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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
夕張、地域医療を守る地方議連
7/27、夕張に行って、
第二回地域医療を守る地方議員連盟」の
地域医療を考えるシンポジウム!」に、
参加してきましたー!


民間企業で言えば、「倒産」した町「夕張」。
その夕張市に、村上智彦先生が行って。
一億円以上の個人保証をして、
医療法人財団夕張希望の杜」という法人を作りました。

そこで地域医療を再生しようって、頑張って。
それに賛同した医師達もたくさんいて。
公募した10人位の中から、
特にやる気のある医師2人来て。
そこで医師だけでなく医療従事者みんなで、
予防医療を中心とした医療
をやっているようですね。

今回、検査技師さんも発表をしていたし。
看護師の方も発言されていましたけど。
みんな、ホントに良くやっているなー、
って感心しました。

夕張市民の意識も変わってきているようですね。
村上先生がこの会で発言されていたのは。
以前は救急車の利用は、年間900件と、
住民の人口12000人にしたら、
べらぼうに多かったけど。
それが、100件以上減った
と、おっしゃっていましたが。
その後の懇親会では、
最近はもっともっと減っている。
という話をされていまいた。

200人くらい入れる規模の場所だったようですが。
結局、集まったのは議員医師を含めて100人弱かな?
それでも、来ている人達はみんな一生懸命、
話を聞いてくれているようでしたね。


地方議員医師の方達、何人かが発言されましたが。
個別の発言は書きませんが、
だいたいみんな言っている事は基本的には同じで、
医療というのは、限りある資源なんだ。
だから、使いすぎると医療という資源が枯渇して、
医療崩壊が起こってしまうよ。」

というような感じだったと思います。

そうならない為に大事なのは、
病気を予防して、病気にならないようにする事。
それが、結果的には医療費も減らして、
地方の為にも良いんだよ。

というような流れだったと思います。


奈良県の議員の方から、
「お腹(胃)が痛いって病院に行ったけど。
実は心筋梗塞で、助からなかった人がいる。
最初から大学病院に行けば、助かったかもしれないのに。
もっと教育が必要だ。」


というような話があって。
それをやったら、胸が痛い人は当然だけど、
お腹が痛いとも全員、時間外でも大学病院に
行かなければならない事になるし。
心筋梗塞っていうのは、歯が痛いとか、
肩が痛いとか、首が痛いとか。
いろんな症状がある場合もあるし。
糖尿病なんかの場合だったら、
症状がない人もいますからね。
ただ、だるいとか、そういうのも結構いるし。

そういう患者が全員、大学病院に行ったら、
それこそ医療が崩壊しちゃうよ、
っていう話なんですけどね。

誰か医者が発言しないかなー、と思っていたら、
村上先生が発言されて、
「それ全員やったら無理だから。
それより、タバコとか生活習慣を直さないと。」

とか、そんな話をされて。
村上先生、やっぱり話うまいなー、
と思って人ごとだと思って聞いていたんですけど。
その後に、循環器内科の私の方に話が来ました。

「循環器の有名な先生も来ていますから、是非」
って、突然の指名。
いや、全然有名じゃないし。
村上先生に、有名な先生って言われても(汗)

最初の方で、医師2人が司会の金子議員に指名されて。
その後、別の話になっていたようなので。
もう来ないかな、と思って心の準備をしておらず。
全然話す内容を考えてなかったので、
思っていた事の半分くらいしか
伝える事ができなかったのですが。

私の発言はおおざっぱに言うと、こんな感じ。


タバコを吸うと、心筋梗塞になる確率が、
吸っていない人の2倍くらいになります。
糖尿病高血圧、高脂血症(脂質異常症)も、
それぞれ2倍位になります。
だから、タバコを吸っていて、糖尿病があって、
血圧もあってコレステロールが高い人
は、
2倍x2倍x2倍x2倍=16倍位
心筋梗塞になる確率が高くなります。

実際に、世界的に有名な研究で、
タバコを吸っていて、糖尿病があって、
血圧もあってコレステロールが高い人は、
心筋梗塞には20倍位なりやすい
というデーターが出ています。

生活習慣病は、生活習慣を改善すれば、
一部は予防する事もできるし、
場合によっては治す事もできます。
だから、生活習慣を改善する、
という事は非常に大事です。

ただ、生活習慣をどんなに改善しても、
絶対にリスクはゼロにはならないんですよ。
心筋梗塞になる確率が、半分の半分
とかになったとしても。
どんなに頑張っても、確率はゼロにはなりません

予防医療というのは、病気になる確率を
できるだけ低くする医療
ですけど。
絶対に病気にならない、
というものではないんですよ。


医療は不確実なものですから、
どんなに頑張っても、
絶対にゼロにはならないんです


という話で、半分(笑)。
結構、長く話ましたね、私。

データーとかは、メルマガやブログでもそうだけど。
正確性よりもあくまでわかりやすさを重視して、
おおざっぱなデーターですけど。

生活習慣の話と、医療の不確実性の話
一緒にしてしまったので。
なんか、わかりにくくなってしまったかなー。


ちなみに、この奈良県の議員の方ですけど。
後で懇親会の時にお話しをしたのですが。
非常に意識の高い、知識もかなり持っている
方なんですよ。
その方でさえ、こういう事を言っているのですから。
やはり、教育というのは必要なんだな、
と思います。

それ以外にも、今回参加されていた議員の方達は、
非常に意識の高い人達ばかりで。
ホント、びっくりしました。

ただ、やはり医療というか医療現場の知識自体は、
非常に乏しいようなので。
そこは、こういう会を何回も開いて、
どんどん勉強していってもらいたいな、
とは思います。


んで、最初の方に、
医療崩壊を食い止める為に、コンビニ救急をなくそう」
という話は出ていたのですけどね。

どなたか(議員?)が発言された、
コンビニ救急抑制の話で。
「それをやると、受診抑制が起こるんじゃないか。
(本当に受診が必要な患者の)
受診抑制をなくすためには、どうしたら良いの?」


という様な発言があったのですが。
誰も答えておられなかったようなので。
私が答えて良いのかわかんないですけど。
何となく、流れで答えてしまいました。


時間外に来る患者の半分以上。
多分、8割くらいが軽症の患者
です。
そういう患者は安心を求めて、
病院(診療所)に来るんです。


病院(診療所)に来て、お医者さんに、
大丈夫って言って貰いたいから来てるんですよ。
でも、全員がそれをやったら医療は崩壊します。

安心を得るのが目的ならば、
他の方法でも、安心を得られれば良いんですよ。


先ほど、柏原の話が出ましたが。
「県立柏民病院の小児科医を守る会」
というのは、ただ小児科の医者を守る為に、
病院にかかるな、と言っている訳ではありません。

子供がいる母親というのは、時間外でも
子供が心配だから病院にかかりたいんです。
だから、お母さん達を安心させるために、
熱がどのくらいでも、元気だったら、
家で1日ゆっくり休みなさい、とか。
熱が出ていて、ぐったりしているようだったら、
すぐに病院に来て下さいとか。
そういう、一般人でもわかるような、
「フローチャート」っていうのがあるんですよ。
子供用だけですけどね。

参照:「県立柏原病院の小児科を守る会」

そういうのを住民みんなに配って。
すぐに病院に来る前に、まずはそれを見て。
それでもわからない、心配だったら、
病院(診療所)に来れば良いんです。

安心するだけなら、必ずしも病院(診療所)
に来る必要はないんです。

8割の人には、それをやってもらうべきなんです。
それが、教育です。

というような感じの話をしたと思います。
録音したわけじゃないんで、
結構違うかもしれませんが(笑)
まあ、そんな感じでしょう。


その後の懇親会では話した事なんですけど。

更に言うと、
夜中とか休日とか。
いわゆる時間外に熱が出たとか。
急に症状が出た場合。


○第一段階
まずは柏原のような「フローチャート」を見る。

○第二段階
当番病院(診療所)に電話して、
担当の看護師に相談する。


○第三段階
それでもわからないとか、
病院(診療所)に来た方が良い、
と判断した場合に、病院(診療所)に来て貰う。
救急車の方が良いと判断したら、
救急車で来て貰う。



という、3つの段階を踏むのが、
より良い方法かな、と個人的には思います。

県立柏原病院では、フローチャートを作って。
もちろん、お母さん達の教育をしてですけど。
結果的に、救急車の台数が1/3に減っています。

「フローチャート」というのは、
熱が出たらどうする、とか。
咳が出たら、下痢だったら。

とか、医学的な話ばかりなので。
もちろん、それを作るには地元の医師の協力
欠かせないのですが。
夕張医師は、喜んで協力してくれるでしょうし。
他の地域の医師も、地域の住民が
こういう事をやって欲しい、と言えば、
みんな協力してくれますよ。

医療という有限な資源を有効に使う為に
是非全国でやってもらいたい方法ですね。

あ、これ。
急に症状が出た場合って書いていますけど。
3日前から、腹が痛くて変わらない。
とか、そういうので時間外に病院(診療所)に来る。
っていうのは、問題外ですからね。
前から痛くて我慢していたけど、
どんどん強くなって我慢できなくて来た。
っていうのは、しょうがないですけど。


個人的には、ブログで以前から書いている、
時間外受診の割増料金(重症患者割引)とか。
救急車の有料化と平行して、
両方いっぺんにやっていくのが、
より効率が良い
かな、とは思います。

参照:『時間外重症患者割引制度』
『救急車でも非常識な要請』


こういう事を実際にできれば、
本当に医療が必要な患者の受診抑制は起きずに、
ただ安心を求める為の、時間外診療。

いわゆる「コンビニ救急」を、
抑制する事ができて。
最終的には、地域医療を崩壊から救えるんじゃないかなー。


ちょっと行くのが大変でしたが。
その後の懇親会にも参加させていただいて、
非常に有意義な時間を過ごせました。

やはり、こういう会に参加されている人は、
皆さん意識の高い人達ばかりで。
いろんな考えを聞けて、非常に勉強になりました。
それに、やっぱりみんな考えている事は、
似たようなもんなんだなー。
っていう事も、しみじみ思いましたね。

夕張の先生達や技師さんも
何故か私のブログやメルマガを読んで
勉強している、っていう話を聞いて。
ホント、すっごい嬉しかったですわ。

村上スキーム」に村上先生のサインも貰ったし(笑)


ああ、ちなみに。
私のブログだから、私の発言や考えを中心に
書いていますけどね。
実際に話をしたのは、ほんの5分かそこらだからね。
なんか、これ読んでいると私の独壇場に見えますが(笑)

私の他にも、もっともっと勉強になる
話をしてくれた人達が、たくさんいますからね。
わかってると思うけど。

そして、最後に「夕張アピール
というのを採択して終了しました。

夕張アピール」は、アンフェタミン先生のブログ
『第2回地域医療を守る地方議員連盟会合:夕張アピール採択』
を読んでね!

