「救急医療も崩壊1」に関しての、医学的な考察です。
専門用語が多いので、個別の病気に関しては、
「救急医療も崩壊2」を参考にして下さいね。
今回の話は2次救急を行う全ての病院に影響を与える判決、
という意味では奈良の産科医の件よりも、
日本の医学界に与えるダメージは大きいと思うので。
かなりマニアックな話になりますが、話していきますね!
ちなみに奈良の産科医の件に関しては、こちらを参照にして下さい。
「奈良の産婦人科医」
「奈良の産婦人科医2」
「奈良の産科医、詳細1」
「奈良の産科医 詳細2」
「奈良の産科医 私見」
今回の民事裁判の話を要約すると。
交通事故にあった人が、奈良のある二次救急病院に
午後4時47分頃運ばれ、1人はまもなく死亡。
もう1人は、いったん入院して、午後7時頃,急変。
結局午後8時7分死亡した。
という事なんですがね。
判決を要約すると、死因は心タンポナーデ。
であれば、診断をするのに心エコーという循環器の医者や、
救急専門の医師でないとできない検査が必要だ。
でも、それができなかったのは、救急病院にそういう医者を
置かなかった奈良県が悪い。
だから、奈良県は金払え。
という判決です。
今回の判決で、ネット等で問題となっている点は。
日本で2000人しかいない、救急の専門医クラスの知識や
技術を持った医者を日本全国の二次救急病院全てに、
24時間体制で配置するのは、不可能だ。
それなのに、そうしていないから、金払えという判決はおかしい。
と、そういう感じです。
で、まあ、それに関しては私も全く同意見なんですがね。
実は、医学的な考察をしたものが、私の知る限りないんですよ。
今回の判決の骨格になる所なのに、誰もその事に言及していないので、
かなり専門的な話になりますが、ここで書いていきますね。
外傷は専門ではないのですが、心臓は専門なので。
この裁判官が死因を心タンポナーデとした理由はこうです。
「奈良の民事裁判での判決文(高裁)」から抜粋。
F(亡くなった患者)はシートベルトを装着しない状態で、
ブレーキ跡もなくブロック塀に衝突しており、
高エネルギー外傷を受けたと考えられること。
血液生化学検査により、CPKの値が197mU/mlと高い数値を示した事。
受傷後循環動態が安定していたにも関わらず、
午後7時頃に容体が急変した事。
適切な心肺蘇生を施行したが、全く反応がなかった事などは、
急性心タンポナーデであると考えることによって、
F(亡くなった患者)の臨床経過を
最も合理的に説明する事が出来る。
なお、被告人E(脳外科の当直医の先生)は、Fの容体が急変した後の
午後7時頃に胸部正面単純X線撮影では、心陰影の明瞭な拡大としては
捉えることはできないので、上記X線写真で心陰影が拡大していない事
をもって、急性心タンポナーデの存在を否定する事はできない事が
認められ、上記認定、判断を左右するものではない。
また、H鑑定人(病院、医者側の鑑定人)は腹腔内出血が死亡原因である
とするが、証拠(G鑑定人:患者側の鑑定人)によると、
上記胸部正面単純X線撮影で
中心陰影が縮小していないことから、急速な出血が死亡原因とは
考えられず、その可能性は医学的に否定される事が認められ、
H鑑定(病院、医者側の鑑定)を採用する事はできない。
おおざっぱにまとめると
1,CPKの値が上昇したから、心タンポナーデだ。
2,しばらく安定していて、急変したから心タンポナーデだ。
3,適切な心肺蘇生を施行したが、全く反応がなかったから心タンポだ。
という事と、
4,X線写真で心陰影が拡大していなくても、
心タンポナーデの存在を否定する事はできない。
5、腹腔内出血ならX線写真で中心陰影(心臓の影)が縮小する
はずだから、急速な出血が死亡原因とは考えられない。
という点でしょうか。
問題点A,CPK
CPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)というのは、
心筋逸脱酵素とも言われるものなんですが。
心筋梗塞とか、今回の様に外傷とかで、心臓の筋肉(心筋)
にダメージを受けると、その値が上がります。
しかし、CPKと言うものには、もっと細かく分けると、
