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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
勤務医疲弊、患者にも原因あり
yahooのトップページに、「勤務医の疲弊、患者にも原因
って記事が載っていましたよー!

最近、くだらない医師叩きの話ばっかじゃなく、
医師の過労とか、患者側にも原因がある
って話も、良く出るようになっていませんかねー。



勤務医の疲弊、患者にも原因
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080227-00000001-cbn-soci

「雨が降ったからという理由で救急車を呼ばないでほしい」
患者の暴言で仕事への誇りがズタズタにされる」——。

厚生労働省の審議会で、産科・小児科・救急の医師
共通して挙げたのは勤務医の疲弊で、
その原因の1つに「クレーマー患者」や
「暴力患者」などの存在を挙げた。

西川京子厚生労働副大臣は
医療の分野では国民の意識が育っていない。
すべて受け入れる側が悪いというのではなく、
一緒に医療を構築するという方向性を持たないと
不毛の議論になっていく」と感想を述べた。(新井裕充)

厚労省は2月25日、「安心と希望の医療確保ビジョン」
会議を開き、産科・小児科・救急の現場で
先進的な取り組みをしている医師から意見を聴いた。

この会議は、長期的な視点に立って日本の医療
問題点を考えようと、舛添要一厚生労働大臣が
中心となって1月7日に設置された。

4回目を迎えたこの日のテーマは、
医師不足が深刻な産科・
小児科・救急医療などの現状把握。
各分野の医師が現在の問題点や
今後の課題などについて意見を述べた。

東京都立府中病院・産婦人科部長の
桑江千鶴子氏(東京医科歯科大産婦人科臨床教授)は
「産婦人科臨床現場の3つの問題」として、
 (1)劣悪な労働環境と待遇、
 (2)医療事故と訴訟への恐怖、
 (3)医療者への暴言・暴力
  (モンスターペイシャント)の存在
——を挙げた。

桑江氏は「大野病院事件で産婦人科の医師
逮捕されて以来、ビクビクする状況で
萎縮医療になっている」と述べ、
過酷な労働環境に追い討ちをかける訴訟リスクや
患者の暴力などが医師のモチベーションを
下げていると指摘した。

「優しい気持ちでなんとかしてあげたい
と思っても仕事に対する誇りをズタズタにされ、
若い医師は疲弊している」

桑江氏はこのように述べ、早急に解決することが
難しい大きな問題であるとした。

続いて、愛知県岡崎市の花田こどもクリニック院長の
花田直樹氏は「現在の小児医療の問題点」として、
 (1)不当な報酬の低さとフリーアクセスによる患者数の多さ、
 (2)小児科勤務医の減少、
 (3)乳幼児医療無料化に伴う救急外来のコンビニ化、
 (4)訴訟リスクとクレーマーの存在——を挙げた。

花田氏は「コンビニ感覚で救急車が利用されるが、
コンビニ診療さえ難しい状況だ。
しかし、司法判断は救急外来にも
最高級の医療レベルを要求している。

無理して対応しても刑事事件の対象に
なり得ることを医師は学習している」と述べ、
産婦人科の医師が逮捕された
福島県立大野病院事件の影響で入局する医師が減少し、
現場では「無理に救急を受け入れない」
という萎縮医療が生じているとした。

花田氏はまた、医師らに言いがかりを付ける
「クレーマー患者」の存在が
萎縮医療に拍車を掛けているとした。

「過熱する医療事故の報道で、
不信に満ちた攻撃的な言動が目立ち、
現場のやる気をさらに萎えさせている。
今までは医師の使命感でカバーしてきたが、
現状では医療安全上も自分の健康上も無理がある」


■ 救急患者の増加と国民の意識

疲弊した勤務医をさらに追い詰める
「クレーマー患者」と訴訟リスク。
その背景には救急患者の増加がある。

日本医科大学付属病院・高度救命救急センター部長の
山本保博氏は、救急患者が増えている一方で
救急医療機関が減少していることを指摘。

「救急医療の現状、課題」として、
 (1)救急医療施設の負担の増大(救急患者の増加など)、
 (2)資源の圧倒的な不足(救急医不足など)、
 (3)救急医の士気の低下
——を挙げた。

山本氏は救急車の出動件数(2005年)のうち
搬送されていない約9%について、
「救急車が到着しても現場に患者がいない」と指摘。

その主な理由として、
 ▽119番した後の辞退、
 ▽いたずら、
 ▽酔っぱらい
——を挙げた。

その上で、119番通報した患者
重症度や緊急度などによって分類する
「トリアージ」の必要性に触れた。

「アンダートリアージ(過小評価)をどう考えるか
という問題がある。
『ちょっと胸がつかえる感じがする』という
患者のうち1万人に1人ぐらいは
心筋梗塞の場合がある。

このような患者を自宅に戻して
しまった場合の問題がある。
しかし、これからはトリアージをしていかなければ、
“たらい回し”はどんどん増える」

この日、舛添厚労相が欠席したため、
西川京子副大臣が次のように感想を述べた。

「安全で安心な食物にコストがかかる
という意識は国民の間に育ってきたが、
医療の分野では国民の意識が育っていない。

今日はマスコミの方もいるようだが、
すべて受け入れる側が悪いという
指摘の仕方ではなく、一緒に医療を構築する
という方向性を持たないと不毛の議論になっていく。

今、これを厚生労働省が
一番先にやっていかなければならない」


『2008.2.27:yahooニュース』



ここ数ヶ月くらいで、マスコミの論調は
変わってきていると思いますよ。

今回の記事でもそうですけど。
医療崩壊の原因は、患者の側にもある
って話は、医師ブログでは以前から
言われていた事なんですけどね。

このブログでも、
『モンスターペイシェント』
『モンスターペイシェント2』
『モンスターペイシェント3』
の記事をはじめ、何回も書いていますけど。

大手新聞で、患者にも問題がある。
っていう事を取り上げることは、
昨年の秋くらいまでは
ほとんど考えられなかったと思います。

いつ以降、っていう事をはっきりとは
言えないのですけどね。

テレビなんかでもモンスターペイシャント
っていう言葉を取り上げるようになったし。

奈良の妊婦「たらい回し」って事で、
一時たくさんの報道があったけど。
その後から、妊婦検診を受けない妊婦も悪い。
そういう妊婦は、リスクが非常に高い。
っていう話がでてきたりとか。

マスコミの側も、
少しは変わってきていると思いますよ。
正直。


一年前までは、病院や医師が悪い、って話ばっかで。

患者=弱者、被害者

っていうステレオタイプな見方で書いた
記事しか載っていなかったけど。

今回だけでなく、患者の側にも問題がある、
っていう記事なんかも、結構出てきていますからね。


たしかに、今だに問題のある記事もありますよ。
でも、大手新聞では「たらい回し」って言葉は、
数ヶ月くらい前から、ほとんど使われなくなったし。
テレビでは、司会者やコメンテーターは、
まだ使っている人もいますけど。
VTRなんかでは、「たらい回し
という言葉は少なくなったと思います。

単に医療ミスとかの話だけでなく、
医師不足や、医療崩壊などの話も増えていますからね。


「コンビニ医療に関しては、昨年末に、
朝日新聞でも書かれていましたしね。
参照:『コンビニ医療』


患者も、「県立柏原病院の小児科を守る会」とか、
千葉県立東金病院:「地域医療を守れ」とか。

患者は、都合の良い時に、コンビニ医療で、
いつでもどこでも医者を使い捨てにして良い
って事ではなく、貴重な資源、人材を
大切に使いましょう。

って思う人達も、徐々にですけど、出てきていますからね。


正直言うと、1年前までは、
医療崩壊は既定路線で、それを覆すのは無理かな。
って思いながら、それでもなんとかならないか、
って事でブログを書いてきたのですけど。

ここ数ヶ月で、ほんのわずかだけですけど、
希望が見えてきた様な気がします。


2008年が、医療再生元年となるように。
マスコミも医師患者も行政も、力を合わせる時が
来ていると思うのは、私だけでしょうか。


yahooニュースには載ったのですが、
大手新聞はどこにもこの記事を載せなかったのは、
ちょっと残念ですけどねー。


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医療安全にはお金が必要
日本人は、水と安全は無料だ
って思っていた時代がありましたけど。
それは、もう昔の話ですよね。

医療でも、安全にはお金がかかります。
『医療ミスの確率』
『医療ミスの確率2』
の記事でも書いたけど。
医療ミスの確率は、ゼロにはならないんですよ。
どんなに頑張ってもね。

テレビなんかに良く出ている
神の手を持つスーパードクター」とかでも、
医療ミスの確率はゼロじゃないんですよ。

今の日本では、世界一安い医療費で、
平均寿命も周産期死亡率も世界一。

っていう、ものすごくコストパフォーマンスの良い
医療を、国民全員が受けられていますけど。
これは、ホントに特殊な状態なんですよ。

医療でも安全にはお金がかかるって事に関して、
ちょっと良い記事を見つけたので紹介しますね。



【対談】
医療安全を育む文化は醸成されたか


高久 史麿氏(自治医科大学学長 
医療の質・安全学会理事長)
石川 雅彦氏(国立保健医療科学院 政策科学部長)

________________________________________


1999年,国内で医療事故が相次いで発生したことなどを契機に,
より安全医療の実現に向けた取り組みが本格化した。

以後,年々,国民からの医療の質に
対する要望も高まっているが,
安全性の確立こそがその質を担保する
最大のファクターといえるだろう。

これまで,法整備や医療安全情報の
集積をはじめとするさまざまな試みが続けられているが,
医療者のあいだに医療安全を醸成する文化は
確実に根づいているのだろうか。

また,日々,高度化する医療のなかで,
医療安全のリーダーやスペシャリストを
どう育てていく必要があるのだろうか。

本紙では医療安全の現状を検証する目的で,
2005年に設立された「医療の質・安全学会」
理事長の高久史麿氏と医療安全教育の
第一人者である石川雅彦氏による対談を企画した。

________________________________________

“To Err Is Human”,患者取り違え事件を契機に

石川 近年,医療安全が社会的な問題として
捉えられるようになり,医療安全の視点から
医療の質を高めるさまざまな取り組みが続けられています。

本日は,学会そして大学のトップのお立場から
医療安全推進に携わられている高久史麿先生に,
現在までのわが国における医療安全に向けた取り組み,
そして今後求められていく事柄について
お話をお伺いしたいと思います。

まず,これまでのわが国における医療安全
関する取り組み,文化の醸成について
どうお感じになっておられますか。

高久 私自身が患者を診ていた頃には,
医療の質や安全について,
語られることはほとんどありませんでした。

転機は横浜市立大学附属病院
患者取り違え事件の発生年であり,
米国の医学研究所(IOM: Institute of Medicine)
医療の質委員会から
“To Err Is Human: Building a Safer Health System”
が発行された年でもある1999年ではないでしょうか。

ちょうど時期が重なり,メディアが医療事故のことを
大きく取り上げるようになって,
厚生省(当時)もさまざまな対策を開始しました。

その後,2005年に
“Five Years After To Err Is
Human-What Have We Learned?”
という有名な論文が“JAMA”に掲載されましたが,
このなかに「“To Err Is Human”が発行されるまでは,
医療安全が語られることはあまりなかった」
という記述がありました。

それまでは診断と治療がmain issueで,
その後に医療安全が加わったと。
そう考えると,この約10年で,
ずいぶん風土は変わったのですね。

石川 エラーなどの有害事象の原因を
個人からシステムに,事故対策も
リスクマネジメントからセーフティマネジメント,
クオリティマネジメントという視点に変わってきました。

高久 当然のことに気がついたともいえますね。
個人を追及しても防止策にはつながりませんからね。
やはりシステムから修正して,
全体の質を高めていく必要があるでしょう。

石川 システムにはソフト・ハード両面の問題がありますが,
さまざまなファクターが関連してきますね。

高久 医療安全には,医療に関わる
すべてのファクターが絡み合っています。

看護師の労働環境に関しても,
IOMのナースの労働環境と患者安全委員会から,
“Keeping Patients Safe: Transforming
the Work Environment of Nurses”
が2003年に発行されました。
このなかでも,看護師が忙しすぎると
医療事故が起きると指摘されています。
やはり絶対数としてのマンパワーがないと難しいですね。

そう考えると,現在の医療費抑制政策のなかで,
安全対策を実施するというのは難しいですね。

石川 2006年の診療報酬改定において
医療安全対策加算が新設され,それに伴って,
医療安全管理者の業務もクローズアップされてきています。

高久 しかし,額については十分とはいえないですね。
300床規模だと,加算で得られる額は
月に20万円くらいだそうです。
そうすると,専任を1人雇えるかどうかですから。
段階的に整っていくのでしょうが,
もう少し集中的に評価をしてくれないと,
安全な医療の保障は難しいですね。

いまのように,病院経営そのものが厳しく,
過酷な医療現場である病院から
医師がどんどん逃げ出しているような状況では,
かなり大変です。
ソフト・ハードともにシステムをしっかりする
ということになると,お金がかかります。
それで現場が困っていますね。

石川 人間はエラーを起こすということを前提に,
可能な限り,事故を未然に防止する
システム構築が運輸や製造などの
業界では行われています。

同様の考え方を医療に取り入れて,
エラーの誘因となることをなるべく
減少させる取り組みが求められています。

高久 鉄道に置き換えてみると,
JR西日本の福知山線で脱線事故がありましたが,
新幹線では脱線事故はないですよね。
だけど,新幹線の安全運行のためには
在来線の数十倍のコストをかけて
システムを構築しているでしょう。
このように,安全の実現のためには,
お金がかかるものなんですよ。

