断定する根拠はありませんし、
腹腔内出血否定する根拠もありません。

ちなみに、教科書なんかによると。

心タンポナーデの症状
胸部圧迫感、呼吸困難(特に吸気時)、不安感、全身倦怠感、
脱力感、食欲不振、起坐呼吸、チアノーゼ、
ショック、意識障害など。


心タンポナーデの所見
血圧低下、静脈圧上昇(頚静脈怒張・肝腫大など)以上
Beck の三徴。
心音微弱、頻脈、脈圧減少、心膜摩擦音、奇脈、Kussmaul徴候
奇脈(吸気時に収縮期血圧が10~20mmHg以上低下し
脈拍の触れが弱くなる)、全身のうっ血症状など。


とあります。

突然急変していますから。
ショック、意識障害というのはあるんですが、
それは亡くなる人全員、最後はそうなるから、置いておいて。
それ以外の所見は一つもありませんねー。
専門用語で難しいですが、全部説明するときりがないので、
やりませんがね。
全然当てはまらないんですよー。

脈圧減少ないかなー、ってもう一回判決文見直して、
血圧を確認したら、血圧は158/26mmHg周辺で推移
って、下の血圧26mmHgとか、ほとんどあり得ないんですけど(笑)
ま、少なくとも脈圧減少はなさそうですね。
その後の経過はわからないんですけど、
突然急変するまで、何も書いていませんから。
特になかった、って事なんでしょうかね。
やっぱ、カルテのコピーがないと、ここらへんが限界ですね。

でも、普通は事故で人が亡くなったら、解剖をするんですけどねー。
今回していないんでしょうかねー。
解剖していれば、心臓の外側(心嚢)に血液が何cc貯まっていたとか、
心臓に大きな傷があるから、心破裂だ、とか。
腹腔内に何cc出血したから、腹腔内出血だ、って事が
わかるはずなんですけど。
なぜか、判決文に解剖の話が一行も出てきません。
解剖の結果を見れば、こんなレントゲンがとか、CPKがとか、
不毛な議論をしなくて良いんですけどねー。
ま、死因が何か、確実にわかるって保証はないんですけどね。


今回の判決の要旨は

 事故で人が亡くなった
→死因は心タンポナーデ
→心エコーをやれば診断できたはず
→診断できれば、心嚢穿刺するか、自分で出来ないんなら、
 それができる施設に送れば助かったはず
→心エコーを出来ない医者救急病院に当直させたやつが悪い
→奈良県は金払え


そういう事だと思うんですが。
最初の前提となる、
 事故で人が亡くなった
→死因は心タンポナーデ

という点が、根拠に乏しいですからねー、正直。
というか、全く医学的根拠なしですね、この判決文では。
医学的根拠がないのに、このまま確定したら、
ちょっと情けないですね、正直。
多分最高裁まで争うと思いますが、被告側、弁護側それぞれ、
医学的な根拠も、もっと詳しく述べて欲しいところですね。

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救急医療も崩壊2
「救急医療も崩壊1」の記事では、医学的な専門用語が多かったので。
わからない方も多いかと思うので、ちょっと解説しますね。
まだ読んでいない人は、先にこちらを読んで下さいね!

最初、2人が同時に運ばれて、1人は重症で結局亡くなったんですが。
本題からはずれるので、この方の話はひとまず置いておいて。
もう1人の運転手の話をしていきます。

最初来て、は大丈夫か、とか、お腹の臓器が破裂して、
腹膜炎になっていないか、とかそういう事を診察して確認して、
それがない、という事を確認します。
採血頭のCT、胸部、腹部のレントゲンでも異常はなく、
でも、一応入院させて、注意深く様子をみてください。
と看護婦に指示しています。

その後突然、患者が急変するんです。
突然、呼吸停止したため、気管内挿管というのを行います。
人工呼吸器という機械につなぐのではなく、管を直接気管に入れて、
「手動」で呼吸をさせた、という事です。
そして、心臓マッサージもします。

その後に出てくる、「心タンポナーデ
これが、ちょっと一般の人にはわからない言葉ですね。
今回の件でキーワードになる病気ですので、詳しく説明します。

心臓っていうのは、血液を体に送り出す「ポンプ」
の役割をする臓器です。
水の入った風船みたいもんですかね。
ぎゅっと押すと、風船から水が吹き出るように、
心臓もぎゅっと全体が圧縮されて、
血液が押し出されて、体全体に血が行きます。
心臓が縮んだり、膨らんだりを繰り返して、血液を送り出します。

そいで、心臓の周りには心膜っていう膜があるんですよ。
その周りに水や血が貯まって心臓が広がらなくなる状態。
その状態の事を、「心タンポナーデ」と言います。

心たんぽ 絵3


左側が正常の絵、右側が心タンポナーデの絵です。
右側の絵では、心臓の外側、心膜との間にが貯まっています。

心臓が広がったり、縮まったりして血液を送り出すんですが。
心臓広がる事ができなくなるから、十分に血液を送り出せない
そういう状態になるんですよ。

外傷性心タンポナーデと言うのは、胸(心臓)に衝撃が加わって、
心臓がついて、そこからが出て周りに貯まる状態です。
心タンポナーデっていうのは、周りにでも、でも
なんでも良いんですね、貯まるのは。
違いは、そこだけです。

左側の正常の絵を見てもらえばわかりますが、心臓心膜
間には少し余裕があるのでちょっと位、が貯まっても
ある程度は大丈夫なんです。
たくさん貯まると、心臓が広がれなくなるんです。

で、治療はというと、心臓の周りにが貯まって
心臓が広がらないので、それを抜くというのが治療になります。
それが、「心嚢穿刺」です。
心臓心膜の間にが貯まっているのを、心エコーで確認して、
そこに針を刺して、を抜く治療です。
確認しないで、適当に針を刺して間違って心臓を刺したら、
大出血して大変な事になりますから。
普通は心エコーで確認をして、心臓心膜の間に貯まっている
を目指して、針を刺します。

普通は循環器内科、循環器外科、救急医師以外は、やらない治療です。
専門的な手技がいりますし、危険も伴いますからね、当然です。

ここまで、「心タンポナーデ」の説明と、
治療の「心嚢穿刺」についてでした。


で、どういう検査をやったら、「心タンポナーデ」の診断が
つくかっていう事なんですけどね。
この裁判官は、やたら「胸部超音波検査」、って事にこだわっていますが。
確かに最も確実に診断ができる検査は、胸部超音波検査=心エコーです。
しかし、この検査は循環器科医師や、救急を専門にやっている医師
でないと普通はできない、専門的な技術がいる検査なんです。

