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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
加古川心筋梗塞事件、余波
医療裁判が、日本の医療崩壊の一因である。
という事は、以前からこのブログでも指摘していますが。
最近の医療裁判の中で、最も破壊力のあったのは、
皆さんご存じの「福島大野病院事件」でしょう。

福島大野病院事件は、ついこの間、
刑事事件での無罪は確定しましたが。
この事件で、加藤医師の逮捕により、
全国で産科医療の崩壊が加速しました。

医療崩壊を加速した医療裁判東の横綱
福島大野病院事件」とすると、
西の横綱は、「加古川心筋梗塞事件
ではないでしょうか。

奈良大淀病院事件」っていうのも、
最近の医療崩壊を加速度的に進めたもんだけど。
あれは、医療裁判のせい、っていうよりは、
医療報道」のせいですから。
個人的には、医療裁判の西の横綱は、
加古川心筋梗塞事件」だと思っています。


私は、循環器内科医なので。
心臓心筋梗塞は、専門なんですよ。
だから、「加古川心筋梗塞事件」に関しては、
このブログでも特に力を入れて書いてきました。

多分、Yosyan先生「新小児科医のつぶやき」
と並んで、日本で一、二を争うくらい、
詳しく書いてきたと思います。
Yosyan先生は、今日も記事を書いていますね。
「日曜怒話」

偶然、内部関係者からコメントをいただいて、
判決文が出る前に、その時の詳細を知ることが出来て。
その時に書いた記事、
「加古川、心筋梗塞事件。衝撃の事実」
は、かなり反響が大きく。
その後の判決文と比較しても、この内部情報が
正しかった、という事は言えたと思います。

「加古川心筋梗塞事件、判決文」
「加古川心筋梗塞事件、判決文2」


加古川心筋梗塞事件っていうのは、簡単に言うと。

病院にも人手が少ない日曜日に、
胸が痛いって人が来て。
いろいろ検査したら、心筋梗塞らしい
という事がわかったので。
循環器内科医もいない、心臓カテーテル検査、治療
もできない加古川市民病院では、対応できない


それならば、他の病院に転送しよう。
という事で、近隣の5病院に電話をかけたけど、
なかなか転送先が決まらなくて。
転送先が決まるまでに、一時間ちょっとかかった


その間に行った保存治療には、全く問題がなかった。
心筋梗塞と診断して、転送するまでに約一時間かかった。
心筋梗塞の診断後、転送まで一時間という時間は、
一般的な医療水準から考えると平均的な時間なので。
それに関しても、全く問題がない。

にも関わらず、いろんな病院に転送を依頼して、
結果的に転送が少し遅れて、その間に患者が亡くなった。
そしたら、全部病院の責任です。

という判決が出てしまったのですよ。


医師が100人いれば99人は問題のない医療」、
と思われる医療行為をしたのに。
なかなか転送先が決まらなくて、
転送先が決まるまでに、一時間ちょっとかかった。
なのに、裁判では、ほぼ全て患者側の訴えが認められて、
病院側は完全敗訴して、賠償金を払った。

しかも、加古川市民病院(加古川市)は控訴をしなかったので、
この判決が確定してしまった。
というのが「加古川心筋梗塞事件」の概要です。


そんな判決が出てしまった後。
神戸新聞によると、やはり現場では救急医療
支障が出ているようですね。



加古川市民病院、急患死亡で敗訴 
現場に波紋今も 


昨年四月に言い渡された一つの判決が
医療現場に波紋を広げている。

加古川市の加古川市民病院が、
心筋梗塞(しんきんこうそく)の急患に
適切な対応をせず死亡させたとして、
約三千九百万円の損害賠償を命じられた神戸地裁判決。

医師の手薄な休日の急患だったことから、
病院関係者は「医師不足の中で
患者を受け入れている現状を考慮していない」と反発。

救急患者の受け入れに慎重になる動きも出ている。
一方、医療訴訟に詳しい弁護士は
「過剰反応」と指摘する。
(東播支社・田中伸明)