石川 事故防止のためのシステムの問題,
それにかかるコストの問題は,今後,
大きく議論されていくことになりそうですね。

高久 そうです。コストについて議論しないで,
安全だけを求められても,
それは医療者にとって負担になるばかりです。

もちろん,教育や心構えは必要だけれども,
精神論だけで防ぐのは,やはり無理です。
それこそ,竹槍でB29にはむかうようなものですね(笑)。

このことについては,国民にもよく理解していただき,
コンセンサスを得ることがひとつの課題だと感じています。


わが国における医療安全に関連する主なできごと

1999年 東京都立広尾病院で消毒薬点滴事故,
      横浜市立大病院で患者取り違え事故が発生

2001年 厚労省が医療安全対策検討会議設置,
      医療安全対策ネットワーク整備事業
      (ヒヤリ・ハット事例収集等事業)開始

2002年 特定機能病院・臨床研修病院・一般病院・ 
      有床診療所における安全管理体制の強化。
      安全管理指針・院内報告制度の整備,
      安全管理委員会の設置,
      安全に関する職員研修の実施を義務付け(*)

2003年 特定機能病院および臨床研修病院における
      安全管理体制の強化。
      医療安全管理者配置,医療安全管理部門・
      患者相談窓口設置を義務付け(*)

2005年 医療の質・安全学会が設立される

2006年 診療報酬改定において,50点の
      医療安全対策加算(入院初日)が新設。
      施設基準は研修を修了した
      専従の医療安全管理者の配置,
      医療安全管理部門の指針・業務内容の整備など

2007年 無床診療所における安全管理体制の強化。
      安全管理指針・院内報告制度整備,
      安全に関する職員研修の実施を義務付け(*)。
      医療安全対策検討会議の作業部会が
      「医療安全管理者の業務指針および養成のための
      研修プログラム作成指針」を整備

      *=医療法施行規則改正


“日本版100Kキャンペーン” いのちを護るパートナーシップ

石川 高久先生は,2005年に設立された
医療の質・安全学会」の理事長を務められています。
学会発足のきっかけについてお聞かせいただけますか。

高久 2004年に医療安全をテーマに
クローズドのシンポジウムを開催しました。
わが国の医療安全研究の第一人者である
東北大学の上原鳴夫先生をはじめ
医学・看護関係者,薬学や工学関係者など
30名ほどでディスカッションを行いました。
このシンポジウムが学会発足のきっかけになっています。

先ほどのコストのお話に関連しますが,
医師だけが「医療安全実現のためには,
経費の担保が必要である」と声高にいっても
理解は得られにくいので,学会をつくり,
システム工学などさまざまな分野の
方に入っていただき,学際的な研究のなかで
国民に理解を求めていくことも必要だと考えたのです。

石川 昨年11月に行われた
第2回学術集会も非常に盛況でした。

高久 最近は,産科や救急など
安全な医療の提供体制に関する問題が山積して,
国民共通の関心事となっています。

学会の名称となっている「医療の質・安全
というキーワードは,医療の問題を
すべてカバーします。
研究者の集まりではありますが,
実地に役立つさまざまな提案をしていく,
研究成果を社会にプロポーズしていく,
ということを大きな使命としています。

学術集会でも,医療者,他領域の専門家や
メディア,患者・市民団体まで多彩な分野から
集まって学際的なディスカッションや提言を行いました。

最新の取り組みとしては「いのちを護るパートナーシップ」
キャンペーンを今年5月から来年12月まで
行うことを決定し,準備を進めています。
 
米国では,医療の質改善研究所
(IHI:Institute for Healthcare Improvement)が主導し,
「10万人の命を救えキャンペーン(100K lives campaign)」
を全米で展開しました。
医療過程で生じる有害事象による
死亡者をできるだけ減少させようという呼びかけに
3100施設(急性期病床数の78%に相当)が応じ,
自主改善に取り組みました。

石川 この日本版の100Kキャンペーンは,
今後,どのような展開をお考えですか?

高久 「いのちを護るパートナーシップ」は,
有害事象による死亡者の1万人削減という目標を立て,
病院から医療事故による死亡を減らす運動です。

日本医師会や日本病院協議会など
各種の団体や各病院,行政そして地域社会にも
広く自主的な参加を呼びかけます。
日本医学会も協力します。


今後求められるシステム,教育のありかた

石川 先生は,自治医科大学の学長をお務めです。
医療者に対する医療安全教育に関しては
どのようにお考えでしょうか。

高久 学生は,あまりにも覚えなければならないことが多くて,
それに追われているのが現状ですし,研修医として,
患者を受け持つようになって初めて,
医療安全の意味を実感するものです。

やはり患者に責任を持つようにならないと。
学生のときの臨床実習は,ほとんどが見学ですから,
なかなかピンときませんね。

石川 自治医科大学の臨床実習は,以前から,
クリニカル・クラークシップが特徴的だったと思いますが。

高久 そうです。それでも侵襲を伴うことは
学生にはできませんから,実効性のある
医療安全教育は研修医になってからですね。

石川 教育も,医師だけではないと思います。
医師,看護師,薬剤師と,それぞれ違う学校で
教育を受けてきて,卒業すると,
患者に安全で良質な医療を提供するという
同じミッションに携わるわけです。

チーム医療がいわれて久しいですが,
相手の業務,立場を理解したうえで,
各自の専門業務を行っていくことは
非常に難しいと感じています。
医療安全の実現には欠かせないことなのですが。


期待されるリーダーシップ その涵養には課題も

高久 職種間だけに限らず,医師同士でも
コミュニケーションがよくない。
特に医療安全においては,コミュニケーションは
最も重要ですから。
お互いをわかり合う努力が必要です。

そのためには管理者が,医療者間の
コミュニケーションを保つ努力をする
必要があると思います。
診療科の壁がなくなってきているといわれていますが,
職種間のコミュニケーションがよいかどうかは,
病院によりけりでしょうね。
それも,管理者の責任ですね。
1年目の研修医や新任医師の着任時に,
そういった教育もきちんとしておくべきです。

石川 医療安全もリーダーシップ,
まず管理者から,という側面がありますね。

高久 どんなに小さな会社でも,
トップがきちんとしていないと,
その組織はだめになります。
管理者は,このことを常に念頭に置く必要があります。
システムエラーがあったときには,管理者の責任です。

日本ではこれまで,警察が介入することもあり,
個人のエラーを追及しすぎました。
個人に責任がないとはいいませんが,
やはりシステムが個人のエラーの
原因になっていることが多いのです。
また,過労によるエラーも,やはり管理者の責任です。

石川 私が研究しております
インシデント・アクシデント事例の
分析手法である根本原因分析法
(RCA: Root Cause Analysis)は
システムやプロセスにフォーカスをあてて,
システムエラーを発見していく手法です。
システムの脆弱性を見い出し,
改善につなげていけば,医療安全が推進され,
その結果,医療の質向上に結び付く可能性があります。

そしてシステムづくりにおいては,組織の管理者が
決断をし,意思決定をしていかなければなりませんね。
米国でもいわれているように,
“まず管理者からトレーニングを”
ということが重要だと思います。

国立保健医療科学院でも,医療安全に関する
リーダーシップ研修を行い,医療機関の院長・副院長に
集まっていただいています。
ここでRCAも実施しています。

研修の後,参加者にアンケートを行ったところ,
「現在,医療安全における(参加者自身の)
リーダーシップの発揮に関して課題があるか」
との問いに,約9割の参加者から「課題がある」
という回答を得ました。
この結果から,リーダーシップという資質の涵養には
難しい部分があると感じています。

高久 「言うは易し」ですね。
やはり管理者が医療安全にどれだけ気を配っているか
ということと,そのためのシステムをつくるのは
管理者の責任だと自覚していなければなりません。

石川 そうですね。
ただ,病院経営に携わる管理者が常にすべてを
見ているわけにはいかないのが実情ですから,
屋根瓦方式で少しずつ医療安全管理者を育てて,
2-3年で交代することが可能な体制が望ましい
と考えています。


現場を担う医療安全管理者 
新しい専門分野として育成を

高久 現在,医療安全管理者は看護職が多いのですか。

石川 医師も増えてきていますが,
現状では看護職が多いですね。

高久 医師は自分の専門もあるし,
患者も診たいだろうし,医療安全と併任といっても,
なかなか大変でしょう。

石川 ただ,医師が積極的に医療安全管理に参画すると,
多職種の協働による医療安全管理が
うまくいっているという話も聞いています。

高久 そうでしょうね。
石川先生は医療安全管理者講習も
行っておられますが,成果はどうですか。

石川 成果が上がるように努力しています(笑)。
最近では,医師や他の職種の方々の
参加も増えてきています。
研修の中でも,多職種が参加することで
議論の広がりがあり,チームで医療安全管理を行う
必要性を実感しています。

ただ,やはり時間が必要だと思います。
多くの課題に対応して,もっと内容を深めるためには,
現状の1週間程度の短期の研修では
なかなか厳しいため,国立保健医療科学院では,
安全管理の長期コースも実施しています。

今後はさらに,人材育成も含めて内容を検討し,
より充実した研修を実施する予定です。
医療安全をより一層推進するためには,
医療の新しいプロフェッショナルとしての
医療安全管理者の育成,そしてチームで行う
医療安全管理という視点が必要になると思います。

高久 それにはやはり,相応の評価や
認定制度が必要になってきますね。

石川 昨年3月,厚労省の医療安全対策検討会議に
設けられた質の向上に関する検討作業部会で,
医療安全管理者の業務指針および養成のための
研修プログラム作成指針が策定されました。

これを今後,どう運用していくかということは,
特定機能病院や臨床研修病院だけではなく,
2007年の医療法改正で安全管理体制の
整備が義務付けられた無床診療所等も含めて,
検討すべき課題だと思っています。

高久 現状,大きな医療事故が起こっているのは
やはり大規模病院です。
中小の施設は,難しい患者は設備の整った
施設に送りますから,悪性腫瘍などの
難しい手術件数,救急患者数ともに,急増しています。
ますます大規模病院医療負荷がかかり,
当然,医療事故も起こりやすいという構造になっています。

したがって,どの施設においても医療安全
重要な課題であることは間違いないのですが,
病床数や地域でその病院が担う役割に応じて,
医療安全やその質の捉え方,
講じる対策もおのずと異なっていくと思います。

石川 医療安全の全体像から,
細部にわたるまでお話しいただきました。
ありがとうございました。


『医学書院:2008年2月18日』


非常に良い事書いていますねー。
特に前半の部分が。

石川 エラーなどの有害事象の原因を
個人からシステムに,事故対策も
リスクマネジメントからセーフティマネジメント,
クオリティマネジメントという視点に変わってきました。

高久 当然のことに気がついたともいえますね。
個人を追及しても防止策にはつながりませんからね。
やはりシステムから修正して,
全体の質を高めていく必要があるでしょう。


そうなんですよー。
医療ミスした医者はけしからん。
そんな医者は逮捕しろ、
って言うだけで、
医療ミスの確率が減るわけはないんですよ。

この記事にも書いてあったけど、

>“Keeping Patients Safe: Transforming
the Work Environment of Nurses”
が2003年に発行されました。
このなかでも,看護師が忙しすぎると
医療事故が起きると指摘されています。


そのとーり。
忙しいと看護師だけでなく、医者もミスをするし、
医療事故も増えるんですよ。

忙しくて、医療事故が起きた。
っていう場合に。
医療ミスをしたのは、医者が悪い、
って逮捕すれば、医療ミスが減りますか?


