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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
医療資源は地域全体で守ろう
数年前から「医療崩壊」が叫ばれて。
多くの地域では、医療崩壊
どんどん進んでいっています。

でも、一部の地域では
医療が崩壊しなくて済んでいます。

医療が崩壊していない地域は、例外なく、
住民が協力している所ですね。

例えば、「小児科を守る会」で有名な
柏原病院のある丹波地区。
ここは、平成19年4月20日、
『県立柏原病院の小児科を守る会』
が発足して、柏原病院のある丹波地区は
小児科が崩壊の危機から救われました。

小児科以外は、今でもかなり
厳しい状況ではあるようですけどね。


医療崩壊っていうのは、おおざっぱに言うと、
患者がたくさん来るんだけど。
医師医療従事者の数が足りない、
ベッドが足りないという状況があるため、
患者を診る事が出来ない。

そういう状況が続いている状態ですよ。

その解決方法としては、2つ。
患者の数を減らすか、医者の数を増やす。
まあ、医者の数自体はそんなに増やさなくても、
医師の仕事を医者以外がやるようにすれば、
同じような効果があるんですけどね。

患者っていうのは、基本的には
自分(家族)の足で病院(診療所)に来るか、
救急車で病院(診療所)に来るか。
この2つですよ。

軽症なのに救急車を呼ぶ、
けしからん患者もいますけど。
数としては、さほど多くないですから。

圧倒的に多いのは、自分(家族)
の足で病院(診療所)に来る患者
ですから。

患者である住民が自分の意思で
病院(診療所)に来る頻度を減らせば。
当然、患者の数は減りますから。
医療崩壊から遠ざかる事が出来ます。


そのためには、住民の協力が必須なんですよ。

柏原をはじめ、全国各地で、
いろんな地域の住民が理解してくれているようですが。

医療資源を地域全体で守る」
っていう条例が出来たとこもあるようですね。


ブログ「医療審査の独り言」
に、その記事が出ていたので、
ここで引用させていただきますね。
いつもお世話になっております。



医療資源を地域全体で守る
宮崎・延岡市が地域医療を守る条例可決

株じほう

宮崎県北部に位置する延岡市は
人口130787人(2009年10月現在)。
旭化成の創業地で、いわゆる
企業城下町として知られる。

しかし、すでに1980年代から人口は
減少傾向を示し、時代の流れが
大きく変化する中、他の地方都市と
同様の悩みを抱えることになった。

その1つが地域医療の崩壊だ。
延岡市では深刻化したこの問題に
立ち向かうため、市民、医療機関と
総力を結集し、それぞれの役割のもとで
地域医療を守ることが不可欠と判断。

首藤正治市長が9月1日、
「延岡市の地域医療を守る条例」
案を市議会に提出し、18日に
可決、成立した。


●市、市民、医療機関が一体となる

同条例は地域医療
「市民が安心して生活していく上で
欠かすことのできないもの」
と位置づけ、持続可能な地域医療体制の
構築をめざし、市、市民、医療機関が
一体となって守るとした基本理念を提示。

その上で、それぞれの責務も定めた。
さらに市民自身の健康維持・増進に
向けた努力に基づき、医療・保健・福祉の
連携で生涯を健康に全うする
「健康長寿」を推進するとの
方針を打ち出した。

医療機関に対しては
「基本理念に基づき、良質で適切な医療を行う」
との方向性を示し、そのための責務として、
 <1>患者との信頼関係の醸成
 <2>機能の分担と業務の連携
 <3>医師などの確保と良好な
    勤務環境の保持
 <4>市が実施する検診、
健康診査などへの協力

-を努力目標に位置づけた。

市民の責務には、
 <1>かかりつけ医を持つこと
 <2>安易な夜間・休日の受診を控えること
 <3>医師医療の担い手の立場を理解し、
    信頼と感謝の気持ちをもって受診すること

-などを掲げた。

市の責務には、県の医療計画を基本に
地域医療を守るための施策を
推進することなどを盛り込んだ。


●背景に地域医療崩壊の深刻化

延岡市によると、こうした条例を
市町村が制定することは初めて。

同市では市内の県立延岡病院
医師不足により、眼科、精神科、消化器内科、
神経内科が断続的に休診に
追い込まれたほか、延岡市医師病院でも
内科医に2人の欠員が出るなど、
地域医療の崩壊が深刻化していた。

ただ市民団体が、安易な時間外受診を
控えることを呼びかけるキャンペーンを
実施したところ、県立延岡病院
時間外受診が2008年度は前年度に比べて
27%減少するなど、一定の成果も見えてきた。

同市は、こうした成果を一過性で
終わらせないためにも、行政と市民、
医療機関が相互に協働して
地域医療を守る考えを明確に
示すことが有効と判断し、同条例案を
9月の定例議会に提出することにした。

同市健康福祉部の甲斐研二
地域医療対策室長は条例成立を踏まえ、
「この条例をどう生かしていくかが大事。

今後これまで以上に、医師らが
使命感を持ち、安心して働ける地域となる
きっかけとしたい」と述べている。

一方、延岡市医師会の岡村公子会長は
「条例の制定は限りある医療資源を
地域全体で守らなければならない
という意識が芽生えた結果」
と評価した。


●条例制定に先立つ
地域医療体制整備への施策

延岡市では同条例制定以外にも、
地域医療体制整備に向けて
積極的な施策を実施してきた。

今年6月には、新たに市内で開業する
診療所に500万円の補助金を交付する
取り組みが始まった。

市内での新規開業を促進し、
地域医療体制を強化する目的で、
開業で必要となる資金として
500万円を補助するほか、診療時間帯を
延長したり、看護師などを5人以上
雇用する場合、さらに夜間急病センターの
深夜時間帯に一定以上の協力がある
場合にも、それぞれ奨励金が加算される。

甲斐室長によると、補助金交付の
対象となった新規開業診療所は
「6月早々に適用第1号事例があった」。
同室長は「今後、実績を一つ一つ積み上げ、
延岡市の取り組みについて
広く医療関係者の理解を浸透させていきたい」
としている。

