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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
医師増員だけでは駄目だが
日本の医療崩壊の一番の原因は、
医師不足医療費不足だ。
だから、医師数と医療費
両方増やす必要がある。

という事は、以前から私がしている主張です。

先日、厚生労働省の「安心と希望の医療確保ビジョン
というもので「医学部の定員を増やす
という方向になりましたね。

医学部の定員を増やした事を評価しない、
という人達は、だいたい
医師の数を増やしても、
医療費が増えてないから駄目だ」

という主張だと思います。

まあ、私も医療費も増額して、
医師の数も増やさないと駄目だ

と言っていますから。
そういう意味では同じ主張なのかもしれませんが。
私は、今回の医師数増員に関しては、
高く評価をしています。


たしかに、今だに毎年2200億円の社会保障費カット。
というのが続けられ、医療費が増える気配はないんですが。
でも、医療費はこれから増える可能性がありますからね。
というか、増える方向に国民が持っていかないと駄目ですよ。

今度、いつかわかんないけど、衆議院選がありますよね。
この間の参議院選では自民党が惨敗して、
衆議院と参議院で「ねじれ」現象が起きて。
今までだったら、自民党の独裁で、
自民党の都合の良いように政策が決定されて
いましたけど。
それが変わっていますよね。

そんな風に、選挙で政策は変わるんですよ

今まで、医療っていうのは票に結びつきにくいから。
道路を造るとか、農家を保護する、とか。
そういうのばっか、優遇されてきましたけど。
もう、そういう時代ではないですから。

日本国民、全員が患者になる可能性があるんだから。
今のまま、医療費抑制政策を続けたら、
みんな病院が潰れて、国民(患者)が困る。
医療費(社会保障費)抑制政策を
撤回しないんなら、自民党に票は入れないぞ。

って、国民がみんなで声を上げれば、
日本の医療を崩壊から救えるのかもしれないんですよ。

まあ、厳密に言うと、日本の医療を崩壊から救う、
というのは、もう無理かな
、って個人的には思います。

今の日本は、医療崩壊という崖を、奈落の底へ向かって、
一直線に、どんどん加速して突き進んでいる状況です。

それを、崖の上まで持っていくのは、
どんな手段を使っても、もう不可能でしょう。

ただ、谷底に着く時のスピードを、
もう少しゆっくりにする事はできるかな

と思いますよ。
そうでないと、大惨事になってしまいますから。

その為のブレーキの1つが、
医師数増員だと私は思います。

ただ、この医師数増員というブレーキ。
これ、10年後にしか効かないんですよ。
他のブレーキがないと、10年以内に
谷底に激突して大惨事になっちゃうと思うので。
これだけあれば、万事解決、っていう
魔法のブレーキじゃない
んですね。

ただ医療崩壊の速度を緩める事のできる、
有効なブレーキ
であるとは思うので。
これだけでは解決しないからといって、
医師数増員は意味がない」
っていうのは、私はちょっと違うんじゃないかなー、
って思います。

医療崩壊の速度を緩めるブレーキとして、
もう一つ非常に有効なのは医療費増額です。

それに、医療崩壊の原因としての医師不足
っていうのには絶対的な師不足と、
患者に対する医師の数の不足、という面があるので。

患者を減らす事=患者のアクセス制限
とか、病院の集約化とか。
病気を予防して、患者の絶対数を減らすとか。
後は、医療崩壊の原因として、医師の過労があるから。
医師以外にできる事務的な仕事などを、
医療秘書とか、医師以外の人間にやってもらう。
その為に、医療秘書の増員という事も重要だと思います。


そいで、以前にいろんな人に紹介されていた、
読売新聞の社説が、ほとんど同じ内容で
また7/22にも出たようなので。
こっちでも引用させて貰いますね。



医師不足対策 
増員だけでは10年かかる

医師不足を解決するには、
相当に思い切った対策が必要だろう。

厚生労働省がまとめた「安心と希望の医療確保ビジョン」
を具体化するための有識者会議が発足した。
厚労省は新ビジョンで、医師の養成数を
これまでの「抑制」から「増員」へと方針転換した。
医学部の入学定員を現在の約7800人から、
どこまで増やしていくのか。
有識者会議はまず、これを明示する必要がある。

医師数の抑制方針がとられる以前は、
最大で年間8300人の医師を養成していた。
ピーク時の水準までは早急に回復させるべきだろう。
その上でさらに増員するのか、展望も示さねばなるまい。

だが、医学部の入学者が
一人前の医師になるまでには、10年程度かかる。
増員計画と同時に、即効性のある対策も不可欠である。
喫緊の課題は、新人医師の臨床研修制度の改善だ。

かつて新人医師の大半は、
大学病院の医局で研修していた。
しかし、専門分野に偏った医師が育つ
弊害が目立ったために、一般病院でも
研修できるようになった。
若い医師に幅広い臨床能力を身につけさせるという、
制度の目的は理にかなっている。

ところが、研修医が予想以上に減って
人手不足となった大学病院が、
自治体病院などに派遣していた中堅医師を引き揚げた。

これが急激な医師不足現象の大きな要因である。
研修医の多くは都市部の病院を研修先に選び、
医師偏在に拍車もかけつつある。
これを改めるには、
研修先の選択方法に工夫が求められる。
各都道府県に満遍なく研修医が配属されるような
定員調整が必要だ。