違うでしょ。
忙しいのが原因なんだから。
医師が忙しくないような状態を作る、
って事が医療ミスを減らす、一番の方法でしょ。


>石川 人間はエラーを起こすということを前提に,
可能な限り,事故を未然に防止するシステム構築が
運輸や製造などの業界では行われています。
同様の考え方を医療に取り入れて,
エラーの誘因となることをなるべく減少させる
取り組みが求められています。

高久 鉄道に置き換えてみると,
JR西日本の福知山線で脱線事故がありましたが,
新幹線では脱線事故はないですよね。
だけど,新幹線の安全運行のためには
在来線の数十倍のコストをかけて
システムを構築しているでしょう。
このように,安全の実現のためには,
お金がかかるものなんですよ。


医療以外の業界では、人間はミスをするものだ。
っていう前提で、システムが作られているんですよ。

日本でも。

新幹線では、在来線の数十倍のお金をかけてるから、
事故が非常に少ないんですよ。

アメリカでは、人間はミスをするものだ、
っていう前提で、システムが作られています。

忙しい医者に処方箋を書かせたら、ミスをするから。
処方箋は、薬剤師に書かせる。

って事になっているようですよ、アメリカでは。

日本は、医療ミスをするのは、医者のせいだ。
って、精神論でやっているんですよ、今だに。

あ、これも本文に書いていましたね。

>教育や心構えは必要だけれども,
精神論だけで防ぐのは,やはり無理です。
それこそ,竹槍でB29にはむかうようなものですね(笑)。


なんか、考えてる事、私とほとんど一緒かもw



医師だけが
医療安全実現のためには,経費の担保が必要である」
と声高にいっても理解は得られにくいので,
学会をつくり,システム工学など
さまざまな分野の方に入っていただき,
学際的な研究のなかで国民に
理解を求めていくことも必要だと考えたのです。


これも、非常に重要な事ですね。

医者は、医療ミスの確率は絶対にゼロにはならない。
医療ミスを減らすには、安全にはお金がかかる。

っていう事をわかってはいるのですが。

それ以外の人達は、今だに精神論ばっかりで。
結局、医療安全には金がかかる。
って言っているのは、医者ばっかりになっちゃうんですよ。
医師ブログでは話題になっても、それ以外の
一般人のブログでは、なかなか話題にならないでしょ。

他の業界では、人間はミスをするのが当たり前。
って事はわかっているので。
医療業界、医者以外の人間が入って、
医療ミスを減らして行こう、っていう取り組みが
非常に重要だと思いますよ。



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小児救急電話相談事業
小児救急電話相談事業」っていうのが、
2004年から行われているようですね。

医療崩壊の原因として、医師不足医療費不足がある。
という事は、何度も書いていますが。
医師不足というのは、OECD平均と比べて、
日本では絶対的に医師の数が少ない
という意味もあるのですが。
患者1人当たりの医師数が少ない
という問題もあります。

この問題を解決するのには、医師の数を増やす
っていう方法と、患者の数を減らす、っていう方法の
2種類があります。

後期高齢者医療制度という制度を作って、
年齢でアクセスを制限する
っていうのが今の政府のやり方ですが、
私はこれには反対です。

しかし、何らかの方法で、アクセスを制限しないと、
日本の医療がもたない事は、ほぼ間違いないので。
それであれば、軽症患者のアクセスを制限する
っていう方法が良い、と個人的には思っています。


それ以外に、医療崩壊の原因として医師の過労
っていうのがあるんですが。
夜中や休日に軽症の患者が来る、っていうのが
医師の過労の大きな原因になっています。


夜間や時間外に来る患者の半分くらいが
子供
なんですよね、だいたい。
親が心配だ、とかそんな理由が多いです。
また、「子供は医療費無料」っていう
地方自治体も多いですから。
その影響もあるのかもしれませんね。

時間外に病院に来る理由は「心配だから
っていうのが多いですから。
不安を解消するだけなら、わざわざ病院に来なくても
電話でもある程度対応は可能
って事で始められた制度が
児救急電話相談事業」なんだと思います。

北海道ではすでに「小児救急電話相談事業」を
やっているようなので、
北海道新聞から記事を引用しますね。


北海道の小児救急電話相談 
06年度受付件数5%増 
4割以上が助言で解決

夜間、看護師らが電話で子供の急病や
けがの相談に応じる道の「小児救急電話相談」の
二○○六年度の受付件数がまとまった。

計二千七百六十一件で前年度比5%増。
開設日には、一日十数件の相談が舞い込む勘定だ。
相談内容を見ると、症状が軽いケースが多く、
四割以上が電話での助言で済んだという。

道保健福祉部は「救急病院に連れて行くと、
かえって子供を疲弊させる場合もある。
受診前にぜひ相談して」と呼びかけている。

電話相談は○四年十二月下旬にスタート。
受付時間は月曜−金曜の午後七時から十一時で、
年間二百五十日弱の開設。
小児科の勤務経験が五年以上ある
ベテラン看護師九人が交代で札幌市内で応じ、
必要な場合は小児科医の電話に転送する。
受付件数は○四年度は三カ月余で九百五十七件、
○五年度は計二千六百三十三件だった。

○六年度の相談内容を見ると
「発熱」が29%と最も多く、
「外傷、やけど」(12%)、
「嘔吐(おうと)」(10%)と続く。
また、看護師の助言で解決したものが43%、
様子に変化があれば受診するよう指導したケースが18%、
翌日の受診を指導したものが14%。

医師への転送は1%で、救急車を呼ぶよう
指導したケースは二件だった。
子供の年齢は三歳未満が65%。
地域別では札幌市内が57%を占めた。
相談員の一人は「育児に不慣れな母親からの
相談が多く、『水分を取って安静に』
などというアドバイスで不安を解消してあげることができた」
としている。

利用者からは休日にも相談に応じてほしい
という要望が寄せられているが、
道は「現段階では具体的な検討はしていない」としている。
電話はプッシュ回線や携帯電話からは
「#8000」。それ以外は
(電)011・232・1599。
通話料は自己負担となる。

(北海道新聞:2007/05/15)



具体的に、どんな事やっているのか、
私にはよくわかんないので。
実際に北海道で小児救急電話相談事業
相談員をやっているノア先生のブログとコメントから
引用させてもらいますね。


昨年から北海道の小児救急電話相談事業
相談員をやっています。
もともと小児科医だったのに、進路変更をして、
急性期の小児医療から離れてしまった
後ろめたさも少しあったため、
この話しがあったときにすぐに引き受けました。

現在月に1回程度当番が回ってきます。
まだまだ認知度がいまひとつで、一日10件程度の相談。
ほとんどが看護師さんの対応で解決ができ、
医師まで回ってくるのは全体の1%とのことです。

確かに1回も電話が鳴らない日もあります。
土日祝日もできたらいいのですが、
予算か人員的な問題かでその話しは進んでいないようです。

医師は携帯電話を持って待機していればよいのですが、
看護師さんは実際に出勤して、
夜中帰宅となりますので、
負担はかなり重いのではないかと思っています。

しかも5名くらいでまわしています。
これは大変なことです。
この事業については意味がないという意見も多いのですが、
実際相談に当たっていると夜間の受け入れ先がなく
困っている母親の切実な声も聞こえています。

住所を聞いて、その地区の救急担当の病院に電話し、
小児科の先生に直接病状をお話しし、
受け入れていただいたことも何回かありました。
40%は電話相談のみで済んでいるというデータもあり、
今後もっとこの事業が認知されるようになれば
無駄な夜間の受診は減るのかもしれません
(確信犯的な患者さんはどうしようもないですが)。
私はもう少しこの事業の当番をやってみようと思っています。


『小児救急電話相談事業』


そして、これが某所でのノア先生のコメントです。

お金は1回約13000円でした。
県によっては直接医師が対応する所もあるそうです。
土日もやっているところもあるそうです。
件数が少ないので、夜間のコンビニ受診の
抑止効果はないと思います。

全道で一日10件ですから…。
どこまで普及するのか今後が課題でしょうが、
普及するのかあ?という印象です。

親からみれば不安解消にはいいかもしれないのですが。
問題点をあげるとすれば

・電話での対応でどこまでちゃんとした対応ができるか
 (相談される側としても防衛的な意味もあり
 心配であれば受診を勧めざるを得ない)

・救急を担当している医師からしてみれば
 これくらいの件数では夜間の救急が減る
 などという印象はないはず

・やる医師、看護師が少なく、
 土日までは枠を広げることが難しい

・認知がこれ以上進まないかもしれない

・コンビニ受診する人は確信犯だから
 コンビニ抑止力にはならないかも

・予算はかなりかかっているだろう。
 費用対効果でいえばどうなのか

・何か事故があったときは道が責任を持つことには
 なっていますが、ちょっと不安はある。
 道庁からは携帯電話とともにICレコーダーも送られてきて、
 なるべく会話の内容を録音するように指導されています。

・ナース対応が主体で医師は電話を持ち歩くだけでも
 それなりにストレスはあるので、
 医師版テレワークシステムはかなりの負担になる。

子育て休業中の小児科医っていっても、
子育てもかなり大変ですからね。
私ならやらない。
風呂やトイレもゆっくり入れないです。
果たして根付くのか。
自分でやっていて言うのもなんなのですが。



という事だそうです。
まあ、たしかに言っている事は、おっしゃる通りですよね。

今の所、数も非常に少ないですから。
このおかげで、時間外に病院に来た子供が減った、
っていう程ではないのかもしれませんね。


ただ、個人的には。

・コンビニ受診する人は確信犯だから
 コンビニ抑止力にはならないかも


まあ、たしかに確信犯もいるんでしょうけど。
どっちかというと、核家族化が進んで。
親が子供に何かあっても、どうして良いかわからない。
だから、とりあえず病院に来た。

っていう人が多いんじゃないかな、って思います。

コンビニ受診っていうのは、
軽症なのにコンビニのように時間外に病院に来る
っていう事だとは思うのですけど。

親が子供を病院に連れてくる場合は、
「軽症かどうかわからないから、心配で来た。」
っていう人が多いような気がするので。

そうなのであれば、ベテランの看護師や
医師が電話で相談に乗る事で、コンビニ受診を
減らす事ができるのではないか
、って思います。



それと、もう一つ。
北海道以外の例を見てみましょう。
こっちは、小児救急の電話相談を
育児休業中の医師が応対する
っていう記事ですね。

こちらは、河北新報から。



小児救急の電話相談 
育児休業中の医師が応対 総務省実験

診療態勢を改善/職場復帰も支援


総務省は1日、出産や育児で休業中の
産科・小児科医が自宅で「小児救急電話」の
相談に応じる医師版テレワークの実証実験に
乗り出す方針を明らかにした。

実現すれば、医療現場の負担が軽減されるとともに、
小児科医の不足で満足な診療を
受けられない状況を改善できる。
今夏にも実験を開始し、2010年度の実用化を目指す。

全国42の都道府県で現在、
運営されている小児救急電話は、
平日の夜間や休日に子どもの急な発熱などで
不安を覚えた親が「#8000」をダイヤルすれば、
病院などにつながる仕組み。

ただ、医師や看護士が業務に忙殺されており、
「電話がつながりにくく、十分に機能しているとは言いがたい」
(同省情報通信政策局)のが実情だ。

実証実験では、小児救急電話の回線と
休業中の医師宅を結び、医師が症状を聞いて
診察が必要と判断した場合は、
緊急で病院に取り次ぐ。
また、相談内容を記した文書を
パソコンで病院に送信することもできる。

一方、医師が育児期間中に
最新の論文などを閲覧できるように、
自宅のパソコンから大学のデータベースに
アクセスできる環境も整備する。

産科・小児科は、他の診療科に比べて
女性医師の比率が高い。
「育児休暇が取りづらい」「長期休業で勘が失われる」
などの理由で、出産を機に退職するケースが多いため、
医師不足が深刻だ。

医師版テレワークには、休業中でも
医療現場や最新情報に接する機会を設けることで、
育児が終わった女性医師の職場復帰を
後押しする側面もある。

河北新報 2008年2月2日



これに関しては、某所で
youraisemeup先生が発言されていますので。
許可をいただいて、引用させて頂きました。

私は、電話相談に未協力です。
昼間に自分の診療所にかかってくる電話の対応だけで、
十分むなしいし、危ない。

「あの時電話で、様子見ていていいっていわれたのに」
っていうケースが出てくるから、実際診察せずに
「受診は不要」と言えることの方が少ないし。
(なお、お母さん用語で「様子見ていた」は、
「ほっといた」に限りなく近いです)

あと、自宅にいたって、育児とか介護とかあったら、
ほかに誰かいないと、無理ですよ。
「すみません、うちの子が泣いてるので、
少々お待ち下さいね」なんていうのでは、
仕事にはなりません。

鼻水で夜中の3時に連れてくる保護者のことを考えたら、
必要な業務であるとは思うんです。
でも、従事する医師の環境整備・いざという時の保護、
あたりがきちんとしないうちに、こんなこというのは、
人気取りとしか思えない。

コンビニ利用を抑えようにも、
確信犯は電話相談なんかせずに、直接病院に行くだろうし。

>もし、本気でやるなら法的にアクセス制限をかけて、
病院や開業医にかかるためには、
電話相談を通さなければならないこととする
医師による電話トリアージ)、くらいの
思い切った措置をとらなければならないと思う。

これって、よいかも、ですね。



たしかに、実際にやる側からしたら、
「大丈夫って言われたのに、大丈夫じゃなかった」
とかって、訴えられる時代ですから。
それだったら、最初から診察した方が良い、
って思うのもわかります。

救急とかのトリアージなんかでも一緒ですけど。
軽症患者をふるい分けるのは、必要な事なんですが。
軽症だと思っていたのに、思っていたより重症だった。
っていう事は、絶対にあるんですよ。


その時に、医師が責任を問われないような
システム
を作る必要があると思いますね。

軽症患者ばっかり診ていたらパンクするから、
軽症患者を振り分けるシステムをせっかく作ったのに。
やっぱり、軽症じゃなかったら大変だ、
っていって全員病院にかかるんだったら、
意味がないですから。

医療が100%安全じゃないのと同様に、
軽症患者を100%振り分けるっていう方法は、
存在しません。


それは、救急でのトリアージでも
電話での対応でも同じです。

北海道の場合は、北海道が責任を持つ。
って言っているようなのですが。
医師個人の責任を問わない、っていうように
きちんとしたルール、システムを作る事が必要です




それと、実際に電話相談をするのは
子供のいるお母さんだ、っていう事ですね。

>自宅にいたって、育児とか介護とかあったら、
ほかに誰かいないと、無理ですよ。
「すみません、うちの子が泣いてるので、
少々お待ち下さいね」なんていうのでは、
仕事にはなりません。


こういうのも、なんとかしなければ。
絵に描いた餅で終わってしまうかもしれませんね。


更に続いて、youraisemeup先生
こうも発言されています。


身近の女性小児科医を見ていて、
常勤勤務医を続けていけなくなる直接の契機は、

○出産・育児
 ・・といっても、子どもが複数になった場合や、
 地元に係累がいない場合
 (院内保育所はほとんど未整備なので)

○健康上の問題

○配偶者の留学

○介護(ベテランの先生に多いです)