ちなみに、心タンポナーデ心エコー写真は、こちら。

心たんぽ 心エコー


真ん中の「C」みたいになっている、白いのが、心臓輪切りにした写真です。
本当は輪切りだから、円になって見えるはずなんですが、
角度の関係で「C」のように見えています。
その外側にある黒いのが、です。
普通はこういう風に、外側に黒いのはないんですよ。
これだと1センチ以上2センチ近くあるでしょうね。
この位貯まっていれば、針を刺して、を抜く事も可能です。

心嚢穿刺というのは、針を刺すわけですから。
万が一にも、心臓に針を刺すわけにはいきません。
だから、ちょびっとしかが貯まっていないと、
針を刺す場所が少なく、心臓に当たる確率が高くなり危険なので。
心臓の周りに1センチ以上が貯まっていないと、
心嚢穿刺は行いません。

心エコー専門的な技術がいる検査なので、
じゃ、それ以外に検査はないのかっていう話になるんですがね。
確実に簡便に検査をする、って事に関しては心エコーに劣りますが、
他にも検査はあるんですよ。


胸部レントゲン写真

胸部レントゲン写真というのは、影絵みたいもんです。
この写真を撮れば、肺や心臓の「」がわかります。

心たんぽ レントゲン縦


インターネット上から借りてきたレントゲン写真です。
見る人が見ればわかりますが、全然別の人の写真です、ちなみに。

上が正常人のレントゲン写真
下が、心タンポナーデ写真です。

写真の右と左に2つある黒いのが、肺。
真ん中の白い、やや丸いのが、心臓です。

胸部レントゲン写真というのは、あくまで「」なので、
心臓が大きくても、心臓の筋肉が厚くて大きいのか、
心臓の中(内腔)が大きいのか、心臓の外側にが貯まって、
が大きいのかを、これで診断する事はできません。

しかし、「心臓大きいか小さいか」、という判断はできます。
心タンポナーデになって、心臓が広がらなくなる為には、
心臓の周りに約2センチ以上が貯まらないと、
心タンポナーデにはなりませんから。
普通は、胸部レントゲン心臓が大きく見えます。

しかし、元々病気で心臓が大きい人もいるし、
1枚の写真だけでは診断はつきませんが、参考にはなります。

右の写真の方が、真ん中の白いの(心臓)が大きいですよね。
これだけはっきりしていれば、「心タンポナーデ」という診断
つきませんが、「心臓異常があって大きい」、という事はわかります。

胸部外傷の後で右のレントゲン写真を見れば、状況から考えて、
外傷性心タンポナーデが疑わしいと推測をする事は、
さほど難しくないと思います。


胸部CT

胸部や腹部のレントゲン写真というのは、前や後ろから
放射線を当てる、「影絵」なんですが。
CTというのは、体の中を「輪切り」にする事ができます。

だから、胸部のCTを撮れば、心臓がわかるし、
心臓の周りにが貯まっているかもわかります。

欠点としては、大きな機械の中に患者を入れなければ
出来ない検査
って事です。
この方の場合は、入院した直後に頭のCTを撮っていますので。
今回、頭だけでなく、胸もぶつけていますから、頭のCTを撮る時に
一緒に胸部のCTも撮っていればなー、とは思います。
あくまで、結果論かもしれませんけどね。

もし最初の段階で胸のCTを撮っていて、心臓の周りに
が貯まっていれば、最初の段階でわかったかもしれません。
しかし、最初はちょっとしかが出ていなくて、
徐々にが貯まるという事もあるので。

何回もストレッチャーに患者を乗せて、何時間かおきにCT
を撮るというのは、現実問題として難しいです。
ですから、ベッドサイドでできる、心エコー頻回に行う
というのは、この裁判官が言っている通り正しい主張です。
しかし、さっきも言った通り、専門的な技術のいる検査ですから。
これを、循環器医師救急専門医以外の医者にやれ、
というのは無理がある主張だと思います。

それを全ての胸部外傷の患者に求めるのであれば、
最初から胸を打った患者は、2次救急病院ではなく、
3次救急病院に送らなければならない
、という
ルールを作るべきだと思います。


心破裂

ま、その名の通りというか、今回の場合は外傷で、
心臓が傷ついて、破裂しちゃうと思って下さい。
水風船が破裂した感じでしょうか。
心臓というのは、血液の貯まっている場所ですから。
破裂したら、大出血します。
でも、心臓の周りには、心膜というのがあるので、
ある一定量以上に出血はしないで、周りにが貯まって
心臓が広がれなくなって、亡くなるんです。

治療は緊急手術をして、心臓を縫い合わせるしかないんですが、
助からない事が非常に多いです

ちなみに、助手席の方がこれで亡くなっています。


イメージとしては。

外傷性心破裂
ガラスのコップを落として、ガチャーンと割れた
落とした直後に、割れちゃいますよね。
心臓がそんなになったら、まず助かりません。

外傷性心タンポナーデ
コップを落として、ひびが入った。
中に水が入っているので、そのまま置いておいたら、
徐々に水が出ていってしまった。

って感じでしょうかねー。
心臓の場合は、徐々に出血していっても、周りにが貯まって、
心臓が広がれなくなるんです。


救急医療体制

日本の救急医療体制は、患者の重症度によって、最も軽いものから
順に初期、第二次、第三次の体制で対応することになっています。

1,初期救急医療体制
休日や夜間における外来診療(入院の必要がない)ですむ救急患者に対応する。
具体的には休日夜間急患センターや地域の医師会による
在宅当番医初期救急医療機関です。

2,二次救急医療体制
入院治療を必要とする重症救急患者に対応する。
都道府県を数地区に分割したものを二次医療圏と呼ぶが、
その圏内の病院の輪番制などにより24時間体制をとる。

3,三次救急医療体制
二次救急医療機関では対応できない重篤の救急患者に対応する。
高度な診療機能をもつ24時間体制の救命救急センターです。


そこら辺の事をふまえて、次回こそは、医学的考察をしていきますね。

写真、絵の参考URL
http://www7.plala.or.jp/machikun/shima4.htm
http://www.nurs.or.jp/~academy/igaku/s1/s1411.htm
http://www.i-jyouhou.jp/disease/2.html

心タンポナーデに関しては、こちらのサイトが比較的
わかりやすく書いていると思いますので、参考までに。
http://www.nms.co.jp/QQ/tanponade.html

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救急医療も崩壊1
ここ数日、本業が忙しかったのであまり医療のブログや
ネットを見ていなかったのですが。
このブログでも取り上げた産科医の件以外でも、
また奈良で大変な事になっていますねー。

Yosyan先生の「新小児科医のつぶやき:救急の黄泉」
で11/8に取り上げられて、Sky Team先生も言及されていましたが。
産科に続いて、救急医療も崩壊しそうですね。

長いですが、元ネタは、これ!
「奈良の民事裁判での判決文(高裁)」


かなり長いので、要約しますね。

H5年10月8日、車に2人が乗っていて事故って、
午後4時47分頃、奈良県の2次救急病院に運ばれてきたんです。
この時、外科当直医は、脳外科医の先生(多分ベテラン)です。

