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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
「点滴作り置き」、6/17までのまとめ
『点滴作り置きの問題、1』
『点滴作り置きの問題、2』
の続きです。

ちょっと本文が長くなりすぎて。
論点がわかりずらくなってしまったので。
谷本整形」の「点滴作り置き事件」に関して、
ちょっと整理してみましょうか。

ブログでの反響は、思ったほどでもなかったのですが。
某閉鎖空間でのコメントは、合計で100位まで
議論が進んでいるんですが。
なんか、別の方向に進みつつあるし(汗)

推測の部分が多かった、というのも反省点ですので。
どの部分がわかっている情報で、
どの部分が推測なのか、っていうこともはっきりさせて。
できるだけ、わかっている範囲で
物事を整理
していきましょう。


まずは、これまでの経過を時系列でまとめると。

谷本整形での点滴患者発症状況◆

5月23日 岡波総合病院(伊賀市)に3人入院

6月 2日 上野総合市民病院(同)に2人入院

   6日 岡波総合病院に1人入院

   9日 上野総合市民病院に6人、岡波総合病院に1人入院
      ▽Iさん(73)が谷本整形点滴治療受ける
      ▽上野総合市民病院内科医師が「医療事故の可能性」
       と伊賀保健所に通報。
  
  10日 伊賀保健所から県健康福祉部に連絡。
      ▽Iさんが自宅で死亡しているのを家族発見。
      ▽県が谷本整形に診療自粛を要請。
      ▽県警が谷本整形で事情聴取などを開始
      ▽県が事態を公表。

  11日 谷本広道院長が会見。
      点滴薬剤の作り置きがあったことなどを公表。
      県が谷本整形に立ち入り調査。

  12日 県警が谷本整形を家宅捜索。
      ▽谷本院長、2度目の会見。
      薬剤作り置きについて
      「以前はたくさんやっていた」と認める。

      上野総合市民病院の入院患者4人の血液から
      検出された菌はセラチア菌と判明。

  13日 患者が入院している伊賀市の岡波総合病院で、
      入院患者1人の血液からセラチア菌が検出。


参照: 『2008年6月14日:毎日新聞〔伊賀版〕』
    『2008年6月12日:時事通信』
    『2008年6月14日:産経新聞』


まあ、こんな感じですかね。

ちなみに、6月17日までに、患者の数は、

>17日までに、伊賀市の診療所「谷本整形」で
点滴を受けた患者29人が体調を崩し、
死亡1人、入院18人(うち4人は既に退院)、通院10人。


参照:『2008年6月17日:産経新聞』

という事です。


実は、最初は点滴の「直後」に、腹痛、嘔吐、発熱なんかの
症状がある、って事だったので。
細菌によるものではなくて、もしかしたら毒物かもしれないなー。
なんて思っていたんですよね、私。

マスコミ報道では「点滴作り置き」の話ばっかりで、
他の視点が抜けていたんだけど。
「違ったらどうするんだろー。」
って思って、眺めていました。

状況が変わったのは、6月12日ですね。
患者4人の血液からセラチア菌が検出されましたから。



三重県と県警などによると、
これまでの診療所への聞き取りなどで
点滴に使った鎮痛薬「ノイロトロピン」などのアンプル
 は調合済みのものが使われ、濃度や量を間違えた可能性は低い
▽人為的に毒物などを入れた形跡は
 現時点では見つかっていない
▽50人以上の患者点滴を受けているのに、
 発症者は60~80歳代の体力の落ちた
 高齢者に集中--などが判明。
点滴で細菌感染が起きたとの見方を強めた。


参照:『2008年6月11日:毎日新聞』


複数の看護師が点滴作り置きしたことを認めている。
さらに、市立上野総合市民病院や
岡波総合病院などに入院した患者の血液中から、
院内感染の原因菌として知られるセラチア菌が検出された。

発症した患者は、休診日翌日の月曜日や
前日午後が休診となる金曜日に集中しており、
調合した点滴液の中で、休日期間中に
菌が増殖したという見方が有力となっている。


参照:『2008年6月17日:産経新聞』

というのが、今日までの報道ですね。


人間の血液の中には、本来は細菌なんていないんです。
それが、同じ病院で同じ点滴をして、
同じ細菌(セラチア菌)が複数の患者から検出される。

(最終的には5人患者の血液からセラチア菌が検出。)