といったところでしょうか。
ですから、年齢的なピークはさまざまです。

でも、完全休眠している先生はほとんどいません。
病院外来・開業小児科サポート・保健センター健診などを
掛け持ちして、働いている方が多いみたいです。

完全休業の後(それが労働基準法ギリギリの産休であっても)
の復帰には大きな不安が伴いますから、
現場とつながり続けることは、とても大事だと思います。

ただし、
>5年目くらいの対応は一番危ないように感じます。
という指摘は、鋭いとおもいます。

(全科に共通すると思いますが)初めの数年は
とても大事で、ここが半端になると、
復帰後のレベルはどうしても
高くできないのではないかと思います。

女性医師としての自分のライフキャリアを、
時々意識的に俯瞰して考えることが必要でしょう。
(できれば、配偶者にも考えてもらって・・)

女性小児科医の勤務実態に関するアンケート結果を、
ある女性勤務医が研究会で発表した時、
同僚の女性が手を挙げて、
「・・では、フルタイムで、いわゆる、
キチンと働けてる人数は・・」
と質問しました。
発言者はお子さんのいない、二代目開業医の奥様。
女性の敵は女性、です。

私はワークシェアリング肯定論者なので、
それぞれが自分の働ける形で助け合うのは、
どんどんやった方がよいと思っています。

ただ、そもそも医師による電話相談というものに懐疑的で、
今回の記事についても、どうだかな、と思っています。



うーん、まあ、確かにね。
いろいろ、問題がありそうですね。


>もし、本気でやるなら法的にアクセス制限をかけて、
病院や開業医にかかるためには、
電話相談を通さなければならないこととする
医師による電話トリアージ)、くらいの
思い切った措置をとらなければならないと思う。



これに関しては、私は一部賛成です。
全員が電話相談をしなければ病院、診療所を
受診する事はできない。
っていうのは現実的ではありませんけど。

電話をしないで、飛び込みで来たら追加料金3000円。
とかって、値段を上げる
、っていうのが
一つの手じゃないかな、って思います。

『時間外重症患者割引制度』

の記事で、時間外に来た患者は+5000円。
それで、重症患者は割り引きます

っていう制度を提案しているのですが、私。

大人でも、病院を受診しないでも良いけど、
心配だから病院に来た

っていう場合が多いんですよ。

でも、病院に行く前にその病院に電話したら、
まずは看護師が対応しますから。
その時に、その位だったら安静にして、
でも駄目だったら病院に来て下さい。

みたいな事を看護師に言われて、
病院に来なくて済んだ。
っていう場合もありますからね。


時間外に病院に来る前に、病院に電話をしたら+3000円。
病院に電話しないで、飛び込みで来たら+5000円。

みたいな制度が良いんじゃないかな、って思っています。

子供の場合も、飛び込みで病院に行ったら3000円。
電話相談をしたら加算の料金はゼロ。

っていうように、経済的な制限を加える、
という方法が良いのではないかな、
って個人的には思っています。

もちろん、一番良いのは
『柏原病院小児科を守る会』みたいに、
患者の側が自主的に、
軽症の場合は時間外に病院を受診しない。

ってやってくれる事なんですけどねー。



大学病院の裏話について知りたい人は、こちらから!
「大学病院のうそ」 ~現役医師(Dr. I)が暴露する、大学病院の秘密

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福島大野病院事件から2年
『我々は福島大野病院事件で逮捕された
産婦人科医師の無罪を信じ支援します。 』



2006.2.18

この日は、医療関係者にとっては、
忘れられない日です。


この日から、日本の医療崩壊が始まった。
と言っても良い程の衝撃でした。

そうです。
福島大野病院で、産科医逮捕された日です。

あれから、ちょうど2年の月日が経ちました。

癒着胎盤という、何千人に1人しかいない、珍しい症例で、
しかも、事前に予測する事も困難な事例。
それにたった1人の産科医
一生懸命立ち向かって。
でも、結果的に救えなかったというだけで、
患者が病気で亡くなったのに、
医師が刑事事件で逮捕される

という事件が、福島大野病院事件です。

その日を境に、日本では産科医が1人で
出産を扱う病院は激減
しました。


萎縮医療」という言葉も、この事件以降、
頻繁に使われる様になりました。

少ない医師、不十分な設備で「善意」で
患者を救おうと思っても、
結果的に患者を救えなかったら逮捕されるかも。

2/18以降、日本中の全ての医師が、
そう思って医療を行っています。


たらい回し」という言葉は不適切ですが。
今だに、テレビや一部の新聞では使われています。
患者受け入れ拒否
これも、言葉の使い方はおかしいですけど、
やっぱりたくさんマスコミでは出てきます。

これらが起こる背景には、政府の医師数削減政策、
医療費抑制政策による、医師数不足、医療費不足。

といった原因も大きいのですが。

医療訴訟による、萎縮医療の影響も、かなり大きいです。


>「ミスがなかったなら、なぜ妻は死んだのか」
 「弁護側は、医師の処置には問題はなかったというが、
 問題がないならなぜ妻は亡くなったのか。
 人間の体はさまざまというが、
 それに対応するのが医師の仕事だ。
 分娩室に入るまで健康だった妻はどうして亡くなったのか。
 病院は不測の事態のための設備を整えているはず。
 ということは、ミスが起きたのは医師の責任だ」


これは、亡くなった方の夫の意見陳述です。

亡くなった方は、本当に残念だったと思います。
遺族も、かわいそうだと思います。


ただ、人間は、不死身ではありません
今まで生きていた人が、今後未来永劫いきているなら、
人間は、全員不死身って事になりますが。
そうではないでしょ。

医師の側に問題がなくても、
人間は不死身ではないですから。
人間は、病気で死ぬんですよ。

不測の事態のために設備を整えて、
医師は一生懸命にやりますけど。
それでも助けられない命はあるんですよ。

お産は、安全ではないんですよ。
日本は、周産期死亡率が世界で一番低いですけど。
それでも、死亡率はゼロではないんですよ


結果が悪かったら、全てそれは医師の責任だ。
責任を取れ、謝れ。
って事で、裁判を起こされたら、
ホントに日本の医療は崩壊しますよ。

民事訴訟を起こす権利は、誰にでもありますから。
それを規制する事はできませんけど。

結果が悪かった、というだけで
医師逮捕される、って事はあってはならないと思います。

医師だけ特別扱いするのはけしからん。
って言う人もいますけど。

訴訟社会のアメリカでさえ、福島大野病院
の様な場合、逮捕される事はありません。


私は、「医者が何やっても良いようにしろ。」
って言うつもりはありません。

医師が一般的な医療行為を行って、
その結果が悪かった」
というだけで逮捕する事は止めて下さい。

って言っているだけです。

医療事故調の第二次試案でも、
今いろいろもめているところですけど。

仮に、福島大野病院事件医師が有罪になる。
そんな事があれば、日本の医療は完全に崩壊します。

破壊される、と言っても良いかもしれません。

そうなったら、結局損ををするのは
医師に診てもらえなくなる、患者さんです。


福島大野病院事件では、適切な裁判が行われて、
医師が無罪になる事を信じています。


『我々は福島大野病院事件で逮捕された
産婦人科医師の無罪を信じ支援します。 』



この記事は、ブログ『新小児科医のつぶやき』
Yosyan先生に賛同した記事です。

→ 『新小児科医のつぶやき 2.18』

他の方達のブログが見たい人は、
ブログ「産科医療のこれから」で、適宜アップされているようなので。
これをみて下さいね!
→ 『我々は福島大野病院事件で逮捕された
産婦人科医師の無罪を信じ支援します 』



ちなみに、私の昨年の記事はこちらです。
『悪夢からちょうど一年』

---------------------

このご意見に賛同していただける方は
コメント欄に御記入下さい。

御記入はハンドルネームでもかまいません。

また、医療関係者であるかどうかも問いません。

賛同してくださるブログ管理人の方は
ブログのタイトルとアドレス
一緒に記入お願いいたします。

この運動に参加されているブログを
なるべく把握したいので

ぜひ、御連絡お願いいたします。

一人でも多くの方のご賛同が、
よりよい日本医療を作っていくものと
信じております。
よろしくお願いいたします。



医者のホンネが知りたい人は、こちらから!
→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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受け入れ拒否?のとき、現場は
受け入れ拒否」という言葉の使い方は違う。
「受け入れ不可能」「受け入れ不能」なんだ。
って事は、このブログでもさんざん言ってきましたが。

参照;「患者受け入れ不可能」

やっぱり、今でもこの言葉が使われ続けてますよね。
いろんなマスメディアで。

まあ「たらい回し」っていう言葉は,
一部の新聞以外は今でも使ってますけど。
基本的には大手新聞では使わなくなったから、
まだましなのかもしれませんが。

やっぱり「受け入れ拒否」っていうのも、問題ありますよね。

医師であれば、間違っているっていう事はわかるのですが。
医師以外の方でも、これに対してきちんと分析した
記事を書いた方がおられましたので。
ちょっと紹介しますね。

ネタ元は、伊関友伸先生『伊関友伸のブログ』からです。
いつもお世話になっております。



朝日新聞千葉版の東金「受け入れ拒否14回」
報道に地元NPOが事実を分析した
問題提起の機関紙を臨時発行


朝日新聞千葉版の東金市内の医療機関
受け入れ拒否14回」報道に、地元NPO
地域医療を育てる会が事実を分析した
問題提起の機関紙( 「CLOVER(クローバー)」 第31号)
を臨時発行している。

機関紙は、地域に全戸配布されたという。

問題の発端となった報道は次のもの。

(引用開始)


受け入れ拒否14回、男性死亡 千葉・東金

千葉県東金市で昨年8月、男性(当時56)が
自宅で心肺停止状態になった後、
のべ14回、搬送受け入れを断られていたことが分かった。
119番通報から約1時間後に搬送されたが、死亡した。
病院が受け入れを断ったのは
医師が診察中」などの理由だったという。

同県山武郡市広域行政組合消防本部などによると、
昨年8月23日、男性が自宅で倒れているのを
見つけた妻(56)が午後4時58分に119番通報。
約10分後、救急救命士ら3人が現場に到着した。

消防本部は、近くの県立東金病院や、
山武市の国保成東病院など計10病院
のべ14回搬送受け入れを求めたが、
「心肺停止の患者には対応できない」
医師が他の患者の診察中」などと断られた。
その間、ドクターヘリにも一度要請したが断られた。

同日午後5時37分、最後の16回目の要請で
同県茂原市の公立長生病院への搬送が決まった。
それから約20分後に病院に到着したが、
まもなく死亡が確認された。
死因は脳内出血だった。

同消防本部では、倒れていたのを発見するまでに
時間がたっていたことなどもあり、
「搬送時間と死亡との因果関係は分からない」としている。

朝日新聞 2008年02月09日

(引用終わり)



地元NPO「地域医療を育てる会」が事実を分析した
問題提起の機関紙( 「CLOVER(クローバー)」 第31号)です。




住民から、取材の不十分な新聞記事を鵜呑みにせず、
このようなアピールがなされたことは、
とても素晴らしいと考える。



地域医療を育てる会 「CLOVER(クローバー)」 第31号
発行 N P O 法人地域医療を育てる会

http://www.geocities.jp/haruefjmt/clover-31.pdf


受け入れ拒否?そのとき、現場は・・・

心肺停止など重篤な患者さんでさえ、
なかなか救急搬送先が決まらない
という事態が頻繁に話題になります。

搬送先が決まるまでの交渉回数が
よく取り上げられていますが、実際に患者
受け入れる医療機関の実情は
どのようになっているのでしょうか。

心肺停止の患者にかかる医療スタッフ

心肺停止(しんぱいていし)とは、
心臓と呼吸が止まった状態のことです。
心臓の動きが先に止まる場合と、
肺の動き(呼吸)が先に止まる場合とがありますが、
いずれの場合でも放置しておけば
必ず「心肺停止状態」となります。
しかし蘇生の可能性が残されているため
死亡状態ではありません。

脳に血が行かなくなるため、手遅れになると
たとえ命は助かっても脳死状態になる危険があるので、
この状態に陥った患者に対しては、
人工呼吸や心臓マッサージなど
迅速な救命措置が必要です。

このように、一刻を争う状態の患者さんに
どのような医療が必要かということですが、
まず、施設・設備の点から心肺停止の
原因となる疾患(脳内出血や、心筋梗塞など)の
治療ができるところでなくてはなりません。

また、手当てをする医師ですが、
脳や心臓の手術ができる医師のほかに、
救命のために二名の医師
三時間程度対応をする必要があります。

仮に、こうした患者さんを二十四時間体制で
いつでも受け入れるとすると、救急専門の医師
最低でも十名必要になります。

こうした専門医と体制のある病院は、
残念ながら今の山武地域にはありません。
昨年八月二十三日に脳内出血で
心肺停止状態になった患者さんの
受け入れ先がなかなか決まらなかったことがありましたが、
この当時の東金病院・成東病院では、
救急当番・当直医が次々に来院する
患者の治療にあたっていました(表1参照)。

とにかく「診てくれるだけでいい」?