多分、私以外の発言内容とか、そういうのは、
後で彼が書くと思うので。
それも読んでみてね!
『地方議連:地域の特色を生かした議連を!』

そいと、その時の写真が、
谷一之、下川町議会議員のブログに、
アップされていますよ。
『ザ・北海道の時代』

あ、ここには私の写真は出ていないので。
あしからず。


村上先生の話がもっと聞きたい人は、これ読んでね!
→ 村上スキーム 地域医療再生の方程式


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医師増員だけでは駄目だが
日本の医療崩壊の一番の原因は、
医師不足医療費不足だ。
だから、医師数と医療費
両方増やす必要がある。

という事は、以前から私がしている主張です。

先日、厚生労働省の「安心と希望の医療確保ビジョン
というもので「医学部の定員を増やす
という方向になりましたね。

医学部の定員を増やした事を評価しない、
という人達は、だいたい
医師の数を増やしても、
医療費が増えてないから駄目だ」

という主張だと思います。

まあ、私も医療費も増額して、
医師の数も増やさないと駄目だ

と言っていますから。
そういう意味では同じ主張なのかもしれませんが。
私は、今回の医師数増員に関しては、
高く評価をしています。


たしかに、今だに毎年2200億円の社会保障費カット。
というのが続けられ、医療費が増える気配はないんですが。
でも、医療費はこれから増える可能性がありますからね。
というか、増える方向に国民が持っていかないと駄目ですよ。

今度、いつかわかんないけど、衆議院選がありますよね。
この間の参議院選では自民党が惨敗して、
衆議院と参議院で「ねじれ」現象が起きて。
今までだったら、自民党の独裁で、
自民党の都合の良いように政策が決定されて
いましたけど。
それが変わっていますよね。

そんな風に、選挙で政策は変わるんですよ

今まで、医療っていうのは票に結びつきにくいから。
道路を造るとか、農家を保護する、とか。
そういうのばっか、優遇されてきましたけど。
もう、そういう時代ではないですから。

日本国民、全員が患者になる可能性があるんだから。
今のまま、医療費抑制政策を続けたら、
みんな病院が潰れて、国民(患者)が困る。
医療費(社会保障費)抑制政策を
撤回しないんなら、自民党に票は入れないぞ。

って、国民がみんなで声を上げれば、
日本の医療を崩壊から救えるのかもしれないんですよ。

まあ、厳密に言うと、日本の医療を崩壊から救う、
というのは、もう無理かな
、って個人的には思います。

今の日本は、医療崩壊という崖を、奈落の底へ向かって、
一直線に、どんどん加速して突き進んでいる状況です。

それを、崖の上まで持っていくのは、
どんな手段を使っても、もう不可能でしょう。

ただ、谷底に着く時のスピードを、
もう少しゆっくりにする事はできるかな

と思いますよ。
そうでないと、大惨事になってしまいますから。

その為のブレーキの1つが、
医師数増員だと私は思います。

ただ、この医師数増員というブレーキ。
これ、10年後にしか効かないんですよ。
他のブレーキがないと、10年以内に
谷底に激突して大惨事になっちゃうと思うので。
これだけあれば、万事解決、っていう
魔法のブレーキじゃない
んですね。

ただ医療崩壊の速度を緩める事のできる、
有効なブレーキ
であるとは思うので。
これだけでは解決しないからといって、
医師数増員は意味がない」
っていうのは、私はちょっと違うんじゃないかなー、
って思います。

医療崩壊の速度を緩めるブレーキとして、
もう一つ非常に有効なのは医療費増額です。

それに、医療崩壊の原因としての医師不足
っていうのには絶対的な師不足と、
患者に対する医師の数の不足、という面があるので。

患者を減らす事=患者のアクセス制限
とか、病院の集約化とか。
病気を予防して、患者の絶対数を減らすとか。
後は、医療崩壊の原因として、医師の過労があるから。
医師以外にできる事務的な仕事などを、
医療秘書とか、医師以外の人間にやってもらう。
その為に、医療秘書の増員という事も重要だと思います。


そいで、以前にいろんな人に紹介されていた、
読売新聞の社説が、ほとんど同じ内容で
また7/22にも出たようなので。
こっちでも引用させて貰いますね。



医師不足対策 
増員だけでは10年かかる

医師不足を解決するには、
相当に思い切った対策が必要だろう。

厚生労働省がまとめた「安心と希望の医療確保ビジョン」
を具体化するための有識者会議が発足した。
厚労省は新ビジョンで、医師の養成数を
これまでの「抑制」から「増員」へと方針転換した。
医学部の入学定員を現在の約7800人から、
どこまで増やしていくのか。
有識者会議はまず、これを明示する必要がある。

医師数の抑制方針がとられる以前は、
最大で年間8300人の医師を養成していた。
ピーク時の水準までは早急に回復させるべきだろう。
その上でさらに増員するのか、展望も示さねばなるまい。

だが、医学部の入学者が
一人前の医師になるまでには、10年程度かかる。
増員計画と同時に、即効性のある対策も不可欠である。
喫緊の課題は、新人医師の臨床研修制度の改善だ。

かつて新人医師の大半は、
大学病院の医局で研修していた。
しかし、専門分野に偏った医師が育つ
弊害が目立ったために、一般病院でも
研修できるようになった。
若い医師に幅広い臨床能力を身につけさせるという、
制度の目的は理にかなっている。

ところが、研修医が予想以上に減って
人手不足となった大学病院が、
自治体病院などに派遣していた中堅医師を引き揚げた。

これが急激な医師不足現象の大きな要因である。
研修医の多くは都市部の病院を研修先に選び、
医師偏在に拍車もかけつつある。
これを改めるには、
研修先の選択方法に工夫が求められる。
各都道府県に満遍なく研修医が配属されるような
定員調整が必要だ。

また、これまで大学の医局に
医師派遣を頼ってきた自治体病院に対し、
必要な医師を配置する仕組みや組織作りも重要である。

有識者会議は、診療報酬の
在り方にも踏み込んでもらいたい。

今日の医師不足は、言い換えれば「勤務医不足」だ。
総じて勤務医は、開業医より収入が低く、
長時間勤務で医療に従事している。
産科や小児科、救急など、昼夜を問わず
診察を求められる部門は過酷だ。
耐えかねた医師が開業医に転身している。

現状に歯止めをかけるには、
勤務医向けの診療報酬を大胆に
手厚くする必要があろう。
開業医が交代で病院の夜間診療を応援する、
といった取り組みにも、大いに報いるべきだ。
本当に必要な医療に、
財源を集中することが重要である。


「7月22日付 読売社説」



私の読解力不足のせいか。
結局、何が言いたいんだか、
正直、あんまり良くわかりませんが(汗)

これもこのブログで何回も取り上げていますけど。
日本の診療報酬は、他の先進国なんかに比べて、
不当に低いです。

数分の一から、下手したら1/10位です。

参照:『日米医療報酬比較』


これは、勤務医も開業医も同じなんですね。
経済学的に言うと、「単価」が決められていますから。
儲けようと思ったら、「薄利多売」しか出来ない。
だから、無駄にって言ったら悪いけど、
患者とか検査が多くなっちゃうんですよ。

診療報酬そのものを改善する。
っていう方向自体は良いと思いますけど。
開業医とか、勤務医とか。
そういう区別はないんじゃないかな。

そもそも、開業医と病院で違う診療報酬って、
再診料とかはあるけど。
それ以外は、ほとんどないし。

しかも、病院の診療報酬が増えたって、
勤務医の給料が増える訳じゃないですからね。


そんな事もわからないで言ってるのかしら、
この社説書いてる人。

一ヶ月前に、ほとんど同じ社説を書いている様ですが。
なんか、ほとんど進歩していませんねー。


医師不足を解決するには、
 相当に思い切った対策が必要だろう。

>本当に必要な医療に、
 財源を集中することが重要である。


医療費そのものを削減したまま、一部でなんとかする。
っていうのは、全然思い切っていないし。
そんなんじゃ、絶対に解決しませんよ。

医師数増員に加えて、医療費も増額しないと。



ちなみに、約一ヶ月前の6/19に書かれた
読売新聞のほとんど同じ社説は、下に書いておきまーす。



医師増員 計画的な養成と配置を図れ

医師不足を解消していくために、
まずは必要な措置であろう。
厚生労働省は、「安心と希望の医療確保ビジョン」をまとめ、
養成する医師の人数について、これまでの
「抑制」から「増員」へと方針転換した。
1982年に医師数の抑制を閣議決定して以来、
四半世紀ぶりの軌道修正である。

医学部の入学定員は今年度約7800人だが、
これをピークだった約8300人程度に増やす方針だ。
政府は、70年代に1県1医科大学の設置を進め、
医師の養成数を増やしてきた。
しかし、80年代になると
「将来、医師が増えすぎて医療費の高騰を招く」
との見方が強まり、医学部定員の
1割近い削減に踏み切った。

ところが、現実にはいたるところで
医師不足が叫ばれている。
人口1000人当たりの医師数は2・0人で、
経済協力開発機構(OECD)加盟30か国中27位だ。
状況を見れば、積極的な増員へと、
再度の政策転換は当然だ。
むしろ遅すぎたと言えよう。

だが、単に医師の全体数を増やすだけでは、
直面している医師不足現象は解決できない。
国はこれまで、医師数の増加ペースは抑制していたが、
全体数を削減してきたわけではない。
引退する医師は年間3000人前後なので、今
でも毎年4000人ほど医師は増え続けている。
にもかかわらず、「医師が足りない」
という悲鳴が聞こえるのは、自治体病院など
地域医療を担う中核病院を中心に、
勤務医が次々と辞めていくからだ。
総じて勤務医は開業医より収入が低く、
長時間勤務の環境で医療にたずさわっている。
とりわけ、産科や小児科、救急など、
昼夜無く診察を求められる部門は過酷で、
耐えかねた医師が開業医に転身している。
医師が減り、残った医師
さらに過酷な状況になる、という悪循環だ。

休日・夜間に対応しない開業医が少なくないことや、
専門分野しか診ない医師が増えたことも、
医師不足を助長している。

こうした状況を改善するには、
過酷な分野で頑張る医師、地域医療
昼夜支える医師に、格段に手厚く
診療報酬を配分するなど、医療費の在り方を
大胆に見直す必要があろう。
不足が顕著な診療科の医師を重点的、
計画的に養成することも重要だ。
一定期間、指定の場所で医師
勤務してもらうような仕組みも検討すべきである。


「新聞社説アーカイブ:2008年06月19日」




医療崩壊について知りたい人は、これ読んでね!
→ 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
小松 秀樹 (著)


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大野病院事件判決まで一ヶ月
8月20日は、福島大野病院事件の裁判判決の日です。
今日は7月20日なので、ちょうどあと一ヶ月ですね。

福島大野病院事件というのは、
福島県立大野病院で、産科の先生
難しい症例の患者さんを救おうとして、
一生懸命に努力したけれど、命を救えなかった。
でも、患者さんが亡くなったという、結果が悪いというだけで、
故意でも医療ミスでもないのに、産科医のK先生
2006.2.18逮捕されてしまった、という事件です。

そして、逮捕という衝撃的な事だけでなく、
その後のマスコミの報道の仕方も酷くて。
その為に、日本の医療崩壊、特に産科の
医療崩壊
が加速的に進みました。

原子力爆弾が、その威力に加えて、
放射能で周りの人間を死に至らしめるように。
福島大野病院事件も、日本中の産科医
そして医師に対して、大きな影響を与えました。

広島、長崎の原子力爆弾と同じくらい、
日本の医療に大きな影響を与えた為、

No more Hiroshima
No more Nagasaki

を文字った
No more Fukushima
という言葉が、今でも医療従事者の中では使われています。


その8/20福島大野病院事件裁判の判決の日に、
福島でシンポジウムが行われます。

原子力爆弾と同じくらいの、メガトン級の威力。
福島大野事件地域産科医療にもたらした影響を
考える為のシンポジウムです。




8月20日、大野事件の裁判判決の日です!
福島の地にてシンポジウムを行いましょう!

シンポジウム

福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」


開催の趣旨 

8月20日、福島大野病院裁判の判決が言い渡されます。
2年半にわたった刑事裁判によって、
誰が、何を得ることができたのでしょうか?
ご遺族にとっても、かかわった医療関係者にも、
いいことはなかったのではないでしょうか。
そして市民も、地域医療の崩壊に苦しんできたはずです。

逮捕に始まる一連の騒動によって、
かろうじて保たれていた地域産科医療
すでに全国的に崩壊のまっただ中にいます。

大野事件とはなんだったのか。
あの逮捕劇はなんだったのか。
あなたの街でもすぐに起こることかもしれません。

医療関係者の方々も忙しい日々の
医療から手を離して、いま一度福島の地で、
医療事故刑事裁判とはなにか、
いま地域の医療崩壊はどうなっているのか、
行政や市民の方々とともに真剣に考えてみませんか?

 ご参加をお待ちしております。


参加のお申込
お名前とご所属を、oono.obs@gmail.comまで
メールでお送りください

HP: http://oono-obs.umin.jp/

会場は福島グリーンパレス
http://www.fukushimagp.com/

〒960-8068 福島市大田町13番53号
福島駅西口より徒歩2分)
TEL 024-533-1171 
FAX 024-533-1198




福島大野病院事件に関しては、医師限定の掲示板、
医師ブログ
が最初に取り上げて、
一気に日本中に広がったんですが。

その中心的な役割を果たしたブログが、
『ある産婦人科医のひとりごと』
というブログです。

その中でも、発端となったのは、この記事です。
『癒着胎盤で母体死亡となった事例
現役産科医が語る大野病院事件の解説』



その他、医師ブログだけでなく、
女性自身でも詳しく取り上げられていますし。
『“大野事件”この裁判に何の意味があるのか 女性自身』

医師ブログでも、子供にもわかるように、
非常にわかりやすく書かれているものもあるし。
医師ブログ以外でも、広く取り上げられています。
むしろ、医師以外のブログの方が、
わかりやすく書いてありますので。
これらのブログも、是非読んでみて下さいね!