CPK-MBという心筋由来のものと、CPK-MMという骨格筋由来
のものと2種類あります(CPK-BBってのもホントはあるんですけどね)。
この裁判官、こういう事をわかっていないから、
CPKが上がったから、心タンポナーデだ、って言っていますが。
CPKには骨格筋由来のものもありますので。
筋肉にダメージを受けても、CPKというのは、上昇するんですよ。
今回、車がぶつかって高エネルギー外傷を受けたんですから、
当然「筋肉」にもダメージはあるはずです。
それなのに、CPKが高いから、「心臓」だ、
って言う主張は明らかに間違っています。
間違いなく、「筋肉」にも障害を受けていますから。
「心臓が障害を受けた」という根拠にはなりません。
もし、循環器に研修に来ている研修医や学生が、
レポートにこんな事を書いたら、間違いなく落第点ですよ(笑)
CPK―MBか、CPK-MMかっていう心臓由来か、
骨格筋由来かって話もそうなんですけどね。
根本的に、CPK-MB(心臓由来のCPK)って、心臓にダメージが
あってから、4~5時間してから上昇するものなんですよ。
判決文では、午後4時47分頃運ばれた、としか書いてないので。
何時に事故があって、運ばれるまでどの位の時間がたって、
事故から約何分後に採血をしたのか、って事がわからないので、
なんとも言えないんですけどね。
でも、事故から4~5時間は経ってないんじゃないですかね。
だとしたら、CPK197mU/mlって、正常値よりもちょっと高いですが、
この上昇が今回の受傷で上がったものかもわかりませんから。
筋肉のCPKって、激しい運動をしたり、ぶつけたりしただけで、
一時的に上がる事もありますからね。
もしかして、前の日に運動したから上がったとか、
転んだから上がっただけかもしれませんよ。
ま、教科書的には4~5時間って書いてありますが、
実際は2~3時間でも少しは上がる事も多いので。
ちょっと上がっていても、構わないとは思いますがね。
でも、教科書を参考にするなら、
「上がるはずはない」、って事になるはずです。
CPKの由来の話、時間の話、いずれにせよ、
「CPKが上がってるのは、心臓にダメージを負ったからだ」
という主張は、医学的に間違っていますので、
証拠として採用する事は不適切です。
ちなみに、心筋梗塞っていうのは、心臓の血管が詰まって、
心臓の筋肉がやられちゃうので、CPKが上昇するんですけどね。
その時に、上昇したっていう基準は正常値の2倍以上です。
正常値は施設によって弱冠変わるのですが、この判決文によると、
この病院の正常値は10~130mU/mlだそうです。
だとすると、2倍以上というのは260mU/ml以上ですから、
197mU/mlというのは、上昇したとは言いませんね。
ま、もう少し時間が経てばもっと上がるはずですけどね、多分。
それが、心筋由来か骨格筋由来かは別として。
でも、この数値だけを見て、上がっているかと言われれば、
医学的には、「有意な上昇とは言えない」と思います。
問題点B,胸部レントゲン写真
確かにこの裁判官が主張するように、
X線写真で心陰影が拡大していないくても、
心タンポナーデの存在を否定する事はできない。
というのは間違ってはいませんけどね。
基本的に、心タンポナーデというのは、心臓の周りに
水や血が貯まる事なので、普通はレントゲン写真で、
心臓の影が大きく見えるんですよ。
この写真でもそうですよね。
「救急医療も崩壊」
一般的には心臓の影が大きく写るのですが、
中にはレントゲンではわからないものもあるんです。
同様に、この裁判官が言っているように、
腹腔内出血ならX線写真で中心陰影(心臓の影)が縮小する
事が一般的ですが、中にはそうでないものもあります。
心タンポナーデでは、一般的にX線写真で心臓の影が大きく写るが、
中にはレントゲンではわからないものもある。
腹腔内出血では、一般的にX線写真で心臓の影が小さく写るが、
中にはレントゲンではわからないものもある。
何故上の患者側の鑑定人の意見だけ採用されて、
下の病院、医師側の鑑定人の意見は採用されないのでしょうか。
その可能性は医学的に否定される事が認められ、
