『大野病院事件、メディアの功罪』
の記事の続きです。
まだ見ていない人は、最初にこっちから読んでね!
福島県立大野病院で起きた、妊婦の死亡事故で。
警察が産科医の逮捕に踏み切った事から、
メディアが一斉に、殺人医師事件として取り上げて。
その結果、マスコミの報道で萎縮した
産科医の立ち去りが各地で起こって、
産科の閉院が相次ぎました。
その大野病院事件に関しての、
メディアの報道のあり方を検証する番組の続きです。
前回は、前置胎盤、癒着胎盤っていうのは、
具体的にはどんなものなのか、っていう事と。
どんなに珍しい症例なのか、
っていう話が中心でしたね。
今回は、その続きです。
黒岩祐治のメディカルリポート #49
「検証!医療報道の光と影2
~大野病院妊婦事件 、メディアの功罪1~ 2
医療福祉チャンネル774
森まどか
ゲスト
福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座
佐藤章 教授
東京大学医科学研究所探索医療
ヒューマンネットワーク部門
上昌弘 准教授(医師)
参議院議員(民主党)
鈴木寛議員
コメンテーター
医師・作家
和田秀樹医師
佐藤章教授
「もう一つ、この症例ではですね。
不幸な事に、胎盤がものすごく大きかったんです。
だいたい500グラムが普通の、10ヶ月で生まれる、
赤ちゃんの時の胎盤は500グラム位なんですけど、
この場合は700グラムあったんです。」
黒岩祐治
「それだけ難しい症例であってね、
危険もたくさんあるという状況で。
結局、出血多量で亡くなってしまった訳ですね。
それでは、なぜ警察が出てきて、
逮捕されるようになったんですか?」
佐藤
「いや、それは警察の逮捕の業務上過失致死の、
警察側が主張しているのは。
癒着胎盤があったのを気が付いたんだから。
そのところで、無理にクーパーを使って
剥がした事自体が、乱暴である。
それは、医者としてやってはならない行為である。
っていう、無理にやったから大出血を起こしたんだ。
っていう主張で逮捕した、って事になっているわけです。」
黒岩
「上さんは、この後のメディアのあり方について、
大変問題意識を持ってらっしゃる訳ですけど。
警察が最初そうやって動いてきた。
メディアも、ある種自動反射的にぱっと動いてくる。
こういう構図になっている。
この問題の一番大きな法律上のポイントっていうのは、
どこにあると思っていますか?」
上昌弘准教授
「本来医療っていうのは、
いろんな方がいろんな形でやって。
多様な見解が出てくる訳ですね。
その場その場の状況によって、医療者ドクターは、
ベストを尽くすわけなんです。
その検証っていうのは、複眼的でなきゃいけないんですが。
警察っていう1つの権威が、ぼんって決めてしまった場合、
っていうのは、その正しさを誰も検証できないんです。
かつ、それが素人集団な訳なんです。
更に、今回の場合ですと、もちろん
医療者に意見を聞いているんですが。
最初から絵がありきで、特定の先生に聞いている訳で。
多様な意見を反映して、適切な所に
合意が形成されていないんです。
で、逆に、権威というものが報道しちゃうと、
国民、医療者を含めて、そういう先入観を持ってしまうんです。
それをひっくり返すっていうのは、
現実的には不可能に近いと思うんです。
こういう事例が積み重なっていくと、
産婦人科の先生は無力感をどんどん感じている訳です。」
黒岩
「この問題を整理しなきゃいけないのはね。
警察が先に動いた、という事。
こういう事は、上さん。
問題だと思いますか?」
上
「問題だと思います。
世界で、欧米の先進諸国も含めて、
警察が医療に介入する事が、法的であれ、
運用上であれ、常態化している国、っていうのは、
実は日本だけなんです。
これは、日本の制度としてのエラーだと思います。」
黒岩
「鈴木さんね。
そしたらこれ、メディアの問題っていう以前に、
警察の問題ですよね、まず第一に。」
鈴木寛 参議院議員
「警察の問題であると共に、刑法の問題ですね。
刑法には、業務上過失致死っていうのがあるんですけども。
いわゆる、医療行為にも業務上過失致死が
適用されてしまうし。
それから、我々が例えば、車を運転する場合も、
同じ業務上過失致死罪が適用される訳なんですよね。
医療と他と、決定的に違うっていうのは。
他の業務は、通常に車を運転していれば、