救急車に乗った人は
「とにかく診てくれるだけでもいいから、
受け入れてほしい」と思うもの。
ところが、受け入れる医療機関が、限られた
スタッフや施設の中で最善を尽くしても、
不幸な結末に終わる場合も少なくありません。

そのときに「診てもらえただけでありがたい」
と思う人と「なぜ、十分な受け入れ態勢がない中で
患者を引き受けたのか。無責任ではないか」
医療機関を攻撃する人とがあります。

悲しいことに、昨今では、医療関係者が
「このケースで訴えられるのなら、重篤な患者さんは
それなりの体制のあるところで受け入れたほうがよい」
と考えるような訴訟・トラブルも起こっています。

不満を言うのは簡単だけど

突き詰めていくと、「医師不足」が
原因で起きている悲しい出来事。
私たちの安心のためには、病院で働く医師
もっと増えることが必要です。

医師が少ない」「すぐに診てもらえない」
と不安になり、不満を言うのは簡単です。

しかし、医師が少ない地域では、そこで働く
医師の方々にも大変な負担がかかっていることも事実。
負担が大変な上に、不満やクレームしか言わない
患者ばかりの地域では、今がんばっている医師
立ち去り、医師不足がさらに深刻化することもあるのです。


私たちがすぐにできることは・・・

①近くの診療所などをかかりつけ医にする

病院でなくても診療できる軽症の場合は、
診療所に行きましょう。


②昼間のうちに受診する

「夜のほうがすいているから来た」
「昼間は忙しかったから来た」という患者さんがいます。

ところが、夜間は検査スタッフが不在であったり、
医師・看護師の数も少ないのです。
昼間と同じ医療を受けることはできません。
医師がいても、検査技師がいなければ、
診断がつけられないのです)また、
「当直」をしている医師を頻繁に起こすことは
医師の過労を招きます。
(「当直」は労働時間にカウントされないのです。
当直の翌朝は、通常の勤務につく医師がほとんどです)


③健康管理に注意する

自分と家族のために必要なことですが、
医師不足が深刻な今は、
地域のためにも健康管理が必要です。



(表1)平成19年8月23日(木)
午後5時前後の当直医の勤務状況について

東金病院(午後の内科系救急当番:内科医1名)
 午後5時から5時15分にかけて、2名の緊急入院。
 女性:発熱・発疹。ウィルス感染症の疑いで入院。
 翌日超重症の皮膚病と診断、旭中央病院に転送、救命。
 女性:著しい高血糖のため緊急入院。
 男性:腹痛・頭痛。救急外来で点滴。午後4時40分帰宅。
 女性:頭痛・嘔吐。救急外来で点滴。午後6時帰宅。

成東病院(当直医:外科医1名)
 午後5時10分ごろ 手術が終わった患者の処置中。
(このとき、救急依頼第一報)
 大腸がん患者が来院。
 午後5時30分 救急依頼第二報
CTスキャンが故障中のため、診断できず 受け入れ不可。
 頭痛・めまいの患者救急車にて来院 旭中央病院へ転送。
 このあと救急車3台受け入れ 診察。


引用:『朝日新聞千葉版の東金「受け入れ拒否14回」
報道に地元NPOが事実を分析した
問題提起の機関紙を臨時発行』




お亡くなりになられた方には、
深く哀悼の意を表させていただきます。

地元の話によると、この記事を書いた記者は、
病院に一切取材をせず、記事を書いたそうですよ。


一方からしか話を聞かずに、推測で物を書いてはいけない。
っていうのは、マスメディアの基本だと思うのですが。
大手新聞社が、全国紙で平気でそれをやって、
Yahooのトップページでも、大々的に流れる。

やはり、これはおかしいのではないでしょうか。


医師以外の方達から、こういう意見が出る、
っていう事は非常に重要な事だと思いますね。


このブログでも、以前から書いている通り、
日本では、患者当たりの医師の数が足りません。
だから、医師は常に過労状態です。

そのためにの根本的な解決策としては、
医師の数を増やすって事と、
患者の数を減らすって事しかありません。


医師の仕事を減らす為に、事務的な仕事など、
医師以外にできる仕事は、別の人間がやる
って事も必要ですけどね。

でも、基本的には、
医師の数を増やして、患者の数を減らす。

これしかありません。


政府もやっと医師不足は認めたのですが。
現在、政府が行おうとしているのは、
後期高齢者医療制度など。
年齢で人間を区切って、患者を制限する。
っていうやり方です。

これは問題があると思います。

私も患者の数を制限する必要はあると思いますが。
それは、「軽症の患者」を制限すべきではないでしょうか

参照;「時間外重症患者割引制度」

お金が少ない人は、病院に来させない。
とか、高齢者は病院に来させない、とか。
年齢金銭で区別するよりは、
病気の重症度で制限をするべきだと思います。

当然、医師の数を増やす、っていうのもあってですけど。


この機関誌でも、患者から今すぐできる事として、
軽症の場合は病院ではなくて、診療所に行く。
とか、夜間は基本的には病院に行かない。
とか、健康管理に注意する。

等、非常に的を射た内容になっていると思います。


プロであるマスコミが、きちんとした取材もせずに、
ただの感情でもって、「受け入れ拒否」って、記事を書く。

一方、ただの素人が、それなりに取材をして、
きちんと分析をして、患者側の問題点もきちんと書いて。
そして、機関誌を発行する。


既存のマスコミにも、見習ってもらいたいところですね。


新聞やテレビというのは、影響力が非常に大きいので。
そこらへんは、もっと自覚して貰いたいです。

ただのマスコミ批判はしたくないのですが。
これを比較しちゃうと、やっぱり問題ありますねー。


大学病院について知りたい人は、こちらから!
→ 『「大学病院のうそ」 ~現役医師(Dr. I)が暴露する、
大学病院の秘密』


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政府が公式に医師不足を認めた!
このブログを含め、ずーっと前から医師ブログでは
言っている事なんですけど。
日本では「医師偏在」ではなくて「医師不足」だ、
っていう事を、やっと政府が公式に認めましたよ。

閣議決定」だそうですから、相当の重みです。



医師「総数として不足」政府認める

医療現場からの度重なる指摘にもかかわらず、
これまで「医師は不足ではなく偏在
との見解を示してきた政府が、
ようやく医師不足を認めた。

2月12日に「医師は総数としても充足している状況にない」
と閣議決定したのだ。
あきらめずに現場から声を発し続けてきた医師
「まずは率直にうれしい。
実際に施策に反映されていくことに期待したい」
と話している。


医師不足問題をめぐっては、
「このままでは医師が過剰になる」として、政府が1982年、
医学部の定員削減により医師数を抑制するよう
閣議決定したことが始まりとされる。
その後も、93年、97年と、政府は段階的に
医学部定員の削減を進めてきた。

しかし近年、これに伴う弊害が各地で表面化。
必要な医療が受けたいときに受けられなくなる
「医療崩壊」が全国的に加速している。

過酷な勤務を強いられる医療現場からは、
早期の政策の見直しを求める声が続出していた。

これに対して、政府はこれまで
「地域や診療科ごとの偏在であり、
医師の総数は増え続けている」と、
医師不足を認めない見解を貫いてきた。

このような状況の中、民主党の山井和則衆議院議員が
政府に質問主意書を提出。
分娩施設の減少や救急搬送の問題な
ど実例を挙げながら、
「現在も『医師は数的には基本的に足りている』という認識か」
などと、政府の医師不足に関する見解を改めてただした。

この質問を受けた政府は2月12日、閣議決定した後、
医師数は総数としても充足している状況には
ないものと認識している」との答弁書を提示。
答弁書には、05年7月の
医師の需給に関する検討会報告書」の内容や、
現状に対する有識者などからの意見を踏まえた上での
修正であることが示されている。

現役外科医として診療に携わりながら、
長年医師の増員を訴え続けてきた
埼玉県済生会栗橋病院の副院長・本田宏氏は、
今回の閣議決定について
「政府はこれまで現場の指摘にかたくなに耳を貸さなかったが、
ようやく私たちの声が届いた。
これで現場にも夢がわいてくる。
まずは率直に嬉しい」と評価。
その上で、「実際にどのような施策に反映されるかが大事。
これからの動きに期待していきたい」と話している。


「2008/02/13;キャリアブレイン」


民主党の山井和則衆議院議員。
グッドジョブです。


今まで政府は
医師不足ではなく偏在だ。
って言い続けてきたのに。
やっと、方向を変えてくれましたね。

しかも閣議決定ですから。
やっと、一歩前進した、って感じでしょうか。

ただ問題なのは、本田先生も言っているけど、

>実際にどのような施策に反映されるかが大事。
 これからの動きに期待していきたい


これから、何をやるか、って事ですね。

医師偏在だ。
地方では、ちょっとは医師は不足してるのかなー。

っていう事で、今年から各都道府県に5人ずつ
医学部の定員が増えました
けど。
これだけでは、最大で250人ですからね。

1982年に医学部の定員削減により医師を抑制する
前からみたら、医学部の定員は約1000人減ってますから
それでけでは、以前に戻る、ってレベルまでもいってません。

何度も出てくるOECD平均まで医師数を増やすとしたら、
あと12万人~14万人必要ですからね。
そこまで医師の数を増やす必要はないのかもしれませんけど。

ただ、医師の数は不足してる。
でも、医師の数は増やしませんよ。

って言うのであれば、意味がありませんから。

具体的に医師がどのくらい不足しているのか。
何年で何人の医者を増やしたいのか。
とか、きちんとした目標を出して、計画を立てる。
そして、何十年前の閣議決定を、ずるずる引きずる事なく、
それでも医師の数が足りないのであれば、もっと増やす。
とか、臨機応変に対応して欲しいですね。


それと、医師不足とセットで考えなければならないのは、
医療費不足です。
財源の事もあるので、こっちの方がもっと難しい問題
かもしれませんけどね。

ついこの間、
「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」
ってのができて。
もう100人以上になっているみたいだし。
ちょうど良い機会なので、医療費不足についても、
これを機に、きちんと議論して欲しいところですね。


本田宏先生の本が読みたい人は、ここからね!
→ 誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実


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羊水は腐る?
35歳超えると羊水腐る
って発言して、テレビやネット上ですごい話題になりましたよね。
倖田來未さん。

ほとんどテレビを見ない私でも、倖田來未さんは
知っていますから。
相当有名な人なんですよね、この人。

政治家なんかで、もっと問題発言してる人もいるし、
ここまで問題にしたらかわいそうかな、
って、思う面もあるけど。

肉体的な事とかで、差別するような発言って、
私は大嫌いなんで。
敢えて、話題にしてみますね。

私は循環器内科医なので。
医師でも、そっちは専門ではないので。
ネット上では、日本一有名な産婦人科医
「産婦人科残酷物語 Ⅱ」
Bermuda先生のブログに、詳しく書いてあったので。
それを引用させて貰いますね。



羊水腐るか?」

大きな波紋を呼んだ
倖田來未さんの
35歳超えると羊水腐る
という羊水発言。


メチャメチャおおごとになっちゃって
彼女の人気の高さ、影響力の大きさを
逆説的に見せ付けられることになりますた。


そこで、今回は
本当に羊水は腐らないのか
考えてみることにしました。



ごく当たり前の
妊娠経過であれば
35歳以上であっても
35歳以上であっても
羊水腐ることなんてありません。


一般的に羊水といわれるものは
胎児尿や胎児の肺からの分泌液
羊膜などからの生成、浸透液など
つまりは
いろんなもんが混じっています。


臨床の現場で
「せんせ、羊水ってなんなんですか?」
と聞かれると、よっぽどの
羊水のマニアでもない限り
「あかちゃんのおしっことかだよ。」
と言ってごまかします。
その他に伝えなきゃいけないことがたくさんあるからです。
(たとえば
犬の日に腹帯を巻くとか
妊娠中はバーゲンに行かないでくださいとか
カラオケでメドレーは歌わないでくださいとか…。)


羊水の中には
蛋白質、脂肪なども含まれていますから
例えば
細菌感染をしたりすれば
理論的には腐ります。

具体的には
細菌感染をきたしやすい状態は
IUFD(子宮内胎児死亡)後などに
長期に胎児がとどまる場合です。

普段、羊水は常に生成(放尿プレイ)と
吸収(飲尿プレイ)のサイクルを繰り返していますが
その循環がとまってしまうのです。


どんな清流であっても
一旦よどんでしまえば
腐りやすくなるのと同じ理屈です。
ただし、
どんな清流であっても
僕ちゃんたちのかわいい赤ちゃんが
実は
おしっこゴクゴク飲んでいるという事実は
震えます。
(もっと震えるのは
おいらも昔ゴクゴク飲んでいたという事実…)


実際
腐るまでほっとく人はいないですから
医療の介入があるわけです。

様々なリスクが上昇する
高齢出産では
もしかしたら羊水が腐ることがあるのかもしれないと思って
NCBIのホームページから
PubMedという文献検索をしてみますた。
(相当暇人だなおれ)

amniotic fluids
で検索すれば
めっちゃヒットしますが
spoilとかrotとかdecayとか
それらしい単語を並べてみると
一件もヒットしなくなります。

しかし、
羊水腐る」なんて文献がないと結論付けるのは
早すぎます。

なぜなら
文献検索しているのは
ほかならぬ
おいらだからです。

日常的に
しばしば
「バミューダくん、
文献がヒットしないのは
君が選んでいるタームが悪いからじゃないのか?」
などと
指導医に怒られるからです。

まぁ、でも
ないよ。きっと。
これ以上興味ある人は自分で調べてください。
面白いアブストラクトがあったら送ってください。
結局他人任せです。

というわけでありまして
第2回
日本産婦人科学会アメーバ部会での
一般演題
キューティーハニーセッションにおける
Dr. Bermudaの
非常にプアなプレゼンテーションを
終わらせていただきます。