H鑑定(病院、医者側の鑑定)を採用する事はできない。
とまで言っていますが、医学的に否定されるのは、
CPKが上がったから、心タンポナーデだっていう、
この裁判官の意見です。
だいたい、この裁判官、医者でもなんでもないでしょ。
全く医学の事はわかってない、って事は
この判決文を読めばわかりますが。
その人に、医学的に否定されるなんて、言われたくないですよ。
ま、私が言われた訳じゃないですけどね(笑)
2,しばらく安定していて、急変したから心タンポナーデだ。
3,適切な心肺蘇生を施行したが、
全く反応がなかったから心タンポナーデだ。
これに関しては、腹腔内出血でも言えると思いますが。
何故か、心タンポナーデのところにしか採用されていませんねー。
全く医学に関して知識のない裁判官が、先に結論ありきで
出した判決としか思えませんね、正直。
少なくとも、この判決文に書いてある事からは、
心タンポナーデと断定する根拠はありませんし、
腹腔内出血を否定する根拠もありません。
ちなみに、教科書なんかによると。
○心タンポナーデの症状
胸部圧迫感、呼吸困難(特に吸気時)、不安感、全身倦怠感、
脱力感、食欲不振、起坐呼吸、チアノーゼ、
ショック、意識障害など。
○心タンポナーデの所見
血圧低下、静脈圧上昇(頚静脈怒張・肝腫大など)以上
Beck の三徴。
心音微弱、頻脈、脈圧減少、心膜摩擦音、奇脈、Kussmaul徴候
奇脈(吸気時に収縮期血圧が10~20mmHg以上低下し
脈拍の触れが弱くなる)、全身のうっ血症状など。
とあります。
突然急変していますから。
ショック、意識障害というのはあるんですが、
それは亡くなる人全員、最後はそうなるから、置いておいて。
それ以外の所見は一つもありませんねー。
専門用語で難しいですが、全部説明するときりがないので、
やりませんがね。
全然当てはまらないんですよー。
脈圧減少ないかなー、ってもう一回判決文見直して、
血圧を確認したら、血圧は158/26mmHg周辺で推移
って、下の血圧26mmHgとか、ほとんどあり得ないんですけど(笑)
ま、少なくとも脈圧減少はなさそうですね。
その後の経過はわからないんですけど、
突然急変するまで、何も書いていませんから。
特になかった、って事なんでしょうかね。
やっぱ、カルテのコピーがないと、ここらへんが限界ですね。
でも、普通は事故で人が亡くなったら、解剖をするんですけどねー。
今回していないんでしょうかねー。
解剖していれば、心臓の外側(心嚢)に血液が何cc貯まっていたとか、
心臓に大きな傷があるから、心破裂だ、とか。
腹腔内に何cc出血したから、腹腔内出血だ、って事が
わかるはずなんですけど。
なぜか、判決文に解剖の話が一行も出てきません。
解剖の結果を見れば、こんなレントゲンがとか、CPKがとか、
不毛な議論をしなくて良いんですけどねー。
ま、死因が何か、確実にわかるって保証はないんですけどね。
今回の判決の要旨は
事故で人が亡くなった
→死因は心タンポナーデ
→心エコーをやれば診断できたはず
→診断できれば、心嚢穿刺するか、自分で出来ないんなら、
それができる施設に送れば助かったはず
→心エコーを出来ない医者を救急病院に当直させたやつが悪い
→奈良県は金払え
そういう事だと思うんですが。
最初の前提となる、
事故で人が亡くなった
→死因は心タンポナーデ
という点が、根拠に乏しいですからねー、正直。
というか、全く医学的根拠なしですね、この判決文では。
医学的根拠がないのに、このまま確定したら、
ちょっと情けないですね、正直。
多分最高裁まで争うと思いますが、被告側、弁護側それぞれ、
医学的な根拠も、もっと詳しく述べて欲しいところですね。
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専門用語が多いので、個別の病気に関しては、
「救急医療も崩壊2」を参考にして下さいね。
今回の話は2次救急を行う全ての病院に影響を与える判決、
という意味では奈良の産科医の件よりも、
日本の医学界に与えるダメージは大きいと思うので。
かなりマニアックな話になりますが、話していきますね!