それは安全に、きしっと人を運ぶ、運送ができる。
っていう事が想定されている訳ですね。
ただ、医療の場合はですね、何も医師が
あるいは医療者が手をほどこさなければ、
その方の病気は悪化する。
しいては、死に至ってしまう。
で、それを食い止めるために、
医療行為をする訳ですから。
本質的に、同じ業務であっても、
全然違うにもかかわらず、日本の刑法では、
残念ながら明治にできた枠組みを
そのまま引き継いでいるものですから。
医者の業務上過失致死罪罪も、
それから、いわゆる運転の業務上過失致死罪とかですね。
あるいは通常のいろんな仕事をしている上での、
業務上過失致死罪とか。
そういうのが、ごっちゃになっている、と。
ここを整理しなきゃいけないという、
まず刑法の問題があって。
で、その事を、警察が運用上、
それを一緒にやっていると。
こういう、かなり根深い話ではあるんですね。」
和田秀樹医師
「医療行為っていうのは、例えば、お産っていうのは。
死ぬのが当たり前、とまではいかないけども。
昔であれば、死を覚悟する位のレベルの
事だった訳ですから。
そういうものに関して、やはりはるかに危険が全然違う、
という認識がないですよね。
それと、あとはやっぱり、理想論と、医師っていうのは、
その場その場で判断しなければいけない、
っていうのは全然違うわけで。
後付けでこうやっておけば良かった、っていうのは
いくらでも言えるわけですが。
その場で判断する事が、必ずしも理想通りにいかない、
っていうことは、むしろ当たり前にある訳ですね。
ところが、警察は理想論の通りにやらなければ、
結果が悪かった場合は捕まえるよ。
っていう事であれば、これはもう、
自分がとっさでベストの判断ができるなんて、
ある種もし考えている医者がいたら、相当なうぬぼれですから。
そういう医者しか残らなくなってしまう危険がある。」
鈴木
「おっしゃる通りで、正常分娩って言葉がありますけど。
それは、終わってみて正常だった分娩で。
入り口で、これは正常分娩か、異常分娩かなんて事は、
本当にやりながらでないとわからないわけで。
それから和田先生おっしゃったように。
外科医っていうのは、毎回傷害行為をやっているわけです。
その、手術をやるたびに。
だから、傷害罪。
投薬でもなんでもそうですけど。
これは、それはそもそも傷害行為ですから。
人を傷つける行為ですから。
しかし、医師は医療行為という事で、
医師法という国家資格によって、それは
正当行為をやるという事で、免責されている訳ですよね。
ここの前提が、なんかどっか行っちゃってしまっているな、と。」
黒岩
「佐藤さん。そういう事から考えればねー。
刑法の問題もあるし。
警察がばっと動くという問題もある、と。
いった状況である中で、ですよ。
さっきVTRでも出ていましたけどね。
私はマスコミに対してクレームをつけたい、と。
おっしゃっていました。
メディアの問題は、どこにありますか?」
佐藤
「こういうのは、初めてのケースだ、
って言えば、それまでなんですけれども。
刑事事件になると、刑事専門の記者の人達が来るわけです。
そうすると、もう警察が捕まえたんだから、
よっぽど悪い医者だ、と。
それは殺人者と同じだ。
という風な受け取り方を、もうしちゃっているわけですよ。
ですから、一番初めの時の報道が、もう、
前提がそうなっちゃっている。
その時に、何故そうなったのか、っていう事を
医学的に、まあ申し訳ありませんけども、
理解していない人達がばー、っとやってしまう。
そうすると、一般の人達はもっとわかりませんから。
ああ、こういう医者なんだ、という。
もう初めに先入観念が出てきてしまう、と。
これが一番。
我々が後から言っても、なかなかそれを変えてくれる、
っていう事ができない、っていうのが。
ほんとにそれが、正直言うと困りました。」
黒岩
「まあ、メディアの立場から言えばですねー。
この中で、私メディアの人間。
だから、受けてたたなきゃいけない。
まあ、良いか悪いかは別として。
いわゆる、記者クラブ制度になっている訳ですね。
だから、警察担当の記者っていうのがいて。
警察が発表してきて、捕まえた、逮捕した。
って言ったらば、第一義的にうわーっと動いていく。
その事件の中身が、いわゆる殺人事件であろうが、
医師の医療事故であろうが。
それはもうとにかく、判断するという時間的な余裕もなしに、