持ち時間が
2分ほどあまってしまいましたが
質疑応答は
一切受け付けておりません。

だって
わかんないんだもん。


参照:「羊水は腐るか?」


ばみゅ先生のブログのコメントにも書いてあったけど。

録音なんだから、編集の時にカットすれば良かったのに。

とか。

問題の発言が最初にネットに出た時は
「倖田さんが『羊水腐るっていうか、
濁るらしい』と発言した」
って話でしたが、騒がれる内に「腐る」のみに変化した。


とか、って事もあるので。
他にも問題はあるんですけどね。

明らかに、「35歳超えると羊水腐るっていうのは
間違いなので。
このブログでも、書いてみました。



ちなみに、「腐る」を辞典で調べてみると。


くさ・る【腐る】

[動ラ五(四)]

細菌の作用で植物性・動物性のものが分解して変質する。
 食物などがいたむ。腐敗する。
 「魚が―・る」

2 からだの組織が破れ崩れる。うみただれる。
 「凍傷で指先が―・る」

3 木・繊維・金属などが風化したり酸化したりしてぼろぼろになる。
 朽ち崩れる。腐敗・腐食する。
 「柱が―・る」「さびて―・ったナイフ」

4 物が変質して、嫌なにおいがついたり汚れたりして使えなくなる。
 「金魚鉢の水が―・る」

5 純な心が失われてだめになる。
 精神が救いようがなく堕落する。
 「性根が―・っている」

6 思いどおりに事が運ばないため、やる気をなくしてしまう。
 いや気がさす。めいる。
 「気が―・る」「原稿が没になって―・っている」

7 (他の動詞の連用形に付いて)その動作をする人に対する
 軽蔑・ののしりの気持ちを表す。
 「いばり―・る」「つまらんことを言い―・る」

8 賭(か)け事で負ける。
 「夕べ胴が―・ってありたけ取られ」〈咄・御前男・四〉

9 すっかり濡れる。びしょ濡れになる。

参照:大辞林



腐る」っていう言葉の多くは、
辞典の1の例にも書いてあるように、
細菌に感染して、破壊されて臭ったりする。」
っていう意味で使われますよね。

糖尿病の人で、足が腐る
とかっていうのも、
「足に細菌が感染して、組織が腐って、壊死する」
っていう事なので。
ほとんどは、そういう意味で使われます。


腐る」っていうのは、
細菌に感染して変性する」っていうのがほとんどなんで。
35歳以上になったらとか、年をとったら羊水腐る
とかって事は、ありえないんですよ。

良く考えれば、わかる事なんですけどね。
まあ、そんな事考えずに発言しているんでしょうけど。
やっぱり、35歳以上で不妊で悩んでいる人とか。
特に女性には、かなり評判が悪かったようですね。
この発言。

羊水だけじゃなく、年をとったら腐りやすい。
って事はないですから。

心配しなくて良いですよ。


ただ、年を取ると免疫力が落ちてくるから。
肺炎とか、尿路感染とか。
細菌に感染し易い。
っていう事はあります、実際に。

それと、年を取ると、嚥下機能が落ちるから。
物を食べる時に、間違って
気管に食物が入りやすくなって、
「誤嚥性肺炎」にはなり易くなります。

ただ、そういう、年を取ると細菌感染し易い
っていうのと、「羊水腐る」、っていう話は
全く別の話ですので。

あしからず。


参照:『yahooニュース:2007.2.12』
謝罪したのに“幕引き”にならない倖田來未“羊水騒動”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080212-00000001-gen-ent



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医療現場再建めざす議員連盟
医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟
っていうのが、2/12にできるようですよ。

現在の日本の医療現場に危機感を持った、
超党派の国会議員
で連盟を設立するようです。



医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟◆Vol.1

「超党派の国会議員で連盟を設立したわけ」

幹事長(民主党参議院議員)・鈴木寛氏への緊急インタビュー
橋本佳子(m3.com編集長)


自民党、民主党、公明党の国会議員による
超党派の連盟「医療現場の危機打開と再建をめざす
国会議員連盟」が2月12日に発足する。

超党派で医療問題に取り組むのは特筆すべきことで、
医療現場の危機感が永田町に伝わった
象徴的な動きと言えよう。

幹事長を務める民主党の鈴木寛氏は、
「厚生労働省などを通すと、
医療の現場の声が正しく伝わらない。
これが医療の諸問題を解決できない原因。
現場の声を反映した施策の立案・実行が最大の狙い」
と意気込みを話す。
発足の背景や今後の予定などを聞いた。

--------------------------------------------------


1986年東京大学法学部卒、通商産業省に入省。
99年退職し、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
環境情報学部助教授に就任。
2001年から参議院議員、現在は2期目。
中央大学客員教授なども務める。



——「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟
  にはどんな国会議員が参加されるのですか。

発起人は、自民党4人、民主党3人、公明党2人で、
代表は自民党の尾辻秀久先生です。

皆さん、医療に関心を持っており、私自身も長年、
医療問題に取り組んできました。
一昨年、福島県立大野病院事件で加藤克彦医師
起訴された時には総務省などに問い合わせたり、
国会で質問するなど、問題提起を続けました。

特に今回、議員連盟発足のきっかけとなったのが、
昨年末の予算編成や今通常国会への
法案提出の動向です。

診療報酬改定の予算は“大山鳴動”で、
医師不足関連も「これが対策か」
という施策にとどまり、とても今の医療の崩壊が
止まるとは思えないものばかりです。
厚生労働省が今国会への法案提出を目指す
医療事故調”にも、問題があります。

結局、既存の枠組みやプロセスに
医療政策決定をゆだねていたのでは、
医療の諸問題は解決できません。

その最大の原因は、医療現場の声が
政策に反映されていないことです。

「現場を見て、現場との対話を通じて
自ら医療政策を考案・実現する」
という志を持つ議員がメンバーです。

——議員連盟発足の理由をもう少し詳しく教えてください。

今回、議員連盟を発足させた目的は、3つあります。

第一は前述した通り、臨床の第一線で働く
医療従事者の声を聞き、それを反映させた施策を作ること、

第二は医療の諸問題は厚労省のみでは対応できないため、
複数の省庁を取りまとめて解決を図ること、

第三は国民全体として医療をどう考えるか、
それを議論し、とにかく今、崩壊寸前にある
医療を何とか再建することです。 


厚労省は、必ずしも現場の意見を
把握しているとは言えません。
当局を通じた話は、間接的で「伝言ゲーム」、
情報がそぎ落とされ、時にはわい曲すらされています。

また、厚労省などを通した視察は、
「作られた視察」であり、本当の医療の現場を
見ることはできません。
国会議員の立場で視察に行くと、
総長、院長をはじめ、幹部が出てきます。
ここで聞いた話と、知り合いの医師が当直している
現場に足を運んで耳にした話は全く違うのです。


例えば、厚労省は、「医師は偏在している」と言い、
地域や診療科などで偏りがあるだけ
という答弁を繰り返していますが、
私は「絶対的不足説」の立場です。

国会でも「どこに充足している県があるのか」
と質問し続けてきました。
知り合いの都内の病院に夜、見学に行くと、
救急部門はまさに野戦病院
医師や看護師は走り回っており、
それでも患者が待っている状態です。
当直医と話していても、頻繁に呼び出されたり、
研修医から電話がかかってきて指示を出したりしています。
都心の病院ですら、こうした状態ですから、
どこに医師が充足している病院があるのでしょうか。


——なぜ行政当局の認識と医療の実態とは、
  ずれがあるのでしょうか。


現場の医療従事者の声がなぜ中央に
届かないかということですが、
一つには医療の担い手の多くは
国家公務員や地方公務員であり、
彼らの立場では上部機関である
厚労省を批判にしにくいことが一因ではないでしょうか。

医療提供体制を考えると、国立や公立の
病院がかなりのシェアを占めています。
また私立大学も、助成金を受けている立場から
強くは言えません。

インフォーマルに聞いている彼らの声を、
どうしたらフォーマルに伝えることができるかが
課題だと考えています。
発言することで不利益を被るリスクを減らし、
個々人の生の声を直接、永田町や霞ヶ関に届け、
医療政策の立案過程に反映させることが重要です。


——第二の点ですが、医療の問題は
  厚労省だけで解決できないと。


その通りです。
例えば、医学教育や臨床研究の関連であれば
文部科学省、地域における救急関連では
総務省の管轄になります。
また福島県立大野病院事件に象徴されるように、
最近は医療事故と刑事裁判との関連も
重要課題ですが、これは法務省や警察庁が関係してきます。

さらに、一番の問題は財務省でしょう。
これまで医療費抑制策が続き、
厚労省が批判されてきましたが、
力関係で言えば、厚労省よりも財務省が上。
医療政策の半分は財務省の問題であり、
小泉政権下での医療費抑制策の“主犯”は財務省です。

これら複数の省庁に関係する問題は、
厚労省だけでは解決できません。
役人は基本的には自分たちに与えられた
権限・責任の範囲でしか動けません。
臨床の現場で働く方々、さらには患者さんの
総合的な利益を体現するのは、
まさに国民の代弁者である国会議員の仕事です。
役所の壁を破り、有効な施策を打ち出すことこそ、
国会議員の役割だと考えています。


——では第三の点、国民への働きかけについて
  お教えください。


医療の現場では寝食を忘れて、使命感を持って
仕事をされている方が数多くいます。
しかし、昨今の社会の風潮により、
医療者の自尊心は傷ついています。

医療者と患者さんが対立構造にあることが
現在の最大の不幸ですが、本来、病気を治す
という目的において、両者は
最大のパートナーであるはずです。

まずは国民の皆様に、本来医療がどうあるべきかを
考えるためのきっかけを提供していきたいと思います。

患者側が考えを深めていけば、医療者と患者さんの
双方にとってメリットがあるはずです。
国民全体が、医療者をプロフェッショナル
として尊重し、その努力を理解することが大切です。

また、一口に「患者」と言っても、
様々な立場の方がいます。
「サイレントマジョリティー・ペイシェント」の声が、
もっと医療政策に反映されるような
仕組みを作っていくことも重要でしょう。


——では具体的にはどんな問題に取り組む予定ですか。

今、医療現場が抱えている問題は多々あります。
まさに治療と同じで、短期的には、
とにかく「止血」、それと同時に中長期的には
「体質改善」が重要です。
この両方を同時並行して、各省庁や地方公共団体、
学会などすべてを巻き込んで、
できるところから取り組んでいきます。

短期的な課題としては、医師不足、
特に産科、救急、小児、外科などでの
医師不足や勤務条件の改善に取り組みます。
診療科閉鎖の危機に直面しているという話を、
多くの方からお聞きしています。

一つには、大学の医局員の
雇用形態を見直すことが必要でしょう。

大学に勤務している医師には、正規職員でなく、
無給や薄給の医局員がいます。
労働基準法から考えたら、あり得ない雇用形態を
是正することが重要です。
医療の集約化や医師の適正配置、
医療機関の連携なども重要になっていますが、
これを進める際には省庁の壁が問題になります。

大学は文科省、国立は厚労省、公立は総務省や
地方自治体と、病院の管轄が分かれ、
縦割りの行政組織がそのまま
医師の働き方にも関係しています。

今まで制度が対応していなかったために、
非常にいびつな勤務形態になっていましたが、
これを見直し、雇用の流動性を高め、
国立病院医師が、医師不足に悩む
公立病院にも応援に行くことなども
可能にしたいと思います。
そのほか、女性医師の雇用のあり方なども検討していきます。

さらに、民事訴訟のリスク・訴追リスク・
行政処分のリスクを下げ、萎縮医療に陥る
悪循環を断ち切ることも重要です。
厚労省の“医療事故調”も問題が多いので、
きちんと議論していくことが必要です。


——それでは、中長期的な課題は何でしょうか。


中長期的には現在、日本の医療費の
対GDP比は8%ですが、ドイツ並みの11%には
上げていく必要があるでしょう。
医師数は現在、人口1000人当たり2人にすぎません。
3.4人のドイツ並みまではいかないでしょうが、
増やしていくことが重要です。
厚労省は医学部定員増をやっていますが、
今の数では焼け石に水です。

医療の現場には、志と情熱を持って
働いている人が数多くおられます。
闘病生活と同じで、「これがいったい、いつまで続くのか」
が分からず、先が見えないことが、
現場から立ち去る要因の一つだと思います。

例えば、「あと1年がんばれば女性医師
子育てから復帰するようになる、
5年待てば後輩も増える」など、
10年くらいのロードマップを提示し、
少しずつでも改善の方向に向かっていることを
お示しするつもりです。

医療改革には、万能薬や特効薬、
ブレークスルーはありません。
現場の改革の不断の積み重ねが重要であり、
それが好循環となり、全体として問題解決につながります。

われわれは、まずは現場の声を
お聞きすることから始めます。
ヒアリングを重ねたり、地方の先生方からは
インターネットを通じて意見を募集したりする予定です。
さらにこの3月末か、4月の初めくらいには、
大集会も開催したいと思います。

医療の現場だけではなく、国会議員にも
医療をよくしたいと真剣に考える人がいます。
こうした心ある人が立場を超えて集まり、
結集して、いったい医療現場はどうなっているのか、
現状を直視して議論を深めていく場にする計画です。