『やんばる病理医ブログ
(子供向け:わかりやすい大野病院事件の解説)』


『☆医療問題を注視しる!その3 大野病院事件☆』


マスコミの報道の仕方に問題があった、という事は、
このブログでも記事でまとめたので。
まだ読んでいない人は、是非これらも読んで下さいね!

『大野病院事件、メディアの功罪』
『大野病院事件、メディアの功罪2』
『大野病院事件、メディアの功罪3』


医療崩壊に興味がある人は、これも読んでね!
→ 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
小松 秀樹 (著)


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医者の「高給取り」はイメージ
医者給料っていうのは高い
っていうイメージがありますけど。
実際はそうでもない、っていう記事が載っていたので。
ちょっと、このブログでも紹介させて頂きますね。

あの(笑)、産経新聞からです。



勤務医が辞める理由(前編)――
“高給取り”はイメージ。
現実の収入は多くない

医師=高給取り」というイメージがあるが、
勤務医の収入は決して多くないという。

勤務医の平均年収は1000万円ほどだが、
当直が多く、休みが少ない。
さらに収入の半分以上が非常勤として
働いたもので、意外と“不安定”のようだ。


全国の病院医師不足にあえぐなか、
医師増員の必要性が指摘されています。
しかし、1人の医師を育てるには
長い時間がかかります。
「まず、医師が何を求めているかを知るべきではないか」
との声が上がっています。


厳しい労働に評価低く

「大学病院をやめて、開業しようかと考えてます」。
ある地方大学の病院勤務医(40)は言う。

同じ診療科の同期生らは、多くが開業した。
開業した仲間の年収は勤務医時代の2、3倍。
開業医が休みを取れ、外車に乗るのを横目に、
この勤務医は「医師不足に悩む地域医療のため」と、
踏ん張ってきた。

大学病院では現在、月5回の当直がある。
子供が生まれたばかりだが、
休日は月に2、3日取れればよい方。
年収の総額は1000万円と、
勤務医の平均レベルだが、収入の半分以上を
病院での非常勤の外来などが占め、不安定だ。

このまま勤務しても、大学病院での
給料の伸びは見込めず、退職金もない。
教授ポストをめぐる医局の人間関係の煩わしさや、
日々の業務の精神的負担を考えると、
時間の喪失感を覚える。

「今後は患者さんにじっくり接し、
患者さんの喜ぶ顔が見たい」と言うが、
現状は研究も臨床も中途半端で、
将来に不安を感じるという。


勤務医の収入は多くない

医師には一般に“高給取り”のイメージがあるが、
日医総研のデータによると、
勤務医の収入は決して多いとはいえない。

しかも、医師が一人前になるには、
長い時間と費用がかかる。
この医師は6年の医学部教育を終え、
医師免許を取り、30代半ばまで大学院や
留学先の研究施設などで研鑽(けんさん)を積んだ。
医療が高度化、多様化する今は、
なおさらこうした機会が必要だ。

ところが多くの場合、その費用は自前。
「アルバイトで稼いでは、勉強にあてる
自転車操業です」(冒頭の勤務医)という。

ある外科医は、がん研究のため、
国内トップクラスの専門病院で
先端医療を学ぼうとしたところ、
「初年度は無給」とされた。

病院側にすれば、「手術や入院患者の処置も勉強の場」
というわけだ。
この外科医は「家族の生活費も含め、
それまでの貯蓄を取り崩し、
1年で約1000万円かかった」という。

研究で成果を上げ、海外で学会発表もしたが、
渡航費や滞在費約50万円も自己負担した。

海外留学で1000万円程度を自己負担するのは
「よくあるケース」とされ、実家からの
仕送りで生活する医師も少なくないという。


“疲弊”という悪循環に陥っている

今年、「医者のしごと」(丸善)を出した
聖路加国際病院の福井次矢院長は
医師は一人前になるまでの教育期間が長く、
その後も最善の医療を提供するために、
一生勉強を続けなければならない」と指摘する。
人の命を扱う医師が育つには、
相応の時間と費用がかかる。
しかし、そのことが理解されておらず、
ふさわしい待遇もない。

医師の待遇について、福井院長は
「日本では診療報酬が低く、病院収入は
外国の病院に比べて格段に低い。
それでは、過酷な労働に対して
満足な報酬も払えないし、
医師をサポートする人材も雇えない。

一方でこうした医師を取り巻く
環境への理解は進んでおらず、
国民の要求は年々高まっている。
それで現場が疲弊する悪循環に陥っている」
と指摘する。 


医師不足の病院にアドバイザー的な
役割をする伊関友伸・城西大学准教授(行政学)は
「やりがいを感じるうちは、
医師は報酬にかかわらず働く。
しかし、医師不足が顕著な地域では、
行政や患者が医師の勤務実態を知ろうともせず、
時間外やコンビニ受診など、
過剰な負担でつぶしてしまっている」
と分析する。

そのうえで、医師を招く条件について、
「やりがいを感じてもらう仕掛けが必要。
高い報酬を設定するのもひとつだが、
それだけでは定着しない。
地域がどんな医療を求めているか、
そこでどんな技量向上が見込めるか、
医師に示す必要がある」と主張する。

大学病院の医局で医師派遣の窓口となっている
ある医師は「待遇改善を要求しても、
病院に熱意が感じられなければ、
医師不足を理由に紹介を断ることもある。
限られた人材を有効に生かすことが必要ですから」
と打ち明ける。

医師増員の機運が高まっていることについて、
伊関准教授は「まず、医師が今、
なぜやめていくかを分析する必要がある。
数だけ増やしても、相変わらず、
医師は都会にはいても、地方にはいない
などの偏在を助長するだけではないか」
と話している。



「他職種との収入比較」
(手取り額、40-44歳平均)

個人開業医               1270万円
中小企業経営者(年齢区分なし)  1190万円
パイロット                1050万円
金融・保険業部長           1000万円
病院勤務医                970万円

(平成19年日医総研まとめ、
パイロット、部長職は1000人以上の企業)


「2008.7.15:産経新聞」



私は、医者ですけど。
なるべく一般人の視点で物を見るように、
っていう事を心がけているし。
ブログの読者も、基本的には医療関係者以外の
一般の人を対象
にしています。
まあ、かなり大勢の医者に読んで頂いていますけどね(笑)

で、「医者(俺)の給料は安い
って言っている医者って結構いますけど。
私は、これには賛成できません。

はっきり言って、「年収1000万円」というのは、
世間的には、安くはないですよ。

これは、このブログでも何回か書いている事です。

医者で、給料が安い、って言っている人は、
「俺の方があの働かない医者より働いてるのに、
俺の方が給料が安い。」

とか、あくまで、あまり働かない一部の医者と比べて
俺の給料が安い、っていう比較ですからね。
まあ、たいていそういう事を言ってるやつに限って、
たいした事ない場合が多いんですけどね、実際は。

いわゆる、世間一般の人の給料と比べて、
という視点ではないです。
だから、私は医者の給料が安い。」
という言い方は、今までにもした事がありませんし。
これからもするつもりはありません。

私が以前から主張しているのは、
医者の給料は、他の職種の2倍くらい。

でも、仕事する時間も2倍近いし。
休日もほとんどないし。
36時間連続勤務もしなければならない。
夜中や明け方に呼び出される事もあるし。
医療訴訟のリスクもあるし、
人の命に関わる事で、プレッシャーも大きいですよ。
それに、医学の専門的な技術も知識も必要ですし、
一生、勉強し続けなければなりません。


それを考えたら、決して高くはないんじゃないですか。
という事です。

あと、他の先進国と比べたら、
日本の医者の給料は安い
ですよ。
という事でしょうかね。


あくまで、「年収の総額」だけで言えば、
日本の医者の給料は、決して安くはないです

その話は、以前に
『診療報酬、また引き下げか?(追記あり)』
の記事でも書いた通りです。

医者給料っていうのは、総額では安くないけど。
思っている程は高くないよ、とは思いますけど。

私が知る限り、
医者の給料をもっと上げろ」
という主張をしているメジャー系の医師ブログは、
ないんじゃないかなー。
一応、有名どころの医師ブログは、
だいたい目を通しているつもりではあるんだけど。
もちろん、全部じゃないんで、
正確にはわかんないんですけどね。

ただ、時間外医者が働いても、
時間外手当を貰えない病院がある。
とか。
当直というのは、本来であれば、
ただ寝ているだけとか、見回りとか。
そういう業務であるはずなので。
当直中に働いた場合は、労働基準法上は、
時間外手当を払う事になっているんですけど。
それをやっている病院っていうのは、ほとんどないので。
それは、きちんと病院側は払うべきだ。
という主張はしていますけどね。


個人的には、医者給料を上げろ、
という主張はしません。


ただ、時間外に働いたのであれば、
その分の時間外手当は払うべきだ。

という事と。

個人的には、医者の給料は年功序列で固定給だけでなく、
たくさん患者を診たらもっと上げる、とか。
重症患者が多いとか、仕事がきついとか。
そういう科の医者と、そうでない科の医者給料は、
差をつけた方が良いんじゃないか。
とは思いますけどね。

全員一律に、医者給料をもっと上げるべきだ。
とは、私は思いません。


伊関友伸先生が言っている通り、

「やりがいを感じるうちは、医師は報酬にかかわらず働く。
しかし、医師不足が顕著な地域では、
行政や患者が医師の勤務実態を知ろうともせず、
時間外やコンビニ受診など、
過剰な負担でつぶしてしまっている」

「やりがいを感じてもらう仕掛けが必要。
高い報酬を設定するのもひとつだが、
それだけでは定着しない。
地域がどんな医療を求めているか、
そこでどんな技量向上が見込めるか、
医師に示す必要がある」


私も、全然やりがいはないけど、給料は良い病院よりも、
やりがいはあって、給料は普通。
っていう病院の方が良いですね、個人的には。
若手~中堅の医者であれば、そういう人が多いと思いますよ。
医者って、職人気質の人が多いですからね。

もし病院医者を雇いたいというのであれば、
医者給料をもっと上げる、というよりは、
病院医師への対応の仕方、とか。
新しい技術や知識を学べる、とか。
医師のやりがい」みたいな事を、
もっと重要視した方が良いと思いますよ。


大学病院について知りたい人は、これを読んでね!
→ 「大学病院のうそ」 ~現役医師(Dr. I)が暴露する、大学病院の秘密

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「くも膜下出血」見落としに抗議
くも膜下出血」を「見逃す」とか、「見落とす
っていう本来の趣旨とは違った事が
某マスメディアで報道されましたが。
それに関して、日本脳神経外科学会が、
本来の趣旨と違うって事で、
正式に抗議されたようですね。

日本脳神経外科学会のサイト
→ 『日本脳神経外科学会』

ここ見ても、どこに書いてるかわかんないけど(汗)



「見落とし」報道に、日本脳神経外科学会が抗議

(社)日本脳神経外科学会は平成20年7月7日(月)
厚生労働省において
「脳卒中における新知見に関する学会発表」と題して、
くも膜下出血の診断の困難についての記者発表を行った。
なお、本学会発表について、
一部新聞報道内容に「初診6.7%見落とす」という、
説明内容とは相違する誤解をまねく
不適切な表現がありました。
強く抗議を表明します。

日本脳神経外科学会は7月9日、
ホームページにこんなお知らせを掲載しました。
事の発端は、前述のように
同学会が行った記者会見です。

同学会の理事で山形大学医学部長の
嘉山孝正先生は、記者会見の趣旨を
次のように述べています。

くも膜下出血患者であっても、
軽い頭痛の場合など、教科書には記載されていない
非典型的な患者の診断は容易ではない。
中には、お化粧をして自分で車を
運転してくる患者もいる。
つまり、記者会見で説明したかったのは、
『見落とし』の率ではなく、医療の限界。