あとは何があったんだ、
っていうスクープ合戦に入っていきますから。
自動的に動いていくという事になってくる、
という事なんですけどねー。
やっぱ、上さん。
これは医療現場からすると、
やっぱたまらん、という事でしょうか。」
上
「そうですね。
もうそれをやられると、たまらない感じがしますね。
医療行為っていうのは、本来非常に高度な技術で。
専門家が技術的に判断する以外、多分わからないんですね。
そういうものに関して、1つの権力である
警察が、ばっと言って、それをメディアが流した場合は、
そのチェックが構造的にかからないんです。
要するに、過ちを繰り返しながら、
医学は進むものなんです。
世界でもどこでもそうなんですが。
こういう構造だと、チェックアンドバランスがかからず、
簡単に誤った方向にどんどん進んで行くんですね。
これやっぱ、非常に危険なんだと思います。」
和田
「やっぱ、メディアの根本的なあり方で。
今後変えて行かなくちゃいけないのは、
両論併記っていうのが、ほとんどない。
例えば、ありとあらゆる事件で、
本来ならば、警察発表もするんであれば、
弁護士さんの意見も発表する、っていうのが
フェアだと思うんですけども。
結果的に警察発表ばかりが、
どんどんメディアで報道されてしまうから。
やっぱり、こういう医療事故。
まあ、例えば凶悪犯罪であったとしても、
今後裁判員なんていう制度を導入される以上は、
弁護する側の立場の話もマスメディアで流れないと、
裁判員にバイアスがかかるのに。
医療みたいなものに関して、
警察発表が、ほとんど垂れ流されてしまうっていうのは、
これはもう、危険この上ない事だと思いますね。」
黒岩
「ただね、鈴木さんね。
有罪か無罪か、わからない段階で、
殺人者だという決めつけ方で、どーっと行くっていうね。
佐藤さんVTRの中でも指摘されていましたけどね。
これはですね、医療だけの話ではないですよね。」
鈴木
「そうですね。」
黒岩
「普通の殺人事件でも。
誰がどう見ても、こいつが犯人だろう、という。
もう、みんなが思っている、そういうものであっても、
有罪か無罪か、本当はわからないですよね。
しかしだからといって、そこで距離感を置いて伝える、
という事は、なかなかメディアの現場では、
できないですよね、それは。
それが現実だと思いますけど、どうですか?」
鈴木
「特に日本の場合はですね。
有罪率。
要するにきちっと検察庁が、
送検をした場合ですけどね。
99%ですよね。
まあ、他の、例えばアメリカなんかでは、
いろいろな裁判員、まあ、陪審員制度などで、
無罪になったり、有罪になったりする場合ありますけど。
そこは、ホントに日本の裁判制度とか、
あるいは司法制度全体の話としてね。
ただやっぱり、話戻りますけど。」
参照:『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件2』
ってとこで、You Tubeの方は、
中途半端なとこで終わってしまっているんで。
すげー、消化不良かもしれませんが。
今日は私も疲れたんで、ここまでにしますかね(笑)
業務上過失致死の話なんかは、
今、問題になっている、医療事故調査委員会の話とか。
医師の刑事免責の話なんかにもからんできますからね。
ここ、大事ですね。
続きが見たい人は、本家の方で見てね!
→ 『医療福祉eチャンネル』
期間限定っすよ。
(追記)
7/5のyahooニュースのトップページに、
こんな記事が出ていましたよ!
半年先まで分娩予約でいっぱい
妊娠判明即病院探しに奔走
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080705-00000001-jct-soci
『2007年7月5日yahooニュース(J-CASTニュース)』
大野病院事件で、通常の医療行為をしたのに、
患者が死亡したという事で、
産科医の先生が逮捕された。
その結果、新たに産科医になろうとする医師が減って。
お産をするにも、半年前から予約をしなければならなくなった。
出産の半年前っていったら、妊娠2ヶ月ですからねー。
気づいてない人も多いですよ、実際。
こんな事になっちゃったのは、メディアの影響も大きいですから。
そこのところは、しっかりと考えて貰いたいものですね。
医療や医療訴訟について知りたい人はこれを読んでね!