このほか、夜間救急センターにおける
深夜帯(午後11時から翌日午前7時まで)
診療の拡充、安易な休日・夜間救急受診の
自粛の啓発、消化管出血・脳梗塞患者
受け入れのための輪番体制の維持、
小児救急医療電話相談、
「子ども救急医療ガイド」発行、
延岡市医師会への支援、
市外の医師や医学生の情報収集と
開業などに向けた情報発信
などに取り組んでいる。

地方自治体にとって、今後も厳しい
財政状況が続くだろう。

さまざまな施策を打ち出す一方、
市民や医療機関と一体化して
問題解決を図ろうとする延岡市の取り組みは、
他の地域にとって刺激的であり、
大きな示唆を与えていると思われる。
(那須 庸仁)




私、夏休みを利用して柏原に行ってきて、
そこで病院見学をさせていただいたり。
「小児科を守る会」の方達とか、
「丹波医療再生ネットワーク」
方達とお話をさせていただきました。

やっぱり、住民の意識が高い所は良いですよね。
と言っても、昔から高かった訳ではなく、
ここ1、2年で皆さん勉強されたようですから。
柏原が特殊だ、っていう訳ではないんですよ。

こういう地域が、全国に広がってくれれば、
医者も働きやすいですから。
自然と、医師も集まって、医療も崩壊せずに
済む可能性が高いのですが。

医者がいなくなるなんてけしからん。
住民には医者にかかる権利がある。
とか言って、権利ばっかり主張したり、
署名運動とか、勝手な事ばかりやる所には
医師は来なくて当たり前だと思います。

医師が来ない地域は、医療が崩壊しますよ。




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輸入ワクチンは危険?
なんか、ものすごいドタバタで、
新型インフルエンザワクチンが、
医療従事者とか優先患者に
打たれる事が決まったけど。

直前に決まったから、我々医療従事者にも
全然情報が入っていないんですよ。
残念ながら。

なんだか良くわかんないけど、
適当に人数決めて、それに合わせて
ワクチンも輸入した、とか。

感染の危険性もすごーく高まるのに、
10ml入りのワクチンを作ったとか。

もう、めちゃくちゃですね。


輸入もの」っていうだけで、
危険」、「信用できない」っていうのは、
天然物」だから安心、おいしい。
養殖」だから、心配、まずい。
って言っているのと同レベルです。

おいしい」のか「まずい」のかは、
自分の舌」で先入観をもたず決める事です。

そもそも「和牛」って、ものすごーく高くて、
おいしい、っていう評判でしょうけど。
あれって、言い方を変えたら「養殖の牛
なんですよ。

魚の場合「養殖」っていうと、なんだか
ワンランクも2ランクもダウンする、
とかって話になるようですけど。
今は技術も進歩していますからね。
必ずしも「養殖」だから、レベルが下がるとか。
国産なら大丈夫、おいしい、とか。
そういう事はないんですよね。

ワクチンも「国産」なら安心。
輸入もの」なら心配だ、とか
そういう訳ではないんですよ。

そもそも、現在、日本で使われている薬の
ほとんどは、外国で作られた物ですし。
医療機器なんかも、ほとんどは外国製ですよ。
くだらん「規制」とかのせいでね。

それなのに、突然ワクチンだけ、
輸入ワクチン危険だ、
っていうのが何の根拠もないんですよ。

一見、根拠ありそうな理由が羅列されていますけど。
その程度の危険性は、「国産ワクチン」でも
同じくらいありますからね。

きちんとした理由を書くべきだと思います。

ちょっと前のMRICに載っていた記事と、
その続編がおもしろかったんで。
ここでも紹介させていただきますね。





*************************************
東京大学医学部医学科 4年
篠田 将

2009年9月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
http://medg.jp



「危険」らしい輸入ワクチン

東京大学医学部医学科
4年
篠田 将


~イントロ~

突然ですが、最近聞いた「話」を紹介します
(既にご存知な方は、すみません)


~~~~

「DHMO」と呼ばれる化学物質があり、
その化合物の主な性質は次の通り。

・重篤な熱傷の原因となりうる。

・多くの素材の腐食を進行させる。

・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される。


しかし、その危険性に反してDHMOは
身の回りで用いられている。一例として

・工業用の溶媒、冷却材として用いられる

・原子力発電所で用いられる

・発泡スチロールの製造に用いられる

・防虫剤に用いられる。洗浄した後も
 DHMOは農作物に残留している。

・各種のジャンク・フードや、
 その他の食品に添加されている。


このDHMOという化合物の、家庭内での使用を
禁止する法的規制を実施すべきか。

Yes / No

~~~~


ここまでお読みになり、この話の
「結末」が見えた方は
いらっしゃいますでしょうか。
殆どの方は「結末」に気づかれないと思います。
私も気づきませんでした。


結末:

DHMOは、Dihydrogen Monoxideの略。
すなわち、「一酸化二水素」のことでした。
要するに水(H2O)のことですね。

実はこれ、米国の有名なジョークで、
90年に考案され、97年に中学生による
調査によって米国で
有名になったそうです(wikipediaより)。

極端な環境保護運動などを
揶揄するときなどに使われるそうです。


このジョークが示している教訓は、
「事実だけを述べたとしても、表現方法によっては
聞き手を誤ったほうに誘導することが出来る」
ということでしょうか。



~世間の関心を集める、
新型インフルエンザワクチン

さて、ここからが本題です。

最近、新型インフルエンザに対する
世間の注目が高まっています。

特に、ワクチンに関する事柄(たとえば、
いつから接種できるのか、費用はどれくらいか、
ワクチン副作用は、ワクチンの効果は、など)
が9月中の関心事であったように感じます。

確かに、ワクチンは予防の手段の1つですので、
私もワクチン接種に関心があります。



~厚労省による、ワクチン接種へのパブコメ募集~

さて、そのような中、対策に取り組んでいる
厚生労働省がワクチンに関しての
「パブリックコメント」を募集していました。

パブリックコメント(以下、パブコメ)とは、

「行政が何らかの規則を制定し、
または事業を行う際に、国民から広く
意見を募り、集まった意見を規制や
事業に反映させ、より良い行政サービスを
実施する仕組み」
のことです。


