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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
医師不足対策、与党案
選挙の前だから、名前だけは医師不足対策
って、与党は言っていますけど。
あくまで、医師の数は足りている。
問題なのは、医師の偏在だ。

って言ってる限りは、絶対に根本的な解決策は
出てこない
のですが。
予想通り、選挙対策目的の、
小手先だけの医師不足対策が発表されましたね。


医師不足:政府・与党が対策案 研修医のへき地誘導など

政府・与党が31日の医師確保対策に関する協議会で決定する
医師不足対策の原案が27日、明らかになった。
対策は6項目で、地方の医師不足を招いたとされる
臨床研修制度に関し、研修医が集中する大都市圏の定員を減らし、
若手をへき地勤務へと誘導することなどが目玉。
6月に決める「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」
(骨太の方針)に盛り込んだうえで、与党の参院選公約とする。

臨床研修制度は、研修医と厚生労働省の指定病院
双方の希望が一致して研修先が決まる。
昨年の場合、定員1万1306人に対し、
研修先が決まったのは8094人。
受け入れ枠が上回り地方には1人もいない指定病院もあった。
このため、大都市圏の枠を減らす案が浮上。
政府・与党はへき地の研修医に対し、将来進みたい
分野に行けるよう留学の機会を与えたり、
収入加算などの優遇措置を設ける意向だ。

医師、看護師、助産師の業務分担の見直しも打ち出した。
日本医師会などの反発を避けるために明記は避けたものの、
医師の業務の一部を看護師らに権限委譲し、
医師の負担軽減を図る。
また、医師が集中している地域の拠点病院
医師バンクを設置、都道府県に医師不足地域への
医師派遣をさせる一方、対応できない県の救済のため、
国レベルで全国に医師を派遣できる体制を整備する。
このほか、大学医学部定員の「地域枠」拡充、
女性医師の働きやすい環境整備なども盛り込んだ。

◆政府・与党の「緊急医師確保対策」の骨子◆
・定年した勤務医らを登録し、緊急の医師不足時には
都道府県の要請で国が人材を派遣するシステム構築
・勤務医の過重労働を解消するための勤務環境の整備
(交代制勤務の導入
医師、看護師、助産師らの業務の分担の見直し)
・女性医師の働きやすい環境の整備
研修医の都市への集中の是正
・医療リスクに対する基本体制の整備
(訴訟率の高さが医師不足を招いている産科で、
医療事故補償制度を創設
▽診療にかかわる死因を究明する制度をつくる)
医師不足の地域や診療科で勤務する医師の養成の推進
(大学医学部定員の地域枠を拡充、国が奨学金を支給) 

『毎日新聞 2007年5月28日』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070601-00000001-san-pol


与党が「目玉」って言っている対策について。
どこら辺が小手先の対策か、って事を。
具体的に指摘していきましょうか。

>地方の医師不足を招いたとされる臨床研修制度に関し

はい!
これ間違い
医師不足の「原因」は、「臨床研修制度」ではありません。
日本の医者の総数は、臨床研修制度が始まる前も後も、
ほとんど変わっていませんから
臨床研修制度のせい、ってのは、明らかに違いますよね。
日本の医師不足原因は、
政府の「医師数削減策」のせいです。

『医師人口比。日本、20年に最下位へ』
の記事を始め、このブログでも何回も書いていますけど。
日本の人口当たりの医師は、先進国中最下位
十数年後には、韓国やトルコ、メキシコにも
抜かれるくらいの少なさです。

臨床研修制度が始まるから、
日本では医師不足だったのですが。
臨床研修制度が始まって、それが「顕在化」しただけです。

ちょっと医学用語になってしまいますけど。
臨床研修制度は、日本の医師不足の「原因」ではなく、
増悪因子」と言うのが正しいと思います。
増悪因子」っていうのは、「促進させたもの
って感じでしょうかね。
一般の人達にもわかりやすく言うと。

しかも、この「臨床研修制度」って言ったって。
現場の意見も聞かずに、「厚労省が勝手に作った制度
ですからね。
なんか、「人ごと」みたいに言ってますけど。
仮に、臨床研修制度が悪い、って言うなら、
それは、厚労省が悪い、って言ってるのと同じですから。
今度新しい制度を作るときは、現場の意見を聞いて
とか、やり方を変えるべきなのですが。
全く、そんな事はないようですね。
間違いを認めない限り、間違いは繰り返されるでしょうね。


研修医が集中する大都市圏の定員を減らし、
若手をへき地勤務へと誘導することなどが目玉。

>昨年の場合、定員1万1306人に対し、
研修先が決まったのは8094人。
受け入れ枠が上回り地方には1人もいない指定病院もあった。
このため、大都市圏の枠を減らす案が浮上。