従来、ともすれば医療界は成功例のみを
公表しがちだったが、ネガティブなデータも含め、
『現実のデータ』を情報公開することが
必要だと考えている。
それを通じて、患者や国民に医療の限界を
理解してもらうことが重要だろう」

医学が進歩した現在、患者さんたちは
時に過度な期待を抱きがちです。
その結果、仮に予期しない事態が起こった場合、
その反動はかえって大きく、
過剰に反応してしまう傾向にあるように思います。
それを恐れて、医療者側が萎縮診療に陥ったら、
それこそ本末転倒です。
だからこそ、「現実のデータ」を公表すべき……。
そう嘉山先生はお考えになったのでしょう。
 
くも膜下出血と言えば、先日、長野県の病院で、
「見落とし」があったとされ、医師が書類送検されました。
この件が実名報道され、問題視されたのは
記憶に新しいところです。
患者さんがどんな主訴で受診したのか、
取材していないのでよく分かりませんが、
この時も「見逃し」という形で報道されていました。

なお、7月7日の発表内容は以下の通りです。

「連続した」、くも膜下出血の症例を
調査したところがポイントです。
取捨選択することなく調べたこのデータは、
かなり精度が高いのではないでしょうか。
また、レトロスペクティブに初診時の状況を
調べることが可能だった点も、注目すべきだと思います。


日本脳神経外科学会が記者会見で発表したデータ】

調査対象は、宮城県と山形県の2つの病院
脳神経外科を、頭痛や意識障害を主訴に受診し、
最終的にくも膜下出血と診断された患者
初診時の診断名やその際のCT撮影の有無などを調べた。

その結果、宮城県の病院では、
198例(2007年1月~2008年5月の連続した198例)
のうち、初診時にくも膜下出血と診断できなかったのは
10例(5.1%、うち死亡は2例)。

山形県(山形大学医学部付属病院)では、
293例(1996年6月~2005年12月の連続した293例)
のうち、初診時にくも膜下出血と診断できなかったのは
23例(7.8%、うち死亡は2例)。

2病院の計33例はいずれも、初診時は
一般医家(脳神経外科医以外の医師)が診察した症例で、
CTを施行していなかった。

なお、米国では、くも膜下出血のうち、
初診時で正しく診断されない率は5~12%という報告がある。

参照: So-net M3 7/9号 橋本佳子



患者さんっていうのは、なんか変だ。
とか、よくわかんないけど調子が悪い、とか。
そういう事で病院に来る人も多いです。

くも膜下出血だったら、全員頭痛がするとか。
心筋梗塞だったら、
全員胸が痛いって事はないんですよ。

私はくも膜下出血です」っていうプラカードを、
胸からぶら下げているわけではないんです。

もちろん、典型的な病気の症状がある場合もあるけど。
そうでない場合もたくさんあるんですよ。

だから、100%病気を診断するっていう事は、
そもそも不可能
なんですよ。

今の10倍医療を使って、たくさん検査をすれば、
制度が上がるって事はあるでしょうけど。
それでも、診断精度が100%になる事は
あり得ない
んですよ。

そんな「神の検査」なんて存在しませんから。
CTは万能、のような報道がたまーにされますけど。
全然、そんな事ありませんから。

嘉山孝正先が、この記者会見でも言っているように、

>『見落とし』の率ではなく、医療の限界。

という事を、「生のデーター」で示した。
という事なんです。

くも膜下出血であれば、脳外科医が診れば、
もっと診断制度は上がるでしょうし。
頭のCTを撮れば、更に上がるでしょうけど。
それでも、診断する確率が100%にはなりません

m3の記事にも書いてありますけど。
医療費を年間200兆円使っているアメリカでさえ、

くも膜下出血のうち、
 初診時で正しく診断されない率は5~12%


なんですからね。

この件に関しては、
「新小児科医のつぶやき」
Yosyan先生のとこ、
「学会のお墨付」
の記事でも取り上げられていますけど。

それ以上に、なんちゃって救急医先生のブログ
「日々是よろずER診療」の中の、
「SAH地雷の確率計算(追記)」の記事で、
非常に詳しく解説されていますので。
ちょっと引用させてもらいますね。


SAHくも膜下出血)は
予兆 → 再出血(急変) 
というステップで病状が進行するというパターンが
存在するということです。
この予兆が、非典型であればあるほど、
SAHくも膜下出血)の診断は困難となります。 

さらに、予兆の段階ですので、
頭部CTによる診断も大いに限界があります。 
この予兆を象徴する頭痛として、
雷鳴頭痛とか警告頭痛という名称が
与えられているものがあります。
「突然発症のバットで殴られたような人生最悪の頭痛」
という特徴をもった頭痛がそれに該当するわけです。

この予兆の出かたにも個人差があるでしょうし、
また、自分の症状を、自分の言葉で医師に伝えるときも、
人それぞれでしょう。
そういうわけで、予兆の把握も
一筋縄でいかないということです。



そうなんですよー。
SAHくも膜下出血にも、いろんな症状があるし。
患者さんの伝え方も違うし。
大出血する前の、予兆の段階
ほんのわずかな出血であれば、
頭のCTを撮ったってわかんないんですから。

そいで、ちょっと(かなり?)専門的ですが。
あくまで仮定の話なんですけど、
計算問題が出ます。


本日は、SAHくも膜下出血)の診断に関する
こんな問題を提示してみたいと思います。 
計算問題です。

症例   35歳男性  頭痛

(経過1)
最近、過労気味。深夜の帰宅も多い。
健康診断では、血圧が高めだと
ここ数年言われ続けているが、放置している。 
叔父が42歳で、SAHくも膜下出血)で突然死している
という家族歴もある。 

本日、16時ごろ、会議中に、
突然後頭部が殴られたように痛み、
一瞬嘔気も伴った。 
そのため、一端会議の席をはずれ、
ソファーで横になっていたが、
1時間もすれば軽快した。 

そこで、会議に戻り、仕事を続けた。 
夜の22時に帰宅。 
昼間の出来事を妻に言うと、
「あなた、それってクモ膜下じゃないの? 
今すぐ病院行こう!」と言われ、
妻に連れられ、深夜0時に、
時間外の内科を受診した。 

受診時、血圧160/96 脈78 
体温 36.4 呼吸数18。意識 清明。 
瞳孔径異常なし。瞳孔不動なし。
対光反射異常なし。 

当直医は頭部CTを撮りました。 
しかし、その画像に異常はありませんでした。
そのため、担当医は、
SAHくも膜下出血)はないです。大丈夫です。」
患者とその妻を安心させ、患者を帰宅させました。


(経過2)
それから2日後の朝、患者
いつもの時間に起床してきませんでした。 
妻が見に行くとすでに呼吸も心臓も停止していました。
患者は救命センターに運ばれ、
そこで死亡が確認されました。
そして、AI(死んだ後に撮るCT)
にてSAHくも膜下出血)が確定しました。

医事紛争に発展するような、
SAHくも膜下出血)の臨床経過の一例を示してみました。
怖いでしょ、SAHくも膜下出血)って。

さて、ここからが、問題です。

この患者SAHくも膜下出血)発症の、
頭部CT検査前確率pを 50%≦p≦80% 
と仮定します。 
そして、SAHくも膜下出血)に対するCTの感度を93%、
特異度を100% という前提とします。
(ここでは、この前提は正しいものとしてください) 

読影に誤りはないものとみなして、
考えることにします。 
さらに、SAHくも膜下出血)再出血による
死亡率を60%とします。

以上の設定のもとで、(経過1)の対応をとった患者が、
(経過2)のように、SAHくも膜下出血)で
死亡してしまう確率を計算すると、
何%以上何%以下になるのでしょうか?

つまり、地雷を踏み抜く確率の計算の一例というわけです。



医師向けの計算問題なんで。
一般の人が見たら、ちょっと何言ってるんだか
さっぱりわかんないかもしれませんが(笑)

SAHくも膜下出血っていうのは、
最初にちょろっと出血して(予兆)、
その後にどかーんと大出血する、
再出血」で突然死する方、っていうのが
結構多いんです。

そういう症例で、最初は頭のCTを撮っても
なんともなかったけども、
SAHくも膜下出血の再出血で
亡くなる確率っていうのは何%?
っていう問題です。

あくまでも、確率は仮定の話なんですけどね。


~詳しい計算は省略~

答え 3.9%~13%

っていう事っす。

(経過1)のような対応で
帰宅した患者のうち、きつく見積もって
8人に1人は、SAHくも膜下出血)の再出血で
死亡するということを意味します。
少なく見積もって、
25人に1人ということになります。 

CTで異常を認めなくてもこれくらいの確率で
SAHくも膜下出血)死亡が起こりえるということです。
つまり、病歴が相応に怪しければ、
その時点で、CT検査はSAHくも膜下出血)の
完全除外ツールにはなり得ない
ということを知っておくことは
とても重要だと考えます。



日本脳神経外科学会が発表したのは、
最初に脳外科医ではない医者が診て、
頭のCTを撮っていない場合

5~8%位の確率で、わからない事もある。
っていう話なんですけどね。

最初に診たのが脳外科医で、頭のCT撮っても、
次の日に再出血で突然死する
確率も、
3.9%~13%位はあるんっすからね。
まあ、この話はあくまでも「仮定の計算」ですけどね。
何%かわかんないっすけど、ゼロではないですからね。

そういう事を全然わかっていないのに、
本来の趣旨とは違う意味で、
見逃し」だの「見落とし」だのっていう記事を
書いて欲しくないですねー。

ちなみに問題となっているのは、
読売新聞の記事の事でしょうかねー。
意図してかなんだかわかんないですけど。
医療の限界とか、一番言いたい事を省いています。


くも膜下出血、5~8%見逃す可能性
…風邪や高血圧症と診断

くも膜下出血患者のうち約5~8%が、
最初の受診で風邪や高血圧症などと診断され、
出血を見逃される可能性のあることが、
日本脳神経外科学会の調査でわかり、
7日に記者会見で発表した。

激しい頭痛があれば、コンピューター断層撮影(CT)検査
をするが、軽い頭痛程度の患者まで
全員を検査できない、という。
こうした見逃しの確率が示されるのは珍しい。

同学会は昨年1月から今年5月に宮城県内の
病院に入院したくも膜下出血患者198人について、
確定診断を受けるまでの経緯を調べた。

開業医などの初診では、頭痛や肩こりといった
症状を訴えた10人は風邪や高血圧症などとされ、
CT検査もなかった。

また、1996年から05年に山形県内の病院
入院した患者293人中23人も宮城と同様だった。


「読売新聞、魚拓:2007年7月7日」



毎日新聞の方は、そのまんま書いてくれているので。
良い記事だと思いますよ、今回に関しては。
記事の「タイトル」つけるのは別の人だから。
見落とし」ってなっているんでしょうけどね。
記事の内容自体は良いんじゃないっすかね。


くも膜下出血」初診6.7%見落とす 学会調査 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080707-00000129-mai-soci

くも膜下出血患者のうち、脳神経外科医以外が初診し
た6.7%が風邪などと診断され、事実上、
病気を見落とされていたことが7日、
日本脳神経外科学会の調査で分かった。

患者が軽い頭痛しか訴えなかったことなどから、
くも膜下出血を発見できるCT
(コンピューター断層撮影)を実施していなかった。

同学会は「軽い頭痛の患者全員に
CTを行うわけにはいかない。
現代医療の限界とも言える」
としている。

同学会学術委員会の嘉山孝正・山形大教授らが、
宮城県と山形県の2病院で、脳神経外科の
カルテ全491例を調査した。
宮城県は07年1月~08年5月が対象。

198例中37例が脳神経外科医以外で初診を受け、
うち10例(5.1%)が風邪、高血圧、
片頭痛などと診断されてCTを受けず見落とされた。
10例すべてが再発し2例が死亡した。
山形県は96~05年が対象。

専門医以外の初診は293例中48例で、
23例(7.8%)が見落とされ、
すべてが再発し2例が死亡した。
見落とし計33例のうち17例は、
くも膜下出血の常識に反して発症時に
軽い頭痛しか起きておらず、委員会は
「専門医以外では他の頭痛と区別できない」と指摘。
他の16例も「診断が難しい例がある」とした。
山形県では脳神経外科医でも
見落とした軽度頭痛の患者が1例あった。