大まかな手順としては、

1. まず行政が実施しようとしていることに関して、
 行政自らが素案を提示します。

2. 提示された素案を読み、素案に対して
 意見がある国民は、意見をパブコメとして
 行政に送ります(送付する期間や送付方法は
 行政から事前に提示されます)。

3. 締め切り後、集まったパブコメを行政が読み、
 素案の修正などを行います。


つまり、パブコメを送る際には、
素案が極めて重要なものとなってきます。当然
ですが、素案とまったく関係のないことを
書いても意味がありません
(たとえば、ワクチン接種に関するパブコメ
「年金記録問題に不満がある」
「ダム工事凍結に賛成」などと書く、など)。

素案を読んで、素案に対して意見を書くのが
パブコメの目的・方法と言えるでしょう。



~提示された「不可解な」素案~

さて、その重要な素案を読んでみました。

「新型インフルエンザワクチンの接種について」



すると、気になる点を見つけました。


6ページ

4.留意事項

(1)安全性の確認について

イ.輸入ワクチンの承認時の安全性、
 有効性の確保について

には以下のように書かれています(一部を抜粋)。


(前略)

輸入ワクチンについては、

1 現時点では国内外での使用経験・
 実績(臨床試験を除く。)がないこと

2 国内では使用経験のないアジュバント
 (免疫補助剤)(*)が使用されていること

3 国内では使用経験のない細胞株を用いた
 細胞培養(*)による製造法が
 用いられているものがあること

4 投与経路が筋肉内であること

5 小児に対しては容量が異なること

など、国内ワクチンとは異なる。
有効性については、
ある程度期待されると判断される。
一方、わが国で大規模に接種した場合の
安全性に関しては、
国内製品よりも未知の要素が大きく、
その使用等に当たっては、より慎重を期すべき
との懸念も専門家から示されている。

アジュバント(免疫補助剤):
ワクチンと混合して投与することにより、
目的とする免疫応答を増強する物質。

これにより、同じワクチン量でもより
多くの者への接種が可能となる。
一般的に、副反応の発生する確率が
高いことが指摘されている


* 細胞培養:ワクチンの製造方法の一種。
鶏卵による培養よりも、
生産効率は高いとされるが、
インフルエンザワクチンではこれまで
世界で広く使用されるには至っていない。

また、一部の海外のワクチンについては、
製造に使用される細胞に、がん原性は
認められないものの、
腫瘍原性があるとされており、
使用等にあたっては、特に慎重を期すべき
との懸念も専門家から示されている。

(以下略)


この部分を読むと、「輸入ワクチン
極めて危険で、おまけに
効くかどうかも分からない。」
という印象を受けます。
しかし、立ち止まって一文ずつよく読んで
みると、不思議な点がいくつか見当たります。


>1 現時点では国内外での使用経験・
 実績(臨床試験を除く。)がないこと

これは輸入ワクチンに限ったことではなく、
国産ワクチンも同様に現時点では
使用経験・実績がありません
(何せ「新型」インフルエンザのワクチンですので
「使用経験・実績」が存在するはずがありません)。

しかし、同素案の国産ワクチン
関する部分には
同様の記述は出てきません。
つまり「国内ワクチンとは異なる」
わけではないので記述自体は
誤りであると考えられます。



>2 国内では使用経験のないアジュバント
 (免疫補助剤)(*)が使用されていること

なお、ご丁寧にアジュバント
注まで付いていて、注では

>一般的に、副反応の発生する確率が
 高いことが指摘されている

と言っています。


さて、立ち止まってじっくり読んでみましょう。

>2 国内では使用経験のないアジュバント
 (免疫補助剤)(*)が使用されていること

この文は、「輸入する特定の
ワクチンに添加されている、
特定のアジュバントに対しての安全面での懸念」、
と解釈されます。


それに対して

>一般的に、副反応の発生する確率が
 高いことが指摘されている

こっちは、「一般的に」とあるように、
アジュバントという添加物の
一般的な性質に関して、
「誰か」が指摘した、と解釈できます。


しかし、「一般的に」に注意して読まないと、
この注が「今回輸入するワクチンに入っている
アジュバント副作用が出やすい」という風に
読めてしまう恐れがあります。
斜め読みは危険ですね。

例)

Aさんはドイツ人(*)です。

* ドイツ人:ドイツ人は一般的にまじめで
 職人気質の人が多い。

質問:Aさんはまじめで職人気質な人ですか?


さて、ここからは記載内容に関して見ていきます。

確かに国産ワクチンには
アジュバントが使われていません。
その意味では記述自体は「正しい」でしょう。
しかし、国内で使用されていないからといって
安全性に問題がある、と言えるのでしょうか。

なお諸外国では同じアジュバントが添加された
ワクチンの大規模な治験が既に行われていて、
安全性が確認されています。

 「国内で使われていない」添加物だから危険、
と言いたいのならば危険性の
根拠を提示すべきであり、
もし提示できないのであれば、単なる
非関税障壁ではないでしょうか。

根拠を提示せず「国内にないものは危険だから
輸入しない」、という主張が通るのであれば、
コカコーラやハーゲンダッツ(これらの食べ物は
日本には元々なかったものです)を外国から
最初に輸入した会社は
「テロリスト」と言えるでしょう。

私はよく食べていますが、
現在これらの食品による
健康被害は(私に限れば)発生していません。



>3 国内では使用経験のない細胞株を用いた
 細胞培養(*)による製造法が
 用いられているものがあること

こちらにも、丁寧に注が付いていて

>また、一部の海外のワクチンについては、
 製造に使用される細胞に、がん原性は
 認められないものの、
 腫瘍原性があるとされており、
 使用等にあたっては、特に慎重を期すべき
 との懸念も専門家から示されている。

これだけ見ると、細胞培養で作られたワクチン
非常に恐ろしいものに感じられます。


しかし、先ほどの例と同じく、注の
「腫瘍原性」は「一部のワクチン」で
確認されたものです。
これも斜め読みすると間違えやすいですね。

例)

Bさんはお医者さん(*)です。

* お医者さん:今日の新聞に、
ある医者の犯罪が記事に載っていました。

質問:Bさんは犯罪者ですか?


