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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
病気の腎臓を移植
「腎移植で叩かれる医者」 の記事に出ていた医師
この医師が、やっちゃってくれましたねー。

病気腎移植を黙認、3件はがん…宇和島徳洲会病院長ら

病気のため摘出した腎臓を別の患者に移植していた問題が
明るみに出た宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で4日、
貞島博通院長(54)と執刀医で泌尿器科部長の
万波誠医師(66)が問題発覚後初めて記者会見した。

貞島院長は「社会的に許されないかもしれないが、
これまで行った11件とも成功している。
万波先生に任せており、(病気腎移植だったことは)後から聞いて、
ある程度知っていた」と述べ、事実上、
同病院が黙認していたことを認めた。

貞島院長の説明では、病気腎の移植は、
2004年9月から06年9月の間に行われ、
摘出した腎臓の内訳は
〈1〉尿管狭さく3件〈2〉腎臓がん3件〈3〉動脈瘤(りゅう)2件
〈4〉良性腫瘍(しゅよう)2件〈5〉ネフローゼ1件――だったとした。

同病院以外で摘出手術が行われたのは5件で、
残りは院内で実施した。
1件を除いて、すべて親族外だったとした。
(後日11件全て親族外と判明)

腎臓を移植に使うことに関して提供者の同意があったかどうか
について、貞島院長は「外部で摘出した5件のうち、
文書で同意をとっているのは3件」と説明、
ほかの8件では同意書がないことを明らかにした。
提供を受ける患者側に対する同意文書については
万波医師が「ない」とした。

日本移植学会の倫理指針が規定していない病気腎
移植手術を行ったことについて、万波医師は
患者からの要望もあり、切羽詰まった状態だった。
病気腎臓でも待っている患者を助けたかった」と話した。

移植を受ける患者には「年齢や病歴を十分説明している」とし、
腎臓を摘出された患者からは「よそで使えるならと納得してもらった」
と改めて強調した。

摘出して移植に使える腎臓があれば連絡してほしいと、
外部の病院に声をかけていることを明らかにし、
病気腎臓でも移植してほしい人はいる」とした。

今後の対応について、貞島院長は「11件に関しては一例一例、
外部の専門家も入れて経緯などを検討し、
同意書がなかった事例は、弁護士などが意思確認の
有無などについて聞き取り調査をしていく」と話した。


(2006年11月4日:読売新聞)


「腎移植で叩かれる医者」 の記事で私は、
この段階では、文書を出さなかっただけで、
説明はきちんとしているし、患者も納得している。
親族かどうかを確認するのは、病院の事務の役割で、
医師の仕事ではない。
金銭の授受があった事は、本人は受け取っておらず、
患者同士の事で、それを知らないのであれば問題はない。

という、この件に関しては医師個人を責めるべきではない。
という話をしました。
あくまで、あの段階での話で、ちょっと怪しいとか、
少し記事を書くのを躊躇した、という私の勘は正しかったんですねー。


今回、新たにわかったこの件に関しては、話が全く別だと思います。

以前ブログのコメントに、私のブログは中立ではなく、
医師より医者を擁護しすぎではないか?
という事を書かれた方がいました。

その返事として、私は完全に中立ではないが、
マスコミが極端に患者より医師叩きに偏っているのに対し、
私は医師なので少し医師サイドには偏っているとは思うが、
中立より少し医師くらいだ、と自分では思っている。
という返事をさせて頂きました。

今まで、さほど悪くもないのに、医師個人の責任にするマスコミが
多かったので、「それは違う」。
という事を、具体的に論理的に説明してきたつもりだったんですが。
全ての医者を全面的に擁護する気はありません。

今回の件で、文書での同意がどーのーこーのー、とかいう以前に、
腎臓を摘出する必要の無い人の腎臓を取って、
それを移植した」
という事が最も問題になります。
もちろん、無断でという事も大事ですけどね。

これは泌尿器科の専門分野で、私は循環器内科医なので
専門ではないですけどね。

今回摘出した腎臓の基礎疾患は
〈1〉尿管狭さく3件〈2〉腎臓がん3件〈3〉動脈瘤(りゅう)2件
〈4〉良性腫瘍(しゅよう)2件〈5〉ネフローゼ1件

です。

〈1〉尿管狭さく
尿管狭窄というのは、その名の通りおしっこを通す
尿管という管が狭い病気なんですけどね。
これ、通る道が狭いだけなんで、そっちの治療をすれば、
腎臓を取る必要ないんじゃないですか?