ちなみに奈良の産科医の件に関しては、こちらを参照にして下さい。
「奈良の産婦人科医」
「奈良の産婦人科医2」
「奈良の産科医、詳細1」
「奈良の産科医 詳細2」
「奈良の産科医 私見」
今回の民事裁判の話を要約すると。
交通事故にあった人が、奈良のある二次救急病院に
午後4時47分頃運ばれ、1人はまもなく死亡。
もう1人は、いったん入院して、午後7時頃,急変。
結局午後8時7分死亡した。
という事なんですがね。
判決を要約すると、死因は心タンポナーデ。
であれば、診断をするのに心エコーという循環器の医者や、
救急専門の医師でないとできない検査が必要だ。
でも、それができなかったのは、救急病院にそういう医者を
置かなかった奈良県が悪い。
だから、奈良県は金払え。
という判決です。
今回の判決で、ネット等で問題となっている点は。
日本で2000人しかいない、救急の専門医クラスの知識や
技術を持った医者を日本全国の二次救急病院全てに、
24時間体制で配置するのは、不可能だ。
それなのに、そうしていないから、金払えという判決はおかしい。
と、そういう感じです。
で、まあ、それに関しては私も全く同意見なんですがね。
実は、医学的な考察をしたものが、私の知る限りないんですよ。
今回の判決の骨格になる所なのに、誰もその事に言及していないので、
かなり専門的な話になりますが、ここで書いていきますね。
外傷は専門ではないのですが、心臓は専門なので。
この裁判官が死因を心タンポナーデとした理由はこうです。
「奈良の民事裁判での判決文(高裁)」から抜粋。
F(亡くなった患者)はシートベルトを装着しない状態で、
ブレーキ跡もなくブロック塀に衝突しており、
高エネルギー外傷を受けたと考えられること。
血液生化学検査により、CPKの値が197mU/mlと高い数値を示した事。
受傷後循環動態が安定していたにも関わらず、
午後7時頃に容体が急変した事。
適切な心肺蘇生を施行したが、全く反応がなかった事などは、
急性心タンポナーデであると考えることによって、
F(亡くなった患者)の臨床経過を
最も合理的に説明する事が出来る。
なお、被告人E(脳外科の当直医の先生)は、Fの容体が急変した後の
午後7時頃に胸部正面単純X線撮影では、心陰影の明瞭な拡大としては
捉えることはできないので、上記X線写真で心陰影が拡大していない事
をもって、急性心タンポナーデの存在を否定する事はできない事が
認められ、上記認定、判断を左右するものではない。
また、H鑑定人(病院、医者側の鑑定人)は腹腔内出血が死亡原因である
とするが、証拠(G鑑定人:患者側の鑑定人)によると、
上記胸部正面単純X線撮影で
中心陰影が縮小していないことから、急速な出血が死亡原因とは
考えられず、その可能性は医学的に否定される事が認められ、
H鑑定(病院、医者側の鑑定)を採用する事はできない。
おおざっぱにまとめると
1,CPKの値が上昇したから、心タンポナーデだ。
2,しばらく安定していて、急変したから心タンポナーデだ。
3,適切な心肺蘇生を施行したが、全く反応がなかったから心タンポだ。
という事と、
4,X線写真で心陰影が拡大していなくても、
心タンポナーデの存在を否定する事はできない。
5、腹腔内出血ならX線写真で中心陰影(心臓の影)が縮小する
はずだから、急速な出血が死亡原因とは考えられない。
という点でしょうか。
問題点A,CPK
CPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)というのは、
心筋逸脱酵素とも言われるものなんですが。
心筋梗塞とか、今回の様に外傷とかで、心臓の筋肉(心筋)
にダメージを受けると、その値が上がります。
しかし、CPKと言うものには、もっと細かく分けると、
CPK-MBという心筋由来のものと、CPK-MMという骨格筋由来
のものと2種類あります(CPK-BBってのもホントはあるんですけどね)。