2人運ばれてきて、助手席の方の人は一見、軽症そうに見えたけど、
胸部X線検査中に急変し、呼吸不全,循環不全,意識障害が出ます。
肋骨骨折,肺挫傷等の重篤な異常が認められたので,
午後6時頃,救急車にN医師と看護婦が同乗し,
心肺蘇生を続けながら,3次救急のK病院まで搬送します。
K病院には午後6時30分頃到着し,直ちに蘇生術が試みられたんですが,
外傷性心破裂のため午後6時40分頃死亡されています。

2人同時に運ばれて、1人が急変されているので、
そっちにかかりっきりになるのは、人手が少なければしょうがないです。
そして、その後もう1人の運転手の人の診察に入ります。
かなり適切な処置がされていると私は思いますが、
以下判決文からそのまま引用します。(青字が引用です)
運転手がF,当直医の先生が被控訴人Eです。

Fについては,被控訴人Eは,まず頭部の視診,触診をして
項部硬直の有無,眼位,瞳孔等の確認をし,振り子状の眼振を認めた。
次に,胸部の所見をとり,頬からあごにかけて及び
左鎖骨部から頸肋部にかけて打撲の跡を認めた。
呼吸様式,胸部聴診に問題はなかった。
腹部の聴診と視診では,明らかな腹部膨満や筋性防御の所見はなく,
腸雑音の消失,亢進はなかった。また,四肢の動態に異常な点は認めなかった。
この頃のFのバイタルサインは,体温は不明,
血圧は158/26mmHg周辺で推移していた。
なお,Fの勤務先の定期健康診断(平成4年10月6日実施)
における血圧は,108/78mmHgであった。

被控訴人Eは,その後,Fが頭部を受傷しており意識障害があることから,
頭部CT検査を実施することとし,M医師の応援を求めた。
FはCT室に搬送され,頭部CT検査が実施されたが,
CT室において,採血も行われた。
頭部CT検査が終了したのは,午後5時9分であった。
被控訴人Eは,頭部CT検査に引き続き,頭部,胸部,腹部の
単純X線撮影を実施することにし,Fは,一般X線撮影室に搬送され,
午後5時22分から28分にかけて,頭部,胸部,腹部の単純X線撮影がされた。
なお,FのX線撮影が開始される前に,Jの容体が急変したため,
被控訴人Eは,Jの蘇生措置に当たっており,FのX線写真等を検討したのは,
午後5時30分をかなり過ぎていた。

被控訴人Eは,Fの頭部CT及び各X線写真に異常な所見がないことを確認し,
また,午後5時12分に算定された抹梢血液検査結果(乙1の37頁)
では貧血を認めず,全診療経過を通して血尿の所見もなかった。
また,午後6時15分頃から30分頃にかけて,被控訴人Eの下に
血液生化学検査の結果報告書(乙1の36頁)が届けられたが,
CPKの値は197mU/ml とかなり高かった(正常値は10~130mU/ml)。

被控訴人Eは,特に緊急な措置を要する異常はないものと認め,
Fを入院させたうえ,経過観察とすることが相当と判断した。
また,M医師も,午後6時頃,病室でFを診察したが,腹部は触診で軟,
筋性防御等の所見はなく,貧血を認めず,X線写真と総合すると,
経過観察とするのが相当と判断し,被控訴人Eにその旨伝えた。

このため,被控訴人Eは,Fを経過観察にすることにし,看護婦に,
病名を頭部外傷Ⅱ型,バイタルサイン4時間
(最低4時間ごとに血圧等の測定や観察をするという意味)などと記した
脳神経外科入院時指示表(乙1の38頁)を作成し,看護婦に交付した。

Fは,午後6時30分頃,一般病室への入院措置がとられ,
意識障害は継続していたが,呼吸は安定しており,点滴が開始された。
被控訴人Eは,本件病院に駆けつけていた控訴人AにFの病状を説明し,
同控訴人は,その説明を聞いた後,帰宅した。


私は内科医なので、重傷そうな外傷患者が来たらすぐに外科の先生を
呼んじゃいますので、外傷患者を診る事は少ないので。
はっきり言って、この先生ほどの的確な処置はできません。

そしてこの後、自体は急変します。

ところが,同日午後7時頃,Fの容体は急変し,
看護婦から血圧測定ができないとの連絡があり,
被控訴人Eらにおいて,血液ガス分析のための採血を行ったが,
その途中で,突然呼吸停止となり,胸骨圧迫式(体外式)心マッサージ,
気管内挿管等の蘇生術を施行したが,効果がなかった。
また,ポータブルX線検査を実施したが,明らかな異常を認めず,
さらに,外傷性急性心タンポナーデであれば,心嚢穿刺によって
劇的に状態を改善できると考え,超音波ガイドを使用せずに,
左胸骨弓の剣状突起の起始部から6㎝まで穿刺する方法を試みたが,
うまくいかず,心嚢で液体を得ることはできなかった。

なお,被控訴人Eは,研修医の時の救急救命センターでの研修を除けば,
これまで心嚢穿刺をしたことがなかった。
Fは,同日午後8時7分死亡した。
被控訴人Eの死亡診断は,胸部打撲を原因とする心破裂の疑いであった。
上記認定事実を前提として,まず,Fの死因につき検討するに,
G鑑定が述べるとおり,Fの死因は外傷性急性心タンポナーデ
によるものと認めることができる。



この患者の死因が外傷性急性心タンポナーデと裁判官が言っている
根拠が非常に希薄って、医学的な事は次回に述べるとして。
交通事故後、病院に運ばれて当直医が適切な処置をして、
残念ながら患者は亡くなったのですが。
この当直医民事事件で訴えられる事になりました。

何が悪かったかって言うと、こういう事みたいです。


証拠(G鑑定)によると,Jにみられたように心破裂による
外傷性急性心タンポナーデは,出血速度が早いため,
現場即死あるいは受傷後短時間で発症するが,Fのように,
受傷後2時間半頃に症状が出るのは,心破裂は極めて稀で,
ほとんどの原因は心挫傷であること,心挫傷の場合は,
心嚢穿刺又は心嚢を切開して貯留した血液の一部を出すことで
症状を改善することができ,心臓の手術は必要ではないこと。
血液を吸引除去あるいは手術的に心嚢を開放(心嚢切開又は開窓術)
していれば,救命できた可能性が極めて高いこと,
Fは受傷から容体が急変するまでの約2時間半は循環動態も安定していたので,
この間に重度外傷患者の診療に精通する施設に搬送していれば,
ほぼ確実に救命できたことが認められる。