ここからは内容を見ていきます。

文中に出てきた、「細胞培養」とは何でしょうか。

グーグル先生で調べてみましたところ、
細胞培養によるワクチンとは

遺伝子組換え(簡単に言うと、設計図の「改造」)
を行った動物由来の細胞により、
抗原(たとえて言うなら「練習用の標的」)を
作る製法により製造されたワクチン

を指すそうです。

もし、この製法が「危険」と言うのであれば、
同様の製法を用いて製造されるインシュリン
(現在では、インシュリンは遺伝子を組み替えた
大腸菌に作ってもらっています)も
危険であると言えるでしょう。

この記述にも根拠の提示が
必要なのではないでしょうか。
懸念を示した「専門家」に根拠を聞きに行けば
教えてもらえるのでしょうか。



~素案をもとにしたパブコメの結果~

さて、このように不可思議な点が
素案中にはいくつか出てきました。
このような「不思議」な素案を元に
パブコメを募集しているわけです。

さて、どのような意見が寄せられたか
気になるところですが、厚労省による
集計結果が出ていました
(新型インフルエンザワクチン
関する意見交換会で資料配布)。
それを見てみますと

輸入ワクチンの安全が不明確

・子どもには国産ワクチンを接種してほしい

ワクチン輸入に反対

という意見があったそうです。
これらの意見が寄せられたのは当然です。
なぜなら素案に「輸入ワクチンは怖いですよ」
と書いてあるのですから。



~要望~

その1:意見を言うときは根拠を出す

私は、「輸入ワクチンは安全ですよ」
と言うつもりは全くありません。
また、輸入ワクチンが安全か危険か
私には分かりません。

ただ、「危険ですよ」と言うのであれば
根拠を示すべきである、と考えます
(もちろん?安全ですよ?と言う際にも
同様に根拠が必要だと考えます)。


その2:判断材料ください

国産・輸入問わず、ワクチンには副作用
一定の確率で発生してしまいます。
つまりワクチンはノーリスクな
予防法ではないわけです。
リスクが少しでもあるのであれば、
ワクチンによるリスクとベネフィットを
比較考量するために、

ワクチンによる予防効果

ワクチンの副作用とその頻度

新型インフルエンザ自体の危険性

これらの情報が提示されなければ、
ワクチンを打つべきか打たざるべきか
考えることは出来ません
(たとえば、仮に新型インフルエンザ自体の
致死率が極めて低いのであれば、
ワクチン接種は不要で、感染したら
ただ家で寝てれば良いわけです)。

それらの情報を素案中に提示することなく、
根拠を示さず「輸入ワクチンは危険ですよ」
と書いて国民から意見を求める。
これでは、悪徳商法となんら変わらない
のではないでしょうか。


その3:厚生労働省の任務

厚生労働省は、「国民生活の保障」に
寄与するため「公衆衛生の向上及び増進」
を図ることを任務とする
(厚生労働省設置法より引用)そうです。

そうであれば、考える際に必要な情報を
素案中で開示した上でパブコメを求めたほうが、
任務をより円滑に遂行できると私は思いますが、
如何でしょうか。



その4:医系技官の役割

医系技官(医師免許をもつ、医学・医療に
関する専門的能力を背景とした技術系行政官。
医系技官の募集ページより引用)の
募集ページには以下のように書かれています


(前略)

私たち医系技官も、そのような臨床医と同様に、
皆様の人生すなわち我が国の未来に対峙し、
科学的根拠に基づき長期的かつ
総合的な観点から、より良い未来を創ろうと
様々な施策立案等に力を注いでいます。

(後略)


このワクチン接種の素案を書いたのが
医系技官の職員の方なのか、それ以外の職種の
職員の方なのかは不明ですが、医学教育を受けた
専門職の行政官として科学的根拠に基づいた
素案を書くべき、もしくは別の職種の方が
書いたのであれば、専門職の職員として
素案の文面の訂正を行うべき
だったのではないでしょうか。



~おまけ~

最後に、おまけとして、1つのジョークを紹介します。

DHMOと似た話で、
「パンは危険な食べ物」という話があるそうです。


米国での統計調査の結果により、
以下の事実が判明した。

・犯罪者の98%はパンを食べている。

・パンを日常的に食べて育った
子供の約半数は、テストが平均点以下である。

・暴力的犯罪の90%は、パンを食べてから
24時間以内に起きている。

・パンは中毒症状を引き起こす。
被験者に最初はパンと水を与え、
後に水だけを与える実験をすると、
2日もしないうちにパンを異常にほしがる。

・新生児にパンを与えると、
のどをつまらせて苦しがる。

・18世紀、どの家も各自でパンを焼いていた頃、
平均寿命は50歳だった。

・パンを食べるアメリカ人のほとんどは、
重大な科学的事実と無意味な
統計の区別がつかない。


MRIC by 医療ガバナンス学会
http://medg.jp


『臨時 vol 264 「危険」らしい輸入ワクチン』




そいで、その続編がこれっすね。
書いたのは別の人ですけど。



***********************

  ▽ 「情報」と言う「魔術」 ▽

高知医療センター
救命救急センター (21年11月から)
村田 厚夫

2009年10月14日 
MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
   http://medg.jp

----------------------------------------


DHMOについての話がこのMRICメーリングリストに
紹介され、筆者もオリジナルを探しだした。

表現方法や、書き方、知らせる情報を限定するなど、
あることに関する「情報」を「プラス」にも
「マイナス」にも出来るいわゆる
「トリック」あるいは「魔術」であろう。

そこで、実際に、現在勤務している
民間病院の検査技師や薬剤師
(ある程度、科学的知識がある)や、
ER看護師、さらに付属の看護学校の学生
(専門学校なので、1年生から3年生までいる)
とそこの教員を対象に、次の項目を挙げて、
質問してみた。