この裁判官、こういう事をわかっていないから、
CPKが上がったから、心タンポナーデだ、って言っていますが。
CPKには骨格筋由来のものもありますので。
筋肉にダメージを受けても、CPKというのは、上昇するんですよ。
今回、車がぶつかって高エネルギー外傷を受けたんですから、
当然「筋肉」にもダメージはあるはずです。
それなのに、CPKが高いから、「心臓」だ、
って言う主張は明らかに間違っています。
間違いなく、「筋肉」にも障害を受けていますから。
「心臓が障害を受けた」という根拠にはなりません。
もし、循環器に研修に来ている研修医や学生が、
レポートにこんな事を書いたら、間違いなく落第点ですよ(笑)
CPK―MBか、CPK-MMかっていう心臓由来か、
骨格筋由来かって話もそうなんですけどね。
根本的に、CPK-MB(心臓由来のCPK)って、心臓にダメージが
あってから、4~5時間してから上昇するものなんですよ。
判決文では、午後4時47分頃運ばれた、としか書いてないので。
何時に事故があって、運ばれるまでどの位の時間がたって、
事故から約何分後に採血をしたのか、って事がわからないので、
なんとも言えないんですけどね。
でも、事故から4~5時間は経ってないんじゃないですかね。
だとしたら、CPK197mU/mlって、正常値よりもちょっと高いですが、
この上昇が今回の受傷で上がったものかもわかりませんから。
筋肉のCPKって、激しい運動をしたり、ぶつけたりしただけで、
一時的に上がる事もありますからね。
もしかして、前の日に運動したから上がったとか、
転んだから上がっただけかもしれませんよ。
ま、教科書的には4~5時間って書いてありますが、
実際は2~3時間でも少しは上がる事も多いので。
ちょっと上がっていても、構わないとは思いますがね。
でも、教科書を参考にするなら、
「上がるはずはない」、って事になるはずです。
CPKの由来の話、時間の話、いずれにせよ、
「CPKが上がってるのは、心臓にダメージを負ったからだ」
という主張は、医学的に間違っていますので、
証拠として採用する事は不適切です。
ちなみに、心筋梗塞っていうのは、心臓の血管が詰まって、
心臓の筋肉がやられちゃうので、CPKが上昇するんですけどね。
その時に、上昇したっていう基準は正常値の2倍以上です。
正常値は施設によって弱冠変わるのですが、この判決文によると、
この病院の正常値は10~130mU/mlだそうです。
だとすると、2倍以上というのは260mU/ml以上ですから、
197mU/mlというのは、上昇したとは言いませんね。
ま、もう少し時間が経てばもっと上がるはずですけどね、多分。
それが、心筋由来か骨格筋由来かは別として。
でも、この数値だけを見て、上がっているかと言われれば、
医学的には、「有意な上昇とは言えない」と思います。
問題点B,胸部レントゲン写真
確かにこの裁判官が主張するように、
X線写真で心陰影が拡大していないくても、
心タンポナーデの存在を否定する事はできない。
というのは間違ってはいませんけどね。
基本的に、心タンポナーデというのは、心臓の周りに
水や血が貯まる事なので、普通はレントゲン写真で、
心臓の影が大きく見えるんですよ。
この写真でもそうですよね。
「救急医療も崩壊」
一般的には心臓の影が大きく写るのですが、
中にはレントゲンではわからないものもあるんです。
同様に、この裁判官が言っているように、
腹腔内出血ならX線写真で中心陰影(心臓の影)が縮小する
事が一般的ですが、中にはそうでないものもあります。
心タンポナーデでは、一般的にX線写真で心臓の影が大きく写るが、
中にはレントゲンではわからないものもある。
腹腔内出血では、一般的にX線写真で心臓の影が小さく写るが、
中にはレントゲンではわからないものもある。
何故上の患者側の鑑定人の意見だけ採用されて、
下の病院、医師側の鑑定人の意見は採用されないのでしょうか。
