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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
加古川心筋梗塞事件、判決文4
「加古川心筋梗塞事件、判決文3」の続きです。
さんざん引っ張っちゃったけど。
ここが、加古川心筋梗塞事件の裁判での
一番の問題点だと思います。

○問題点1

致死的不整脈(心室細動)がいつ発生するか

「加古川心筋梗塞事件、判決文」によると、

>認定の医学的知見及び調査嘱託の
結果によれば,急性心筋梗塞患者を受け入れた
専門病院としては,PCIが実施されるまでの間,
CCUにおいて効果的な不整脈管理がされ,
致死的不整脈が発生すれば,
速やかに除細動などの救急措置が
行われたであろうということができる。
すなわち,本件注意義務が尽くされていれば,
14時25分心室細動が発生したのに
電気的除細動さえもされないという
最悪の事態を避けることができたはずである。


この裁判官は、14時25分心室細動が発生した
って断定していますけど。
モニターがついていたのか、ついていなかったのか
はっきりしないので、この点はなんとも言えませんが。

100歩譲って、この裁判官の言う通り、
モニターがついていなくって、
この段階で心室細動になったとしますか。

でも、裁判所が認定した時間経過を見ても、

>14時25分,救急車到着。本件患者は,
内科処置室の被告病院のストレッチャーの上で
点滴を受けており,意識は清明。

14時30分,救急車のストレッチャーに移す際に
意識喪失,呼吸不安定。
ストレッチャーに移された直後に徐脳硬直が見られた。


って書いてあるんだから。
普通に考えたら、14時25分には意識清明って
書いてあるんだから。
心室細動になったのはここじゃなくて。

>14時30分,救急車のストレッチャーに移す際に
意識喪失,呼吸不安定。
ストレッチャーに移された直後に徐脳硬直が見られた。


のところでしょ。

これが心室細動の症状だとしたら、
心室細動になったのは、この裁判官が言っている
14時25分ではなくて、14時30分です。
これだけで、この裁判官が文章をちゃんと読んでいないか、
心室細動ってどんなものかわかっていないか、
のどちらか、って事が推察されます。

でも、これ。
例えば、この裁判官が言っているように、
12時40分頃患者が病院に来て心電図撮って。
すぐに搬送を依頼して、他の病院に送ったとしても。
「必ず、14時30分に心室細動になった。」
って、証明できるんですか?

むしろ、それより。
>救急車のストレッチャーに移す際に 意識喪失,呼吸不安定。
ストレッチャーに移された直後に徐脳硬直が見られた。


って言っているんだから。
もっと前に、救急車での搬送を依頼して。
そいで、ストレッチャーに移して救急車に乗せようとしたら、
心室細動になった
、とかって事はないんですか、絶対に。

患者の体を移そうと思って、その時に
ストレスがかかって心室細動になった。
もしくは、心筋梗塞とは全く別の、
大動脈解離があって、大動脈が破裂した、とか。
脳出血がその時に起こったとか。
心臓にあった血栓が飛んで脳梗塞になった。
下肢の静脈にあった血栓が飛んで肺梗塞になった。

そういった可能性は、全くないんですか?

何があったとしても、どんな事があったとしても、
14時30分(25分)に心室細動が起きる、
って断定できるんでしょうか、この裁判官。

そんな事を証明できる人間は、世界中探したって、
どこにもいないんですが。

「加古川心筋梗塞事件、判決文3」でも書いた通り、
心室細動になったとしても、助からない可能性も
あるんですけどねー。


○問題点2

生存確率

更に、あと500歩くらい譲って。
当直医(看護師)はモニターもつけていてないし。
搬送が遅れたのも、当直医の責任だったとしますか。

それでも、この患者が生存できた可能性は
90%なんでしょうか、本当に。

私は、この裁判官の論理はおかしい、と思います。

森功って医師が、この裁判では鑑定していて。
その医師は、なんか問題のある鑑定医らしいのですが。
少なくとも、この裁判に関しては、
基本的には、問題ないと思います。
ですから、この内容を使って、説明していきましょうか。

>再灌流療法導入以前の院内死亡率は
20パーセントであったのに対し,導入後は
10パーセント又は5パーセント前後へと減少しているとされる。


再灌流療法っていうのは、何度も出ている
PCI(経皮的冠動脈形成術)って事と同じです。
再灌流療法導入以前の治療っていうのは、
内科的治療を行った場合って事です。

医学用語の解説なんかについては、
「加古川、心筋梗塞事件」
「加古川、心筋梗塞事件2」
なんかも読んで、参考にして下さいね!


