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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
混合診療、解禁するとどうなる?
混合診療解禁の話が、他の医師ブログでも
盛り上がっていますね。
というか、もう過去形かな?
厚生労働大臣が控訴する、って言っちゃったから。

でも、まあ。
大事な事なので、このブログでも書いていきましょうか。


混合診療」禁止は違法、
東京地裁が国側敗訴の判決

健康保険が使える診療(保険診療
保険外の診療(自由診療)を併用する
混合診療」を受けた場合、保険診療分も含めて
全額患者負担になるのは不当だとして、
神奈川県内のがん患者が国を相手取り、
保険を受ける権利があることの確認を求めた
訴訟の判決が7日、東京地裁であった。

定塚誠裁判長は、混合診療を原則禁止している
国の政策について、「混合診療を禁止する
法的な根拠はない」と述べ、原告に保険の受給権が
あることを認め、国側敗訴の判決を言い渡した。

日本の健康保険制度の前提となってきた
混合診療の原則禁止」という考え方を
違法とした初めての司法判断で、
厚生労働省は今後、混合診療のあり方について、
抜本的な議論を迫られそうだ。

訴えていたのは、神奈川県藤沢市の団体職員、
清郷(きよさと)伸人さん(60)。

判決などによると、清郷さんは腎臓がんの
治療のため、同県内の病院で2001年9月から、
保険診療のインターフェロン療法と、
自由診療の「活性化自己リンパ球移入療法」
と呼ばれる治療法を併用していたが、05年10月、
病院から「混合診療にあたるので続けられない」
と告げられ、併用できなくなった。

訴訟では、混合診療の原則禁止という
国の政策に法的な根拠があるかどうかが
最大の争点となった。

国側は「健康保険法で保険の適用が
認められているのは、国が安全性や
有効性を確認した医療行為。
自由診療と組み合わせた診療は
保険診療とは見なせない」などと主張。

これに対し、判決は「保険を適用するかどうかは
個別の診療行為ごとに判断すべきで、
自由診療と併用したからといって本来保険が使える
診療の分まで自己負担になるという解釈はできない」
と、国の法解釈の誤りを指摘し、
混合診療禁止に法的根拠はないとした。

また、国側は、混合診療ができるケースを
健康保険法が例外的に定めていることから、
「例外以外は禁止できる」と主張したが、
判決は「法律などには、例外以外の混合診療
すべて保険の対象から排除されると
解釈できる条項はない」とし、原告には保険
受ける権利があると結論づけた。

ただ、判決は「法解釈の問題と、
混合診療全体のあり方の問題とは
次元の異なる問題」
とも述べ、混合診療の全面解禁の是非については
踏み込まなかった。


『2007年11月7日:読売新聞』


基本的な話から始めますけど。
今の日本の医療っていうのは、国民皆保険で。
国民全員が保険に入っていて。
普通に病院で受けるほとんどの医療が
保険の適応を通っています。

胸が痛いって患者が病院に来て。
胸部レントゲンや、心電図、採血をしたり。
心臓のエコーカテーテル検査なんかの検査もそうだし。
狭心症って診断された後、処方される保険診療だし。
心臓の血管が細いって事で、心臓カテーテル検査して、
風船治療(経皮的冠動脈形成術:PCI)を行ったり。
医龍でやっているような、心臓バイパス手術も、
全部保険診療です。

もちろん、病院に来て診察を受けたときの
診察料とかもそうですよね。

で、例外的に、保険の適応外っていう医療もあるんですよ。
例えば、「お産
これは、保険適応外ですよね。
というか、医療と認められていません
厚労省には。
これだけ、お産の危険性が問題になってもね。

それから「健康診断
これも、医療ではありませんから。
保険適応ではありません。

それから、美容形成
きれいになりたい、ってのが目的ですから。
医療ではありますけど、保険外です。
あと、EDでバイアグラを貰う人とかもそうですね。

それと、今回問題になったような、
活性化自己リンパ球移入療法」のような治療です。

新しい治療というか、「これはガン等に効果がある」
ってまだ厚労省に認められていない治療なんかです。
外国では使われているけど
まだ日本では認められていない、
最新の抗ガン剤なんかも、保険適応外になります。