>・研修医の都市への集中の是正


はい!
これ、問題のすり替え

日本で不足しているのは、「研修医」だけではありません。
それなのに、これは「医師不足」ではなく
研修医不足」に問題をすり替えています。

「地方で研修医が足りない。」
って言ってる人、誰かいますか?
日本中で医師不足ですから。
特に地方では、「研修医も含めて医者の数が
足りないのでしょうけど。
研修医が足りないからなんとかしてくれ。」
って言っている地方はないですよ。

地方の人達からしたって、「医師免許はある」けど、
全然患者を診れない医者」に来て貰ったって困るでしょ。
でも、この対策は、あくまで「研修医」を地方に送る
って政策ですよね、要は。
はっきり言って、そんな事したって、
ほとんど何の解決にもなりません

地方で、医師免許を持っている人の数が増えるから。
現場を知らない役人は、それで満足かもしれませんけどね。
彼ら以外、実際に地方に住んでいる人達、
それに、地方に行かされる研修医も含め、
ほとんど良い事はありません。

問題をすり替えるのが目玉」ってのも。
国民を舐めるのも、いい加減にして欲しいですね。


それと、医師不足と、話は少し変わるのですが。
『医学部に僻地勤務枠』
『医学部にへき地勤務枠2』
あたりの記事にも書きましたけど。
医者になって、一番重要なのは、最初の5年
その中でも、最初の1,2年目っていうのが、
最も大事だと思います。
だから、「研修ができる病院」、っていうのは、
複数の指導医が各科にいて。
手術や検査なんかの症例もそこそこある病院

じゃないと、駄目なんですよ。

医者っていうのは、ある意味では「職人」ですから。
を経験する事も大事なんですよ。
たくさん数だけこなせばよい、って訳ではないですけど。
いろんな指導を受けながら、それを実践して。
それで初めて「身に付く」んですよ。

机上の空論ばっか言ってる役人には
わかんないかもしれませんけどね。
医者になって最も大事な最初の1,2年を、
そういうきちんとした教育ができない病院で過ごしたら。
当然、その医者レベルは下がります
そして、それを取り戻すのは、容易じゃないですから。
医者としての、残りの30年、40年
レベルが低いままの医者
でいる、って事になります。

もちろん、その後自分で勉強したり、トレーニングをして、
立派な医師になる方達もいますけど。
全体として、レベルが下がる事は間違いありません。


>昨年の場合、定員1万1306人に対し、
研修先が決まったのは8094人。


定員1万1306人っていうのは。
うちの病院に、研修医を出してくれ。
って手を挙げた病院、全部
を合計した数ですよ。
そいで、8094人っていうのは、ほぼ研修医の総数ですね。
医師免許を貰っても、2年間の研修を受けなければ、
日本では普通の保険医として今後働く事はできないので。
最初から、美容整形しかやらない、とか。
研究しかやらない、って本当に特殊な0.1%位の人を除いて、
医師免許を貰った人、ほぼ全員の数です。

そいで問題になるのは。
定員1万1306人
このうち、研修医受け入れる能力のない病院
って言ったら、ちょっとかわいそうなんですが。
でも、きちんとした研修が出来る能力のない病院
っていうのも、かなり含まれるんですよ。

研修医も、バカではないですから。
今後の自分の医者としての人生がかかっていますから。
自分で調査して、そういう病院には行ってないんですよ。
だから、手を挙げても研修医が来ない病院がある、
って事なんですよ。

そういう病院を淘汰する為
病院同士を競争させて、病院のレベルを上げる為。
それで、わざと研修医の人数よりも
定員を多くしたはずなのですが。
それを、手の平返したように突然止める。
って事なんですよね。

で、今与党が言っている案。
この新聞記事には書いてないけど。
定員と研修医の数をぴったり同じにしたら
どうなるか、って言うと。
本来であれば、研修医を受け入れる能力がないから。
研修医が自分では行かない。
って言って、自然に淘汰されていた病院にまで
研修医が行かされる、って事になるんですよ。

そんな病院に行ったら。
元がいくら優秀な研修医だとしても、
所詮、医学部を出たばっかりの人間ですから。
きちんとしたトレーニングがされなかったら、
きちんとした医者ができるはずありません。
そういう人達がたくさん出来るので。
当然、若い医者のレベルは下がります

そういう点でも、かなり問題がある案なんですよね、これ。
そんな事考えずに、とりあえず少しでも、
地方に「医師免許を持った人の数が増えれば良いだろ。」
って、案なんですよねー、これ。

この件に関しては、Yosyan先生が別の視点から斬っていますので、
そちらも見て下さいね!

→ 『新小児科医のつぶやき:緊急医師確保対策』

中間管理職先生も、おもしろおかしく書いていますよ!
→ 勤務医 開業つれづれ日記:寸劇 厚労省君と医師 
「昨秋スタートの国立病院間の医師派遣、半年で打ち切りに」


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→ 『医者のホンネが丸わかり!』


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