米国では5~12%の見落とし率という報告がある。
嘉山教授は
くも膜下出血の診断は難しく、
完ぺきな診断はできない。
現代の医療でも見落としは
不可避という現実を周知し、
脳ドックの普及など社会全体で対策を
考えるべきだと思う」と話している。
【奥野敦史】


「毎日新聞:2007年7月7日」


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小松 秀樹 (著)


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医者の横着
医者っていうのは、昔なら技術職、職人
という事でも良かったのだと思います。
今でも、ものすごい手術が上手な外科医であれば、
そういう人が一部はいても良いのかな、
とは思いますけどね。

でも、今の医者っていうのは、単なる職人
っていうだけでは駄目だと思います。

あくまでも個人的な意見なのですけどね。
今の医者には、「技術職」と「サービス業」と、
そして「経営者」の視点が必要なんじゃないかな、
って思っています。

ブログで書くのは、もしかして初めてかもしれませんが。
自分では研修医の頃から思っていた事で、
一部の周りの医師には昔から話している私の持論です。

医療を行うには専門的な知識や技術が必要ですから。
医者職人のような技術職だ
という事に異論のある人はいないと思います。

ただ、それだけでは、今の医者は通用しないと思います。
昔の医者であれば、
患者医者の言う通りにしていれば良いんだ。」
っていって、横柄にふんぞり返っていても
良かったのかのかもしれませんけどね。
今の時代、そんな事では通用しません。

そういう医者が多かったから、
つい最近まで医師叩きのくだらない番組が多かったとか。
今でもネットやマスコミを通して、医者の事を悪く言う人が多い
という側面もあるでしょうから。
そこら辺に関しては、医者の中でも反省すべき点だと思います。

医療はサービス業ではなく、警察や消防のような
社会インフラだ、
と私は思いますけど。
でも、患者さんと直接対面して会話をしたり、
検査や治療をする訳ですから。
やはり、サービス業という側面も一部にはある、と思います。

ただ、最近では、医療はサービス業で、患者は客だ。
というような風潮が強すぎ
て、
患者の事を「患者」って呼んでみたり。
患者側の権利意識が強すぎて、単なるわがままを言う、
モンスターペイシェント」みたいのが出てきて、
逆に問題になっている。
という側面もあるのではないでしょうか。

経営者としての視点っていうのは、
簡単に言うと、コスト意識を持たないと駄目だ
っていう事です。

昔であれば、最高の医療をすればお金は関係ない
というような考え方でも十分だったのかもしれませんが。
最近は、診療報酬も削減されて、多くの病院が赤字なので。
医者個人が、ある程度のコスト意識を持っていないと、
病院そのものが潰れてしまう事になりますし。

日本の医療は先進国で最低レベルですけど。
自己負担率は、最高レベルですからね。
高齢者の自己負担率も上がっているし。
どんどん高い薬や治療が出てきているから、
患者さんのお金の事も考えて治療する。
という視点も必要だ、と私は考えています。


医療業界は特殊だから。
医者は特殊だから、
っていうのは
単なる甘えだと思います。
警察だって、マスコミだって、農家だって。
どこの業界だって特殊なんですから。

個人的には、医者になっても一般人の視点を忘れない
っていう事を意識して心がけていますし。
ブログに関しても、一般の人が読んでもわかる文章を書く
という事を常に心がけています。

んで、全く同じ考え方、って訳ではないんですけど。
いつもお世話になっている「ロハスメディカルブログ」
川口恭
さんが、医者に対する強烈なメッセージをくれたので。
ここでも紹介させて頂きますね。



インターベンション学会報告(1)

医療事故調をつくるという話で、
厚生労働省はしくじりました。

参院で与党は少数派ですから、
秋の臨時国会でも厚労省案が
国会を通らないことは確定しています。

なぜ、こんなことになっちゃったかと言えば、
一義的には厚労省が、司法という
自分たちの権限が及ばない領域のこと
であるにも関わらず、必要な手順を尽くさず
乱暴極まりない進行をしたからです。

ですが、1年間追いかけているうちに、
厚労省だけが悪いんじゃないな、
ここで厚労省の悪口を言っているだけだと、
きっとまた同じような問題が起きるな、
と思うようになりました。


そもそも、事故調をつくるという話は、
最初に厚労省から出てきたわけではないと思います。

都立広尾病院事件で、
医師法21条がそんなことになるなんて、
と驚いた医療界が診療関連死の届出先を
警察以外のところにしようということで
厚労省を巻き込んでモデル事業を始めたんだけれど、
その年度中に福島県立大野病院事件が
発生してしまって、とにかく警察・検察の
医療への介入を止めなきゃいけない、と。

いうことで、厚生労働省に「何とかしてくれ」
と言ったんでしょう。
当時の医療界の常識からすれば、
当然の発想・行動かもしれません。

でも、これは私のような外部の人間から見ると
非常に横着だったように見えます。
で、その横着さが、結局、厚労省
乱暴な進行も呼んだのでないか、と。
いわば、今回の大混乱に関しては、
医学会のリーダーたちと厚労省とが
共犯なのでないかと思うわけです。

先ほども言いましたように当時の発想では
当たり前のことをしただけかもしれないとは思いますが、
これだけ大混乱をきたしたにも関わらず、
もし未だにその横着さに気づいていないとしたら、
ちょっとお粗末すぎるのでないかと思います。

突然言われても、お前何を言っているんだ
と思いますよね。
なので何が横着なのか簡単に説明します。

医療用語に例えた場合に、今回医療界の
リーダーたちがしたことは、診立ても悪いし、
治療態度も悪いと表現できると思います。
何といっても、第1回の検討会で樋口委員から、
非常に本質的な問いかけがされているわけです。

ところが最後まで、そこは曖昧なまま突っ走りました。
検討会の中に学会の代表者も
入っていたわけですから、診立てが悪いことに
気づいて軌道修正することだってできたはずなんです。

それから治療態度の話はより深刻だと思います。
大野病院事件がとんでもないと思うのなら、
なぜ警察・検察と闘わなかったのか、
広尾病院事件から、なぜ21条を何とかするという
教訓が出てきてしまうのか。
都病院局の隠ぺい体質を糾弾して
医療者を守るべきだったのでないか。
そもそも患者さんとちゃんと向き合ってきたのか。

面と向かって交渉するのが怖いから、
面倒だから、ルールの方を変えたいって、
そんな身勝手なことが通るわけがないんです。
しかも、それを自分たちでやらずに
厚労省にやらせようとした。
それは横着すぎるだろうと思うわけです。

どうして、こんなにムシのよいことを要求して、
それが通ると思ってしまうのだろうと正直不思議です。

でも何年か医療者たちとお付き合いをしていく中で、
ははぁこれだなと思うようになったことがあって、
それは良い表現をすれば唯我独尊であり、
悪い表現をすると社会に対して
無関心すぎるということです。

4月12日の医療議連のシンポジウム。
医者さんが多数集まって大変盛り上がりました。
でも、あの場にいたメディア関係者や一般患者は、
非常に違和感を感じていました。

中でも最たるものが、山形大の嘉山先生の言葉です。
今や八面六臂の大活躍をされている、
その嘉山先生が
医療がこんなになるまで医者は何をしていた
と言われるかもしれないが、
医者医療をやっていたんだ」
と胸を張ったわけです。

医療者たちの本音を代弁しているんだと思います。
ちょっと待ってと思います。
医者医療だけしていればいい」
って誰が決めたんですか? 
たしかに早く一人前になるため脇目もふらず
という時期は必要でしょうし、業界全体でも
余計なことを考えずに済むに
越したことはないと思います。

思いますが、少なくとも社会は
そんなことを要求してないはずです。
医療は社会のサブシステムです。
医療者だからといって、社会の構成員としての
責務を免れるものではありません。

社会から、医療だけしていればよいと要求されない限り、
自分たちで勝手にこれだけしていればよい
と決めつけるのは図々しいです。
少なくともサブシステムの当事者として、
医療サブシステムが社会と調和して
持続するよう行動する責務があります。
その際に他のサブシステムと利害衝突が起こったならば、
ちゃんと折衝しないといけません。

そういう面倒なことを引き受けるためにこそ、
リーダーというものは存在するはずです。
それなのに今回は一体何をしたのか、ということです。
その意味では、学会だけでなく、
医師会の責任も当然問われると思います。

もちろん全部を自分たちでやらなきゃいかん
ということではありません。
エージェントを使うのは結構です。
病気だったらお医者さんに頼るのと同じことです。

でも、問題は医療界には、厚生労働省の官僚しか
エージェントと呼べる存在がいないことです。
そもそも官僚は公益のために動かなければ
いけないのですから、一業界のエージェントとして
使ったら本来はいけないんです。

しかも普段厚労省に大して協力もしてないクセに、
都合のよい時だけ使おうとしても、
思い通りに動いてくれるはずがありません。
そういう横着をするから厚労省の側でも
自らの利益を図って、
いろいろ訳の分からないことになるのです。

今回の問題は、明らかに医療という
サブシステムと司法というサブシステムとの間で
衝突が起きているわけで、医療業界内だけで
ゴチャゴチャやっていても絶対に解決しません。

医療以外のサブシステムは、
みな必要な努力を積み上げて、その他のサブシステムと
不断に折衝しているわけです。
自分たちの要求を通したいと思ったら、
他のサブシステムが努力しているのと同様に、
ちゃんと実態をよく見極めて、
必要な手間暇費用をかける必要があります。
早くそのことに気づいていただきたいと思います。
それをイヤがる限り、横着と呼ばざるを得ません。


『インターベンション学会報告(1)』


極端な話、医師免許があれば、
食いっぱぐれる事はないですからね。
医者って。

だから甘えがあるというか、
>良い表現をすれば唯我独尊であり、
 悪い表現をすると社会に対して無関心すぎる。


という事になっているんだと思います。

川口さんの場合は、私のような医師個人の事でなくって、
医者全体としての話。
医師のリーダーの役目、っていう事で
言っているのだとは思いますが。

医者医療だけしていれば良いのではない。
っていうのは、私も思います。


医師法第一条にはこう書いてありますね。

医師法第一条  

医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて
公衆衛生の向上及び増進に寄与し、
もつて国民の健康な生活を確保するものとする。


参照:『医師法』

医師の一番の役目っていうのは、
>国民の健康な生活を確保するもの
って事ですから。
単に、目の前にいる患者を治すだけで良い。
っていう話にはならないと思います。

医師法第一条には、
医療及び保健指導を掌ることによつて
って書いてはありますけど。
それ以上の事をしてはいけない、
とは書いていません
からね。

例えば、
医師は30時間以上の連続勤務を、
日常茶飯事に行っているし。
労働基準法違反、過労死の認定基準よりも多い、
月に80時間とか100時間以上の時間外勤務を
行っている人も大勢いる。
こんな常態で診療をすれば、良い医療を提供する事は
できないから、国民の健康な生活を守れない。

っていう事を世間一般に広める。
というような事も、必要なんじゃないかなー。

最近はインターネットも発達して。
ブログやメール等を通して自分の意見を
世間に訴える、って事も比較的容易になったし。
それ以外にも、身近な人に話すだとか、
地方議員や国会議員に働きかけるとか。
医療以外でも、やった方が良いって事は
たくさんあると思うので。

国民の健康な生活を確保する」為に、
医師医療以外の事もしていった方が良い。
これが現在の医者のあるべき姿なんじゃないかな、
って、個人的には思います。


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大野病院事件、メディアの功罪3
『大野病院事件、メディアの功罪』
『大野病院事件、メディアの功罪2(追記あり)』
の記事の続きです。
まだ見ていない人は、最初にこっちから読んでね!