 配布したプリントをそのまま提示する。



「DHMO」というある化合物に関する情報として、
次のようなことが言われています。
それを読んで、「率直な」回答をして下さい。

ただし、質問することや、ネットで検索すること、
相談することは禁止します。


【この物質の特徴】
1. 重篤な熱傷の原因となる
2. 多くの素材の腐食を進行させる。
3. 末期ガン患者の悪性腫瘍から検出される。
4. しかし、その危険性に反して、
「身の回り」で用いられている。
たとえば、以下の5つのように。
5. 工業用の溶媒、冷却剤として用いられる。
6. 原子力発電所で用いられる。
7. 発泡スチロールの製造に用いられる。
8. 防虫剤に用いられる。
洗浄した後もDHMOは農作物に残留している。
9. 各種のジャンクフードや、
その他の食品に添加されている。

【質問】
A. このDHMOという化合物は、家庭内での
使用を禁止する法的規制を実施すべきか否か?
B. あなたはこのDHMOを飲めますか?

どちらも、YESかNOで答えて貰いました。

【追加質問】として、
a. Aを回答するときに、最も影響した項目は
この9つの中のどれですか?
b. Bを回答するときに、最も影響した項目は
この9つの中のどれですか?

さらに、もしこの物質について、
次の情報が加わったとしたら、あなたの回答は
A、BそれぞれYES、NOが変わりますか?

10. この物質は、無色・透明・無味・無臭である。



看護学生さん達には、追加質問はなく、
結果だけを下に示します。
配布はそれぞれの学年担当の
教官にしていただきました。

質問Aについて
1年生
YES:42人、NO:9人

2年生
YES:33人、NO:14人

3年生
YES:30人、NO:18人

教員
YES:9人、NO:10人


質問Bについて
1年生
YES:0人、NO:51人

2年生
YES:1人、NO:46人

3年生
YES:0人、NO:48人

教員
YES:0人、NO:19人


これから分かることは、まず教員は
主婦など比較的年齢層が高く、この物質を
「必要悪」、生活していく上で必要であるが、
あえて「飲みたくはない」と考えたのだろう。

一方、看護学生さんは、1年生と言えば、
殆どが高校を卒業したばかりで、
まだ医学的知識も殆どないし、
社会的な知識も少ないため、
3年生になるにつれて、教員同様、
「この物質は確かにあまり体に良くなさそうだが、
なくては困るなあ」と考えているのだろう。
「飲めるか」という質問に関しては、
一人を除いて、全員が「飲めない」と答えている。
下の医療従事者とは、少し異なる反応であった。


次に、上のすべての質問を、病院の薬剤師14人、
検査技師16人、ER看護師6人(外来勤務中)に、
今度はボクが直接手渡して周り、
質問に答えて貰った。

その結果、

質問Aについて
YES:24人、NO:12人
質問Bについて
YES:12人、NO:24人

情報が一つ増えたら、
質問Aについて
YES:17人、NO:17人
質問Bについて
YES:11人、NO:23人

と言う結果になった。

この評価には、もう一つバイアスがかかっている。
筆者はERで、急性中毒症例なども専門にしているし、
NBCテロ対策も経験している医師であり、
その医師が配る物質だから、
「聞いたこともないが、多分危ない物質だろう」
という先入観を持たせたかも知れない。

逆に、「きっと何か普通の物質を難しく
言っているだけかも」と、
さらに深く考えたかも知れない。
政府やマスコミの発表や報道でも、
その情報を誰が発表するかで、それを聞く
(読む)人間の判断に影響を与えることが多々ある。

結果であるが、「法的規制」に反対するのが
1/3、さらに10.の情報が加わると、
賛成・反対がほぼ同数になった。
また「飲めるか」に関しては、逆に10.の
情報があってもなくても、
2/3は「飲めない」と答えている。

質問A、Bともに、影響を強く与えた情報は
9.が一番多かったが、これはYES、NO
どちらにも影響している。

「ジャンクフードや様々な食品に
添加されているのだから、仕方がない」
と考えたヒトも多い。

質問Bの「飲めますか?」に関しては、
9.の次いで8.が影響を与えていた。

やはり、食べることが人間の基本であり、
「防虫剤」→「農薬」と考えてしまい、
医療従事者であるから、農薬中毒症例も
知っているため、この物質だけを
がぶ飲みするには抵抗があるのだろう。

ただ、「仕方がないから、飲む」
と答えたヒトも数人いる。

今の「新型インフルエンザ」に関する様々な情報、
ワクチンに関する情報なども、
「表現方法」「情報源」「情報量」「不適切な情報」
など、もし「偏った情報」を、政府やマスコミが
提供すると、もともと「伝染病は怖い」
という文化を持った日本人の多くが
混乱してしまうだろう。

実際、全数把握は出来ていないから、
新型インフルエンザ患者がいったい
どれくらいいるか分からない時点で、
死亡した症例だけを発表したり、
基礎疾患があることを強調したり
しているのが、現在の日本である。

「タミフルは出来るだけ早期に予防投与しろ」
とかの情報も、WHOなどの勧告とはまるで逆である。

先日も、ある若い母親が「娘の通っている
幼稚園で新型インフルエンザが流行していて、
閉鎖になった。
私は妊娠しているかも知れないから、
症状はないけれど、タミフルを処方して欲しい」
と受診してきた。

ある妊婦さん(まだ6週目)も、風邪症状が出て、
かかりつけの産科医に電話したら
「内科で診て貰いなさい」と言われたので、
わざわざERに来て、インフルエンザ疑い
患者さん専用の待合いゾーンで待っていた。

それも2歳くらいの子どもを連れてである。
これでは、一家で感染しに
来ているようなものである。

日本人は、いや、すべての人間は、
ある特殊な状況下では、
「情報」に振り回されやすい。

欧米では、すぐに権威のある組織が、
データを持って(なければ、まだ
「正式ではない」と断って)、
その時点での最善策を公開する。

必要な場合は、患者の症状や徴候、
レントゲン写真なども公開して、
一般医療機関の医者にも
「確実な(に近い)」情報を提供する。

今の日本では、キーワードとして、
新型インフルエンザ」→「基礎疾患」→
「死亡することがある」→「早期のタミフル」
となっているのではないだろうか?