以上からすると,被控訴人Eとしては,遅くとも経過観察措置を講じた
時点で,速やかに胸部超音波検査を実施する必要があり,それをしていれば,
心嚢内の出血に気づき,直ちに心嚢穿刺により血液を吸引除去し,
あるいは手術的に心嚢を開放(心嚢切開又は開窓術)し,
仮に本件病院で心嚢切開又は開窓術を実施できないのであれば,
3次救急病院に搬送することによって,救命することができたということができ,
被控訴人Eの過失・注意義務違反を認めることができる。



外傷性急性心タンポナーデを見逃したのは、心エコーをしなかったからだ。
それをすれば診断がついて、患者は助かったはずだ、という理論のようです。

速やかに胸部超音波検査を実施する必要があり」って言っていますが、
胸部超音波検査心エコーって検査、私は循環器内科医だからできますが。
他の科の医者心エコーをできる人は、救急の専門家で外傷を
たくさん見ている人くらいですよ。
循環器内科医は、全国で多分2万人位いますけど、
後で出てきますが救急専門医というのは、全国で約2千人だそうです。

しかし、判決文でも指摘しているように外傷後2時間30分も
経過してからの心タンポナーデ極めて稀です。
極めて稀ですが、これを想定して循環器や救急の専門家しかできない
心エコーの検査を頻回に行っていないと、
訴えられて4000万円も支払わされるそうです。

循環器内科医は、心エコーはできますが。
お腹のエコーはできません。
外傷といえば、胸だけでなくお腹も打っていると思うので、
実際問題は全国で2千人しかいない、と言えるでしょう。

そこら辺の事情は、この裁判官もわかっているようです。


我が国では年間約2千万人の救急患者が全国の病院を受診するのに対し,
日本救急医学会によって認定された救急認定医は2千人程度(平成5年当時)
にすぎず,救急認定医が全ての救急患者を診療することは
現実には不可能であること,救急専門医救急認定医救急指導医)は,
首都圏や阪神圏の大都市部,それも救命救急センターを中心とする
3次救急医療施設に偏在しているのが実情であること。
したがって,大都市圏以外の地方の救急医療は,
救急専門医ではない外科や脳外科などの
各診療科医師の手によって支えられているのが,
我が国の救急医療の現実であること。
本件病院が2次救急医療機関として,救急専門医ではない
各診療科医師による救急医療体制をとっていたのは,
全国的に共通の事情によるものであること。
一般的に,脳神経外科医は,研修医の時を除けば,
心嚢穿刺に熟達できる機会はほとんどなく,
胸腹部の超音波検査を日常的にすることもないこと。
被控訴人Eは,胸腹部の超音波検査が必要と判断した時には,
放射線科あるいは内科に検査を依頼しており,
自ら超音波検査の結果を読影することはなかったこと。
当日,被控訴人Eとともに当直に当たっていた小児科の医師も,
日常的に超音波検査をすることはなく,
単独で超音波検査をすることは困難であったことが認められる。

そうだとすると,被控訴人Eとしては,自らの知識と経験に基づき,
Eにつき最善の措置を講じたということができるのであって,
注意義務を脳神経外科医に一般に求められる医療水準であると考えると,
被控訴人Eに過失や注意義務違反を認めることはできないことになる。
G鑑定やH鑑定も,被控訴人Eの医療内容につき,
2次救急医療機関として期待される当時の医療水準を満たしていた,
あるいは脳神経外科の専門医にこれ以上望んでも無理であったとする。



ま、そりゃそうですよね。
って思ったら、何故かこの後、全く反対の意見に覆ります。


しかしながら,救急医療機関は,「救急医療について
相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること」
などが要件とされ,その要件を満たす医療機関を救急病院等として,
都道府県知事が認定することになっており
救急病院等を定める省令1条1項),
また,その医師は,「救急蘇生法,呼吸循環管理,意識障害の鑑別,
救急手術要否の判断,緊急検査データの評価,
救急医療品の使用等についての相当の知識及び経験を有すること」
が求められている(昭和62年1月14日厚生省通知)のであるから,
担当医の具体的な専門科目によって注意義務の内容,
程度が異なると解するのは相当ではなく,本件においては
2次救急医療機関の医師として,救急医療に求められる
医療水準の注意義務を負うと解すべきである。

そうすると,2次救急医療機関における医師としては,
本件においては,上記のとおり,Fに対し胸部超音波検査を実施し,
心嚢内出血との診断をした上で,必要な措置を講じるべきであった
ということができ(自ら必要な検査や措置を講じることができない場合には,
ちにそれが可能な医師に連絡を取って援助を求める,
あるいは3次救急病院に転送することが必要であった。),
被控訴人Eの過失や注意義務違反を認めることができる。


????えーっと、最初の方では、

脳外科医小児科医超音波検査は無理。
注意義務違反を認めることはできない。
脳神経外科の専門医にこれ以上望んでも無理であったとする


って言っておきながら、この変わりっぷりは、
一体なんなんでしょうか。

あ、これかー。

2次救急医療機関の医師として,救急医療に求められる
医療水準の注意義務を負うと解すべきである。

2次救急病院の医師

救急医療について相当の知識及び経験を有する医師
常時診療に従事していること(救急病院等を定める省令1条1項)

救急蘇生法,呼吸循環管理,意識障害の鑑別,救急手術要否の判断,
緊急検査データの評価,救急医療品の使用等についての相当の知識
及び経験を有すること(昭和62年1月14日厚生省通知)


という条件を満たさないとできないって事ですね。
で、本当はこの病院で、救急をやる資格のない医師がやって
命を救えなかったから、賠償金を払って当然。
そういう事なんですねー。

なるほどー。
全国で2000人位しかいない救急認定医
そして、そのほとんどは首都圏や阪神圏の大都市部,
それも救命救急センターを中心とする
3次救急医療施設に偏在しているのが実情。

だそうですから。
多分地方で、しかも3次じゃなくて、2次救急病院にいる救急認定医
数百人くらいでしょうかねー。
ま、資格を持っていても昨今の医療崩壊によって、
救急医療をやっていない先生も結構いるでしょうけどね、実際。
ま、詳しくは知りませんが。

そういった専門の資格を持った医者が、3次救急の高度な医療施設に
集まる事は、偏在というより医療の効率化をする上で有効な事だと
私は思います。
でも、救急患者は、かなり全国に散らばっています。
全国で毎年約2千万人救急患者が病院を受診するみたいですから。
地方の2次救急病院の、救急認定医数百人で、1千数百万人
救急患者を診るっていう事なんですね。

1人当たり、年間数万人ですか。
下手したら10万人越えますかね、一年で。
しかも救急の患者だけで、平日の昼の定期外来受診は除いて。

そりゃー、救急医療崩壊どころじゃないですよねー。
でも、しょうがないですよね。
それしか人数がいないんだし。
それ以外の医師が、かなり適切と思われる医療をやっても、
救急専門医クラスの高度な医療が、2次救急の病院で行われなければ、
裁判で訴えられて法外な賠償金を取られるんだから。


2次救急をやろうって病院や医師が減るのもやむを得ませんね。
これで、産科に続いて救急医療も崩壊への道が加速しましたね。

この裁判官が医療の現場を全くわかっていないって事は、
今日の話でわかりましたが。
医療現場だけでなく、医学そのものに関しても、全く見当はずれな事を
言ってるって事は、次回以降、具体的に話しますね!