福島県立大野病院で起きた、妊婦の死亡事故で。
警察が産科の逮捕に踏み切った事から、
メディアが一斉に、殺人医師事件として取り上げて。
その結果、マスコミの報道で萎縮した
産科の立ち去りが各地で起こって、
産科の閉院が相次ぎました。

その大野病院事件に関しての、
メディアの報道のあり方を検証する番組の続きです。


前回は、警察や刑法の話が中心でしたね。
医療っていうのは、不確実なもので、
多様な見解が出てくるものです。
その場の状況によって、いろんな判断をしなきゃいけなくて、
それには専門的な知識や経験が必要だし。
常に、100%完璧な治療っていうのが、
できるはずもないんですよ。

それなのに日本では、結果が悪かったからって、
先に結論ありきで素人集団の警察が逮捕に踏み切る。
っていう事が現実問題としてある。

それは、業務上過失質罪という法的な問題と、
警察の運用上の問題で。
そんな国は、世界では日本しかない
という話でした。

今回は、そこから発展して、
いよいよ本題のマスメディアの話です。



黒岩祐治のメディカルリポート #49
「検証!医療報道の光と影2
大野病院妊婦事件 、メディアの功罪1~ 3


医療福祉チャンネル774 
 森まどか

ゲスト
福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座
 佐藤章 教授

東京大学医科学研究所探索医療
ヒューマンネットワーク部門
 上昌弘 准教授(医師

参議院議員(民主党)
 鈴木寛議員

コメンテーター
医師・作家
 和田秀樹医師



 黒岩
「ただね、鈴木さんね。
有罪か無罪か、わからない段階で、
殺人者だという決めつけ方で、どーっと行くっていうね。
佐藤さんVTRの中でも指摘されていましたけどね。
これはですね、医療だけの話ではないですよね。」

 鈴木
「そうですね。」

 黒岩祐治
「普通の殺人事件でも。
誰がどう見ても、こいつが犯人だろう、という。
もう、みんなが思っている、そういうものであっても、
有罪か無罪か、本当はわからないですよね。
しかしだからといって、そこで距離感を置いて伝える、
という事は、なかなかメディアの現場では、
できないですよね、それは。
それが現実だと思いますけど、どうですか?」

 鈴木寛議員
「特に日本の場合はですね。
有罪率。
要するにきちっと検察庁が、
送検をした場合ですけどね。
99%ですよね。
まあ、他の、例えばアメリカなんかでは、
いろいろな裁判員、まあ、陪審員制度などで、
無罪になったり、有罪になったりする場合ありますけど。
そこは、ホントに日本の裁判制度とか、
あるいは司法制度全体の話としてね。

ただやっぱり、話戻りますけど。




故意犯と、過失犯というのを、やっぱり
きちっと分けていかなければいけないと思うんですよね。
その中で、業務上過失致死というのは、
かなり特殊な症例にありますから。
そのところは、メディアも慎重にやった方が良い、
というのは教訓とすべきだと思いますよね。

 黒岩
「今回の特徴としてね。
先ほどVTRにもありましたけどね。
要するに、既存のメディアがばーっと伝えた、
という事で、これは大変な事が起きた、という。
その流れを変えていった、大きなうねりを起こしたのは、
実はインターネットによる専門家同士の
意見の交換
だった、というところですねー。
上さん、このあたりどうですか?」

 上昌弘准教授
「まさに仰るとおりなんですね。
実は、私自身も最初はテレビ報道、メディア報道
信じてたんですが。
いろんなところから、e-mailやウェブ上の情報で、
だんだん実態がわかってくるんですね。

マスメディアと違うのは、双方向コミュニケーション
じわりじわりじわりやっていくんですよ。
ばっと流すだけじゃないんです。
やがて、医師コミュニティーの中に、
どうやら実態はこういうとこなんだろう、
というコンセンサスが形成されていったんですね。
割合早く形成されました。

じゃ、次に何をしなきゃいけないか、って議論になった時に、
コンセンサスが形成されているもんですから、
割と早い動きになっていったわけです。
それが署名活動なんかにつながっていったわけですね。」

 黒岩
「鈴木さん、これ新しい動きですね。」

 鈴木
「あのですね。
私もですね、新聞読んだ時は、
恥ずかしながらそれを信じた訳ですね。
報道見た時は。
しかし、私は、佐藤先生、あるいは
医師の仲間の皆さんから、ご要請を受けて、
ご説明を頂いて、川崎厚生労働大臣に
佐藤先生をお連れしたりしたんですけども。

私も、これはやはり問題だ、と確信を持った理由はですね。
ネットで議論されているご意見の、特に専門家のご意見の。
最初は1人2人の方から、こういう事件が起こってます、と。
しかしまあ、メディアで報道してて、1人2人がおっしゃっても、
まあ、それはどっちもどっちかなー、と思っていたんです。

しかし、ネットの世界は逆に言うと、
メディアは一方的に有罪だと決めつけましたけが。
ネットの中の議論の、おそらく96,7%はですね、
これは無罪だ
、という事が、
数千名の方がですね、仰っているんで。
これはやはり私はですね、その6000名の方の
90数%の方がこれはやっぱり無罪だ、と。
あるいはこういう事をやった場合には、
産科医療は崩壊してしまう、萎縮医療になってしまう、と。
やっぱ、その声は相当な信頼に足る状況だったですよね。」

 黒岩
「佐藤さん、やっぱり流れは、
その後で変わってきましたか?」

 佐藤章教授
「はい、変わりましたね。
その以前からですね、産婦人科医が少ないという事で、
大きな病院で集約化をしなければいけない、
という事になったんですけど。

まず1つは、1人で産科をやっていくことは、
もうやめよう、できない。
一生懸命やっても、1人だけで責任を取られると困る。
という事で、もう1人で、勤務医の病院がなくなってきた。

で、なおかつ、若いこれから産婦人科になっても良い。
っていう人達も、こういう事件をきっかけに、
産科になったらば逮捕される可能性が強い

じゃあ、やめよう。
こんな忙しい、それでなおかつ訴訟が多い。
それだったら、やめよう。

それから、今はどういう事が起こっているかというと。
その若いお医者さんの中でも、
いや、産婦人科やってやろうじゃないか。
頑張りましょう、っていう人がいるわけですよ。
そういう人達の中の、お父さんお母さんが、
そんな無理してそういうところにいくなよ。
やんなくても良いじゃないか。
っていう風に、負の方向に行っている、
っていうのが現実なんです。」

 黒岩
「そうすると、真相を明らかにしていくために
ネットで意見が飛び交った、っていう事もあるだろうし。
やっぱりその、どうですか。
こんな危ない事はやめとこうじゃないか、みたいな、
逆のネガティブな世論も広がっていったんじゃないですか。
どうですか、上さん。」

 上
「そういうご父兄の話もあります。
実は私の友人の産科の教授から聞いたんですけど。

君たちはどうして産科医を選ばないんだ。』

って言った時に。

せっかくここまで医師にしてもらったのに、
こういう刑事罰や、あるいは行政処分、
あるいは民事訴訟になると、家族に迷惑をかける
。』

って言うんですね。
せっかくやって貰った家族に悪い。
今までサポートしてくれた、家族に悪い。
だから、私は産科をしたいけど、
こういうリスクが低い生殖医療であるだとか、
あるいは婦人科の腫瘍の治療なんかをやるんだ。

それを聞くと、わかりますよね。
我々も家族を持つものとして、
そりゃそうだろうな、とわかります。
いろんな意味合いで、親御さんであったり
当事者達がいろんな意味合いで、産科から
だんだんだんだん手を引くようになっているんですね。」

 鈴木
「今、1000人のうちですね14人の産婦人科医
産婦人科医が1000人いるとしますとね、
14人の方がなんらかの形で、
訴訟、訴追リスクに巻き込まれているんです。
ということは、100人に1人越えてる訳ですから。
1大学の1つの学年に1人いる、
って事になっちゃう訳ですね。
そこはやっぱり、相当深刻な状況じゃないですかね。」

 黒岩
「和田さんね、ネットがそういう新しい動きを作ってきた。
という、新しい傾向をどうご覧になりますか。」

 和田秀樹医師
「もちろん、それが、やはり今は過渡期だと思うんですよ。
というのは、やはりマスメディアネットで。
ネットで随分救われて、おそらく裁判に関して言えば、
裁判であるだとか、政治の動きであるだとか。
いろんなものに対して、ネットは大きな影響を
与えてくれるとは思うんですけど。

先ほどの家族に迷惑がかかる、って事に関しては
やっぱり、マスコミで袋だたきにあってる。
例えば、子供がいじめられるかもしれない。
父親が肩身の狭い、人殺しの親だ、
って言われるかもしれない。
そういう事はやっぱり、
まだまだマスメディアの影響が大きいもんですから。

ネットがそれを食い止めるくらいの、ものすごいパワーを
持つまでの間は、ネットがフォローしてくれる部分で。
多少裁判だとか、そういうものに対して有利になったとしても、
家族に迷惑をかけたくない、だとか。
産婦人科になるのを踏みとどまろう、
という事に関しては、まだまだマスメディアの影響
っていうのは大きいんではないか、と思いますね。」

 森まどか
ネットで話題になったっていうのは、
医療の間では話題になったけど。
なかなか一般の方には影響力というのは、
まだ少ないような気がしますねー
。」

 上
「過渡期の状況なんですが。
これ、おもしろい減少が起きていまして。
ネットのそういう議論が起きたのは、
医療、特に医師系のオンラインメディアなんです。
で、オンラインメディアっていうのは、
一般紙と比べてボリューム書けるんですね。
正確に丹念に書けるんです。

更に、プロのジャーナリストが書くんです。
その結果、それをまあ、黒岩さんであったり、
マスメディア、新聞記者さんなんかが、それを今度読んで、
なるほどー、ってこう理解していった訳なんですね。

ネットオンラインメディアが、実は一番最初に
マスメディアとか業界記者達から、一般記者につないだ。
って、今、そこまで来てるとこだと思います。」

 黒岩
「これね、ネットっていうのは。
僕らなんかからすればですね、ある種危なさもあってね。
逆のとこもたくさんある。

つまり、既存のメディアだったらですね、
人権に配慮したりだとかしながら。
いろんな事で、ホントは知っていても言えない事とか、
出さない事とか、いっぱいありますよね。
しかし、ネットになるとですね、
それこそ子供の顔から、実の名前から
もっと個人的な情報から、全部出されてしまうという。
その危険性も、実は同時にはらんでいますよね。」

 鈴木
「そうです、そうです。
私は、ずっとネットの事やってきたんですけどもですね。
今回の事で、いわゆるネットと決定的に違うのはですね。
医師の方が、ちゃんと、どこそこ病院の何科で勤めている、
実名をきちっと出して議論されているんです。
やっぱここが、いわゆるネットの問題とは違うし、
そういう事が信頼性を増したと思います。

ただ、一方でですね。
やっぱり、私は立法府にいますけどもね。
裁判所とか、国会、あるいは官庁、ではですね。
ネットだけの情報では、それはなかなか、
それを参照する、という事には、ならない。
やはり大きなマスメディアでオーソライズをされる、
っていうのが重要なので。
まあ、まさにその辺の、この。」

 黒岩
「上さん、どうですかね。
この大野病院事件があってですね、
そしてそれによって、産科が危なくなってきたという事。
かなりみんな知るようになってきましたよね。
マスコミの対応もちょっと変わってきましたかね。」

 上
「変わってきましたね。
マスコミは、我々の研究室で調査したんです。
最初の数ヶ月は、医療事故、過失なんです。
まあ、犯罪として扱ったのが、
最近は医療体制の問題、ってなってきたんですね。

まあ、そのまさにおかげなんですが。
2008年度の予算の中では、
産科の対策費や、たらい回しに対する対策として、
国家としての取り組みになったんです。
これもう、明らかにマスメディアの功罪の、
功の部分
が出てきてますね。
マスメディアがなければ、なってないですね。」

 黒岩
「そういう、ネットでのやりとり等々も、
マスメディアに関わっている人間も見てますからね。
そこで学習していって、少しずつあるべき姿を
模索している、という状況なんでしょうけどね。
しかし、この問題から、もっともっと幅広い大きな問題を
垣間見れた気がしますからね。
これは課題として、次取り組んで行きたいと思います。

