現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説! 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
医者v.s.患者
なんか、医療訴訟の話とか、
マスコミの報道とかばっか見ていると。

 医者v.s.患者

みたいな対立の構図で語られる事が多いんですけど。
これは、基本的には間違いです


医者って、私もそうですけど。
みんな、患者を治したい、助けたい。
病気を治したい、って思って医者になっているわけで。
そもそも、患者敵対しようと思って
医者になる人なんて、いるわけないんですよ。

最初に医者になる時もそうですけど。
今現在でも、患者だって思っている
医者なんか、いないんですよ。

マスコミは、医者患者の敵
みたいな書き方をするかもしれませんけどね。

本来、医者患者っていうのは、
敵対するものではありません。



患者の側から見てもそうです。

患者を診察してくれる人は、医者しかいないし。
病気を治すのも医者しかいないんですよ。
自分の身体を預けているわけですから。

敵に、自分の大事な身体を預けないでしょ、普通。

医者から見ても、患者から見ても、
医者患者っていうのは、敵対関係ではないんです。


じゃあ、なんでマスコミの報道なんかでは、
 医者v.s.患者
のような対立の構図ができあがっているのか、って言うと。

医療訴訟」の話が多いからですよ。
新聞やテレビで話題になるのは。

まあ、「神の手を持つ」とか「名医
とか「赤ひげ」みたいな医者特集をする場合。
単発で、そうではない事もあるんですけど。

だいたい、新聞等のマスコミの記事になるのは、
医療訴訟」とかが多いので。
結果的に医者患者が対立しているように
見えるんですよ。


ところで、医療訴訟の数って、
日本でどのくらいあるか知っていますか?

日本では一年間で、1000件くらいです。
1997年は597件だから、10年間で約2倍
増えているんですけど。
2005年,2006年ともに1000件を下回っています。


じゃあ、医療訴訟頻度はどのくらいでしょうか?

国民1人当たりの外来受診数っていうのは、
厚生労働省が出しているので、
そこから抜粋してみましょうか。


国民1人当たりの年間受診回数
(厚生労働省「H15年社会医療診察行為別調査」)

日本       21
アメリカ    5.3
イギリス    4.8
フランス    5.2
スウェーデン  2.7



日本では、一年間で1人当たりだいたい、
20回外来を受診しているんです。
これは、他の先進国の4倍〜8倍に当たります。

医者の数は、他の先進国の2/3から1/2で、
患者の数は、4〜8倍ですから。
日本の医者は、他の先進国の5〜10倍くらいの
患者を診ている、って計算になります。


ちょっと、話が飛んでしまいましたけど。

1人当たり、年間21回なので、
日本の人口を約1億2千万人とすると。
延べ、25億人患者が病院を受診しているんですよ。

外来だけで、この人数なので。
入院患者を入れると、延べ30億人くらい
になるんでしょうかね。
患者医者にかかる回数は。

入院患者がいる場合。
ほとんど毎日、医者患者を診察しますから。
本当は、もっともっと回数は多いのですけどね。

便宜的に、医者患者を診る回数は、
年間30億回としましょうか。

医療訴訟の数は、年間約1000件です。

医者患者敵対する、って構図は
基本的に医療訴訟の時だけです。

まあ、実際に訴訟になる数は、
訴訟を検討する数の1/10位かもしれませんけど。
10倍の数があったとしたって、1万件ですよ。

医者患者を診る時、
基本的には患者医者敵対していませんから。

医者患者敵ではない事が、年間30億回
医者患者の時は、医療訴訟の時だけだとすると、
年間1000回
その10倍としても、年間1万回だけですよ。

医者患者敵対する頻度は、
30万回に一回しかないんですよ。
この理屈でいくと。

分母を30億にして良いのか、って問題はありますけどね。

まあ、実際問題として。
患者医者の診察を受けるまでに、長い時間待たされたとか。
厳しく指導されて、ちょっと嫌になったとか。
そういう事もあるだろうし。

逆に、夜中に軽症患者が来て、
医者が夜中に起こされて診察したら。
なんでこんな夜中に来るんだ。
って医者が思う事もあるでしょうけど。

それでも、敵対しているわけではありませんよ。
所詮、一時的な感情だけですから。


じゃあ、なんで
 医者v.s.患者
の構図が生まれて、医者患者
敵対しているかのように思っている人が多いか、
っていうと。

原因は、マスコミにあると、私は思います。


マスコミって言っても、新聞、テレビ、雑誌など
いろいろな媒体があるので。
一律に扱うのは適切ではないと思うんですけど。

マスコミっていうのは、スポンサーから
金をもらっている
、「営利企業」ですよ。

NHKはスポンサーがいない特殊法人なので、
ちょっと別ではあるんですけど。

基本的には、どのマスコミも、「単なる営利企業」です。
スポンサーから、広告料をもらって、
それを読者、視聴者に見てもらう。
その広告を見て、スポンサー会社の商品が売れる。