3次救急に搬送が必要な重症の病気、エコノミークラス症候群。
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病気の腎臓を移植2
「病気の腎臓を移植」の記事で書いたんですが。
もしかしたら、言葉が足りず誤解を与えてしまったかもしれませんので、
もう少し詳しく私の考えを述べさせて頂きますね。

まずは、こちらの記事をご覧ください。

<病気腎移植>万波誠医師 前任病院での移植認める

愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で病気
摘出された腎臓移植に使われた問題で、
同病院の泌尿器科部長、万波誠医師(66)が7日未明、
毎日新聞の取材に対し、
「市立宇和島病院に勤務していた90年ごろから
病気で摘出した腎臓移植を始めた」
と前任地でも疾患腎移植を行っていたことを明らかにした。
回数は「少なくとも5、6件で10件に満たない数。
徳洲会に来てからの方が多くなった」と話した。

動機については「患者さんを透析(の苦しみ)から
解放したいという思いからだった」とし、
実弟の万波廉介医師(60)らとともに
「自らが提案し、若手医師たちと一緒にやった」
と長年主導してきたことを認めた。

ドナー(臓器提供者)やレシピエント(移植を受けた患者)への
説明については「十分納得してもらっていた」とした。

これまで公にしていなかったことについては
「自分は正しいことをしていると思うが、
(世間が)理解してくれないと考え、公表しなかった」と話した。
また、「捨てられる病気腎臓を生かすというこの方法は、
生体、死体に続く第3の道になりうる」とする思いを語った。

疾患移植が明らかになったことを受け行われた4日の会見では
「04年に徳洲会病院で始めた」と話していた。
「世話になった市立宇和島病院に迷惑がかかると思ったから
(そう言った)」と釈明した。


「2006.11.7 yahooニュース」

この記事で万波誠医師が話しているように、
元はと言えば、「目の前の患者を救いたい。」
という医師であれば、当然の考えから来ているんですよね、
今回の病気腎移植は。

もちろん、万波医師の、この考え自体を否定するつもりはありません。
病気で、腎臓を摘出する人がいて、それを廃棄してしまう。
その腎臓を欲しがっている人がいて、腎臓移植に耐え得る
のであれば、それを有効利用しよう。
そういう考え方は、あって当然だと思います。

マスコミは、まず「この医者が悪い」って結論があって。
その後で、とってつけたように理由をつけて、
病気腎臓移植してけしからん。」
「同意書がない。」などと言って、論点がぼやけてしまっていますが。

「病気の腎臓を移植」の記事でも書いたように、
今回の件で最も問題になる点は、
腎臓を取る必要のなかった人から、腎臓を取ったのではないか?」
という事だと思います。
そして、その次に
腎臓を摘出する方の患者に、その腎臓を他の人に
移植するという事を説明していなかったのではないか。」
腎臓移植される側の患者に、病気腎臓(特にガン、ネフローゼ)
という事をきちんと説明していなかったのではないか。」
ガン腎臓移植したら、ガンが移るのではないか。」
という事が挙げられると思います。

ま、あくまでも一番、二番っていうのは、私の考えですけどね。

結果として、マスコミもも万波医師を批判していますが、
考え方もスタンスも全然違います。

私は病気腎臓移植する事に関して、
やみくもに反対しているわけではありません。

肝臓ではFAP(家族性アミロイドポリニューロパチー)の患者に対して、
ドミノ移植が現に行われていますし。
病気だから」っていう事と、「移植してはいけない、できない。」
という事は、医学的にイコールではないからです。

万波医師が言うように、「捨てられる病気腎臓を生かすという
この方法は、生体、死体に続く第3の道になりうる」

という可能性もありますから。

しかし、だからこそ、「きちんとした手順を踏むべきだった」と思います。

一番最初の病気腎移植の例は、本当に腎臓を摘出せざるを得ない症例で、
その説明もしていたのかもしれませんが。

だんだん数を重ねていくうちに、徐々に摘出の適応が甘くなって、
「最初から移植をする為に、取る必要のない腎臓を取ったのではないか。」
そう言われない為にも、病気腎移植をするのであれば、
移植とは関係のない第三者的立場医師にも
摘出の適応を調べてもらったり、倫理委員会を通すなど、
慎重にやるべきだったのではないか、と私は思います。

「十分に患者に説明した」、と、この医師は言っていますが、
現に「そんな話は聞いていない」と言う患者がいる。
文書もないから、結局水掛け論で、どっちの言い分が正しいかわからない。

慎重に事を運んでいれば、将来的には生体、死体に続く
第3の道
になり得たかもしれませんが、
この医師軽率な行動によって、その道が閉ざされたかもしれません。

日本で最初の心臓移植(和田移植)は、心移植の適応に
問題があったのと、結局この患者が亡くなってしまったので、
日本の移植は世界から数十年遅れていまいましたが。

今回の件も、患者を救いたいという考え自体も、
アイディアも良いとは思うのですが。
行動が軽率だったと思います。

そういう意味で、この医師に同情はできない、と私は言っています。
結局迷惑するのは、本当に移植が必要で待っている患者ですから。

もし勘違いをされた方がいらっしゃったら、ここで訂正させて頂きます。

ちなみに、ドミノ移植に関しては、こちらをどうぞ
→ → 「ドミノ移植とは」

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病気の腎臓を移植
「腎移植で叩かれる医者」 の記事に出ていた医師
この医師が、やっちゃってくれましたねー。

病気腎移植を黙認、3件はがん…宇和島徳洲会病院長ら

病気のため摘出した腎臓を別の患者に移植していた問題が
明るみに出た宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で4日、
貞島博通院長(54)と執刀医で泌尿器科部長の
万波誠医師(66)が問題発覚後初めて記者会見した。

貞島院長は「社会的に許されないかもしれないが、
これまで行った11件とも成功している。
万波先生に任せており、(病気腎移植だったことは)後から聞いて、
ある程度知っていた」と述べ、事実上、
同病院が黙認していたことを認めた。

貞島院長の説明では、病気腎の移植は、
2004年9月から06年9月の間に行われ、
摘出した腎臓の内訳は
〈1〉尿管狭さく3件〈2〉腎臓がん3件〈3〉動脈瘤(りゅう)2件
〈4〉良性腫瘍(しゅよう)2件〈5〉ネフローゼ1件――だったとした。