また、これまで大学の医局に
医師派遣を頼ってきた自治体病院に対し、
必要な医師を配置する仕組みや組織作りも重要である。

有識者会議は、診療報酬の
在り方にも踏み込んでもらいたい。

今日の医師不足は、言い換えれば「勤務医不足」だ。
総じて勤務医は、開業医より収入が低く、
長時間勤務で医療に従事している。
産科や小児科、救急など、昼夜を問わず
診察を求められる部門は過酷だ。
耐えかねた医師が開業医に転身している。

現状に歯止めをかけるには、
勤務医向けの診療報酬を大胆に
手厚くする必要があろう。
開業医が交代で病院の夜間診療を応援する、
といった取り組みにも、大いに報いるべきだ。
本当に必要な医療に、
財源を集中することが重要である。


「7月22日付 読売社説」



私の読解力不足のせいか。
結局、何が言いたいんだか、
正直、あんまり良くわかりませんが(汗)

これもこのブログで何回も取り上げていますけど。
日本の診療報酬は、他の先進国なんかに比べて、
不当に低いです。

数分の一から、下手したら1/10位です。

参照:『日米医療報酬比較』


これは、勤務医も開業医も同じなんですね。
経済学的に言うと、「単価」が決められていますから。
儲けようと思ったら、「薄利多売」しか出来ない。
だから、無駄にって言ったら悪いけど、
患者とか検査が多くなっちゃうんですよ。

診療報酬そのものを改善する。
っていう方向自体は良いと思いますけど。
開業医とか、勤務医とか。
そういう区別はないんじゃないかな。

そもそも、開業医と病院で違う診療報酬って、
再診料とかはあるけど。
それ以外は、ほとんどないし。

しかも、病院の診療報酬が増えたって、
勤務医の給料が増える訳じゃないですからね。


そんな事もわからないで言ってるのかしら、
この社説書いてる人。

一ヶ月前に、ほとんど同じ社説を書いている様ですが。
なんか、ほとんど進歩していませんねー。


医師不足を解決するには、
 相当に思い切った対策が必要だろう。

>本当に必要な医療に、
 財源を集中することが重要である。


医療費そのものを削減したまま、一部でなんとかする。
っていうのは、全然思い切っていないし。
そんなんじゃ、絶対に解決しませんよ。

医師数増員に加えて、医療費も増額しないと。



ちなみに、約一ヶ月前の6/19に書かれた
読売新聞のほとんど同じ社説は、下に書いておきまーす。



医師増員 計画的な養成と配置を図れ

医師不足を解消していくために、
まずは必要な措置であろう。
厚生労働省は、「安心と希望の医療確保ビジョン」をまとめ、
養成する医師の人数について、これまでの
「抑制」から「増員」へと方針転換した。
1982年に医師数の抑制を閣議決定して以来、
四半世紀ぶりの軌道修正である。

医学部の入学定員は今年度約7800人だが、
これをピークだった約8300人程度に増やす方針だ。
政府は、70年代に1県1医科大学の設置を進め、
医師の養成数を増やしてきた。
しかし、80年代になると
「将来、医師が増えすぎて医療費の高騰を招く」
との見方が強まり、医学部定員の
1割近い削減に踏み切った。

ところが、現実にはいたるところで
医師不足が叫ばれている。
人口1000人当たりの医師数は2・0人で、
経済協力開発機構(OECD)加盟30か国中27位だ。
状況を見れば、積極的な増員へと、
再度の政策転換は当然だ。
むしろ遅すぎたと言えよう。

だが、単に医師の全体数を増やすだけでは、
直面している医師不足現象は解決できない。
国はこれまで、医師数の増加ペースは抑制していたが、
全体数を削減してきたわけではない。
引退する医師は年間3000人前後なので、今
でも毎年4000人ほど医師は増え続けている。
にもかかわらず、「医師が足りない」
という悲鳴が聞こえるのは、自治体病院など
地域医療を担う中核病院を中心に、
勤務医が次々と辞めていくからだ。
総じて勤務医は開業医より収入が低く、
長時間勤務の環境で医療にたずさわっている。
とりわけ、産科や小児科、救急など、
昼夜無く診察を求められる部門は過酷で、
耐えかねた医師が開業医に転身している。
医師が減り、残った医師
さらに過酷な状況になる、という悪循環だ。

休日・夜間に対応しない開業医が少なくないことや、
専門分野しか診ない医師が増えたことも、
医師不足を助長している。

こうした状況を改善するには、
過酷な分野で頑張る医師、地域医療
昼夜支える医師に、格段に手厚く
診療報酬を配分するなど、医療費の在り方を
大胆に見直す必要があろう。
不足が顕著な診療科の医師を重点的、
計画的に養成することも重要だ。
一定期間、指定の場所で医師
勤務してもらうような仕組みも検討すべきである。


「新聞社説アーカイブ:2008年06月19日」




医療崩壊について知りたい人は、これ読んでね!
→ 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か
小松 秀樹 (著)


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