発症した患者は、休診日翌日の月曜日や
前日午後が休診となる金曜日に集中していているので、
調合した点滴の中で、休日期間中に菌が増殖した。
と考えると、全てつじつまが合いますから。

状況証拠からいったら、
谷本整形で行った点滴が原因の確率は非常に高い。
と、私は思います。

そういう方向で、警察も動いているみたいですね。


もう一週間経っていますから。
血液培養をして、一週間以上経っても、
それ以上の結果が出る事は、基本的にはありませんから。
これ以上、セラチア菌が検出される患者が増える、
っていう可能性は少ないと思います。

体調を崩した、っていう人の数は
もうちょっと増える可能性はありますが。
一週間経ってなんともなかったら、体調不良の原因が
谷本整形点滴のせいか、っていう事は言えないかと思います。



そいで、話は戻って。
確実にわかっている事実として。

問題となった点滴の内容は、
『点滴作り置きの問題、2』
にも書いたけど。

患者が共通して受けた治療は
 「生理食塩水」100ミリリットルに
 鎮痛薬「ノイロトロピン」3ミリリットルと
 ビタミン剤「メチコバール」1ミリリットルを
 混合した薬剤の点滴とみられる。


参照:『2008年6月11日:毎日新聞』

生理食塩水と、ノイロトロピンメチコバールです。

生理食塩水」というのは、0.9%食塩水。
ノイロトロピン」は、NSAIDsではない鎮痛薬の一種。
メチコバール」っていうのは、ビタミン剤で「しびれの薬」。

ノイロトロピン」も「メチコバール」も、
点滴の薬も飲み薬(内服薬)もあります。


そして、谷本整形点滴をした患者の数は。

>同医院で点滴治療を受ける患者は、1日100人以上。
点滴室では患者同士が向かい合って
数十センチ間隔で座り、多い時は
10人が同時に点滴を打っていた。


参照:『2008年6月12日:読売新聞』

というような記載があったので。
「メチコバール+ノイロトロピン+生理食塩水」
点滴を打っている人が1日に100人いるのか、
別の点滴も含めて100人なのか。
あまりよくわからないまま、
前回は記事を書いていたんですけど。

他の報道を良く見てみると。

作り置きをしていたのは、今回症状が出ている鎮痛薬
「ノイロトロピン」と、ビタミン剤の「メチコバール」
を生理食塩水に混合して使うセットの
点滴だけだったことがわかった。

谷本整形では1日約100人分の点滴を使用しており、
今回症状が出た組み合わせの割合は、
全体の半分以下とみられる。


参照:『2008年6月12日:朝日新聞』


谷本整形点滴薬剤の調合内容を変更した
5月9日から6月9日までに同じ点滴を受けたのは
延べ667人と判明。
実数は300~400人とみられ、県は同様の症状が
出ていないか確認を急いでいる。


参照:『2008年6月12日:毎日新聞』

と、きちんと書いてありましたね。
すいません。

「メチコバール+ノイロトロピン+生理食塩水」
点滴をした患者の数は。
一ヶ月で667人ですから。
平日22日として667人を22日で割ると、
1日平均で30人くらいでしょうか。
まあ、休日明けの月曜日とか、そういう日は
もっと人数も増えるのでしょうけどね。