今日はどうもありがとうございました。」

『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件3』


という事で、最後にマスメディアの功罪の、
功の部分
も出て、うまくまとまりましたね。

このブログでも何回も書いているように。
日本の医療崩壊の原因の1つに、
マスコミ報道」というのがあると思います。

ただ、ここ最近。
具体的には、2007年の冬くらいからでしょうかね。

医療過誤」、「医療ミス」という言葉が
2006年には多かったのですけど。
2007年頃からは減って、
むしろ「医療崩壊」という言葉が増えたし。

参照:『医療破壊に抗議する』

2008年からはテレビでも、
医療崩壊」系の番組も多いですよね。
テレビ局やプロデューサーによって、
非常に質の高い番組もあるし。
単に流行を追っただけの、たいした事ない番組と
両方あるけどね、実際は。

でも、一時期のように単なる医師叩きの番組、
っていうのは少なくなったように思いますね。


上先生も言っていたように、
ネットでいろいろ議論された事が、
オンラインメディアを通して、報道されて。
それを見て、既存のマスメディアが報道する、という形。
このおかげで、一般の人達にも、医療現場の実態が、
やっとわかってもらえるようになって来てますよね、最近は。 

医師ブログなんかが以前に書いた事を、結果的に
テレビでやっている、っていう形も非常に多いですけどね。

でも、医師ブログっていうのは、
最近でこそ、少しはメジャーになりつつあるけど。
既存のマスメディアに比べたら、はるかに影響力は小さいですから。
少し、時期が遅れるとはいえ、医師ブログでの主張が、
マスメディアを通して、世間に報道される。
という事は、非常に良い事だと思いますよ。

上先生も言っているけど、

>2008年度の予算の中では、
産科の対策費や、たらい回しに対する対策として、
国家としての取り組みになったんです。
これもう、明らかにマスメディアの功罪の、
功の部分が出てきてますね。
マスメディアがなければ、なってないですね。


まさに、その通りだと思います。

日本の医療崩壊を勧めたのは、マスコミ
だからけしからん。
って言って、マスコミと敵対する
という方法もあると思いますけど。

私は、日本の医療を崩壊から救うには
絶対にマスメディアの力が必要だと思います。

マスコミ関係者には、自分たちのせいで、
日本の医療崩壊は進んだんだ、
っていう自覚
をまず持ってもらって。
その後に、でも日本の医療を崩壊から救えるのは、
マスメディアの力なしにはできないんだ。
って思って、頑張って貰いたいものですね。


全部一気に見たいって人は、本家の方で見てね!
『『医療福祉eチャンネル』』
期間限定っすよ。


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大野病院事件、メディアの功罪2(追記あり)
『大野病院事件、メディアの功罪』
の記事の続きです。
まだ見ていない人は、最初にこっちから読んでね!

福島県立大野病院で起きた、妊婦の死亡事故で。
警察が産科医の逮捕に踏み切った事から、
メディアが一斉に、殺人医師事件として取り上げて。
その結果、マスコミの報道で萎縮した
産科医の立ち去り
が各地で起こって、
産科の閉院が相次ぎました

その大野病院事件に関しての、
メディアの報道のあり方を検証する番組の続きです。

前回は、前置胎盤、癒着胎盤っていうのは、
具体的にはどんなものなのか、っていう事と。
どんなに珍しい症例なのか、
っていう話が中心でしたね。
今回は、その続きです。


黒岩祐治のメディカルリポート #49
「検証!医療報道の光と影2
大野病院妊婦事件 、メディアの功罪1~ 2


医療福祉チャンネル774 
 森まどか

ゲスト
福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座
 佐藤章 教授

東京大学医科学研究所探索医療
ヒューマンネットワーク部門
 上昌弘 准教授(医師

参議院議員(民主党)
 鈴木寛議員

コメンテーター
医師・作家
 和田秀樹医師



 佐藤章教授
「もう一つ、この症例ではですね。
不幸な事に、胎盤がものすごく大きかったんです。
だいたい500グラムが普通の、10ヶ月で生まれる、
赤ちゃんの時の胎盤は500グラム位なんですけど、
この場合は700グラムあったんです。」

 黒岩祐治
「それだけ難しい症例であってね、
危険もたくさんあるという状況で。
結局、出血多量で亡くなってしまった訳ですね。
それでは、なぜ警察が出てきて、
逮捕されるようになったんですか?


 佐藤
「いや、それは警察の逮捕の業務上過失致死の、
警察側が主張しているのは。
癒着胎盤があったのを気が付いたんだから。
そのところで、無理にクーパーを使って
剥がした事自体が、乱暴である

それは、医者としてやってはならない行為である。
っていう、無理にやったから大出血を起こしたんだ。
っていう主張で逮捕した、って事になっているわけです。」

 黒岩
「上さんは、この後のメディアのあり方について、
大変問題意識を持ってらっしゃる訳ですけど。
警察が最初そうやって動いてきた。
メディアも、ある種自動反射的にぱっと動いてくる。
こういう構図になっている。
この問題の一番大きな法律上のポイントっていうのは、
どこにあると思っていますか?」

 上昌弘准教授
「本来医療っていうのは、
いろんな方がいろんな形でやって。
多様な見解が出てくる訳ですね。
その場その場の状況によって、医療者ドクターは、
ベストを尽くす
わけなんです。
その検証っていうのは、複眼的でなきゃいけないんですが。
警察っていう1つの権威が、ぼんって決めてしまった場合、
っていうのは、その正しさを誰も検証できないんです。
かつ、それが素人集団な訳なんです。

更に、今回の場合ですと、もちろん
医療に意見を聞いているんですが。
最初から絵がありきで、特定の先生に聞いている訳で。
多様な意見を反映して、適切な所に
合意が形成されていな
いんです。

で、逆に、権威というものが報道しちゃうと、
国民、医療を含めて、そういう先入観を持ってしまうんです。
それをひっくり返すっていうのは、
現実的には不可能に近いと思うんです。
こういう事例が積み重なっていくと、
産婦人科の先生は無力感をどんどん感じている訳です。」

 黒岩
「この問題を整理しなきゃいけないのはね。
警察が先に動いた、という事。
こういう事は、上さん。
問題だと思いますか?」

 上
「問題だと思います。
世界で、欧米の先進諸国も含めて、
警察が医療に介入する事が、法的であれ、
運用上であれ、常態化している国、っていうのは、
実は日本だけなんです

これは、日本の制度としてのエラーだと思います。」

 黒岩
「鈴木さんね。
そしたらこれ、メディアの問題っていう以前に、
警察の問題ですよね、まず第一に。」

 鈴木寛 参議院議員
警察の問題であると共に、刑法の問題ですね。
刑法には、業務上過失致死っていうのがあるんですけども。
いわゆる、医療行為にも業務上過失致死
適用されてしまうし

それから、我々が例えば、車を運転する場合も、
同じ業務上過失致死が適用される訳なんですよね。

医療と他と、決定的に違うっていうのは。
他の業務は、通常に車を運転していれば、
それは安全に、きしっと人を運ぶ、運送ができる。
っていう事が想定されている訳ですね。

ただ、医療の場合はですね、何も医師
あるいは医療者が手をほどこさなければ、
その方の病気は悪化する。
しいては、死に至ってしまう。

で、それを食い止めるために、
医療行為をする訳ですから。

本質的に、同じ業務であっても、
全然違う
にもかかわらず、日本の刑法では、
残念ながら明治にできた枠組みを
そのまま引き継いでいるものですから。

医者業務上過失致死罪も、
それから、いわゆる運転の業務上過失致死とかですね。
あるいは通常のいろんな仕事をしている上での、
業務上過失致死とか。
そういうのが、ごっちゃになっている、と。
ここを整理しなきゃいけないという、
まず刑法の問題があって。

で、その事を、警察が運用上、
それを一緒にやっていると。
こういう、かなり根深い話ではあるんですね。」

 和田秀樹医師
医療行為っていうのは、例えば、お産っていうのは。
死ぬのが当たり前、とまではいかないけども。
昔であれば、死を覚悟する位のレベル
事だった訳ですから。
そういうものに関して、やはりはるかに危険が全然違う
という認識がないですよね。

それと、あとはやっぱり、理想論と、医師っていうのは、
その場その場で判断しなければいけない
っていうのは全然違うわけで。
後付けでこうやっておけば良かった、っていうのは
いくらでも言えるわけですが。
その場で判断する事が、必ずしも理想通りにいかない、
っていうことは、むしろ当たり前にある訳ですね。

ところが、警察は理想論の通りにやらなければ、
結果が悪かった場合は捕まえるよ。
っていう事であれば、これはもう、
自分がとっさでベストの判断ができるなんて、
ある種もし考えている医者がいたら、相当なうぬぼれですから。
そういう医者しか残らなくなってしまう危険がある。」

 鈴木
「おっしゃる通りで、正常分娩って言葉がありますけど。
それは、終わってみて正常だった分娩で。
入り口で、これは正常分娩か、異常分娩かなんて事は、
本当にやりながらでないとわからないわけで。
それから和田先生おっしゃったように。
外科医っていうのは、毎回傷害行為をやっているわけです。
その、手術をやるたびに。
だから、傷害罪。
投薬でもなんでもそうですけど。
これは、それはそもそも傷害行為ですから。
人を傷つける行為ですから。

しかし、医師医療行為という事で、
医師法という国家資格によって、それは
正当行為をやるという事で、免責されている訳
ですよね。
ここの前提が、なんかどっか行っちゃってしまっているな、と。」

 黒岩
「佐藤さん。そういう事から考えればねー。
刑法の問題もあるし。
警察がばっと動くという問題もある、と。
いった状況である中で、ですよ。
さっきVTRでも出ていましたけどね。
私はマスコミに対してクレームをつけたい、と。
おっしゃっていました。
メディアの問題は、どこにありますか?」

 佐藤
「こういうのは、初めてのケースだ、
って言えば、それまでなんですけれども。
刑事事件になると、刑事専門の記者の人達が来るわけです。
そうすると、もう警察が捕まえたんだから、
よっぽど悪い医者
だ、と。
それは殺人者と同じだ。
という風な受け取り方を、もうしちゃっているわけですよ。
ですから、一番初めの時の報道が、もう、
前提がそうなっちゃっている

その時に、何故そうなったのか、っていう事を
医学的に、まあ申し訳ありませんけども、
理解していない人達がばー、っとやってしまう。
そうすると、一般の人達はもっとわかりませんから。
ああ、こういう医者なんだ、という。
もう初めに先入観念が出てきてしまう、と。
これが一番。
我々が後から言っても、なかなかそれを変えてくれる、
っていう事ができない、っていうのが。
ほんとにそれが、正直言うと困りました。」

 黒岩
「まあ、メディアの立場から言えばですねー。
この中で、私メディアの人間。
だから、受けてたたなきゃいけない。

まあ、良いか悪いかは別として。
いわゆる、記者クラブ制度になっている訳ですね。
だから、警察担当の記者っていうのがいて。
警察が発表してきて、捕まえた、逮捕した。
って言ったらば、第一義的にうわーっと動いていく。
その事件の中身が、いわゆる殺人事件であろうが、
医師医療事故であろうが。
それはもうとにかく、判断するという時間的な余裕もなしに、
あとは何があったんだ、
っていうスクープ合戦に入っていきますから。
自動的に動いていくという事になってくる、
という事なんですけどねー。

やっぱ、上さん。
これは医療現場からすると、
やっぱたまらん
、という事でしょうか。」

 上
「そうですね。
もうそれをやられると、たまらない感じがしますね。
医療行為っていうのは、本来非常に高度な技術で。
専門家が技術的に判断する以外、多分わからないんですね。
そういうものに関して、1つの権力である
警察が、ばっと言って、それをメディアが流した場合は、
そのチェックが構造的にかからないんです

要するに、過ちを繰り返しながら、
医学は進むものなんです。
世界でもどこでもそうなんですが。
こういう構造だと、チェックアンドバランスがかからず、
簡単に誤った方向にどんどん進んで行くんですね

これやっぱ、非常に危険なんだと思います。」

 和田
「やっぱ、メディアの根本的なあり方で。
今後変えて行かなくちゃいけないのは、
両論併記っていうのが、ほとんどない。
例えば、ありとあらゆる事件で、
本来ならば、警察発表もするんであれば、
弁護士さんの意見も発表する、っていうのが
フェアだと思うんですけども。
結果的に警察発表ばかりが、
どんどんメディアで報道されてしまうから。

