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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
脳梗塞は心カテの合併症っす
心臓カテーテル検査心カテ
っていう検査。
この検査は、心臓の表面で
心臓を養っている
血管(冠動脈)や、心臓の中に
カテーテル」っていうチューブみたいのを入れて。
そこから造影剤を流したりする検査です。

心臓の表面や心臓の中っていうのは、
当然「体の中」ですから。
異物を体の中に入れる検査なので、
絶対に安全」というものではありません。

どんなにベテランで、
どんなに検査や手術が
上手な医者がやっても、
患者さんの体に良くない事が起こる。
そういうのを「合併症」って呼びます。

薬なんかでも、アレルギーとか、
肝臓や腎臓の
機能が悪くなったり。
吐き気がしたり、下痢したり。
そういう事がありますよね。
人によっては。
そういうのが「合併症」です。

心臓カテーテル検査の場合は、
体の中、心臓の中に
カテーテルを入れますから。
ただ薬を飲んだり、点滴の管を入れるよりは、
高い確率で合併症が起きます。

具体的には、出血や感染、不整脈とか。
それと、今回問題になっている、
脳梗塞」。
めったにないですけど、
死亡」というのもあります。

相変わらず、マスコミの記事でしか
わからないので、情報が不足していて、
はっきりとした事は言えないのですけど。

私がわかる範囲では、
これは心臓カテーテル検査心カテ
合併症じゃないかなー。
という事で、8000万円の訴え
起こされたようですね。



損賠訴訟:「検査で後遺症」 
木曽の男性、県などを /長野

県立木曽病院(木曽町)で06年2月、
木曽郡内の男性(53)が
心臓カテーテル検査を受け、
後遺症が残ったとして19日までに、
同病院を運営する県と
担当男性医師を相手取り、
慰謝料など約8000万円の
損害賠償を求める
訴訟を地裁松本支部に起こした。

訴状によると、男性は05年5月に
被告医師から心臓カテーテル検査
勧められ、06年2月に同検査を受けた。

その後、めまいなどの症状が表れ
脳幹部梗塞(こうそく)と診断された。
歩行障害などの後遺症が残るという。

原告側は、脳幹部梗塞は
心臓カテーテル検査が招いたもので、
不必要な検査だったと主張。
県病院事務局は「見解に相違がある」
と争う姿勢を示した。
【渡辺諒】


『2009年1月20日:毎日新聞  地方版(長野)』




心臓カテーテル(心カテの検査に
合併症の可能性がある。
という事は、医者であれば
みんなわかっている事ですし。
その検査を行うのは、専門家である
循環器内科医でしょうから。
当然、百も承知でしょう。

今の時代、それをわかっていて、
患者や患者の家族に説明をしない。
という可能性は少ないとは思うのですが。

民事訴訟を起こされたっていう事は、
患者さん側には、理解されて
いなかったのでしょうかねー。


私は循環器内科医で、
心臓カテーテル検査心カテ
専門なので。
この記事を取り上げたのですが。
いくらなんでも、これでは情報不足ですね。


おおざっぱに言うと、
心カテ合併症で、
脳梗塞の確率は1000人に1人位。
まあ、非常に少ない確率ですよね。
普通に考えたら。

でも、ベテランの循環器内科医なら、
心カテを数百人、
数千人ってやってますから。
1/1000っていう確率は、
そんなに低くはないんですよ。


もうブログをやめちゃいましたけど。
数学が非常に得意な、

なんちゃって救急医先生が、
以前にブログで記事にされた事があるので。
ちょっと引用させてもらいますね。
参照:
『合併症を算数する』
『合併症を算数する(続編)』


当院の循環器科では、
冠動脈造影検査
心臓カテーテル検査)を
施行するにあたり、脳血管障害など
重篤な合併症が生じる確率は、
1/1000(=0.1%)と説明して
患者の同意を得ている。

さて、当循環器科で、1000例の検査を
施行したとき、重篤な合併症
少なくとも一件は生じる確率は
何%であろうか? 

また、いったいこの施設で何例くらいを
施行した場合に、少なくとも一件は
合併症が生じる確率が
99%にまで到達するであろうか?



という問題です。
結構めんどくさい計算式が
出てくるので、
数学マニア以外は
途中の計算は省略してw



f(N) = 1-{(1-p)^(-1/p)}^(-pN)
  ≒ 1- e^(-pN) ・・・・・・・・・・・・①




試行回数を確率の逆数(=1/p)だけ、
おこなうと、 ①式より、その確率は
常に一定で、その値は、
1-1/e=0.632 となります。



数式が理解できない人は、
上のは無視してもらって。



合併症を発症する確率が
pである検査を、1/p回行った場合、

63%の確率で、少なくとも
一回は合併症に遭遇する。



合併症を発症する確率が
pである検査を、5/p回行った場合、

99%の確率で、少なくとも
一回は合併症に遭遇する。


これも無視してもらっても
かまわないんだけど。
答えは、これ


解答  
1000例の検査で、63% 、 
4600回(≒5000回)の検査で99% 



という事になります。

恐ろしい話ですよ、これ。

中堅病院で勤める循環器内科医なら、
一年間で100例位ですか。
心臓カテーテル検査心カテの検査数。

もちろん、もっと多い施設もいっぱいあるし。
小さめの施設とか、周りにもっと大きくて
有名な循環器の病院があるとこなら。
もっと少ないでしょうし。
病院にいる循環器内科医の数にも
よるでしょうからね。

全国的に有名な先生なら、
一年で1000例くらいやってますしね。

でも、おおざっぱに循環器内科医
1人が一年間で100例とすると。
10年で、1000例になりますから。

脳梗塞等の
重篤な合併症が起こる確率は、
10年で63%にもなるんですよ。


これで、毎回訴えられていたら、
誰も心カテの検査やらなくなりますよ。
循環器内科医が10人いたら、
10年で6人は8000万円払えって
訴えられちゃう
んですから。

46年一線で心カテの検査やってたら、
99%ですよ。

まあ、民事訴訟を起こす権利は、
誰にでも認められていますから。
それを禁止する事自体は
出来ないんですけどね。

こんな訴訟が頻発するようなら、
循環器内科医
いなくなっちゃいますよ

ホント。




医療訴訟が医療崩壊を
進めている面もあるんですよ。

誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実


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