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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
医者の横着
医者っていうのは、昔なら技術職、職人
という事でも良かったのだと思います。
今でも、ものすごい手術が上手な外科医であれば、
そういう人が一部はいても良いのかな、
とは思いますけどね。

でも、今の医者っていうのは、単なる職人
っていうだけでは駄目だと思います。

あくまでも個人的な意見なのですけどね。
今の医者には、「技術職」と「サービス業」と、
そして「経営者」の視点が必要なんじゃないかな、
って思っています。

ブログで書くのは、もしかして初めてかもしれませんが。
自分では研修医の頃から思っていた事で、
一部の周りの医師には昔から話している私の持論です。

医療を行うには専門的な知識や技術が必要ですから。
医者職人のような技術職だ
という事に異論のある人はいないと思います。

ただ、それだけでは、今の医者は通用しないと思います。
昔の医者であれば、
患者医者の言う通りにしていれば良いんだ。」
っていって、横柄にふんぞり返っていても
良かったのかのかもしれませんけどね。
今の時代、そんな事では通用しません。

そういう医者が多かったから、
つい最近まで医師叩きのくだらない番組が多かったとか。
今でもネットやマスコミを通して、医者の事を悪く言う人が多い
という側面もあるでしょうから。
そこら辺に関しては、医者の中でも反省すべき点だと思います。

医療はサービス業ではなく、警察や消防のような
社会インフラだ、
と私は思いますけど。
でも、患者さんと直接対面して会話をしたり、
検査や治療をする訳ですから。
やはり、サービス業という側面も一部にはある、と思います。

ただ、最近では、医療はサービス業で、患者は客だ。
というような風潮が強すぎ
て、
患者の事を「患者」って呼んでみたり。
患者側の権利意識が強すぎて、単なるわがままを言う、
モンスターペイシェント」みたいのが出てきて、
逆に問題になっている。
という側面もあるのではないでしょうか。

経営者としての視点っていうのは、
簡単に言うと、コスト意識を持たないと駄目だ
っていう事です。

昔であれば、最高の医療をすればお金は関係ない
というような考え方でも十分だったのかもしれませんが。
最近は、診療報酬も削減されて、多くの病院が赤字なので。
医者個人が、ある程度のコスト意識を持っていないと、
病院そのものが潰れてしまう事になりますし。

日本の医療は先進国で最低レベルですけど。
自己負担率は、最高レベルですからね。
高齢者の自己負担率も上がっているし。
どんどん高い薬や治療が出てきているから、
患者さんのお金の事も考えて治療する。
という視点も必要だ、と私は考えています。


医療業界は特殊だから。
医者は特殊だから、
っていうのは
単なる甘えだと思います。
警察だって、マスコミだって、農家だって。
どこの業界だって特殊なんですから。

個人的には、医者になっても一般人の視点を忘れない
っていう事を意識して心がけていますし。
ブログに関しても、一般の人が読んでもわかる文章を書く
という事を常に心がけています。

んで、全く同じ考え方、って訳ではないんですけど。
いつもお世話になっている「ロハスメディカルブログ」
川口恭
さんが、医者に対する強烈なメッセージをくれたので。
ここでも紹介させて頂きますね。



インターベンション学会報告(1)

医療事故調をつくるという話で、
厚生労働省はしくじりました。

参院で与党は少数派ですから、
秋の臨時国会でも厚労省案が
国会を通らないことは確定しています。

なぜ、こんなことになっちゃったかと言えば、
一義的には厚労省が、司法という
自分たちの権限が及ばない領域のこと
であるにも関わらず、必要な手順を尽くさず
乱暴極まりない進行をしたからです。

ですが、1年間追いかけているうちに、
厚労省だけが悪いんじゃないな、
ここで厚労省の悪口を言っているだけだと、
きっとまた同じような問題が起きるな、
と思うようになりました。


そもそも、事故調をつくるという話は、
最初に厚労省から出てきたわけではないと思います。

都立広尾病院事件で、
医師法21条がそんなことになるなんて、
と驚いた医療界が診療関連死の届出先を
警察以外のところにしようということで
厚労省を巻き込んでモデル事業を始めたんだけれど、
その年度中に福島県立大野病院事件が
発生してしまって、とにかく警察・検察の
医療への介入を止めなきゃいけない、と。

いうことで、厚生労働省に「何とかしてくれ」
と言ったんでしょう。
当時の医療界の常識からすれば、
当然の発想・行動かもしれません。

でも、これは私のような外部の人間から見ると
非常に横着だったように見えます。
で、その横着さが、結局、厚労省
乱暴な進行も呼んだのでないか、と。
いわば、今回の大混乱に関しては、
医学会のリーダーたちと厚労省とが
共犯なのでないかと思うわけです。

先ほども言いましたように当時の発想では
当たり前のことをしただけかもしれないとは思いますが、
これだけ大混乱をきたしたにも関わらず、
もし未だにその横着さに気づいていないとしたら、
ちょっとお粗末すぎるのでないかと思います。

突然言われても、お前何を言っているんだ
と思いますよね。
なので何が横着なのか簡単に説明します。

医療用語に例えた場合に、今回医療界の
リーダーたちがしたことは、診立ても悪いし、
治療態度も悪いと表現できると思います。
何といっても、第1回の検討会で樋口委員から、
非常に本質的な問いかけがされているわけです。

ところが最後まで、そこは曖昧なまま突っ走りました。
検討会の中に学会の代表者も
入っていたわけですから、診立てが悪いことに
気づいて軌道修正することだってできたはずなんです。