その可能性は医学的に否定される事が認められ、
H鑑定(病院、医者側の鑑定)を採用する事はできない。
とまで言っていますが、医学的に否定されるのは、
CPKが上がったから、心タンポナーデだっていう、
この裁判官の意見です。
だいたい、この裁判官、医者でもなんでもないでしょ。
全く医学の事はわかってない、って事は
この判決文を読めばわかりますが。
その人に、医学的に否定されるなんて、言われたくないですよ。
ま、私が言われた訳じゃないですけどね(笑)
2,しばらく安定していて、急変したから心タンポナーデだ。
3,適切な心肺蘇生を施行したが、
全く反応がなかったから心タンポナーデだ。
これに関しては、腹腔内出血でも言えると思いますが。
何故か、心タンポナーデのところにしか採用されていませんねー。
全く医学に関して知識のない裁判官が、先に結論ありきで
出した判決としか思えませんね、正直。
少なくとも、この判決文に書いてある事からは、
心タンポナーデと断定する根拠はありませんし、
腹腔内出血を否定する根拠もありません。
ちなみに、教科書なんかによると。
○心タンポナーデの症状
胸部圧迫感、呼吸困難(特に吸気時)、不安感、全身倦怠感、
脱力感、食欲不振、起坐呼吸、チアノーゼ、
ショック、意識障害など。
○心タンポナーデの所見
血圧低下、静脈圧上昇(頚静脈怒張・肝腫大など)以上
Beck の三徴。
心音微弱、頻脈、脈圧減少、心膜摩擦音、奇脈、Kussmaul徴候
奇脈(吸気時に収縮期血圧が10~20mmHg以上低下し
脈拍の触れが弱くなる)、全身のうっ血症状など。
とあります。
突然急変していますから。
ショック、意識障害というのはあるんですが、
それは亡くなる人全員、最後はそうなるから、置いておいて。
それ以外の所見は一つもありませんねー。
専門用語で難しいですが、全部説明するときりがないので、
やりませんがね。
全然当てはまらないんですよー。
脈圧減少ないかなー、ってもう一回判決文見直して、
血圧を確認したら、血圧は158/26mmHg周辺で推移
って、下の血圧26mmHgとか、ほとんどあり得ないんですけど(笑)
ま、少なくとも脈圧減少はなさそうですね。
その後の経過はわからないんですけど、
突然急変するまで、何も書いていませんから。
特になかった、って事なんでしょうかね。
やっぱ、カルテのコピーがないと、ここらへんが限界ですね。
でも、普通は事故で人が亡くなったら、解剖をするんですけどねー。
今回していないんでしょうかねー。
解剖していれば、心臓の外側(心嚢)に血液が何cc貯まっていたとか、
心臓に大きな傷があるから、心破裂だ、とか。
腹腔内に何cc出血したから、腹腔内出血だ、って事が
わかるはずなんですけど。
なぜか、判決文に解剖の話が一行も出てきません。
解剖の結果を見れば、こんなレントゲンがとか、CPKがとか、
不毛な議論をしなくて良いんですけどねー。
ま、死因が何か、確実にわかるって保証はないんですけどね。
今回の判決の要旨は
事故で人が亡くなった
→死因は心タンポナーデ
→心エコーをやれば診断できたはず
→診断できれば、心嚢穿刺するか、自分で出来ないんなら、
それができる施設に送れば助かったはず
→心エコーを出来ない医者を救急病院に当直させたやつが悪い
→奈良県は金払え
そういう事だと思うんですが。
最初の前提となる、
事故で人が亡くなった
→死因は心タンポナーデ
という点が、根拠に乏しいですからねー、正直。
というか、全く医学的根拠なしですね、この判決文では。
医学的根拠がないのに、このまま確定したら、
ちょっと情けないですね、正直。
多分最高裁まで争うと思いますが、被告側、弁護側それぞれ、
医学的な根拠も、もっと詳しく述べて欲しいところですね。
進んだら、心筋梗塞にもなっちゃうこわーい病気糖尿病。
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