点滴する患者100人位いて。
そのうちの30人かそこらは、問題の点滴だった。
という事でした。

そこらへんは、もうちょっときちんと調べて、
ちゃんと把握してから記事を書くべきだったかな、
とは思います。


外来患者の数に関しては、谷本院長の会見と、
元看護師からの証言しかないのですが。

>捜索後に谷本広道院長が報道陣の質問に応じ、
「1日約350人の患者が訪れ、
(診療所の様子は)野戦病院状態。
院内感染が発症する率は高かった」


参照:『2008年6月13日:日経新聞』

>当時(8年前)も1日平均約300人の患者が来院しており、

参照:『2008年6月13日:読売新聞』

>当時(1994年)も1日約300人の患者が来ており、

参照:『2008年6月17日:毎日新聞』

という事ですから。
外来の患者数は1日に300~350人程度
という事は言えるかと思います。


谷本整形で働いている医師と看護師の数は。

>同診療所では、谷本広道院長(57)と
8人の看護師などが勤務。


参照:『2008年6月17日:産経新聞』

という事なので。
医師1人、看護師8人ですね。


点滴作り置き」と、清潔操作に問題があった。
っていう事に関しては、三重県が立ち入り調査をして、
その結果を発表しています。

>三重県は6月12日、診療所で点滴治療を受けた
患者たちが腹痛などの症状を訴え、
1人が死亡した問題で「谷本整形」(谷本広道院長)への
立ち入り調査の結果を発表した。

 ▽看護師が点滴薬剤の調合を複数の場所で行っていた
 ▽調合後の薬剤を事務机の上で保管していた
 ▽手指の消毒も不十分だった、
などと指摘。
清潔保持に問題があり、院内感染の疑いが
濃厚になったと説明した。


参照:『2008年6月12日:毎日新聞』


>県によると、複数の看護師が調合を担当していたが、
手の清潔が保てない設備上の問題があった。
手洗いに、使い捨ての紙タオルでなく
布タオルを使っていた。
日々の調合数やその日に使わずに残した数など、
点滴の使用状況については作業記録が作られていなかった。

6月11日に谷本整形に帳簿の提出を求めたが、
備えるべき帳簿が作られていなかったり、
手順書に基づかない業務実態があったりしたという。


参照:『2008年6月12日:朝日新聞』


>医療法で義務付けられた
「院内感染対策の指針」が作成されない。

>県によると、複数の看護師が、患者らの出入りする
「中待合室」や点滴室の事務机で点滴液を調合。
その後、点滴液のボトル容器をふたのない紙箱に入れ、
そのまま事務机の上に放置していた。
手洗い用の布製のタオルも看護師らが使い回すなど
雑菌が繁殖しやすい状態だったという。


参照:『2008年6月13日:日経新聞』


という事ですね。
三重県の立ち入り調査の報告を元に報道されていますから。
これも、事実と言って良いと思われます。


前の記事に、
>以前に同様の事があったにもかかわらず、
反省もせずに繰り返したんですから。


と、私は書いてしまったのですが。

>同医院の谷本広道院長が12日、記者会見し、
約2年前まで、看護師による点滴液の作り置き
院長自身が知りながら、
常態的に行われていたことを認めた。

「以前はそういうこと(作り置き)をたくさんやっていたが、
今回のような大きな事件にはならなかった」と述べた。

2年前、点滴治療を受けた2人の患者
気分が悪くなったのを機に、
「『そういうことをするな』と(看護師に)
言ったつもりだったが、徹底されていなかった」
と語った。

また、昨年10月、同医院での点滴後に死亡した男性(85)
について、谷本院長は「事実関係がはっきりしておらず
答えようがないが、点滴によって死亡したということはない」
点滴との因果関係を否定した。


参照:『2008年6月13日:読売新聞』


>さらに2年前にも、点滴で不調を訴えたケースが2例あったが、
保健所には届け出なかったことも明らかにした。


参照:『2008年6月11日:産経新聞』

という事ですから。
昨年10月の死亡例に関しては、
点滴との因果関係は不明


2年前にも、点滴で不調を訴えたケースが2例あったけど、
これに関しても、セラチア菌が検出された、
って訳ではないですから。
厳密に言うと、「点滴作り置き」が原因。
とまでは言えないかな
、とは思います。


それと、補足情報ですが。
谷本整形周辺の情報です。

『点滴作り置きの問題、2』
のコメント欄に、りん先生から情報をいただきました。

谷本整形の周辺は、医療機関が少なく、
院長がTVで言っていたように
野戦病院のようだったんだろうと思います。

擁護する気はありませんが、1日300人の患者のうち、
半数150人がリハ、さらに半数の75人が
点滴・注射、残りが再診と考えると、
一人医師ではかなり大変な状況だっただろうと推測できます。