「判決を理由に、救急患者の受け入れを
断る医療機関は多い」-。
姫路市消防局の担当者は打ち明ける。

以前は、専門的な治療ができなくても
重症患者を受け入れ、転送先が決まるまで
応急処置をしていた医療機関が、
受け入れに慎重になる例が目立つという。

姫路市では昨年十二月、十七病院から
受け入れを断られた救急患者が死亡した。
担当者は「判決が、救急事情悪化の
背景になったことは否めない」とする。

裁判は、心筋梗塞への専門的な治療体制を持たない
加古川市民病院の転送義務が争点になった。

二〇〇三年三月三十日、男性患者=当時(64)=が
息苦しさを訴え、以前かかっていた同病院を受診。
対応した医師心筋梗塞を強く疑い、
血管を拡張するための点滴をしたが回復せず、
来院の約一時間半後に他病院へ転送依頼。
しかし、その後容体が悪化、死亡した。

遺族側は、重症の心筋梗塞には管状の
「カテーテル」を挿入する治療法が欠かせないと指摘。
この治療ができない同病院は、ほかの医療機関へ
男性を速やかに転送すべきだったのに、
その義務を怠った-と主張した。

一方、病院側は、当日は日曜で他病院の
受け入れ態勢も十分ではなく、病院間の
協力態勢も確立されていなかったなどとし、
早急な転送は困難だった-とした。

判決は、患者側の主張を全面的に認め、
訴額全額の支払いを命じた。
病院側は控訴しなかった。

     ◆

判決は、病院の勤務医らの反発を呼んだ。

交通事故の重症患者を受け入れている
姫路市内の病院の救急担当医は
「自分たちで対応できる状態かどうか、
受け入れてみないと分からない。
能力を超えた場合、近隣で転送先を探すのは難しい」
と強調する。

山間部の小規模病院の医師
「専門的な治療体制がより求められるようになれば、
可能な限り患者を受け入れる
へき地の診療が成り立たなくなる」と話す。

近年の公立病院などでの医師不足は、
訴訟や刑事訴追の増加が一因とされる。

加古川市民病院の判決は、福島県立大野病院の
産婦人科医逮捕などと同様、医師向けのブログなどで
「不当」との批判が相次いでいる。

こうした動きに対し、患者の立場で
医療訴訟を多く手がけてきた泉公一弁護士は
「判決は、証拠に基づいた極めて妥当な内容。
医療側の過剰反応ではないか」と指摘する。

医療現場の事情についても判決は
十分考慮した上で、病院側の過失を認定している。
内容を精査せず、患者との対立をあおるのは
医療不信を招く」と冷静な対応を求めている。


患者死亡までの経過

2003年3月30日正午ごろ
 男性が息苦しさや嘔吐などを訴える
 午後0時15分ごろ 加古川市民病院に自家用車で来院。
 その後、心電図で心筋梗塞の疑い
同1時3分 血管拡張薬の点滴開始
同1時50分 高砂市民病院に転送受け入れ要請
同2時15分 同病院から受け入れ了承の連絡
同2時25分 救急車が到着
同2時30分 男性の容体が悪化し、心停止状態に
同3時36分 死亡確認


「神戸新聞 2008/09/20」



非常に残念な事なんですけど。
やむを得ないでしょうね、これは。

だって、
医師が100人いれば99人は問題のない医療」、
と思われる医療行為をして。
一生懸命に患者を受け入れてくれる病院を探したのに、
見つかるまでに時間がかかったら、
裁判では、完全敗訴しちゃうんですよ。

それだったら、裁判で訴えられて負けないためには、
「救急医療を行わない」
「救急患者を受け入れない」

という事しか、出来ないでしょ。


医療訴訟を多く手がけてきた泉公一弁護士は
「判決は、証拠に基づいた極めて妥当な内容。
医療側の過剰反応ではないか」と指摘する。

医療現場の事情についても判決は
十分考慮した上で、病院側の過失を認定している。
内容を精査せず、患者との対立をあおるのは
医療不信を招く」と冷静な対応を求めている。