だから、たくさんの人が広告を見てくれた方が良いので、
どうしても、多くの人が興味を引く事を書く。

そういう構図です。

だからマスコミは、視聴率とか読者数っていうのを、
異常に気にします。


単なる日常的にある事を記事にしても、
読者は興味を持たないんですよ、普通。

営利企業だから、それでは困るんですよ、マスコミは。
だから、記事にするのは、非日常の事になります。

医療で言えば、
医者患者を診察した、薬を処方した。
簡単な手術をして、うまくいった。

それだけでは、記事にならないんですよ。
日常的にある事だから。

医者患者を手術して、事前に予想できる範囲の
合併症が起きて、不幸にも患者が亡くなった。
もしくは、重篤な後遺症が残った

それは、非日常ですから。
マスコミとしたら、報道する価値があるんでしょう。


水戸黄門」でも、「ウルトラマン」でも、
何でも良いんですけどね。

ヒーロー悪者を退治する、
 v.s.
の構図が、読者や視聴者が見て、
一番わかりやすいんですよね。

読者や視聴者が見ていてわかりやすい、
って方法があるとしたら。
やっぱり、その方法を使う事が、
どうしても多くなってしまいます。

ある種の、「既存の型」に嵌めた方が、
報道する側も安心するんでしょう。

これは、ある報道関係者が先日言っていた事ですけど、
ある種の既存の型っていうので、典型的なのは

「つけは結局、弱者に回ってくる。」

とか、そういうやつですよ。


手術や検査の結果、患者側に不幸な事が起こった。
当然、遺族は悲しい。


そしたら、医者の側に過失があろうがなかろうが、
そんな事は、きちんと検証せずに。 
  v.s.
の構図に当てはめるんですよね、マスコミは。

そして、
 患者弱者、被害者
という思いこみマスコミにはありますから。
結局
 患者

になっちゃうんですよ。
だから、対立の構図だと、残るのは医者しかないから。
医者の方に、過失があろうがなかろうが、
 医者
 v.s.
 医者v.s.患者
の構図が成り立っちゃうんですよ。


元々は、医者叩きの記事を書く気がなくても、
安易に既存の型に嵌めて対立の構図に当てはめて、

 医者v.s.患者
って形にしてしまうと、
 患者善、被害者
という思いこみができてしまって、結局
 医者
の構図ができあがって、医者からみたら「医師叩き
の記事ができあがっているのだと思います。


新聞記者やテレビ番組等を作る人間の、
無知」、「思いこみ」が根本にあって。
医師を叩こう、という悪意はないのかもしれませんけどね。

営利企業として、非日常的な事を記事に書く。
医療でいえば、医療訴訟が多いんですけど。
そして、ろくに勉強もせずに、
安易に「既存の型に嵌める」方法を取っているので、
 医者v.s.患者
 v.s.
の構図の記事ばっかり報道される。

そして、それを一般人が見て、信じてしまう。
そういう報道を元にして、医師ブロガーも記事を書く。
そいで、患者の側である、一般の人達も、
医者の側も、なんとなく
 医者v.s.患者
医者患者は対立する、敵対する、という
思いこみが成り立っているんじゃないかな、
って思います。


医者患者敵対する事は、実際の頻度からいったら、
数十万分の一とかの確率です。
マスコミの報道の影響も大きいのですけどね。
いつの間にか、そう思いこんでいる人も多いんですよ。

医者患者は敵対するものではない、って事は
当たり前といえば、当たり前の事なんですけど。
ちょっと、私を含め、みんなに再確認してもらいたかったので。
敢えて記事を書いてみました。


私以外の医者のホンネが知りたい人は、これも読んでね!
→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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