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→ 医療の限界
小松 秀樹 (著)
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の記事の続きです。
まだ見ていない人は、最初にこっちから読んでね!
福島県立大野病院で起きた、妊婦の死亡事故で。
警察が産科医の逮捕に踏み切った事から、
メディアが一斉に、殺人医師事件として取り上げて。
その結果、マスコミの報道で萎縮した
産科医の立ち去りが各地で起こって、
産科の閉院が相次ぎました。
その大野病院事件に関しての、
メディアの報道のあり方を検証する番組の続きです。
前回は、前置胎盤、癒着胎盤っていうのは、
具体的にはどんなものなのか、っていう事と。
どんなに珍しい症例なのか、
っていう話が中心でしたね。
今回は、その続きです。
黒岩祐治のメディカルリポート #49
「検証!医療報道の光と影2
~大野病院妊婦事件 、メディアの功罪1~ 2
医療福祉チャンネル774
森まどか
ゲスト
福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座
佐藤章 教授
東京大学医科学研究所探索医療
ヒューマンネットワーク部門
上昌弘 准教授(医師)
参議院議員(民主党)
鈴木寛議員
コメンテーター
医師・作家
和田秀樹医師
佐藤章教授
「もう一つ、この症例ではですね。
不幸な事に、胎盤がものすごく大きかったんです。
だいたい500グラムが普通の、10ヶ月で生まれる、
赤ちゃんの時の胎盤は500グラム位なんですけど、
この場合は700グラムあったんです。」
黒岩祐治
「それだけ難しい症例であってね、
危険もたくさんあるという状況で。
結局、出血多量で亡くなってしまった訳ですね。
それでは、なぜ警察が出てきて、
逮捕されるようになったんですか?」
佐藤
「いや、それは警察の逮捕の業務上過失致死の、
警察側が主張しているのは。
癒着胎盤があったのを気が付いたんだから。
そのところで、無理にクーパーを使って
剥がした事自体が、乱暴である。
それは、医者としてやってはならない行為である。
っていう、無理にやったから大出血を起こしたんだ。
っていう主張で逮捕した、って事になっているわけです。」
黒岩
「上さんは、この後のメディアのあり方について、
大変問題意識を持ってらっしゃる訳ですけど。
警察が最初そうやって動いてきた。
メディアも、ある種自動反射的にぱっと動いてくる。
こういう構図になっている。
この問題の一番大きな法律上のポイントっていうのは、
どこにあると思っていますか?」
上昌弘准教授
「本来医療っていうのは、
いろんな方がいろんな形でやって。
多様な見解が出てくる訳ですね。
その場その場の状況によって、医療者ドクターは、
ベストを尽くすわけなんです。
その検証っていうのは、複眼的でなきゃいけないんですが。
警察っていう1つの権威が、ぼんって決めてしまった場合、
っていうのは、その正しさを誰も検証できないんです。
かつ、それが素人集団な訳なんです。
更に、今回の場合ですと、もちろん
医療者に意見を聞いているんですが。
最初から絵がありきで、特定の先生に聞いている訳で。
多様な意見を反映して、適切な所に
合意が形成されていないんです。
で、逆に、権威というものが報道しちゃうと、
国民、医療者を含めて、そういう先入観を持ってしまうんです。
それをひっくり返すっていうのは、
現実的には不可能に近いと思うんです。
こういう事例が積み重なっていくと、
産婦人科の先生は無力感をどんどん感じている訳です。」
黒岩
「この問題を整理しなきゃいけないのはね。
警察が先に動いた、という事。
こういう事は、上さん。
問題だと思いますか?」
上
「問題だと思います。
世界で、欧米の先進諸国も含めて、
警察が医療に介入する事が、法的であれ、
運用上であれ、常態化している国、っていうのは、
実は日本だけなんです。
これは、日本の制度としてのエラーだと思います。」
黒岩
「鈴木さんね。
そしたらこれ、メディアの問題っていう以前に、
警察の問題ですよね、まず第一に。」
鈴木寛 参議院議員
「警察の問題であると共に、刑法の問題ですね。
刑法には、業務上過失致死っていうのがあるんですけども。
いわゆる、医療行為にも業務上過失致死が
適用されてしまうし。
それから、我々が例えば、車を運転する場合も、
同じ業務上過失致死罪が適用される訳なんですよね。
