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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
告訴ないのに医師を書類送検(追記あり)
医療崩壊の原因の一つとして、
医療訴訟」というのがあります。

民事訴訟を起こす事自体は、
国民に認められた権利ですから。
これを制限すること自体は難しいのですが。

刑事訴訟に関しては、ちょっと別だと思います。

ほとんどの場合は、遺族から被害届が出て、
それを受けて警察が書類送検する。
という形なのですが。

単なる「合併症」で患者さんが亡くなられて。
病院側も、もちろん合併症であると主張して。
それを、遺族の方達も納得しておられている。
当然、被害届なんかも出していない。

という様なものも、結果が悪ければ全て
書類送検」する、という事では
医療崩壊が加速するのは、間違いないと思います。



告訴ないのに医師を送検
医療現場から反発強まる可能性も


食道静脈瘤の内視鏡治療後に患者が死亡した事故で、
近江八幡警察署は6月末、医師2人を書類送検した。

だが病院側は過失を否定している上、
遺族からの被害届もない。
警察の対応には疑問点も多い。

 

問題となった事故は4年前に起こった。
2005年10月、近江八幡市民病院
(現・近江八幡市立総合医療センター〔滋賀県〕)の
消化器内科医が、肝硬変で食道静脈瘤だった
当時69歳の男性に内視鏡的硬化療法・結紮術を行った。

その時、オーバーチューブで
食道入口部右梨状窩を誤って7~8mm損傷した。


主治医は損傷に気付いたが、まずは治療を続け、
瘤の硬化、結紮は成功。梨状窩の損傷に対しては
外科治療と内科治療の選択肢があったが、
患者の肝機能が悪く手術は厳しいと判断。

複数の消化器内科医で話し合った上で
「消化器内視鏡ガイドライン」に従って保存的治療を行った。


その後患者に変化はなかったが、
治療後4時間たって突然呼吸苦を訴え急変。

呼吸不全となり20分ほどで心肺停止に陥った。
心肺蘇生を試みるも午前零時過ぎに死亡。
病院は警察に異状死の届出をした。


翌日、同病院は医療安全管理委員会を開き、
事故をこう分析した。

「梨状窩損傷の事故はあったが不可抗力的なもので、
適切な対応をしており過失はない。
死因については、梨状窩損傷を引き金に
複合的な要因で起きたもので、
創傷治癒の遅延から起きた喉頭浮腫、
または損傷部から出た血液の誤嚥による
窒息死と考えられる─」。

ところが、近江八幡警察署は今年6月、
担当医2人を業務上過失致死の疑いで
大津地検に書類送検した。


医師間でも処置の判断が二分

警察は、司法解剖の結果、事故で生じた
食道上部右側穿通によって左右胸腔へ空気が侵入し、
遷延性窒息が起きたことが死因と発表した。

主治医らは、治療終了後にCT検査を行い
皮下気腫、縦隔気腫を確認したにもかかわらず、
外科・内科両方の治療法がある中で
専門知識を持つ外科医に相談せず
適切な措置を怠った、というのが警察の判断だ。


一方、同病院医療安全管理室主幹の
尾田憲章氏は本誌取材に対して、
「CT検査で縦隔気腫は認めたものの、
気胸はなかった点を確認しており、
気胸による遷延性窒息が死因ではない」
と反論した。


そもそも、損傷部への不適切な対応を指摘した
近江八幡警察も「内科医は保存的治療を推奨し、
外科医はそれでは十分でないとするなど、
医師の中でも判断は分かれ、
非常に難しいケースだった」
と話す。

診療時間外で主治医らが外科医に相談できなかった上、
ガイドラインに従って対応したという点からも、
明確な過失があったかどうかの線引きは難しい。

 
もう一つ、本ケースが異例なのは、
遺族側が告訴していないのに捜査が進んだことだ。

警察庁刑事局刑事企画課の田中勝也氏は、
個別の事件については分からないとしつつも、
「一般的には、警察は患者遺族側からの
被害届が出てから捜査に乗り出すことが多い」
と話す。

同病院の尾田氏は
「事故後すぐ、病院は遺族に説明して謝罪し、
良好な関係を築いていた。
なぜ警察が事件として取り上げたのか腑に落ちない」
と語る。


帝王切開手術を受けた妊婦が死亡し、
担当医が起訴されたものの、08年8月に
無罪となった福島県立大野病院事件以来、
医療過誤に対する捜査はより慎重になったといわれる。

大津地検が今後、医師を起訴する判断を下せば、
こうした“流れ”に逆行することになる。
その場合、医療現場の捜査機関への
反発がぶり返す可能性もある。


「日経メディカル:2009. 8. 5」



書類送検」というのは、「起訴」された訳ではなく。
その名の通り「書類が送られた」ってだけの話なんで。
本当は、ニュースになる問題でもないんですけどね。

やっぱり、既存のマスコミとかで「書類送検
っていう事で報道されちゃうと、

病院や医者が悪い事したんだろ。

という目で、一般の人たちには思われます。

そんな事言うんだったら、お前もブログの記事にするな。
と言われたら、元も子もないんですけどねw


私の周りでも書類送検された医者はいますけど。
そうなると、本人も廻りの医者も、
いろいろ話を聞かれて、日常業務が滞るようです。

医者から聞いた話を、素人の警察が文書にしても、
全然話が違っちゃうみたいなんですよ。

もちろん、内容が違うままにしておいたら、
その内容によって、現場の医師
不利になる場合もあるので。
当然、間違っている所は訂正して。
またやり直してもらっても、やっぱり全然違う。
なーんて事もあるようですからね。

相当、大変だと思います。

ただでさえ、日常の臨床で忙しいのに、
余計な事務仕事がまた増える
っていう事で、医療崩壊が更に進む
っていう面もあるし。

何より「医者だって人間ですから」。
そういう無駄な事に時間と労力を費やされたら、
心が折れる
という事になります。

現場の医師の心が折れて、逃散するから、
医療崩壊が進んでいる。

という現状をきちんと認識して。

医療を始め、専門的な知識を要する事に関しては、
書類送検」をする場合にも、
きちんとしたルールなり、運用方法なりを
作った方が良い
と思いますけどねー。



「追記」

すいません。
一応、書類送検に関しては、
それなりに知っていたつもりだったんですが。
ちょっと勘違いしていた部分があったので、訂正します。

>「書類送検」というのは、「起訴」された訳ではなく。
その名の通り「書類が送られた」ってだけの話


んで、警察が検察に判断を丸投げするもんだ。

ってとこまでは、私も知っていたのですが。



記事訴訟法や同法規則、国家公安員会規則の
犯罪捜査規範などの法令で、警察が捜査した結果は、
全て例外無く検察に報告して、起訴か不起訴かを
検察に決定して貰わなければなりません。

すなわち書類送検というのは、警察の捜査結果報告書を、
上級庁の検察に送ることです。
この手続は上記の不例規則等により、
警察が捜査した全ての事件について
義務付けられております。

司法解剖が行われたら、被疑者不明だろうが、
起訴処分に否定的な警察の意見が付こうが、
とにかく警察署は捜査結果の書類一式を
検察に送る義務がある。

警察や検察にとっては、法令や規則に基づいた
ルーチン的業務処理なんですが・・・。



という事だそうです。
勉強不足でした、すいません。


警察庁刑事局刑事企画課の被害届云々のコメントは、
読めば分かるとおり本事件の詳細を知った上での
コメントではなく、刑事捜査の一般論としての論評でしょう。


うーん、そうですか。
私も、勘違いしていました。


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