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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
医者は金だけでは動かない
「阪南市立病院で医師退職、簡単な経過」
の記事に書いたように。

市長が一方的に、
医者になんか高い給料払う必要なんかない。
医者の給料なんか、4割カットだ。」

って発言をして。

そんな、医療現場の事もわからない政治家の
不用意な発言によって、医師が立ち去り
その地域の医療が崩壊する、という事が、
日本各地で実際には起こっています。

阪南市長は、後から慌てて発言を撤回して。
医者の給料を、今すぐ引き下げるとは言っていない」
とは言っていますけど。

結局、ほとんどの医者は給料が戻っても、
その病院には戻る気がない
んですよ。

それって、医者は金だけでは動かない
っていう事の良い例ですよね。


まあ、金だけで動かない、っていうのは
別に医者に限った事ではないですけど。

個人的には、給料とかお金っていうのは、
非常に大事な事だと思いますよ、当然。

プロ野球選手で考えれば、わかりやすいかな。

プロ野球選手っていうのは、野球のプロなんだから。
その評価は、基本的には「年俸」でされますよ。

フリーエージェント(FA)宣言して、
自由契約になった選手っているでしょ。
今年なら、巨人の上原投手とか。
横浜の三浦投手とか。

FAになったプロ野球選手って、
いろんな球団から、その選手の評価を聞きます。

その選手を雇うために、いくらの年俸を出すのか。
それに、年数を掛ければ、総額になりますね。

それが「その選手の価値」っていう事になります。

その選手の価値を高く認めている球団に行きたい。
っていうのは、選手としては当然ですよね。

それ以外に、
メジャーリーグに行って、
もっと高いレベルで野球をやってみたいとか。
優勝争いの出来るチームで野球をやりたい、とか。
ピッチャーなら、中継ぎ、抑えではなく、
先発投手っていう条件でやりたい、とか。
練習環境が良いのが条件、とか。


そういった、もろもろの要素を考慮して、
ぜーんぶひっくるめて、どこの球団に行くのか。
っていう事を決めますよね。

それって、金だけではない
っていう事になりますよね。

近鉄バファローズが消滅した時に、
球団といろいろごたごたがあって。
この球団ではプレーしたくない、
って選手もいましたよね。

それ以外にも、球団に不信感を持って、
年俸が下がるのに、他の球団に行った選手もいます。
メジャーリーグに行くっていう夢を叶える為に、
日本にいれば、大金が稼げるのにアメリカに行った
プロ野球選手、いますよね。
新庄選手が有名かな。

医者だけじゃなくて、プロ野球選手とか。
他の職業の人達も、金だけじゃないんですよ。


医者だって同じです。

医者待遇って言った時。
給料、年収というのは、もちろん重要な要素です。
それ以外にも。

症例が豊富で、勉強になるのか。
学会とか、勉強に行ける環境にあるのか。
当直がたくさんあるのか。
それは、寝る暇がないくらい忙しいのか。
くだらない事務仕事が多いのか。
子供がいる人なら、子供の教育環境がきちんとしているか。
それに、地方であれば、都会までどの位の距離なのか。


とか。

まあ、いろんな要素があるわけですよ。
最近は、医療訴訟とかも多いですから。
もし、トラブルがあった時に、病院が守ってくれるか
というような事も重要になりますかね。

あと、抽象的ですけど、
医者が働きやすい環境にあるのか。」という事は、
医師が働く上で、一番目か二番目くらいに大事な事
だと思いますよ、私は。


阪南市立病院の場合。
給料に関しては、結構良いと思います。
下がったけど、元に戻ったとしたら。

でも、この病院のトップがこんな事言う人なら、
この人の下で働きたいと思う医者は少ないでしょうね。
とりあえず、今は給料下げなかったけど、
いつ契約を一方的に破られるかわかんないから。
信用できないでしょ、この新市長。

完全に医者を見下してるし。
はっきり言って、最悪でしょう。

そんな訳で、辞意を表明している8人のうち、
6人が戻る気も話す気もない

って言っているのだと思います。



そいで、やっと本題。
この話が書きたくて、前回から阪南市立病院の話を
書いてきたんだけど。
今度の話は、一応、フィクションです。

阪南市だけの問題ではなく、
医者は金だけでは働かない、っていう話です。

某所で、ある先生に許可を頂いて
ここに掲載させていただく事になりました。
ありがとうございます。



10年程前のこと、
当町に隣接してK村というのがありました。

隣接しているが、山があるので中心部に行くには
ひどく遠回りしなければなりませんでした。

そこには診療所がありました、
もちろん手術などできません。
手術がしたい盛りの外科医は赴任などしたくありませんし、
外勤などしていると自分の病棟がおろそかになるわけです。

そこにはK村長がみえました。

村長は診療所に毎日医者が来るようにすることを
公約にして当選されました。

それから、村長はとにかく一生懸命やられました。
診療所の給与は大したことはなかったのですが、
医師が帰るときはお礼の挨拶におとづれ、
花火大会など事あるごとにバーベキューに招待し
・・・官官接待といって批判されるかもしれませんが、
お店など使わずに、自宅で自分で汗を流して
ウナギをとって御馳走してくれたわけです。


皆、次第に、この村長をほうっておけなくなりました。
そして、外科小児科も含めて毎日医師が詰める 
この規模としては夢のような診療体制が実現したのです。

しかし、それが実現したころ、
この村長は亡くなってしまわれました。

大学からは教授クラスが葬儀に参列しました。
それから数年間、この診療所は続きました。
皆つらかったのですが、村長の事を忘れていなかったのです。

さて合併で、K村はS市になりました。

ある日、事務員がやってきて、
医者にお昼の弁当出すのはおかしいから有料にする
と通告しました。 
あたりに店がないので、
前村長はお弁当をだしていたのです。
皆、それは確かにそうですね
・・・と言って同意しました。

その次の年度替わりの時に 
一斉にすべての科が診療所撤退を通告しました。
どんなに条件をあげても皆、絶対にいきませんでした。
自分も嫌でした。

これは、食い物の恨みだろうか
・・・そう思うと情けないですが、
どこかなにか違う感覚があったのです。

今ならわかります。
自分たちがこの診療所で診療していたのは、
お金のためでもなんでもなかったのです。

もっと大切なものを受け取っていたからなのです。
事務員が弁当代をケチった時、
皆をつないでいた糸がプツリ・・・と
切れてしまったのです。

この事務員、診療所から医師がいなくなったのは、
新臨床研修医制度のためだと思いこんでいるらしく、
確かにその影響ゼロではないのですが。
少なくとも、あの時点で診療所から
医師がいなくなった直接の理由は違います。

(もちろん、バスにのって行けば、
ここの住民はS市の大病院までいける
ということもあります。)




食い物のうらみ」のような話に見えますけど、
実は違ったんですよ。
わかりますよね、この意味。

阪南市の市長や麻生総理大臣は、
これを読んだらどう思うんでしょうかねー。
もし、これを読んで、
弁当のせいで医者がいなくなった。
なんてけちな医者だ。


と思うような方でしたら、
医者を集める人間としては失格だと思いますよ。


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