医療と他と、決定的に違うっていうのは。
他の業務は、通常に車を運転していれば、
それは安全に、きしっと人を運ぶ、運送ができる。
っていう事が想定されている訳ですね。
ただ、医療の場合はですね、何も医師が
あるいは医療者が手をほどこさなければ、
その方の病気は悪化する。
しいては、死に至ってしまう。
で、それを食い止めるために、
医療行為をする訳ですから。
本質的に、同じ業務であっても、
全然違うにもかかわらず、日本の刑法では、
残念ながら明治にできた枠組みを
そのまま引き継いでいるものですから。
医者の業務上過失致死罪罪も、
それから、いわゆる運転の業務上過失致死罪とかですね。
あるいは通常のいろんな仕事をしている上での、
業務上過失致死罪とか。
そういうのが、ごっちゃになっている、と。
ここを整理しなきゃいけないという、
まず刑法の問題があって。
で、その事を、警察が運用上、
それを一緒にやっていると。
こういう、かなり根深い話ではあるんですね。」
和田秀樹医師
「医療行為っていうのは、例えば、お産っていうのは。
死ぬのが当たり前、とまではいかないけども。
昔であれば、死を覚悟する位のレベルの
事だった訳ですから。
そういうものに関して、やはりはるかに危険が全然違う、
という認識がないですよね。
それと、あとはやっぱり、理想論と、医師っていうのは、
その場その場で判断しなければいけない、
っていうのは全然違うわけで。
後付けでこうやっておけば良かった、っていうのは
いくらでも言えるわけですが。
その場で判断する事が、必ずしも理想通りにいかない、
っていうことは、むしろ当たり前にある訳ですね。
ところが、警察は理想論の通りにやらなければ、
結果が悪かった場合は捕まえるよ。
っていう事であれば、これはもう、
自分がとっさでベストの判断ができるなんて、
ある種もし考えている医者がいたら、相当なうぬぼれですから。
そういう医者しか残らなくなってしまう危険がある。」
鈴木
「おっしゃる通りで、正常分娩って言葉がありますけど。
それは、終わってみて正常だった分娩で。
入り口で、これは正常分娩か、異常分娩かなんて事は、
本当にやりながらでないとわからないわけで。
それから和田先生おっしゃったように。
外科医っていうのは、毎回傷害行為をやっているわけです。
その、手術をやるたびに。
だから、傷害罪。
投薬でもなんでもそうですけど。
これは、それはそもそも傷害行為ですから。
人を傷つける行為ですから。
しかし、医師は医療行為という事で、
医師法という国家資格によって、それは
正当行為をやるという事で、免責されている訳ですよね。
ここの前提が、なんかどっか行っちゃってしまっているな、と。」
黒岩
「佐藤さん。そういう事から考えればねー。
刑法の問題もあるし。
警察がばっと動くという問題もある、と。
いった状況である中で、ですよ。
さっきVTRでも出ていましたけどね。
私はマスコミに対してクレームをつけたい、と。
おっしゃっていました。
メディアの問題は、どこにありますか?」
佐藤
「こういうのは、初めてのケースだ、
って言えば、それまでなんですけれども。
刑事事件になると、刑事専門の記者の人達が来るわけです。
そうすると、もう警察が捕まえたんだから、
よっぽど悪い医者だ、と。
それは殺人者と同じだ。
という風な受け取り方を、もうしちゃっているわけですよ。
ですから、一番初めの時の報道が、もう、
前提がそうなっちゃっている。
その時に、何故そうなったのか、っていう事を
医学的に、まあ申し訳ありませんけども、
理解していない人達がばー、っとやってしまう。
そうすると、一般の人達はもっとわかりませんから。
ああ、こういう医者なんだ、という。
もう初めに先入観念が出てきてしまう、と。
これが一番。
我々が後から言っても、なかなかそれを変えてくれる、
っていう事ができない、っていうのが。
ほんとにそれが、正直言うと困りました。」
黒岩
「まあ、メディアの立場から言えばですねー。
この中で、私メディアの人間。
だから、受けてたたなきゃいけない。
まあ、良いか悪いかは別として。
いわゆる、記者クラブ制度になっている訳ですね。
だから、警察担当の記者っていうのがいて。
警察が発表してきて、捕まえた、逮捕した。
って言ったらば、第一義的にうわーっと動いていく。
その事件の中身が、いわゆる殺人事件であろうが、
医師の医療事故であろうが。
それはもうとにかく、判断するという時間的な余裕もなしに、