同病院以外で摘出手術が行われたのは5件で、
残りは院内で実施した。
1件を除いて、すべて親族外だったとした。
(後日11件全て親族外と判明)

腎臓を移植に使うことに関して提供者の同意があったかどうか
について、貞島院長は「外部で摘出した5件のうち、
文書で同意をとっているのは3件」と説明、
ほかの8件では同意書がないことを明らかにした。
提供を受ける患者側に対する同意文書については
万波医師が「ない」とした。

日本移植学会の倫理指針が規定していない病気腎
移植手術を行ったことについて、万波医師は
患者からの要望もあり、切羽詰まった状態だった。
病気腎臓でも待っている患者を助けたかった」と話した。

移植を受ける患者には「年齢や病歴を十分説明している」とし、
腎臓を摘出された患者からは「よそで使えるならと納得してもらった」
と改めて強調した。

摘出して移植に使える腎臓があれば連絡してほしいと、
外部の病院に声をかけていることを明らかにし、
病気腎臓でも移植してほしい人はいる」とした。

今後の対応について、貞島院長は「11件に関しては一例一例、
外部の専門家も入れて経緯などを検討し、
同意書がなかった事例は、弁護士などが意思確認の
有無などについて聞き取り調査をしていく」と話した。


(2006年11月4日:読売新聞)


「腎移植で叩かれる医者」 の記事で私は、
この段階では、文書を出さなかっただけで、
説明はきちんとしているし、患者も納得している。
親族かどうかを確認するのは、病院の事務の役割で、
医師の仕事ではない。
金銭の授受があった事は、本人は受け取っておらず、
患者同士の事で、それを知らないのであれば問題はない。

という、この件に関しては医師個人を責めるべきではない。
という話をしました。
あくまで、あの段階での話で、ちょっと怪しいとか、
少し記事を書くのを躊躇した、という私の勘は正しかったんですねー。


今回、新たにわかったこの件に関しては、話が全く別だと思います。

以前ブログのコメントに、私のブログは中立ではなく、
医師より医者を擁護しすぎではないか?
という事を書かれた方がいました。

その返事として、私は完全に中立ではないが、
マスコミが極端に患者より医師叩きに偏っているのに対し、
私は医師なので少し医師サイドには偏っているとは思うが、
中立より少し医師くらいだ、と自分では思っている。
という返事をさせて頂きました。

今まで、さほど悪くもないのに、医師個人の責任にするマスコミが
多かったので、「それは違う」。
という事を、具体的に論理的に説明してきたつもりだったんですが。
全ての医者を全面的に擁護する気はありません。

今回の件で、文書での同意がどーのーこーのー、とかいう以前に、
腎臓を摘出する必要の無い人の腎臓を取って、
それを移植した」
という事が最も問題になります。
もちろん、無断でという事も大事ですけどね。

これは泌尿器科の専門分野で、私は循環器内科医なので
専門ではないですけどね。

今回摘出した腎臓の基礎疾患は
〈1〉尿管狭さく3件〈2〉腎臓がん3件〈3〉動脈瘤(りゅう)2件
〈4〉良性腫瘍(しゅよう)2件〈5〉ネフローゼ1件

です。

〈1〉尿管狭さく
尿管狭窄というのは、その名の通りおしっこを通す
尿管という管が狭い病気なんですけどね。
これ、通る道が狭いだけなんで、そっちの治療をすれば、
腎臓を取る必要ないんじゃないですか?

〈2〉腎臓がん
腎臓がんで、とらなきゃいけないんなら、その腎臓を他の人に
移植したら、その人がガンになるんじゃないですか?
一部を切除して移植、って言っていますが、そしたら最初から
腎臓を全部取らないで、一部だけ切れば良いじゃないですか。

〈3〉動脈瘤(りゅう)
大動脈っていうお腹の真ん中にある動脈の一部が、
瘤(こぶ)のように大きくなる病気です。
すごく大きくなって破裂したら、ほとんど死んでしまうので、
その前に人工血管に置換する手術をします。

大動脈から腎動脈っていう血管が出ていて、そこにかかっていると、
腎臓を摘出しなきゃいけないんですか?
専門ではないので、詳しくないんですが、大昔は知りませんが、
今は腎動脈も一緒にくっついている人工血管があるのでは?

仮に切除の適応があっても、取った後は自家移植の適応では?

後日わかった事ですが。
この11件のうちの、動脈瘤というのは、
大動脈瘤ではなく、腎動脈瘤でした。
腎臓に行く腎動脈が瘤(こぶ)のように膨らむ病気です。

それ以前の別の病院で行った病気腎移植の中には、
大動脈瘤の症例があったようです。

〈4〉良性腫瘍(しゅよう)
なぜ良性なのに腎臓を摘出しなきゃいけないのか、わかりません。
取った後、良性ってわかった、って言っていますけど。
開腹して一部を迅速病理診断に出して、その場で良性ってわかれば、
腎臓そのものを取る必要がないんじゃないですか?

〈5〉ネフローゼ
腎臓がやられて、尿からたくさん蛋白が出てしまう病気です。
この病気腎臓を摘出する、という話を私は聞いたことがないんですが。
もし、腎臓を取らなきゃいけないくらい、腎臓が悪くて尿蛋白
出まくっているのであれば、移植をした人も尿蛋白が出まくって
大変な事になるはずなんですが。


専門じゃないので、かなり曖昧なんですけどね。
個別の事に関しては、泌尿器科の先生に詳しく聞くとして、
全部ではないとしても、少なくとも一部は腎臓を摘出する
必要のない人から、移植をするために取ったとしか思えません。

前回は、医師患者も説明はした、と言っていて、
でも文書がない、って話なのでさほど問題だとは思いませんが。
今回は、医師文書は取っていないが説明はした、と言っていて。
腎移植をされた側は、病気腎臓という事は聞いていない、
と言っていますから、どこまで説明したかも、怪しいです。
腎臓を取られた患者は、聞いてないって言ってますしね。

しかも、取った方の病院はそれを移植されるとは知らずに、
弟がこっそり持ち出していますし
確信犯としか思えません。

病気腎臓を移植するのは、倫理的には問題がありますが。

例えば、腎臓を摘出する患者の側は、
確実に腎臓を摘出しなきゃいけない病態である。
もちろん、その腎臓移植に使われるという説明も受けている。
そして、その腎臓は摘出した後、使える状態である。
更に、移植される側はそれが病気腎臓という事を承知で、
その後病気になるリスクもある事を知って移植を受ける。

そういう事を皆が全て承知の上でやるのであれば、
将来的には可能かもしれませんよ。
今は日本ではコンセンサスは得られていませんが。
実際、外国でやっている所もあるみたいだし。