やっぱり、こういう医療事故
まあ、例えば凶悪犯罪であったとしても、
今後裁判員なんていう制度を導入される以上は、
弁護する側の立場の話もマスメディアで流れないと、
裁判員にバイアスがかかるのに。
医療みたいなものに関して、
警察発表が、ほとんど垂れ流されてしまうっていうのは、
これはもう、危険この上ない事だと思いますね。」

 黒岩
「ただね、鈴木さんね。
有罪か無罪か、わからない段階で、
殺人者だという決めつけ方で、どーっと行くっていうね。
佐藤さんVTRの中でも指摘されていましたけどね。
これはですね、医療だけの話ではないですよね。」

 鈴木
「そうですね。」

 黒岩
「普通の殺人事件でも。
誰がどう見ても、こいつが犯人だろう、という。
もう、みんなが思っている、そういうものであっても、
有罪か無罪か、本当はわからないですよね。
しかしだからといって、そこで距離感を置いて伝える、
という事は、なかなかメディアの現場では、
できないですよね、それは。
それが現実だと思いますけど、どうですか?」

 鈴木
「特に日本の場合はですね。
有罪率。
要するにきちっと検察庁が、
送検をした場合ですけどね。
99%ですよね。
まあ、他の、例えばアメリカなんかでは、
いろいろな裁判員、まあ、陪審員制度などで、
無罪になったり、有罪になったりする場合ありますけど。
そこは、ホントに日本の裁判制度とか、
あるいは司法制度全体の話としてね。

ただやっぱり、話戻りますけど。」

参照:『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件2』


ってとこで、You Tubeの方は、
中途半端なとこで終わってしまっているんで。
すげー、消化不良かもしれませんが。
今日は私も疲れたんで、ここまでにしますかね(笑)

業務上過失致死の話なんかは、
今、問題になっている、医療事故調査委員会の話とか。
医師の刑事免責の話なんかにもからんできますからね。
ここ、大事ですね。


続きが見たい人は、本家の方で見てね!
→ 『医療福祉eチャンネル』
期間限定っすよ。


(追記)

7/5のyahooニュースのトップページに、
こんな記事が出ていましたよ!

半年先まで分娩予約でいっぱい 
妊娠判明即病院探しに奔走

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080705-00000001-jct-soci
『2007年7月5日yahooニュース(J-CASTニュース)』

大野病院事件で、通常の医療行為をしたのに、
患者が死亡したという事で、
産科医の先生が逮捕された。
その結果、新たに産科医になろうとする医師が減って。
お産をするにも、半年前から予約をしなければならなくなった

出産の半年前っていったら、妊娠2ヶ月ですからねー。
気づいてない人も多いですよ、実際。
こんな事になっちゃったのは、メディアの影響も大きいですから。
そこのところは、しっかりと考えて貰いたいものですね。




医療医療訴訟について知りたい人はこれを読んでね!
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→ 医療の限界
小松 秀樹 (著)


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大野病院事件、メディアの功罪
日本の医療崩壊を加速させたのは、
2006.2.18福島県立大野病院事件です。

このブログを読んでいる読者であれば、
ほとんどの方はもうすでにご存じだとは思いますが。
福島県立大野病院で、産科の先生
難しい症例の患者さんを救おうとして、
一生懸命に努力したけれど、命を救えなかった。
でも、患者さんが亡くなったという、結果が悪いというだけで、
故意でも医療ミスでもないのに、産科医のK先生
2006.2.18逮捕されてしまった、という事件です。

そして、逮捕という衝撃的な事だけでなく、
その後のマスコミの報道の仕方も酷くて。
その為に、日本の医療崩壊、特に産科
医療崩壊が加速的に進みました


具体的には、産科が1人でお産をする病院が、
日本中で大幅に減った。
そして、「妊婦のたらい回し」報道に代表されるように、
妊婦を受け入れる事のできる病院が、少なくなった。
という事ですね。

医療崩壊の一因として、「マスコミ
が与えた影響というのは、
「行政」の次、くらいに大きい。
と個人的には考えています。

その、医療報道を検証するシリーズ
っていうのがありましたので。
ここで紹介させて頂きますね。

You tubeの画像です

『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件1』
『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件2』
『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件3』


第一回の動画を、文字で書き起こしてみました。
癒着胎盤の説明など、非常にわかりやすかったので、
是非見てみてくださいね。



黒岩祐治のメディカルリポート #49
「検証!医療報道の光と影2
大野病院妊婦事件 、メディアの功罪1~


 黒岩祐治
メディアが医療崩壊を加速させた
と言われている事件を検証します。

医療福祉チャンネル774 
 森まどか

ゲスト
福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座
 佐藤章 教授

東京大学医科学研究所探索医療
ヒューマンネットワーク部門
 上昌弘 准教授(医師

参議院議員(民主党)
 鈴木寛議員

コメンテーター
医師・作家
 和田秀樹医師


 森まどか
さて、今回とりあげるのは、4年前に起きた
妊婦の死亡事故ですけどね。

 黒岩祐治
福島県立大野病院で起きた、妊婦の死亡事故なんですけどね。
警察が逮捕に踏み切った事から、
メディアが一斉に、殺人医師事件として
取り上げたわけですね。

その結果、どういう事になったのか。
まずはVTRからご覧下さい。



VTR

医療事故、病院崩壊、薬害訴訟など、
一連の医療報道が現実を改善する場合もありますが、
逆に事態を悪化させることもあります。

2004年、福島県立大野病院で起きた、妊婦死亡事故。
医師逮捕というマスコミ報道をきっかけに、
産科医療崩壊の危機が起こりました。

 佐藤章教授
「私はマスコミに対して、クレームをつけたい。
まだ有罪か無罪かも決まっていない時に、
あたかも殺人者なんだ、という感じで取り扱われたと。」


マスコミの報道で萎縮した産科医の立ち去りが
各地で起こり、産科の閉院が相次ぎました。
このメディアの報道に対し、危機を感じた医師達が、
インターネットを使い、真相を訴えました。

医療報道の光と影を検証するシリーズ。
第三回は、大野病院事件のメディアの功罪です。


県立大野病院は、福島県双葉郡の周辺で
分娩のできる数少ない病院でした。
当時、年間200件~250件の分娩を
1人の医師で行っていました。

妊婦は前置胎盤のため帝王切開で出産をしましたが、
癒着胎盤があり、その剥離中に出血多量で死亡しました。

福島県は医療ミスとして、遺族に謝罪。
事故報告書を公開しました。
警察は報告書が出たことにより、医療事故として捜査を始めました。
事故から1年4ヶ月後、担当の医師は、業務上過失致死罪と
異常死の届け出義務違反の疑いで、逮捕、起訴されました。

メディアは一斉に警察報道を伝えました。
それらの多くが医師の治療ミスを伝える内容でした。

福島県立医科大学産科の佐藤章教授は、
医師逮捕とマスコミの報道に異論を唱えています。

 佐藤章教授
「彼はまだ有罪か無罪かも決まっていないときに、
あたかも犯罪者のようにテレビでは画像で彼が(医師が)
逮捕されたところを映されるのが、
あれが非常に私、気持ちとしては沈みました。」

公判では前置胎盤の妊婦に癒着胎盤があり、
その判断と処置の仕方をめぐって争われています。

 佐藤章教授
前置胎盤事態が特殊な状態にある妊娠だった訳です。
それで手術してみたら、後壁に癒着があったと。
また、癒着胎盤というのも非常に
珍しい症例でありますので、
分娩前に把握できれば、それに対する処置は
対応できたかと言えたかと思いますけど。
それが予測が出来ない珍しい症例であったという事。」


医師の犯罪としてかたずけられようとした事件に
まったをかけたのはインターネットでした。
果たして過失なのだろうか。
医師逮捕に危機感を抱いた、他県の産科医師
事故報告書を入手し、それをインターネットで公開したのです。

すると、同じ様に疑問を感じていた複数の医師達が
ブログで意見を発信。
次第に新聞の記事だけではわからなかった、
手術の内容が明らかになってきました。

「ある産婦人科医のひとりごと:2006/02/19」


医師も意見を発した1人です。

 上昌弘准教授
「自分たちの知り合いにどんどん転送して、
お知らせしていったんです。
その方たちが、また周囲に知らせる形にして、
医療者の中、あるいは周辺の人達の中で、
どんどん世論ができていって、そういう合意形成。
メディアの報道はおかしいんじゃないか。
今回の事件の取り扱いはおかしいんじゃないかとか、
という議論が盛り上がっていたわけなんです。

医師達は逮捕された産科医を救う署名活動を展開。
わずか一週間で6520名の署名が集まりました。

その声に押され、厚生労働省は、
医療関連死の事故調査委員会を組織するため
検討会を開きました。
メンバーは、医師、法学者、有識者、被害者家族で構成され、
外部からもインターネットで意見を募集しました。

 上昌弘准教授
「30万人弱、一般の医師達がどんどん声を
上げていった訳なんですね。
ITや情報流通システムが整備されてこなければ、
今回の運動はなかったと思うんです。」




 黒岩祐治
「メディアのあり方っていうものも、
この機会にじっくり考えたいと思うんですけど。
佐藤さん、その前に、この手術ですけどね。
前置胎盤だった、癒着胎盤だったと。
これ、どういう風な手術だったんですか?」

前置胎盤


 佐藤章教授
「絵をお見せして、説明したいと思います。
普通、胎盤っていうのは、こちら側(右側)にありますように。
子宮から赤ちゃんが出てくる所ではなくて、
子宮の上とか前壁とか、後壁とかにくっついているんですけど。
今回の患者さんの症例は、出口のところに
胎盤がくっついているわけです(前置胎盤)。

ですから、赤ちゃんはふさがれているわけですから、
どうしても帝王切開せざるをえない
という症例なんです。
だいたいこれが、妊娠している症例の0.5%位
という事ですから。
これ自体が珍しい。

癒着胎盤図1


更に、癒着胎盤も、図を使って説明しますと。
普通、子宮の中は、胃もそうですけど。
表面は粘膜というのがあります。
同じ様に、子宮の中も内膜というのがあります。
内膜が妊娠しますと、脱落膜と、これ名称なんですけど。
そういう名称に変わるんですけど。
元々は子宮内膜なんですけど、そこに受精卵がくっついて、
はがれないように、絨毛っていうんですけど。
これが、根っこを張るんですよ。
で、お産の時になると、脱落膜も剥がれて、
胎盤も出てくるという風になっているんですけども。

この脱落膜が、何らかの原因で欠損していたり、
ものすごく薄くなったりすると、胎盤の根を張るのが
直接筋層の中に入ってしまう。(癒着胎盤

だから、お産が終わってからも剥がれなくなっちゃう訳です

 黒岩
「はー、そうすると、ここにメスを入れて切る
って事になるわけですか?」

 佐藤
「いや、普通はですね、全部がくっついているっていうのは、
まずないですから。
一部ですから、手を使ったり、一部はメスを使ったり。
まあ、メスはあんまりないですけど。
クーパーで、ハサミの一種ですけど。
そぐようにしてはがす、という事がやられている訳です
。」

 黒岩
「基本的に、非常に珍しいケースであったという事。
そして非常に難しい症例であったという事。」

 佐藤
「そして付け加えますと、前置胎盤の症例で
癒着胎盤の症例というのは、前置胎盤のうちの
だいたい3%位しかないんです。
ですから、0.5%と3%をかけあわしますと、
おおざっぱに言うと、1万例に1例くらいしかない。
という事です。」

参照:You Tube 『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件1』

本家は、こちらでーす。
『医療福祉eチャンネル』



第一回は、癒着胎盤とか前置胎盤とか。
そういう医学的な専門用語の解説中心だったんですが。
この後が、本論になりますよー。

結構、書き起こしするの大変なんですけど。
気合いが乗れば、第二回、第三回も書いていきますね!

福島大野病院事件の判決が、8/20にあります。
検察側の人間からも、医師を逮捕、起訴したのはおかしい。
福島地検のスタンドプレーだ、という声も上がっていますし。
公判の内容が、詳細にネットで書かれており、
それを見ても医師が有罪になる。
という確率は非常に低いとは思いますが。

もし、医師が有罪になる事があれば、
その時には日本の医療は完全に崩壊するでしょうね
そうならない事を祈っています。


医者のホンネが知りたい人は、こちらから!
→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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