混合診療」っていうのは、
保険で認められた医療保険診療と、
保険で認められていない保険外の治療(自由診療
一緒に行う診療の事です。

こういうのは、国の解釈では

>「健康保険法で保険の適用が
認められているのは、国が安全性や
有効性を確認した医療行為。
自由診療と組み合わせた診療は
保険診療とは見なせない」


って事で。
保険診療保険外診療(自由診療をいっぺんに使ったら、
安全かどうか国は確認していないから。
国が安全性や有効性を確認した医療行為
とは認められないから、全部保険外診療です。
っていう事なんですよ。

この例でいくと、金額は適当ですけど。

保険診療:「インターフェロン療法」  
20万円
自由診療:「活性化自己リンパ球移入療法」
10万円

とします。

混合診療が認められれば、
保険診療3割負担自由診療保険外診療)
全額自費になるので。
患者の自己負担額は、

20万円x0.3+10万円=16万円
になります。

ところが、混合診療は認められない、って事になると
全部自己負担って事になるので、

20万円+10万円=30万円

って事になって、自己負担額が2倍くらいになります。

これ、患者本人にとっては、非常に困った事ですよね。
自分の意志で効くか効かないかわからない、
自由診療保険外の診療費を全額負担するのは
納得できるけど。
元々は国も認めた医療が、一緒に使ったら
認められない
って事になったら、
納得できないですよね。

まあ、そんなわけで、国を相手に弁護士もつけず
裁判を行ったわけですけど。
誰も予想していなかったんですけど、
勝っちゃったんですよね、国に。

まあ、地裁なので、国は控訴しますけどね。


法的な根拠に関しては、Yosyan先生なんかが
詳しく説明していますから、それを参考にしてもらうとして。
→ 『混合診療解禁訴訟』

一般の人達は、なんで厚労省医師が、
混合診療に反対してるか、わからないんですよ。

埼玉県医師とか、各地方の医師は、
以前から混合診療に反対していますから。
→ 『埼玉県医師会』
こういうところに詳しく書いていますので、細かくは
そこらへんを見てもらうと良いと思います。


『H16年 第二回 医療問題研究会』
では、大阪府医師の人が話をしていますね。

混合診療が解禁されたら、保険外診療(自由診療
が増えて、保険診療が減る。
だから、金持ちは困らないけど、それ以外の
一般人が、安い医療費で医療を受けられる
範囲が狭くなっちゃうから困る。

っていうのが、医師会の主張です。

モトケンブログのコメント欄でも話題になっていますけど。
→ 『「混合診療」禁止は違法(東京地裁判決)』

一般の人達で、かしこい人は、
混合診療とは必ずしも関係ないんじゃないの?」
って言う質問をします。

たしかに、混合診療解禁=保険診療の縮小
ではありませんけど。

規制改革・民間開放推進会とか、
いわゆる小泉、安倍路線のアメリカチックな人達は、
混合診療解禁で、保険外診療を増やそう
って考えています。

それは、規制改革・民間開放推進会議の
官製市場民間開放委員会が作成した資料

見てもらえばわかると思います。

kiseikannwa3


参照:『規制改革・民間開放推進会議の資料』

混合診療の事を、本来あるべき制度
って言っていますね、なぜか。
世界一とWHOが認めた今の日本の医療ではなく、
自分たちに都合の良い混合診療
本来あるべき制度」って言っているようです。

この図を見ても、混合診療が解禁されると、
保険診療の範囲が狭くなる事がわかります。


これだけじゃ信用できない、
って人もいるでしょうから。
別の資料も出しましょうか。

Skyteam先生のブログからの引用です。
「2006年7月13日(木)しんぶん赤旗」から。


混合診療」で分類案
厚労省が中医協に提示
________________________________________

公的保険のきく医療と保険のきかない
医療を組み合わせた「混合診療」の本格的導入を
盛り込んだ医療改悪法の成立をうけ、
厚生労働省は2006年7月12日
混合診療」の具体的な分類案をまとめました。