前にも書いた事ですけど。
最近の心筋梗塞では、病院に運ばれた後
PCIを行えば、生存率は90%位
逆に言うと、死亡率約10%って事になります。
心筋梗塞で亡くなる方は、病院に来る前に
亡くなっている方が比較的多いので。
病院に来る前に亡くなる方が10%弱ってとこです。

で、この鑑定にも書いてありますけど。
PCIをしなかった場合。
内科的治療の場合、院内死亡率は約20%です。

この当直の先生。
心筋梗塞って診断して、内科的治療である点滴の治療をして。
いろいろな病院に電話して、結局時間がかかって
70分経っていますけど。
70分の間、裁判では認定されていませんけど、
いろんな病院に電話をかけて。
そして、内科的治療も行っているんですよ。

ここ、ポイントです。

心筋梗塞内科的治療を行った場合。
現在の医療では、院内死亡率20%
PCIを行えば、院内死亡率10%

だから、裁判では認定されていませんけど。
他の病院に電話をかけたりして70分の時間が
経ったのではないとしても。
内科的治療を行って、結果的に残念ながら
患者が亡くなっているわけですから。

死亡率10%が20%になっただけですよ。
この裁判官の理論で言えば、
20-10=10%ですよ。
助かった可能性は。

この患者は死亡したのだから、死亡率100%
だから、
100-10=90%
なんて数字はどこにも出てきませんよ。


この理屈が通るんだったら。
心筋梗塞患者PCIを行って、
患者が不幸にも亡くなりました。
って事ありますよね。
10人に1人位は。
死亡率10%なんですから。

その時に、内科的治療だったら死亡率20%なんだから。
100-20=80%
の確率で助かったはず。
とか、わけのわからない理屈が通用する、って事ですよ。

心筋梗塞の治療はPCIだ、ってほざいておきながら、
こんな理屈が通ってしまうんですよ。
この裁判官の理屈が通るなら。
明らかにおかしいでしょ、それ。

何やったって、結局患者が亡くなったら。
それが、病気で亡くなったとしたって、
死亡率は結果的に100%なんだから。
どんな事したって、医者が負けるって事になりますが。


裁判官は、医師の鑑定書がなければ判断できない。
って確かにそうですけどね。
鑑定書の意見を、自分の理屈でめちゃくちゃに
都合の良いように変えちゃって良いんですか?


全く意味がわかりません。

仮に、この当直医に過失があったとしても。
この裁判官の言う通り、モニターも最初からつけていなくって。
他の病院に電話をかけて、搬送が遅れたのでもなく。
死因は、大動脈解離、大動脈破裂、脳出血、脳梗塞、
肺梗塞など、他の病気ではなくって。
房室ブロック、心破裂、心原性ショックでもなく。
心筋梗塞による、心室細動で。
心室細動は、電気ショック(DC)をかければ、
100%救命できる、としても。

この当直医の過失割合は、10%なんじゃないでしょうか。


>原告の請求額がすべて認められている


っていのうは、やはり問題だと思いますが。


それ以外にも、モニターの装着に関しての判断でも。

>「Z医師は,問診後,継続的なモニタリングを
していたと主張し,Z医師の証言,
診療録の記録および診療報酬請求書にも,
その主張に沿う部分がある。

しかしながら,診療報酬請求書の記録によると,
これは本件患者来院時間から死亡時間までの
時間すべてに相当するものであって,
実際に装着していた時間を記録したものとは考えにくく,
後になって来院した時刻と死亡した時刻をもとに算定した
時間を記録したものとみられ,
その間に継続的なモニタ装着がなされていた
との事実を裏付ける証拠としての
証明力は低いものといわざるを得ない。


モニターをつけた、って証拠は。

>「Z医師は,問診後,継続的なモニタリングを
していたと主張し,Z医師の証言,
診療録の記録および診療報酬請求書にも,
その主張に沿う部分がある。


であるんですよね、しっかり。

>診療報酬請求書の記録によると,
これは本件患者来院時間から死亡時間までの
時間すべてに相当するものであって


そりゃ、そうですよ。
心筋梗塞が疑わしい患者が来る、って
最初からわかっているんですから。
患者が病院に来たら、すぐにモニターをつけますよ、
ほとんどの病院では。

仮にその時点ではつけなかったとしても、
心電図をつけて心筋梗塞って診断して、
内科的治療を行っているんですよ。
それなのに、モニターをつけない病院なんてあるんですか?
救急患者を受け入れる病院で、そんな病院があったら、
是非教えて貰いたいですね、この裁判官に。

モニターをつけた、って証拠がいくつかあって。
状況からも、日本全国、99%以上の病院で、
こういう状況だったら、モニターをつけるだろう、
って事が疑われて。
モニターをつけていない、って証拠は一つもなくて。
それでも、

>実際に装着していた時間を記録したものとは考えにくく

>継続的なモニタ装着がなされていた
との事実を裏付ける証拠としての
証明力は低いものといわざるを得ない。


だ、そうです。

正直言うと、今回の場合。
最初はモニターをつけていて。
ストレッチャーに乗せる時に、
一時的にモニターをはずしてしまった。
という可能性が、一番高いかな、
と、個人的には思いますけどね。

それにしたって、この裁判官の認定は、
最初から結論ありきとしか思えませんがねー。


医療現場の事も全くわかっていないし。
論理構成もできず、医師の鑑定の意見を
素人判断で、都合の良いように変更して。
最初から医者が悪い、って結論ありきで
出した判決としか思えないのですが。



それにしても、この裁判の結果、
控訴しない病院、弁護士も。
一体、何を考えているんだか。

もしこれから、こういう事例で病院側が負けるなら。
最初に電話で、
心筋梗塞が疑われるから、すぐ来てください。」
って看護師が言っていますけど。
それを、
心筋梗塞が疑われますが、当院ではPCIできません。
自己責任でPCIができる病院を探して行って下さい。」

って言うしかないですねー。

胸痛の患者を受け入れたら、病院、医師が負けますから。



心筋梗塞になりたくなかったら、
生活習慣病を予防しなきゃ駄目だよ。


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