そして、「ワクチン」→「接種のプライオリティ」
が報道されていて、これもまた先日の話だが、
昨年重症多発外傷で一命を取り留めた
ご高齢の患者さんが、
「私の場合は、肺にも穴が開いたことだし、
肋骨は何本も折れていたし、
肝臓にも傷が付いていた。
ワクチンは当然先に打って貰えるのでしょうね」
と、筆者の外来を受診された。

「申し訳ありません。今のところ、
どのようなヒトに優先権があるのか、
ハッキリはしていませんし、
ワクチンそのものの副作用についても
明らかではありません」
としか答えようがなかった。

とにかく、「恐ろしい伝染病かも知れない」
と一度思われてしまった以上、今後は
科学的根拠に基づく「情報」を
流して貰うことを切に願うものである。

それが「情報」の「魔術」なのである。



MRIC by 医療ガバナンス学会
  http://medg.jp

*********************************
新型インフルエンザ、「陰性証明書」求める人急増
いやー、私の周りでもインフルエンザ
ほんとに流行っていますねー。

インフルエンザのキットでA+の人、
は何人もいますし。
キットでは陰性だけど、家族や周りの人で
インフルエンザの人が何人もいて。
発熱してから、数時間しか経っていない、
っていう人なんかもたくさんいます。

私が見ただけでも、相当数いますよ。
学級閉鎖とか学校閉鎖になっている所も
結構あるみたいですしね。

明らかに高熱や、咳、痰とか、
そういう症状がある人に、インフルエンザ
検査をするのは全く問題ないんだけど。

37度くらいの微熱で、症状も全くないのに、
病院に行ってインフルエンザじゃない
って証明できないと、仕事に来ちゃいけない、
って上司に言われた。」

とか。

全く熱もないのに
「家族にインフルエンザの人がいるから、
病院インフルエンザじゃないと言われないと
仕事に来てはいけないから検査してくれ。」

とかそういう人、結構いるんだけど。
ホントに困りますね。


インフルエンザタミフルの予防投与」
は保険が効かないから自費診療
っていう事ですから。

インフルエンザの可能性が低い人で、
本人がインフルエンザ検査の希望をした場合、
保険が効かない自費診療
そして、診断書の値段もすごーく高いですよ。
って事にして、マスコミでも大々的に
報道したら、そういう人が減りますかねー。

完全に「無駄な医療費」というか、
自己満足」ですから。
保険適応外にした方が良いと思います。


私の周りだけでなくって、
全国的にもそういう人が多い、
という記事が載っていたので。
ちょっと紹介しますね。



【新型インフル
陰性証明書」求める保護者急増で
医療機関混乱


新型インフルエンザの流行が広がるなか、
子供が感染していないことを示す
陰性証明書」や「治癒証明書」を
求める保護者が急増し、
医療機関が混乱している。

学校がこうした証明書の提出を生徒らに
求めていることが増加の背景にあり、
茨城県医師会(原中勝征(かつゆき)会長)は
5日、教育機関が生徒らに証明書の発行を
指示したり、奨励しないことを求める
要望書を同県教育委員会などに提出した。

東京都文京区の診療所「森こどもクリニック」
でも、新学期の9月に入ってから
「保育園に行けない」と陰性証明書
求める保護者が急増しているといい、
同様の問題は全国的にあるとみられる。

文部科学省は「要望書まで出したケースは
聞いたことがない」としている。

茨城県医師会の今高国夫感染症担当理事
によると、夏休み後にインフル感染の
有無を調べる簡易検査や、治癒証明書を
求めて受診するケースが増え、
「検査で陰性の証明がないと、
子供が学校に行けない」
と訴える親が目立つという。

今高理事によると、学校から指示されて
受診する保護者が多いといい、
「簡易検査の精度は100%でない上、
検査キットが足りなくなる恐れがある。
今後、患者の急増で診察に影響が出る
可能性がある」と理解を求める。

同県水戸市のやまわきこどもクリニックの
山脇英範院長は「37度程度の熱でも
検査を求める保護者がいる。
保護者としては『学校にいわれたら仕方がない』
という思いがあるのだろう」と漏らす。

こうした現状を受け、要望書では
(1)簡易検査のみの受診を勧奨しないこと
(2)治癒証明書を必須とするような指示を出さない
-の2点を教育現場に対して求めている。

同県教育委員会総務課は
「生徒の出席停止などは各学校の判断で、
検査や治癒証明書を求めるような指導はしていない」
とした上で、
「医療機関の負担を軽減するためにも、
検査を控えるよう求めていく。
治癒証明書が必要な場合には、
医師の指導を受け、保護者が書くようにする
など協力を求めていきたい」としている。


『産経MSN 2009.10.6』



患者さんによく聞かれるのが、
「このインフルエンザ、新型ですか?」
っていう質問なんですけど。

実際のところ、
「わかりません」
としか言いようがないんですよ。

今年の4月、5月とか、新型インフルエンザ
流行ったばかりの時は「PCR」っていう
簡単に言うと「精密検査」をして。
そいで新型インフルエンザなのか、
ただの季節性インフルエンザなのか、
っていう診断までしていたのですが。

かなりお金のかかる検査だし。
そもそも、季節性のインフルエンザでも、
新型インフルエンザでも、
タミフルリレンザも効きますし。
家で安静にして水分を十分に摂る、
っていうのが治療なんで。

どっちでも治療が変わらないんですよ。
治療方針が変わらないのであれば、
金をかけて検査する必要がないんです。

だから、インフルエンザの検査で陽性でも、
それが新型インフルエンザなのか、
季節性インフルエンザなのかっていうのは、
わかりません。

大規模感染が起こった場合は、
精密検査する場合もあるんですけどね。

でも、普通の場合はわかりません。


インフルエンザだ」っていう診断は、
インフルエンザのキットで陽性」
であれば比較的簡単に診断できます。

まあ、あくまで簡易キットの検査なので、
陽性だからってインフルエンザ
とは必ずしも言えないんですけどね。
検査で陽性の場合は、インフルエンザだ、
と言ってもだいたい当たります。