同日開かれた中央社会保険医療協議会
(中医協・厚労相の諮問機関)の
診療報酬基本問題小委員会に示しました。

医療改悪法は、これまで例外的に
混合診療」を認めてきた「特定療養費制度」
(高度先進医療や差額ベッドなど)を再編成し、
新たに「保険外併用療養費」制度を設け、
「必ずしも高度でない先進技術」なども
混合診療」に加えました。

さらに「保険外併用療養費」を、
(1)将来的に保険導入をする評価をおこなうもの(評価療養)
(2)保険導入を前提にしないもの(選定療養)
―の二つに区分け。
保険適用されない診療を固定化し、
拡大する内容にしています。

厚労省が示した分類案は、「評価療養」に
先進医療や医薬品の治験に関する診療などを指定。
「選定療養」には、特別の療養環境の提供
(差額ベッドなど)や予約診療、
制限回数を超える医療行為などを盛り込みました。
中医協は今後、厚労省案を議論し、
分類を決定する方針です。
委員からは、制限回数を超える
医療行為を保険導入を前提にしない
「選定療養」に含めることなどについて、
「無制限な保険外給付範囲の拡大にならないか」
と危ぐする意見も出されました。

2006年7月13日(木)しんぶん赤旗



今までは、高度でまだ国や厚労省の適応が
通っていない診療がメイン
だった
自由診療保険外診療)なんですけど。
それに加えて、

>「必ずしも高度でない先進技術」なども
 「混合診療」に加えました。


って言っているんですよ、厚労省が。

保険適用されない診療を固定化し、
 拡大する内容にしています。


はっきり、保険外診療を拡大する、って言ってるんですよ。

モトケンブログのコメント欄で、
No.57 元ライダー(開医) さんがコメントに書いている
例がわかりやすいので、引用すると。

【もしも十数年前に混合診療
はじまっていたら(私の専門領域から)】

「胃の調子が悪い?そうですか。胃カメラしましょうね。
鼻から検査できる細いカメラでやると楽ですよ。
保険ききませんから、5万円ほどかかります。
なに?保険で?。よろしいですよ。少々つらいですが、
従来の口から入れるのでやりましょう。」

「胃がんが見つかりました。幸い早期です。
これならお腹を切らなくても、胃カメラで切除できますよ。
保険はききませんので50万円ほどかかります。
今までのお腹を切る手術だと
胃を半分取らなければなりませんから、
治療後の食生活は制限されますが、
胃カメラで取ればそんな制限はありません。
ですから開腹手術と違って保険はききませんけど、
お勧めですよ。」

「胃潰瘍ですね。保険はききませんけど
ピロリ菌の検査治療をしますか?
3万円かかります。
そうですか、今回は見送りますか。
ピロリ菌の治療をすれば胃潰瘍の再発率は
格段に低下するんですけどね。」

「胆石ですね。保険はききませんが、
お腹に小さい穴を開けて手術をする方法もあります。
100万円くらいかかります。
保険でなら普通の手術で、そうですね、
少なくとも10cmくらいの傷跡がお腹に残りますよ。」

そうそう、インフルエンザの検査も当然自費ですよ。
3000円也。
※わかりやすさを重視したため、
多少不正確なところもあります。



こんな感じになりますよ。

医療技術は年々進歩しているんです。
上の例では、10年前の段階では内視鏡手術も、
腹腔鏡手術も珍しい最新の技術でしたが。
今では、多くの病院で行われている治療です。

でも、これが保険外だったら、使う人も少ないので。
今ほど技術が発達していない可能性が高いです。
医療技術が進歩しなければ、財務省は
お金がかからなくて喜ぶかもしれませんけど。
患者にとって、幸福ですか。
医療が進歩して、病気が治った方が良いでしょ。
一般の人達には。

それを阻害しようとしているんですよ。


まあ、金持ちには関係ないんですけどね。

混合診療が解禁されたら、
 ・民間保険市場を手に入れる保険
 ・公的支出を無限に減らせる財務省
 ・保険屋から税収が増える財務省
 ・米国の年次要求を果たした政府
 ・保険屋からの政治献金が増える政治屋
 ・新たな市場ができて天下り先が増える役人


こういう人達にはメリットがありますけどね。

一般人にとっては、自己負担が増えるだけで、
医療技術の進歩も阻害
されますから。
損するだけだと思いますよ!


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→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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