という事だそうです。



ここまでをまとめると。

手洗いに、使い捨ての紙タオルでなく布タオルを使っていた。
 ▽手指の消毒も不十分だった、
 ▽看護師が点滴薬剤の調合を複数の場所で行っていた
 ▽調合後の薬剤を事務机の上(常温)で保管していた
日々の調合数やその日に使わずに残した数など、
点滴の使用状況については作業記録が作られていなかった。
医療法で義務付けられた、
「院内感染対策の指針」が作成されていない。


と、清潔操作と点滴の管理に関して、かなりずさんな状況です。
これに関しては、経営者、管理者である谷本院長
使い捨てのペーパータオルを購入するとか。
「院内感染対策の指針」を作るとか。
管理者の責任があると思います。


そして、点滴をする患者の数と、医療従事者の数。

点滴する患者が1日に100人位いて。
そのうちの30人かそこらは、
「メチコバール+ノイロトロピン+生理食塩水」の点滴

そして、医師は1人で、看護師は8人です。

周辺に医療機関が少ないそうですから。
患者の数が多くなるのはしょうがないのかもしれません。
それに、1日100人位、点滴をする患者がいても、
全員点滴が必要な患者なのかもしれません。

それに関しては、個別の患者の検証ができないので。
今は触れないでおいておくとして。

点滴患者が1日に100人。
外来の患者数が1日に300~350人。


これを、医師1人、看護師8人ですから。
明らかに、医療従事者の数が足りないんじゃないですかね。


地域の事情があるから、外来に来る患者の数とか、
点滴をする患者の数が多くなる事は仕方ないかもしれないけど。
「医師+看護師」の診療所の能力を超えて、
患者を受け入れてしまった。

という事は問題があると思います。

患者の数が多くて、点滴する看護師の数が少なくて
手が回らない、という事であれば、
看護師の数を増やす。

これは、経営者の責任になると思います。

もしくは、週に3回点滴をしに来ている人に、
週1回にしてもらうとか。
点滴ではなくて、飲み薬にするとか。

点滴をする患者の数を自分たちの能力の範囲内まで減らす
っていう事は必要だったと思います。

これをやらなかった責任は、やはり谷本院長にある。
と言っても良いかと思います。


点滴をする看護師の数が少なかったから、
手が回らなくて、「点滴作り置き」をした。
その背景として、看護師の数が足りなかった
という事があるので。
それに対応しなかった、管理者、谷本院長には
責任がある
と思います。

点滴をする患者の数が100人でも、
点滴ばっかりする看護師を、あと5人雇って。
清潔操作できちんとやっていたのであれば、
全く問題はなかったと思います。


今の時代、医師だけでなくて、看護師も不足していますから。
看護師をあと5人雇う、っていうのは
現実問題としては、厳しい面もあるのでしょうけどね。
地域の事情もあるようですし。


1,安全、衛生管理を怠った。
2,医師、看護師の能力以上の患者を受け入れてしまった。


この2点のせいで、不潔な状態で点滴が作られ
点滴作り置き」をせざるを得なかったので、
このような結果になってしまったんです。

少なくともこの2点に関しては、
今ある情報から間違いない事ですから。
医師の立場からこそ」、この点に関しては、
谷本院長は駄目だ
という声はあげていくべきだと思います。

ただ、単にこの医師個人を非難するだけでは、
何の解決にもなりませんから。

この点滴の内容が本当に必要だったのか。
とか、そういう医学的な話は、
もちろん医師の中ではどんどん議論すべき事だし。

それに加えて、患者を多く受け入れた原因となった
診療報酬の話とか、安全にお金をかけても、
目先のメリットはない
、とか。
そういう、もっと根本的話も、
どんどん議論していくべきだと思います。

でも、いっぺんに書いてしまうと、
また訳がわからなくなるので。
今回は、触れないでおいておきましょうかね。


それと、谷本整形が特殊なだけで、
他の開業医や医者が全部そうだ。
って事にはなりませんからね。
そこら辺は、勘違いしないでくださいね!


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→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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