でも、今回の場合は、
腎臓を取る必要があるかも不明。
患者に説明もしていない。
取られた側の病院も把握していないで、
弟がこっそり腎臓を持ち出している。
移植される側の患者も、きちんと説明されていない。

という事なので、正直言って今回の件ではこの医師を擁護
する気にはなれません。
医師の中には、「廃物利用だからいいじゃないか
という意見もあるようですが。
この人達の考えは「先に移植ありき」だと思います。

本当に悪いと思っていないなら、弟にこっそり持ってこさせたり
しないで、正々堂々とやれば良いじゃないですか。
やっぱり、悪いってわかっていて確信犯なのだと思いますよ。

もちろん、日本では脳死移植が少ないので、腎移植を待っている
患者がたくさんいるって問題もあるとは思いますよ。
でも、この話とは全く別だと思います。

これに関する、私のスタンスは、こちら↓
「病気の腎臓を移植2」


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薬にバーコード
再来年から、の取り違えをなくすために、
全てのにバーコードがつくんですねー。


08年からにバーコード 取り違え防止で厚労省

品名や包装がよく似た医薬品の取り違え事故を防ぐため、
厚生労働省は10月26日、医師が処方する医薬品に
2008年9月から識別用のバーコードを取り付けるよう
メーカーなどに伝えたと発表した。

対象は約1万4000品目の医療用医薬品すべてで、
薬局などで売られる一般用医薬品は対象外。
年1回しか製造していないワクチンなど
特段の事情があるものは09年9月以降の実施となる。

バーコードには商品コード、有効期限、製造番号、
数量といった情報を盛り込み、外箱だけでなく、
錠剤やカプセル剤などを包装したシートや瓶、
注射薬のアンプルなど最小単位にも付ける。

バーコードを活用すれば取り違えの医療事故を防ぐことが
できるだけでなく、製造、流通、者患への使用までの流れを
記録し、後で問題が起こった時にもさかのぼって
調べることが可能になる。

共同通信社:2006年10月27日



これは医者看護師、薬剤師などの医療従事者にとっても、
もちろん患者にとっても非常に良い事だと思いますよ。

電子カルテが導入されて、何を飲んでいるか全てがわかる病院
一カ所だけに通院している人なら楽なんですが。

同じ病院でも、電子カルテじゃない病院だと、
患者がなんのを飲んでいるか、他の科のカルテを
全部見ないとわからないですし。

ましてや、他の病院にかかっている人だと、
それはもう、大変なんですよー。

の相互作用とか、そういうのがあるので。
新たにを出す人には、基本的に今までどんな
飲んでいるかを必ず聞きます。

患者が入院する時は、必ず他の病院にかかっている人は、
飲んでいるを全部持って来てもらうんですが。

調剤薬局でもらった、何のをどの位飲んでる、
って事が書いてある説明文書を持ってきて貰えれば良いんですけど。

そのものだけ、裸で持ってくる患者も多いんですよねー。
そうなったら、薬剤師の方に判別してもらうんですが。
たまーに、判別不能とか言われて、困っちゃう事があるんですよ。

全てのにバーコードがついたら、鑑別するのも簡単だし。
薬害肝炎訴訟みたいに、何かを使ってその後病気を
発症した、とか副作用が出たとかそういう時にも、
役に経ちますよね。
誤薬の確率も減るでしょうし。


ちなみに誤薬の確率ってどの位か知っていますか?

「平成10年度疑義照会等状況調査」(調剤と情報6:87,2000)によると、
調査した処方せん1,545,703件のうち「安全上の疑義」があった
10,361件の80%(8,279件)が処方変更されているんです。
わかりやすく言うと、間違ったけど、途中で修正してセーフだった件数ですね。

それは調査した総処方せん枚数の0.54%(8,279件/1,545,703件)にあたるんです。
このパーセンテージって小さいように見えますけどね、
日本での年間の処方回数が約13億回ありますから。
この頻度を単純に当てはめるとなんと702万件にものぼるんですよー。

参考:「医薬分業の役割Ⅰーリスクマネージメントシステムとしての薬剤師業務」

前から言っていますが、医療ミスの確率っていうのは、
絶対にゼロにはならないんですよ。

だけど、ゼロに近づける為のシステムを作る事は重要なんです。
そういう意味では、一歩前進ですかね。
ま、非常に小さい一歩なんですけどね。

これを導入すると、儲かる業者がいるから導入した。
って思うのは、考えすぎでしょうかねー。

儲かる業者がいなくても、国民の健康の為に、
どんどんこういうシステムを導入して欲しいですね。

誤薬って言うけど、大学病院でもあるのかなー。
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奈良の産科医 私見
奈良の産科医の件で、これ以上の詳細はわからないと思います。
同じ様な記事が続いて申し訳ないんですが、
これ以上の進展がなければとりあえず、この記事が最後になると思うので、
私の私見を述べさせて頂きますね。

今回の件で、現場で起こった事は、カルテのコピーを元にして書いた、
「奈良の産科医 詳細2」の記事が、ほぼ正しいと思われます。

時間の経過を追っていくと、

0:14突然、意識消失、応答に返事なし。
産婦人科医師はすぐに診察瞳孔、左右差なし。
対光反射もあり偏心も認めない。血圧も安定し呼吸も安定。
痛覚刺激に顔をしかめて反応。


そして脳出血、脳梗塞などの頭の病気も頭に入れて、すぐに
念のため内科当直医(経験6年の循環器内科医)に診察を依頼しています。

マスコミは、頭のCTを撮らなかったから、この産科医が悪い。
というような論調ですが。
頭のCTというのは、ただの検査なんです。
脳出血の場合は、頭部CTを撮ればすぐに診断できますが、
脳梗塞だと、なってから半日~一日位経たないとCTでは診断できないんですよ。
完璧な検査ではないんです。

もちろん、ただの検査ですから、CTを撮った瞬間、
魔法のように脳出血が消えて、「はい、治りました
というようにはいきません。

だから、それより大事なのが、麻痺があるかとか、瞳孔がどうだとか、
神経所見はどうなのか、っていう診察なんです。
脳出血とか、脳梗塞を疑った場合ね。

それで、この産科医の先生も、頭の病気も念頭に置いて、
自分だけでなく、内科医の先生にも依頼して、確認をしています。

検査っていうのは、お金をかけて大がかりなCTとか
そういうのばっかりじゃなくて、こういう身体所見を取るっていうのも、
立派な検査です。
しかも、今回の場合は2人がかりでやっています。