それから治療態度の話はより深刻だと思います。
大野病院事件がとんでもないと思うのなら、
なぜ警察・検察と闘わなかったのか、
広尾病院事件から、なぜ21条を何とかするという
教訓が出てきてしまうのか。
都病院局の隠ぺい体質を糾弾して
医療者を守るべきだったのでないか。
そもそも患者さんとちゃんと向き合ってきたのか。

面と向かって交渉するのが怖いから、
面倒だから、ルールの方を変えたいって、
そんな身勝手なことが通るわけがないんです。
しかも、それを自分たちでやらずに
厚労省にやらせようとした。
それは横着すぎるだろうと思うわけです。

どうして、こんなにムシのよいことを要求して、
それが通ると思ってしまうのだろうと正直不思議です。

でも何年か医療者たちとお付き合いをしていく中で、
ははぁこれだなと思うようになったことがあって、
それは良い表現をすれば唯我独尊であり、
悪い表現をすると社会に対して
無関心すぎるということです。

4月12日の医療議連のシンポジウム。
医者さんが多数集まって大変盛り上がりました。
でも、あの場にいたメディア関係者や一般患者は、
非常に違和感を感じていました。

中でも最たるものが、山形大の嘉山先生の言葉です。
今や八面六臂の大活躍をされている、
その嘉山先生が
医療がこんなになるまで医者は何をしていた
と言われるかもしれないが、
医者医療をやっていたんだ」
と胸を張ったわけです。

医療者たちの本音を代弁しているんだと思います。
ちょっと待ってと思います。
医者医療だけしていればいい」
って誰が決めたんですか? 
たしかに早く一人前になるため脇目もふらず
という時期は必要でしょうし、業界全体でも
余計なことを考えずに済むに
越したことはないと思います。

思いますが、少なくとも社会は
そんなことを要求してないはずです。
医療は社会のサブシステムです。
医療者だからといって、社会の構成員としての
責務を免れるものではありません。

社会から、医療だけしていればよいと要求されない限り、
自分たちで勝手にこれだけしていればよい
と決めつけるのは図々しいです。
少なくともサブシステムの当事者として、
医療サブシステムが社会と調和して
持続するよう行動する責務があります。
その際に他のサブシステムと利害衝突が起こったならば、
ちゃんと折衝しないといけません。

そういう面倒なことを引き受けるためにこそ、
リーダーというものは存在するはずです。
それなのに今回は一体何をしたのか、ということです。
その意味では、学会だけでなく、
医師会の責任も当然問われると思います。

もちろん全部を自分たちでやらなきゃいかん
ということではありません。
エージェントを使うのは結構です。
病気だったらお医者さんに頼るのと同じことです。

でも、問題は医療界には、厚生労働省の官僚しか
エージェントと呼べる存在がいないことです。
そもそも官僚は公益のために動かなければ
いけないのですから、一業界のエージェントとして
使ったら本来はいけないんです。

しかも普段厚労省に大して協力もしてないクセに、
都合のよい時だけ使おうとしても、
思い通りに動いてくれるはずがありません。
そういう横着をするから厚労省の側でも
自らの利益を図って、
いろいろ訳の分からないことになるのです。

今回の問題は、明らかに医療という
サブシステムと司法というサブシステムとの間で
衝突が起きているわけで、医療業界内だけで
ゴチャゴチャやっていても絶対に解決しません。

医療以外のサブシステムは、
みな必要な努力を積み上げて、その他のサブシステムと
不断に折衝しているわけです。
自分たちの要求を通したいと思ったら、
他のサブシステムが努力しているのと同様に、
ちゃんと実態をよく見極めて、
必要な手間暇費用をかける必要があります。
早くそのことに気づいていただきたいと思います。
それをイヤがる限り、横着と呼ばざるを得ません。


『インターベンション学会報告(1)』


極端な話、医師免許があれば、
食いっぱぐれる事はないですからね。
医者って。

だから甘えがあるというか、
>良い表現をすれば唯我独尊であり、
 悪い表現をすると社会に対して無関心すぎる。


という事になっているんだと思います。

川口さんの場合は、私のような医師個人の事でなくって、
医者全体としての話。
医師のリーダーの役目、っていう事で
言っているのだとは思いますが。

医者医療だけしていれば良いのではない。
っていうのは、私も思います。


医師法第一条にはこう書いてありますね。

医師法第一条  

医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて
公衆衛生の向上及び増進に寄与し、
もつて国民の健康な生活を確保するものとする。


参照:『医師法』

医師の一番の役目っていうのは、
>国民の健康な生活を確保するもの
って事ですから。
単に、目の前にいる患者を治すだけで良い。
っていう話にはならないと思います。

医師法第一条には、
医療及び保健指導を掌ることによつて
って書いてはありますけど。
それ以上の事をしてはいけない、
とは書いていません
からね。

例えば、
医師は30時間以上の連続勤務を、
日常茶飯事に行っているし。
労働基準法違反、過労死の認定基準よりも多い、
月に80時間とか100時間以上の時間外勤務を
行っている人も大勢いる。
こんな常態で診療をすれば、良い医療を提供する事は
できないから、国民の健康な生活を守れない。

っていう事を世間一般に広める。
というような事も、必要なんじゃないかなー。

最近はインターネットも発達して。
ブログやメール等を通して自分の意見を
世間に訴える、って事も比較的容易になったし。
それ以外にも、身近な人に話すだとか、
地方議員や国会議員に働きかけるとか。
医療以外でも、やった方が良いって事は
たくさんあると思うので。

国民の健康な生活を確保する」為に、
医師医療以外の事もしていった方が良い。
これが現在の医者のあるべき姿なんじゃないかな、
って、個人的には思います。


医者のホンネが知りたい人は、こちらから!
→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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