あとは何があったんだ、
っていうスクープ合戦に入っていきますから。
自動的に動いていくという事になってくる、
という事なんですけどねー。
やっぱ、上さん。
これは医療現場からすると、
やっぱたまらん、という事でしょうか。」
上
「そうですね。
もうそれをやられると、たまらない感じがしますね。
医療行為っていうのは、本来非常に高度な技術で。
専門家が技術的に判断する以外、多分わからないんですね。
そういうものに関して、1つの権力である
警察が、ばっと言って、それをメディアが流した場合は、
そのチェックが構造的にかからないんです。
要するに、過ちを繰り返しながら、
医学は進むものなんです。
世界でもどこでもそうなんですが。
こういう構造だと、チェックアンドバランスがかからず、
簡単に誤った方向にどんどん進んで行くんですね。
これやっぱ、非常に危険なんだと思います。」
和田
「やっぱ、メディアの根本的なあり方で。
今後変えて行かなくちゃいけないのは、
両論併記っていうのが、ほとんどない。
例えば、ありとあらゆる事件で、
本来ならば、警察発表もするんであれば、
弁護士さんの意見も発表する、っていうのが
フェアだと思うんですけども。
結果的に警察発表ばかりが、
どんどんメディアで報道されてしまうから。
やっぱり、こういう医療事故。
まあ、例えば凶悪犯罪であったとしても、
今後裁判員なんていう制度を導入される以上は、
弁護する側の立場の話もマスメディアで流れないと、
裁判員にバイアスがかかるのに。
医療みたいなものに関して、
警察発表が、ほとんど垂れ流されてしまうっていうのは、
これはもう、危険この上ない事だと思いますね。」
黒岩
「ただね、鈴木さんね。
有罪か無罪か、わからない段階で、
殺人者だという決めつけ方で、どーっと行くっていうね。
佐藤さんVTRの中でも指摘されていましたけどね。
これはですね、医療だけの話ではないですよね。」
鈴木
「そうですね。」
黒岩
「普通の殺人事件でも。
誰がどう見ても、こいつが犯人だろう、という。
もう、みんなが思っている、そういうものであっても、
有罪か無罪か、本当はわからないですよね。
しかしだからといって、そこで距離感を置いて伝える、
という事は、なかなかメディアの現場では、
できないですよね、それは。
それが現実だと思いますけど、どうですか?」
鈴木
「特に日本の場合はですね。
有罪率。
要するにきちっと検察庁が、
送検をした場合ですけどね。
99%ですよね。
まあ、他の、例えばアメリカなんかでは、
いろいろな裁判員、まあ、陪審員制度などで、
無罪になったり、有罪になったりする場合ありますけど。
そこは、ホントに日本の裁判制度とか、
あるいは司法制度全体の話としてね。
ただやっぱり、話戻りますけど。」
参照:『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件2』
ってとこで、You Tubeの方は、
中途半端なとこで終わってしまっているんで。
すげー、消化不良かもしれませんが。
今日は私も疲れたんで、ここまでにしますかね(笑)
業務上過失致死の話なんかは、
今、問題になっている、医療事故調査委員会の話とか。
医師の刑事免責の話なんかにもからんできますからね。
ここ、大事ですね。
続きが見たい人は、本家の方で見てね!
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期間限定っすよ。
(追記)
7/5のyahooニュースのトップページに、
こんな記事が出ていましたよ!
半年先まで分娩予約でいっぱい
妊娠判明即病院探しに奔走
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080705-00000001-jct-soci
『2007年7月5日yahooニュース(J-CASTニュース)』
大野病院事件で、通常の医療行為をしたのに、
患者が死亡したという事で、
産科医の先生が逮捕された。
その結果、新たに産科医になろうとする医師が減って。
お産をするにも、半年前から予約をしなければならなくなった。
出産の半年前っていったら、妊娠2ヶ月ですからねー。
気づいてない人も多いですよ、実際。
こんな事になっちゃったのは、メディアの影響も大きいですから。
そこのところは、しっかりと考えて貰いたいものですね。
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