この病院は、田舎町立病院なんですよ。
しかも夜中の0時

町立病院でも、昼間で放射線技師がいて、CTも稼働している
状態なら、この産科医の先生もきっと頭のCTを撮ったと思いますよ。

でも、田舎で、放射線技師も当直していないので、
呼んで来てもらって、CTの機械を立ち上げて、
それから頭のCTを撮るのに、きっと一時間位かかるんですよ。

だから、医者2人で診察をして、積極的に脳出血脳梗塞を疑わす、
神経学的な所見がなかったから、そのまま経過を見た
その判断が間違っていたとは、私は思いません。

田舎でも、夜中でも都会の昼間と同じ様な医療を受けられて当然
そうでなければ、医者は犯罪者扱い。

マスコミがそんな論調だから、地方に行く医者がより減っているんですよ。
医師不足は、地方でより顕著ですが、
その原因の一端はマスコミにあるんですが、その自覚はあるのでしょうか。


その後のカルテ(多分看護記録)を見ても

(0:30)BP156/71mmHg,顔色は良い。
(0:40)CTG 再装着。児心音良好。バイタルサイン良好。
(1:00)BP152/84mmHg,SPO2 97-98% 呼びかけに対し、
眠っているのか、返事がない。呼吸は平静でイビキも認められない。

(1:30)CTG 異常所見なし。呼びかけに対し応答なし。
よく眠っている様。顔色良好。


というように、看護師も気を遣って一時間で四回も患者を見に行っている。
医者注意して見てって指示を出しているんでしょう。
しかも、この記録を見る限り、この妊婦さんは「ただ眠っている。」
そうとしか見えないんですが。

その後1:37に急変して、搬送依頼などにてんやわんや、
という状況なんだと思います。

最初のマスコミの誤報では、6時間放置。
その後、1時間20分放置と、いつの間にか変わっていますが。
いずれにせよ、放置ではないと思います。
何回も経過を見に行って、ただ眠っていた。
それを放置とは言わないと思います。

「15分おきに入院患者全員の所に行って、みんな起こさないと、放置」
とでも言うのでしょうか。


それと、ちょっと医学的な考察。

まだ詳細がわからない頃に書いた、「奈良の産婦人科医」の記事に書いたように、
この患者が脳出血と診断した所で、患者の重症度がもっと上がるだけなので、
入院患者の受け入れが、もっと早くなるとは思えません。
0時過ぎの段階で頭のCTを撮ろうと思っても、おそらく搬送されるのが、
一時間早まっただけ、という事になると思います。

そして、今回の場合、死因脳の深い所の脳出血

の中にもいろいろあって、例えば言語をつかさどるところとか、
手や足を動かすところとか、記憶するところなんかがあるんですよ。
そこらへんが、脳出血脳梗塞でやられても、
麻痺が残ったり、記憶が一部なくなったりとか、言葉がしゃべれなくなるとか、
そういう風になるんですが、それだけでは死なないんですよ

でも、呼吸ができなくなったり、心臓が動かなくなったりしたら、死にますよね
そういう、もっと大事なところ、っていうのが、脳の深い所っていう意味です。

脳の深いところの脳出血だと、はっきりいってほとんど助かりません。
例えば、脳出血7時間で手術をしても、90%は死亡。
10%は重篤な脳障害が残り、0.1%は助かるとか

ま、例えばですけど、こんな感じだと思うんですよ。

国立循環器病センターに着いたのが朝6時で、頭のCTを撮って、
その後手術ですから、それまでに一時間はかかっているでしょう。
マスコミの言う通り、0時過ぎ頭のCTを撮ろうと思って、実際に撮っても、
おそらく手術までの時間が1時間早まるだけでしょうから。

6時間後に手術だと、85%は死亡、15%は重篤な脳障害。
助かる可能性は0.2%。
とか、その位でしょうね、せいぜい。
これだけ重い病気になってしまうと、一時間早く手術をしても、
助かる可能性はほとんどないでしょうね。

ま、これは確かな確率じゃなくって、あくまで私が便宜的に書いた確率ですが。
大きくはずれてはいないと思います。
マスコミが早くCTを撮れば助かった、って言うのであれば、
こういった確率を正確に出して言うべきだと思うんですよね。
この例なら、0.2%は助かったとか。
でも、何も具体的な数字も出さず、「助かったはず」とか。
そう言ったら、普通の人は90%位は助かった、とか思うんじゃないですかね。

およそ0.2%とかその位の確率の事を、90%とか100%のように言う報道は、
誤報と言っても良いと思います。


もう一つ、医学的な事。

これ、私の知る限りですが、他の医療関係者のブログとかでも、
誰も言っていない事なんですがね。
脳出血を発症した時間の事です。

実は、私は0時脳出血が起こったとは考えていません。
0時過ぎに一瞬意識は無くなっていますが、その時は神経学的所見もないし、
その後バイタルは安定して、すやすや寝ていますから。


むしろ、脳出血が起こったのは、

(1:37)突然の痙攣発作出現。水銀血圧計でBP200/100mmHg。
SPO2 97%、いびきをかき始める。強直性の様な痙攣を認める。


の頃か、

(2:00)BP148/75,HR76/min.SPO2 97%,R26/min.痙攣発作は認めない。
二回目のBP144/71,HR96/min. 瞳孔散大。


の頃か、

(4:30)呼吸困難状態発生。気管内挿管。

の頃

どこの時点で、って事は言えないんですが。
状況から考えて、0時の段階では脳出血が起きていなくて、
その後2時4時半かわからないけど、脳出血が起きたんじゃないかなー
って思っています。

確かな事は、国循に着いた6時以降頭のCTを撮った時には、
脳出血だった、という事だけですから。

そうであれば、マスコミの言う通り0時過ぎ頭のCTを撮っても、
何も映らない。
で、その後脳出血が起きたら、子癇の治療である安静を保たず、
頭のCTを撮ろうとして動かしたから、脳出血が起きた。
医療ミスだ。
って事になるかもしれませんね。
わかりませんけど。

私の推測では、

(1:37)突然の痙攣発作出現。

の後、

子癇の治療であるマグネゾールを注射して痙攣はおさまった。

と、あるので。
脳出血であれば、子癇の治療をしても痙攣はおさまらないと思うので。
この時点では、子癇

で、その後いつかわからないけど、脳出血を起こしたのではないかな。
って考えています。
もちろん、いつの時点で脳出血が起こったって事は、
誰にもわからないんですけどね。

今回の件で、私が最も頭にきているのは、詳細がわかってもいないのに、
医師個人の責任にして、早くCTを撮れば助かったはず。
という、マスコミの医学的な根拠のない報道に対してなので。
医療体制とか、そういう事に対しても、もっと言いたいことはあるんですが、
この位にしておきますね。

ちなみに、「ベッドに空きがない」というのは、
物理的にベッドがない、って意味じゃなくて、人手が足りないって事なんだ。
という事をわかりやすく解説したブログを見つけたので、
ちょっと紹介させていただきますね。

「とりあえず俺と踊ろう:ベッドがなくても受け入れて欲しかった。」

悪くなると、脳梗塞や脳出血を起こすかもしれない、こわーい病気
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