〈2〉腎臓がん
腎臓がんで、とらなきゃいけないんなら、その腎臓を他の人に
移植したら、その人がガンになるんじゃないですか?
一部を切除して移植、って言っていますが、そしたら最初から
腎臓を全部取らないで、一部だけ切れば良いじゃないですか。

〈3〉動脈瘤(りゅう)
大動脈っていうお腹の真ん中にある動脈の一部が、
瘤(こぶ)のように大きくなる病気です。
すごく大きくなって破裂したら、ほとんど死んでしまうので、
その前に人工血管に置換する手術をします。

大動脈から腎動脈っていう血管が出ていて、そこにかかっていると、
腎臓を摘出しなきゃいけないんですか?
専門ではないので、詳しくないんですが、大昔は知りませんが、
今は腎動脈も一緒にくっついている人工血管があるのでは?

仮に切除の適応があっても、取った後は自家移植の適応では?

後日わかった事ですが。
この11件のうちの、動脈瘤というのは、
大動脈瘤ではなく、腎動脈瘤でした。
腎臓に行く腎動脈が瘤(こぶ)のように膨らむ病気です。

それ以前の別の病院で行った病気腎移植の中には、
大動脈瘤の症例があったようです。

〈4〉良性腫瘍(しゅよう)
なぜ良性なのに腎臓を摘出しなきゃいけないのか、わかりません。
取った後、良性ってわかった、って言っていますけど。
開腹して一部を迅速病理診断に出して、その場で良性ってわかれば、
腎臓そのものを取る必要がないんじゃないですか?

〈5〉ネフローゼ
腎臓がやられて、尿からたくさん蛋白が出てしまう病気です。
この病気腎臓を摘出する、という話を私は聞いたことがないんですが。
もし、腎臓を取らなきゃいけないくらい、腎臓が悪くて尿蛋白
出まくっているのであれば、移植をした人も尿蛋白が出まくって
大変な事になるはずなんですが。


専門じゃないので、かなり曖昧なんですけどね。
個別の事に関しては、泌尿器科の先生に詳しく聞くとして、
全部ではないとしても、少なくとも一部は腎臓を摘出する
必要のない人から、移植をするために取ったとしか思えません。

前回は、医師患者も説明はした、と言っていて、
でも文書がない、って話なのでさほど問題だとは思いませんが。
今回は、医師文書は取っていないが説明はした、と言っていて。
腎移植をされた側は、病気腎臓という事は聞いていない、
と言っていますから、どこまで説明したかも、怪しいです。
腎臓を取られた患者は、聞いてないって言ってますしね。

しかも、取った方の病院はそれを移植されるとは知らずに、
弟がこっそり持ち出していますし
確信犯としか思えません。

病気腎臓を移植するのは、倫理的には問題がありますが。

例えば、腎臓を摘出する患者の側は、
確実に腎臓を摘出しなきゃいけない病態である。
もちろん、その腎臓移植に使われるという説明も受けている。
そして、その腎臓は摘出した後、使える状態である。
更に、移植される側はそれが病気腎臓という事を承知で、
その後病気になるリスクもある事を知って移植を受ける。

そういう事を皆が全て承知の上でやるのであれば、
将来的には可能かもしれませんよ。
今は日本ではコンセンサスは得られていませんが。
実際、外国でやっている所もあるみたいだし。

でも、今回の場合は、
腎臓を取る必要があるかも不明。
患者に説明もしていない。
取られた側の病院も把握していないで、
弟がこっそり腎臓を持ち出している。
移植される側の患者も、きちんと説明されていない。

という事なので、正直言って今回の件ではこの医師を擁護
する気にはなれません。
医師の中には、「廃物利用だからいいじゃないか
という意見もあるようですが。
この人達の考えは「先に移植ありき」だと思います。

本当に悪いと思っていないなら、弟にこっそり持ってこさせたり
しないで、正々堂々とやれば良いじゃないですか。
やっぱり、悪いってわかっていて確信犯なのだと思いますよ。

もちろん、日本では脳死移植が少ないので、腎移植を待っている
患者がたくさんいるって問題もあるとは思いますよ。
でも、この話とは全く別だと思います。

これに関する、私のスタンスは、こちら↓
「病気の腎臓を移植2」


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