それよりも問題なのは、インフルエンザ
簡易検査で「陰性」って出た場合でも、
半分位はインフルエンザの人がいる、
っていう事ですよ。

インフルエンザだと思います、
って診断してタミフルを出して。
患者さんに仕事や学校を休んでもらう。
って事になっても、誰も困らないけど。

インフルエンザではない、って診断して、
会社や学校に行ったら、本当は
インフルエンザで他の人にうつしちゃった。
って事になったら困りますよね。

だから、医者も簡単に
「あなたはインフルエンザではありません」
とは言えないんですよ。

言える事は、インフルエンザの簡易検査をして
インフルエンザの簡易検査では陰性でした」
っていう事だけです。

でも、これは必ずしもインフルエンザではない」
という事は意味しません。


なのに、
インフルエンザではない、
っていう陰性証明書を下さい」

っていう人、たくさんいるんですよ。

保護者だけでなく。


そもそも、インフルエンザに限らす、
「~ではない。」
っていう証明っていうのは、すごーく難しいんです。

例えば、
「この診察室に蝿がいます。」
っていう事であれば、
一匹目の前に蝿がいれば証明できますけど。

「この診察室には一匹も蝿がいません。」
っていう事を証明するのは難しいでしょ。
机とか椅子とかの影に隠れていて、
私の目からは見えないだけ
っていう可能性も十分にありますからね。

それと同じで、検査の限界だけでなく、
「~ではない」という証明っていうのは
難しいんですよ。

それなのに、そういう証明書がないと
学校とか職場に来てはいけません。
っていうのは、「単なる難癖」に近いです。

インフルエンザキットだって、
数が限られていますから。
単なる自己満足のために、検査をしてくれ、
っていうのは「わがまま」ですよ。

しかも、それに保険が適応される、
っていうのはおかしいと思いますね、私は。


茨城県医師原中勝征会長は、どこよりも早く
民主党の議員を推薦した人ですね。
民主党を推薦する、っていうのが良いのかどうか、
それに関しては何とも言えないんですが。
行動するのが早い、っていうのは
良い事だと思います。

少なくとも、今回の要望書に関しては
さすがだと思います。
時間外加算金で時間外患者2割減少
医師の数が少なくて、患者の数が多い。
いわゆる「医師不足」によって、
医師が疲弊する。
医療が不足しているから、事務員等の
医療従事者も少なくて、その分の仕事を
医者が行っているから、医師が疲弊する。

その結果、日本では医療崩壊が起こっています。

民主党のマニュフェストに、
医師数を1.5倍にする」
というのがあるんですが。

これ自体は、医師不足を解消するためには
間違っていないと思うので。
別に反対はしません。

ただ、医学部の定員を急に増やしても、
医学部の教員の数も足りないし。
医師の質も落ちるでしょうから。
いっぺんに、たくさん増やす事はできませんし。

それに、最低限の医者になるのに、
医学部から数えたら最低でも10年
一人前になるまでなら15年はかかりますから。
すぐには効果がありません。

医師不足っていうのは、
患者の数のわりに、医師の数が少ないという
相対的な医師不足」という面もあるので。

患者の数を減らせばよい」
というのが数年前から行っている私の主張です。

特に、時間外に来る軽症患者が多いと、
医師は睡眠不足になり、
精神的にもかなり疲弊しますから。

「時間外に来た軽症患者からは、
普通よりもたくさんお金をとりましょう」

というのは、国も認めている制度です。

こういうのを、「選定療養って言います。

約一年半前に、
『時間外重症患者割引制度』

っていう記事を書いた時は、
こういうのを導入している病院は
かなり少なかったのですが。

今では日本全国で100-200位あるようです。

んで、いくつかの病院では、
時間外の軽症患者の料金を上げたら
時間外加算金を追加したら)
患者が減りました
、っていう報告は
新聞記事なんかでも出ているのですが。

12の病院を集めて統計をとったら、
時間外の患者
軽症患者)の数が2割以上減りました。
でも、重症患者(入院患者)の数は、
変わりませんでしたよ。


っていう論文が出たので、
ここで紹介させていただきますね。

著者は、このブログでも何回か紹介した、
小児科医の江原朗先生です。
いつもお世話になっております。

今回もMRICからです。



     
▽ 選定療養導入による
時間外受診への影響について ▽
-200床以上の国公立病院における検討-

 小児科医  江原朗
        

2009年9月29日 MRIC by
医療ガバナンス学会 発行
               
  http://medg.jp



●要旨

軽症患者のいわゆる「コンビニ受診」を
抑制するために,選定療養(時間外診療)
による保険外負担を徴収する
医療機関が現れてきた.

しかし,軽症患者の受診抑制に限らず,
緊急を要する重症患者の受診が
抑制されてしまう危険性も否定できない.

そこで,200床以上の国公立病院について,
保険外負担の徴収前後における
時間外受診数の変化について検討を行った.

保険外負担徴収後の各月期の
受診数(中央値)は,徴収前の80%(外来),
98%(入院)であった.

統計学的には,外来の受診が有意に減少したが,
入院では有意な減少は認められなかった.

しかし,現時点ではこうした制度を導入した
施設数は少なく,今後さらなる検討が必要である.

 
時間外の救急外来は,軽症者の
「コンビニ受診」により,重症患者の治療に
支障を来しかねない状況にある.

このため,いくつかの病院においては,
選定療養(時間外診療)による保険外の
自己負担を徴収し,軽症者の受診抑制を
図る動きが出てきた1-3).

選定療養(時間外診療)とは,
緊急ではない時間外受診において,
保険診療による自己負担とは別に,
保険外負担の徴収を認める制度である4).

しかし,窓口負担の増加は,入院を要する
重症患者の受診さえも抑制して
しまう危険性がある5).