『m3.com:医療維新、2008年02月06日』



国会議員でも、ちゃんとわかっている人がいるんですねー。
非常に良い事言っていますよ。
以前から、私がこのブログで書いている事と、
だいたい同じですよね、これ。


でも、合計で9人しかいないってのは、問題だと思うんだけど。
道路を守るっていう議員は、何百人もいるのに。

それと、共産党国民新党が入っていないのは、
不満ですね、正直。

前回の参議院選での、医療に関しての
各党のマニュフェストを比較
すると。


【自民党】
 ▽医師不足問題への早急な対応・地域医療の再構築
 ▽救急医療の拡充
 ▽国民が安心して受けられる医療の確保

【公明党】
 ▽「治療中心から予防重視」へ転換
 ▽医師不足対策等の推進
 ▽「介護予防」で元気な長寿を実現

【民主党】
 ▽小児科・産科医をはじめ医療従事者不足を解消
 ▽がん対策の拡充
 ▽医療事故の原因究明と再発

【共産党】
 ▽だれもが保険で必要な医療が受けられる制度を拡充
 ▽窓口負担増・医療切り捨てに反対
 ▽公的医療保険の解体と医療の「市場化」に反対

【社民党】
 ▽医療費の患者負担増と医師・看護師不足に歯止め
 ▽医療機関の財政基盤を強める
 ▽交付税措置の充実など自治体病院への財政支援を強化
 ▽後期高齢者医療制度(08年度開始予定)を凍結

【国民新党】
 ▽医療費をOECD平均水準まで引き上げる
 ▽医師偏在解消のため臨床研修医制度を見直し
 ▽山間へき地・離島の診療体制を充実強化


参照:「m3.com:参院選 医療関連マニフェストは」


これだけ見ると、なんか全部あいまい、というか。
何がやりたいんだか、見えて来ないのですが(汗)

唯一、国民新党だけが、具体的な事を言っていますね。

共産党は、これだけを見るとあいまいだけど。
以前から、医療に関して最もまともな事を言っているのが、
共産党
だと思いますよ、私は。

正直言うと、共産党自体は、どっちかと言うと、
あんまり好きな方ではないのですが、私。
こと、医療に関しては、一番良い事を言っていると思います。

『主治医が見つかる診療所1』
『主治医が見つかる診療所2』
『主治医が見つかる診療所3』

の記事でも書いたように、「主治医が見つかる診療所」の番組でも、
共産党の小池議員が一番まともな事、言ってたしね。

今回、医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟
参加しているのは、自民党、民主党、公明党っていう
メジャーな党だけなのですが。
是非とも、共産党国民新党の議員の方達も誘って、
これに入ってもらうと良いと思いますよ。

本文でも、

>中長期的には現在、日本の医療費の
 対GDP比は8%ですが、ドイツ並みの11%には
 上げていく必要があるでしょう。


って、国民新党のマニュフェストと、全く同じ事を
言っているわけですから。



それと、医師で議員の方も、何人もいるはずなのですが。
その人達は、入ってないのでしょうかねー。

医療現場の声を聞く、っていう意味では、
やはり医師免許を持っている、医師を入れるべきだと思うので。
もし、入っていないのであれば、この議員連盟
入ってもらう努力をするべきだと思います。

ま、実際は、医師免許はあっても、
多分相当長い間、現場では働いてないから。
医療現場の声かどうか、って事に関しては、
ちょっと疑問がありますけどね。

でも、医師にしかわからない事、ってたくさんあるから。
是非とも、医師で議員の方にも
入ってもらうべきだと思います。



それと、ちょっと気になったのが、

>現場の医療従事者の声がなぜ中央に
 届かないかということですが、
 一つには医療の担い手の多くは国家公務員や
 地方公務員であり、彼らの立場では
 上部機関である厚労省を批判にしにくいことが
 一因ではないでしょうか。


うーん、これはどうだろう。
そんな事考えてやっているかなー。
多分、お役所仕事だから、どうせ言っても駄目だろ
って諦めている医師が多いんじゃないですかねー。

それは、医師側の問題なので。
言っても無駄だから言わない、って事ではなく、
きちんと言うべき事は言っていく必要があると思います。
公立病院や国立病院の医師でも。

昔ならともかく、今はインターネット全盛の時代ですから。
ブログなんかもそうですけど、こういう場から
医師もたくさん発言をするようになって。
その声が届いたから、こういう議員連盟ができた、
って事なのだと思うので。

それはそれで良かったのかな、って思います。

ただ、直接もっと上に医療現場の声を届けるシステムを作る
っていう事も非常に大事だと思うので。
医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟
の皆さんには、頑張ってもらいたいですね。


医療現場の声が聞きたい人は、こちらから!
→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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後期高齢者医療制度(うば捨て山制度)1
2008年4月から、「後期高齢者医療制度」が始まります。
別名「うば捨て山制度」とも言われる、
高齢者を切り捨てる為の制度です。

選挙対策のために、半年から一年
国民の負担だけは、一部だけ
一時凍結していますけど。
選挙が終わったらやる、って事ですわ。


後期高齢者医療制度うば捨て山制度)」に関しては、
『主治医が見つかる診療所3』でも
書いた事なのですが。

ssd先生僻地の産科医先生もブログで取り上げていた、
JANJANの記事が非常にわかりやすかったので。
シリーズで紹介させていただきますね。

『産科医療のこれから:本日の医療ニュース、2月5日』
『ssd's Diary:肩すかし』



後期高齢者医療制度は「団塊うば捨て山」 (1)
なぜ75歳以上なのか

後期高齢者医療制度は2006年6月に
与党の強行採決で決まり、
本年4月からスタートすることになっている。


記者は青森市の整形外科診療所で地域医療を担っているが、
最近は高齢者から医療や介護に対する不安や
負担増への不満の声を聞くことが多くなった。

青森県の平均寿命は毎回全国最下位で、
医師不足もますます深刻になり、小児科、
産婦人科だけでなく高齢者医療
崩壊の危機に瀕している。

高齢者医療を崩壊させる「うば捨て山制度」に
警鐘を鳴らしたい。


後期高齢者医療制度とは?

厚生労働省が用意したリーフレットによると
5つのポイントがある。

1.75歳の誕生日から、今までの保険に関係なく
 全員が後期高齢者医療保険に加入する。

2.今まで保険料負担がなかった扶養家族の人も、
 2008年4月から保険料を負担する。

3.厚労省は「高齢者にふさわしい医療」というが、
 75歳以上を「差別した医療内容」となる。

4.「医療と介護の一体的なサービス提供」というが、
 「医療が介護に吸収」される。

5.国民健康保険は市町村が保険者だったが、
 この制度では都道府県単位の広域連合が保険者となる。


他に、現在老人保険に加入している65歳以上で
障害を持っている人も、自動的に後期高齢者医療制度
加入することになっている。


なぜ75歳なのか?

答えは「医療費の適正化」にある。
適正化の対象項目として「高額医療費」と
「終末期の入院医療費」が上げられ、2002年に
9,000億円かかった終末期医療費
何とかコントロールしようとしている。

厚生労働省は在宅死の割合を現在の2割から
2025年までに4割に引き上げることで、
年間5,000億円の終末期医療費を削減することが
出来ると予想している。

2007年厚生労働白書で
「将来の年齢階級別死亡者数」を推計している。
それによると74歳以下は徐々に減少するが、
75歳以上の死亡者数が急増し、
2030年には現在の約2倍になると予想している。

また、入院を必要とする病気と患者数についても、
74歳以下は現在とあまり変わりないが、
75歳以上の入院患者数は激増し、
中でも脳血管障害は2030年には
現在の2.5倍になると予想している。

このように、後期高齢者医療制度
高齢者の入院医療費、特に脳血管障害の
終末期医療費をコントロールするために
70歳からではなく75歳で切り分ける必要があった。


本当のねらい

制度のしくみとして、総医療費の
10%を高齢者が負担することになっていて、
もし医療費が増大した場合は自動的に
保険料が値上げされることになっている。

いいかえると、保険料の10倍までしか
医療費として使えない仕掛けだ。
さらに入院医療を必要とする人が年々増え、
終末期医療費も増加すれば保険料を引き上げざるをえない。

これは、現行の介護保険と同じで、
医療費を自動的に制御するシステムを
目指しているといえる。

しかし、高齢者と65歳以上の障害を持った人は、
どちらも医療を必要とする機会が多い。
ハイリスクグループだけで保険料を負担して、
保険制度が継続できるとは到底思えない。

だとすれば、ハイリスクグループの受診
を抑制するための制度、高齢者、障害者いじめの制度
ともいえる。

(大竹進)


引用:『JANJAN:2008/02/02』

参照:『後期高齢者医療制度の概要(PDF文書、厚生労働省)』


医療費適正化」って言っていますけど。
簡単に言うと「医療費削減」の為ですわ。

『主治医が見つかる診療所3』
で、自民党の議員が言ってましたけど。

金がない。
国民健康保険がもたない。
だから、この制度を作った。


って事ですよ。

自民党の中でも、老人いじめ、弱い者いじめをやりすぎた
って思われている、まさに
うば捨て山制度」とも言える制度ですよ。
この「後期高齢者医療制度」って制度は。

厚労省の試算では、年額7万円ちょっと
っていう試算が出ていましたけど。

実際は、もっと厳しいですよ。


後期高齢者医療制度の保険料について、
厚生労働省は年額7万4,400円と試算。

しかし、昨年12月に出揃った
各都道府県広域連合の保険料を見ると、
厚労省が「平均的な厚生年金額」とする
年金収入208万円の単身者の場合、

福岡県の10万1,750円(月額8,479円)
▽高知県の9万7,409円(同8,117円)
▽香川県の9万7,000円(同8,083円)
▽沖縄県の9万6,840円(同8,070円)
▽北海道の9万6,100円(同8,000円)
-等となっており、42道府県で
厚労省試算を上回ることが判明している
(中央社保協集計)。


『キャリアブレインニュース:2008/02/04』

制度が始まる前から、もう見込み違いって。
やっぱ、厚労省は信用できないわ、ホント。

75歳以上の死亡者数が急増し、
 2030年には現在の約2倍になると予想している

>入院を必要とする病気と患者数についても、
 74歳以下は現在とあまり変わりないが、
 75歳以上の入院患者数は激増し、
 中でも脳血管障害は2030年には現在の
 2.5倍になると予想している


厚労省の言っている通り。
年を取れば取るほど、病気になりやすいです。
それは間違いないです。

そして、重症化しやすいし、亡くなる確率も高くなります
病気になって、すぐに亡くなる人ばっかりなら、
医療費は少なくてすむのですが。
今の日本では、ほとんどの方が、病院に来て
治療を受けた後に亡くなりますから。

やっぱり、医療費はかかります。


医療費を減らす為には、病院にかからないで
老人が死ぬようなシステムを作る

っていうシステムを作る必要があったんですよ。
厚労省財務省にとっては。
医療費を削減するためには。

その為に出来たのが、この「後期高齢者医療制度」です。
医療費を削減するために、病院にかからなくて良い。
そして、お金のない老人からも、
年金から天引きしてでも金をむしり取るシステム


そんなシステムが、「後期高齢者医療制度」です。

選挙の前だから、国民の負担だけは、一部だけ
一時凍結していますけど。
選挙が終わったら、始まっちゃいますよ。
このうば捨て山制度とも言われる、
後期高齢者医療制度」が。

>ハイリスクグループの受診を抑制するための制度、
 高齢者、障害者いじめの制度ともいえる。


ほんと、ひどい制度ですよ、これ。



年金暮らしの老人から、7万円も取る、
っていうだけで大変なのですが。

>42都道府県で試算を上回る。って。

ほとんどの都道府県じゃないですか。
しかも、年々高くなりますよ、この医療

そんな後期高齢者医療制度うば捨て山制度)」。
始めちゃって、良いんですか?


今のところアクセス制限がない、
大学病院について知りたい人は、こちらから!

→ 「大学病院のうそ」 ~現役医師(Dr. I)が暴露する、大学病院の秘密

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主治医が見つかる診療所3
2008年1月7日、午後七時からテレビ東京で放送された、
主治医が見つかる診療所」って番組を見ました。

『主治医が見つかる診療所1』
『主治医が見つかる診療所2』

の記事の続きです。

主治医が見つかる診療所』、1/7分のHPはこれですよ。
『主治医が見つかる診療所』



2008年1月7日,「主治医が見つかる診療所
番組内容のダイジェスト3

後期高齢者制度について、「ゴッドハンド」上山博康先生
独壇場が続きます。

上山博康先生の話に関しては、m3とかでも、
多くの医師から絶賛されていたんですが。
実は、秋津内科の秋津先生、っていう先生も
地味に、結構良い事言ってました。



討論テーマ2 日本の国民医療費を上げる方法は?
◆《討論のキーワード》

医療費とは? (現在の日本の医療費は33兆円)
私たちが病気やケガをした時に、
病院での診察や治療にかかる費用の事。

医療費の主な内訳は…
 1.私たち(患者)が病院の窓口で直接支払うお金
 2.月々収めている保険料
 3.国の財政から出る予算


医療費削減政策
ここ数年で国は医療費を削減する政策を推し進めてきました。
医師や病院に支払うお金 = 診療報酬を大幅に減らし、
療養ベッドの数も23万床も削減するなど)
近年の高齢化により病院にかかる人が急増し、
その為に医療費が膨れ上がりこのままでは
国の財政が破綻してしまうとも言われます。

しかし、国の財政は圧迫されなくなるが、
医療現場や患者の負担は大きく増える事になりました。



こんな感じのVTRがまず流れて。


福島孝徳先生のお話。

手術には、お金がむちゃくちゃにかかる。
手術室を作るのには大変なお金がかかる。
人工呼吸器も特別で、光熱費もかかる。
看護師の人件費もかかるし、材料費もかかる。

アメリカでは手術室使用料を取る。
一時間1500ドル

厚労省は、一切そういうのをとらない。
日本では、ただ

手術には、材料も使う。
針、糸、特殊な綿、高い物もたくさんある。
厚労省は一切払わない

厚労省の役人が来たら、木綿の糸を使って、
ガーゼ使わないで、紙でやってよ。
っていう位、厚労省は金を払わない。

必要な薬剤、酸素は原価で請求しろ、と言う。

そんなビジネスが成り立つはずがない。

日本の政府にやっていただきたいのは、
各国とも医療費が上がっている。
アメリカは医療費GDPの16%
ヨーロッパは12%
日本は8%で、先進国中最下位
日本も10-12%に上げられないか。