「じゃあ、どこまでの医療だったら大丈夫なんですか?」
って、この弁護士の先生に聞いてみたいですね、是非。

加古川心筋梗塞事件で、患者を受け入れた医師は、
外の病院から当直に来た、5年目の消化器内科医です。

この医師が行った治療は、
循環器内科医の立場で、後からみたら、
100点満点の治療ではないですよ、もちろん。

5年目の消化器内科医で、循環器専門の医師
後からみても100点満点の治療が出来るなら、
そもそも、専門医の意味なんてないですからね。

循環器内科医が後からみても、合格点の治療
という意味です。

そういう治療をして、医師が100人いたら、
99人は問題ないであろう、という治療をした

そして患者を受け入れてくれる病院を見つけるまでに、
時間がかかった。

それで、裁判で訴えられて負けた訳ですから。

泉公一弁護士は、どういう治療なら
裁判で負けない、って言ってくれるのでしょうねー。
非常に興味があります。

病院を探すのに時間がかかったら、
それは病院とか医者の責任。
とでも言うんでしょうかねー。

>内容を精査せず、患者との対立をあおるのは
医療不信を招く


少なくとも、私は循環器内科が専門で、
判決文も何度も読み込んで。
専門家の目で精査したつもりですが。
読めば読むほど、納得がいかない判決ですよ、これ。

しかも、患者との対立をあおっている訳ではないですよ。
私を含め、多くの医師医師ブロガーは。

むしろ、こんな判決の後に、
>医療側の過剰反応

という発言をしたら、医療側が医療裁判に
不信感を持つ
ような気がしますけどねー。


あ、ちなみにこのブログは、医師循環器内科医
が書いている、いわゆる医師ブログですけど。
医師向けのブログではなく、一般人向けです。
大勢の医師にも読んでいただいていますけどね。


加古川心筋梗塞事件は、神戸新聞にも書いてある通り、
不当判決」、「トンデモ判決」だと思いますが。

この裁判には医療側にも問題があります。

具体的には、こんなとんでもない判決が出ているのに、
控訴しなかった加古川市民病院(加古川市)

そのおかげで、こんなトンデモ判決が「確定
しちゃいましたからね。
控訴して、高裁で覆ったのであれば、
こんな萎縮医療が起きなかった可能性もありますから。
加古川市民病院(加古川市)は、
神戸近辺の医療崩壊を招いた一因
と言えるでしょう。

それと、福島大野病院事件でもそうだったんだけど。
加古川心筋梗塞事件でも、医師に過失はない
って保険会社は言っているんですよ。
だって、医師100人いたら99人は過失無し。
っていう医療なんですからね。

だから、裁判になって賠償金を払え、
っていう判決が出ないと、保険金が出ない

という事になっちゃっているんですね。

そういう、医療側の問題、というのも
この裁判でも問題になっているという面もあります。


こんな判決が出るようであれば、
今後も、医療裁判が原因の、
萎縮医療、防衛医療は進みますし。
それによって、日本の医療崩壊は進みます。


これは、対立をあおっている訳でも何でもなく、
事実」です。



この裁判官がいかに医療の事をわかっていなくて、
むちゃくちゃな論理展開をしているのか。
っていうのは、
循環器専門医が内容を精査して書いた記事
「加古川心筋梗塞事件、判決文3」
「加古川心筋梗塞事件、判決文4」
これを読めばわかりますから。
是非読んでみて下さいね!

医学用語の解説については、
「加古川、心筋梗塞事件」
「加古川、心筋梗塞事件2」
なんかも読んで、参考にしてね!


心筋梗塞になりたくない人は、
これを読んで予防してね!
→ 「日本一わかりやすい!「糖尿病」
→ 日本一わかりやすい!「高血圧」


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