病院に入る金は、むちゃくちゃに少ない。


その後、「ゴッドハンド」上山博康先生
表を出して、詳しく説明。

GDPの伸びは1998年から2006年まで、
112.7%に増えている。
でも診療報酬は、改訂、改訂で93.5%まで減っている。

同じ比率で上がるのが当たり前だが
減り続けているのが現状。
これで、すでに破綻している。
このままでは、医療は崩壊する。

内部で医療機器を安く買うとかの工夫は必要。
でも、そういう工夫をしても、もう限界


与党は、医療改悪法案に、賛成した、けしからん。
っていう議員の話があって。

与党の議員も医療費削減による医療現場
辛さを理解している

っていう、テロップが流れますが。

ホントでしょうかねー。

少なくとも、行動には表れていないようですね。


んで、循環器内科の金先生の素朴な疑問。

「誰が邪魔して予算くれないのか、
医療費削減の元凶は?」


で、与党議員の苦しいいい訳。

今まで、厚労省に一貫したものがなかった。
我々も厚労省の言い分に従ってきたのも事実。
もっと政治主導になるべき。

厚労省は、本当は医療費を増やしたいんだ。
やっぱ、財務省
なんとか、2011年。
借金の元利払いを除いて均衡させたい。
今から14兆円抑えて、
その上で医療費の抑制が必要なんだ



その後またVTR

診療報酬改定
介護報酬改定
医療制度改革

その結果、5年で1兆1千億円、社会保障費削減。



与党議員は、金がないから、しょうがない。
の一点張り。


内科医、秋津先生

「借金をこしらえたのは、医療のせいではないのに、
医療にしわ寄せされるのは、おかしいんじゃないか。
霞ヶ関埋蔵金ってどうなの?」


与党(田村)議員。
埋蔵金の話はやめましょうよ。

今までの借金には、与党に責任があるけど。
金がないんですよ。

民主党議員の話。
金はあるんだ。


医療費削減による「弱者切り捨て」の現状に
脳外科医上山博康先生が言っていました。

日本は安い医療費で、必死に頑張って、
今までは維持できてきた。
そこから更に安くする。
そこから、高齢者を見捨てるような医療に、
金がない、って言ってやってきたんだ



またVTR

少子高齢化社会

高齢化を対象にした医療制度改革(改悪)

2000年   
介護保険制度スタート

2002年   
  老人医療  定額負担導入
  自己負担限度の増加
  老人医療対象者を70歳から75歳に引き上げ

2003年
  介護保険料13%引き上げ

2005年
  公的年金控除の切り下げ、老年者控除の廃止
  老年者非課税枠の廃止
  定率減税の半減及び停止

2006年
  介護保険料24%引き上げ
  2012年までの介護型療養ベッドの全廃、
     及び医療型療養病床削減の決定
  70歳医用の療養病床の食住費の全額自己負担


高齢者の負担は、年々増す一方。
高齢者にとって、大きな問題になっている。



その後、北海道の室蘭で、
年金暮らしの老人のVTR

食べたいものを我慢してやっている。
戦前、戦後を思い出す、悲しい。

年金しか収入がないのに、
国の医療制度改革の後、また負担が増えた。

いつかは生活が楽になると思っていたら、
前立腺ガンになっちゃって、心臓病も悪化。

月11万円しか収入がないのに、
年間21万円も負担が増えて、
節約しなければやっていけない。
気温が氷点下なのに、ストーブもつけられない。

若いときは国の為に働いて、年を取ったら
うば捨て山の様に捨てられる。
勘弁してほしい。

なんでこうなったの



脳外科医上山博康先生

ベッド削減とか、年寄り早く死ねって事
乳母捨て山医療、医療費削減で、
高齢者にしわ寄せきている

今のVTR見てもらえばわかる。


民主党議員

500万人の人が、健康保険も払えない。
病院にもかかれない。
もうやっていけないとこまで来ている。


脳外科医上山博康先生

国保の比率は高い。
でも、過去の分まで保険料を払わないと、
保険証を取り上げられる。
今までも払えない人が、過去10年払えるはずない。
高齢者に死ねといっている。

銀行のローンは自己破産したら、ちゃらになる。
これから保険料を払う人には、
今までをちゃらにして、保険証を交付すればよい。
保険証取り上げられて、過去全額保険料払ったら
保険証をやるってのは、死ねと言っているようなもの。



またVTR

国民保険料の滞納約500万世帯。

負担率の大きい国保、払えない
国保 負担率11.8%
組合保険 負担率5.1%

現在の保険制度では、高齢者の負担大きい



脳外科医上山博康先生

同じ10万円でも、価値が違う。
保険料も、いっぱい稼いでいる人に、
いっぱい払って貰えば良い。


その後、民主党山田議員の試案。

国民健康保険、組合保険。
政府管掌保険共済組合保険。
これらの保険を全部一律にしてしまうっていう案。


これをやれば、所得の少ない国保の人達の
負担が減って、負担の格差がなくなる、って案です。

まあ、悪くはないんですけど。
これやると、企業の負担が増えるから。
どうなるか、わかんないですね。


平沼(自民党)議員

警察官だけは、過去3年間で1万人増員。
医療は、最も必要な安全保障。
財源はどこかから捻出しなきゃだめ。


田村(自民党)議員

若い人に比べ、高齢者医療費は年間5倍。
だから、高齢者にも負担してもらう。


我々、参議院選で負けたから。

財源、税金、保険料、自己負担。
とりあえず、1年間は今までのままで。


内科医、秋津先生

高齢者の伸びが増えるの、どこが悪いの。
なぜ、それを下げるって発想なの。

老人福祉法、第2条(基本的理念)
老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、
かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、
生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。


高齢者の方っていうのは今まで、日本を作ってきて、
我々の為に頑張ってきたのに、今になって負担を強いられる
っていうのは、ちょっとおかしいんじゃないの。


脳外科医上山博康先生

2007年の4月に、後期高齢者医療制度が始まって。
公園に死体が転がる日が、このままいけば来ますよ。



VTR

後期高齢者医療制度

1,
75歳以上の全ての高齢者を対象に
創設される新たな保険制度

全国で1300万人が対象

2,
負担する保険料の平均(推定)
月額6000円→年額7万2000円
(厚労省調べ、2007年12月3日)

3,
原則的に年金からの天引き

4,
扶養家族として、保険料が免除されていた
高齢者200万人も、新たに
保険料を支払わなければならない。

5,
保険料を滞納すると
保険料が取り上げられる(段階的に)

2008年4月から施行



脳外科医上山博康先生

一度決まったら、間違っていても始まるのは何故。
国会が決められるんなら、国会で止められる。
間違っているなら、国会で覆せる。

医療費削減の方向で、これを決めている
これ別枠。
若い人と同じ手術を75歳以上の人に手術した時、
総枠が決まっているから、
保険が同じ額を、病院に払ってくれない。
若い人手術したら100万円、75歳以上なら30万円。

だったら、同じ医療を病院がしますか。

国のやり方は、いつでも国民を見捨てるのは
病院を窓口にする。
悪魔って言われるのは、医者側。
しかも、国がやらないで、都道府県にやらせる。



福島(社民党)議員

医療費適正化計画、保険料も全部違ってくるから
あんまり頑張らない都道府県が酷い目にあるかもしれない。
厚労省は答弁で、診療の中身は変わらないと言っているが、
診療報酬体系は、75歳以上と以下で変わる、
という事は、はっきり認めている


小池(共産党)議員

75歳以上は病気になりやすいし、治りにくい。
しかも、年金収入しかないのだから、
破綻するのは目に見えている。



松原(民主党)議員

うば捨て山のような気がするのが率直な意見。


脳外科医上山博康先生

この制度を施行、40%国庫負担。
凍結はしたが、先延ばしだから。
いつかはやる。
選挙終わったらやる。

政府からは、老人を別の枠に入れたのは
病気の形が違うから、
っていういい訳が出る。
削減が問題ではないのなら、今までと同じでよい。

なんで、75歳で切るのか。
75歳以上は、まともな医療は受けさせませんよ。
って事で削減しようとしている匂いがする。
高齢者がいっぱい病気して別枠でとるんなら、
40歳以下だったら病気しないんだから、
安くすればよい。
おかしいでしょ。


平沼(自民党)議員
医療費全体で考えなきゃならない。
医療費は、聖域があっても良いのではないか。

年金だけで生きている人だけではなく、
資産がたくさんある人もいるんだから。
一律はおかしい。


小池(共産党)議員

今度の制度は年金暮らしの人の懐に手を突っ込んで、
強制的に天引きするシステム。
75歳過ぎたら、病院がやればやるほど
赤字になるような仕組みを作られたら承伏できない。


心臓血管外科医、南淵先生

後期高齢者制度は、別の審査なの?
75歳以上なら、こんな治療は必要ない、
って切られるかもしれない、って事。


上山先生、福島議員

その通り。


田村議員

2つ議論があって、
年寄りの負担が減る
病院の実入りが減るんじゃなくて、規制が入る。
必要な医療ができなくなる。

何故この制度になったか、っていうと。
国保がもたなくなった。
国保があったから、国民皆保険が成立していた。
これを潰すわけにはいかないって事になった、
じゃあ、分けようって話です。

全体として医療サービスが低下したら、ゆゆしきこと。
制度がおかしいなら、直さなければいけない。


一方、老齢者は、控除、減らしてきた。
若い人たちばっかいじめて、
老人の方が生活楽なんじゃないの?
っていう声があって、小泉が規制緩和をやった。
でも、やりすぎ?



草野アナウンサー

多くの国民はやりすぎと感じている。
間違っていたら直す、って事を自民党は、
今までやってきていない。

間違っている制度なら、ブレーキかける事も必要。


脳外科医上山博康先生

日本の保険制度が破綻にあるのは事実。
老人がなぜ医療費高いか。
老人がたくさん病院にかかって、薬もらって
サロン的にやっているのも事実。
抑制できる部分は、内部でもある


医療器械は異常に高値。
アメリカの為に、患者が金を払っている。
無駄な投薬をしない。
医療側での自粛も必要。



憲法25条(生存権)
すべて国民は、健康で文化的な
最低限度の生活を営む権利を有する

ホントにお金が少ない人を救えない医療なら、
医療をやっている意味がない。
困っている人達を見捨てる医療は止めて頂きたい。




という感じで、番組が終わります。

ホント、脳外科医上山博康先生
後期高齢者医療制度の事とかも、
良く勉強していますよね。

国会議員、特に与党の議員なんかも、
たじたじでしたから。

脳外科医上山博康先生が、いっぱい良い事言ったので。
私が書くことは、あんまりないっすわ。


それにしても、このVTR見ると、
2000年から2006年まで。
医療保険改悪が続いて、特に高齢者など、
お金のない人達の負担がすごく増えているんですねー。

その中でも最悪なのは、これから始まる、
この番組の後半に話題になっていた、
後期高齢者医療制度」です。

制度の内容は、VTRに書いてある通りの内容なんですが。

2,
負担する保険料の平均(推定)
月額6000円→年額7万2000円
(厚労省調べ、2007年12月3日)


これ、あくまでも、今の時点の試算です。
これって、都道府県によって違うから。
この倍くらい払う県も出てくる
、って事ですよ。

それと、一番問題なのは、これが
「現時点」の見込みって事です。


厚労省(財務省)の医療費の見込みっていうのは、
1992年位の予想だと、2025年には
医療費が140兆円になる、って言っていたのに。
今の予想だと56兆円位なんで。
はっきり言うと、全くあてにならないんですよ。
厚労省(財務省)の医療費の見込みっていうのは。

その当てにならない厚労省(財務省)の医療費の見込み
そのまま鵜呑みにして、5年で1兆1000億円、
医療費を削減する。

っていうのが、内閣で決まっちゃったから、
今の医療崩壊が加速しているっていうのもあるんですよ。
実は。


そいで、全く信用できない厚労省(財務省)の
医療費の見込み
なんだけど。
一応、そのデーターを見ると。

→ 『財務省主計局:社会保障(2)』

医療費
2006年       2025年
33兆円        56兆円

高齢者(70歳以上)医療費
2006年       2025年
13.3兆円       30兆円


と、高齢者の医療費は、2.25倍に増えます。

一方、
高齢者(65歳)の人口の割合は

2025年       2025年
 20.2%      30.5%


と、約1.5倍になります。

65歳と70歳だから、厳密には違うんだけど。
高齢者の総医療費は2.25倍になるけど、
人口は1.5倍にしかならないから。

1人当たりの負担は、
2.25/1.5=1.5倍
になる、って事なので。

今は、年間約7万2千円の負担だけど、
2025年には、約10万8千円の負担になる、
って事ですわ。

あくまで、おおざっぱな計算ですけどね。
共産党の小池議員の言うとおり、

>75歳以上は病気になりやすいし、治りにくい。
しかも、年金収入しかないのだから、
破綻するのは目に見えている。


って制度ですわ、これ。
ほんと、この後期高齢者医療制度って、
別名「うば捨て山制度」って言われるのも、わかるわ。


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