そこで,地域の基幹病院である
200床以上の国公立病院に開示請求を行い,
選定療養(時間外診療)による保険外負担の
徴収が時間外の受診数(外来・入院)に
どのような影響を与えるのか検討することにした.


●方法

平成20年10月,選定療養(時間外診療)による
保険外負担の徴収を開始した医療機関について,
各地の厚生局に開示請求を行った2).

そして,うち200床以上の国公立病院12施設に
対して,保険外負担の徴収前2年間および
徴収後1年間における各月期の時間外受診数
(外来・入院)に関する開示請求を行った
(平成21年5月15日).

なお,国公立病院を対象としたのは,
時間外受診に関する資料を開示請求で
入手することができるためである.

保険外負担の徴収前後における受診数の
変化は,以下のように求めた.
(受診比率,%)=(徴収開始後の各月期の受診数)
÷(前年と前々年の同月期の受診数の平均)
×100(%)

こうして得られた各月期の受診比率を
外来と入院に分けて解析した.
受診数の増減に関する統計的な検定は,
受診比率が100%(保険外負担の徴収により
受診数の変化がない)との帰無仮説を設定し,
符号検定を用いて行った(危険度は5%とした).


●結果

開示請求の結果を表に示す.
200床以上の12の国公立病院が選定療養
(時間外診療)による保険外負担を徴収し,
各施設における徴収の最高額は
850円から8400円であった
(初・再診の違いや時間帯の違いで
徴収額が異なる施設が存在したので,
最高額を表では記載している).

このうち,4医療機関では,時間外の
外来・入院受診数に関する資料が
開示されなかった(平成21年8月3日現在).

したがって,月期別に外来・入院の
時間外受診件数の変化を解析できたのは,
8医療機関,92か月期分であった
(一部の施設は,該当する月期の
資料を有していなかったため,
12か月期×8医療機関=96か月期分
とはならなかった).

保険外負担徴収の前後における,
医療機関および各月期別の
時間外受診比率を図に示す.
横軸に外来,縦軸に入院の変化を示している.

保険外負担徴収後における時間外の
外来受診数は,徴収前・前々年の同月期の
平均に比べて78%(中央値)および
80%(平均)であり,有意な減少が
認められた(P<0.001).

一方,時間外の入院数は,徴収前・前々年の
同月期の平均の98%(中央値)および
100%(平均)であり,統計学的にも
有意な減少は認めなかった(P=0.76).

しかし,保険外負担徴収後の徴収前に対する
受診比率(外来・入院)は,
最小値で51%および59%,
最大値で132%および157%と
ばらつきが大きかった.


●考察

保険外負担の徴収により,
時間外受診が減少することは十分予想される.
しかし,重症で入院を要する患者
受診を控えてしまう危険性も否定できない5).

したがって,こうした制度の導入にあたっては,
通達4)にあるように,「緊急やむを得ない
事情による時間外の受診については
従前通り診療報酬点数上の時間外加算の
対象となり,患者からの(著者注:保険外の)
費用徴収は認められない」ことを
周知させなければならない.

本研究においては,選定療養(時間外診療)
による保険外負担の徴収が,外来受診数を
減少させるものの,時間外の入院数を
減らすとは統計学的に言えなかった.

こうした制度の導入施設数が少ないこと,
保険外負担の徴収前後における
受診数の比率にばらつきが大きいことから,
現時点では「保険外負担の徴収は
時間外の入院数を減らさない」と
一般的な結論を下すことはできない.

しかし,保険外負担の徴収が乏しい
時間外の医療資源を温存する方法の
ひとつとして保険外負担の徴収を
検討する余地は残されているのではないだろうか.

もちろん,各医療機関における
保険外負担の最高額が850円から8400円と
ばらつきが大きい.

また,時間外受診において大半を占める
乳幼児6)が保険外負担の徴収対象外である
施設もあり,保険外負担の徴収方法にも
統一性がない.

したがって,今後こうした制度を導入する
施設が増加してきた場合には,
保険外負担の徴収額や徴収対象年齢など,
徴収条件を検討する必要があろう.

特に,受診抑制により重症患者
予後が悪化しないことを
再確認することは必須である.

なお,選定療養による保険外負担の徴収は,
受診抑制だけではなく,受診時間帯を
変更させる手段としても効果があると考えられる.

時間外とはいえ,午前0時以前の
準夜帯においては,多くの成人が
就寝していない.

したがって,日中に受診できない患者の診療を,
0時以降の深夜帯から0時以前の
準夜帯に誘導できれば,当直体制で
維持されている救急外来の医師・看護師の
疲弊を軽減することが可能である.

具体的には,準夜帯の保険外の
自己負担金を低額に,深夜帯の自己負担金を
高額にすることで,受診する時間帯を
深夜帯から準夜帯に
誘導できるのではないだろうか.

重症患者が受診できない悲劇を防ぎ,
医療者の疲弊を最小限にする方法としては,
一考の余地があると思われる.

医療資源は無尽蔵ではない.
限りある資源を有効活用するために,
制度設計をどうするのか.
医療政策の設計者と病院の管理者に
負わされた責任は重い.


表 選定療養(時間外診療)による
保険外負担の徴収を厚生局に報告した200床
以上の国公立病院(平成20年10月現在)


 施設名            
共立蒲原総合病院*  

県名  徴収開始 病床数 徴収の最高額
 静岡  H12.2.1  320   850

一宮市立市民病院*       
 愛知  H12.7.1  530  4410

北海道大学病院*         
 北海道 H12.10.2 936   650

国立病院機構宇多野病院     
 京都  H16.7.1  400   893

国立国際医療センター国府台病院 
 千葉  H17.10.1 772  1000

磐田市立総合病院        
 静岡  H18.11.1 500  6950

福島県立医科大学附属病院    
 福島  H20.3.1  778  7300

焼津市立総合病院        
 静岡  H20.4.1  572  4800

市立島田市民病院        
 静岡  H20.5.7  550  4800

藤枝市立総合病院        
 静岡  H20.5.7  654  4800

山形大学医学部附属病院*    
山形  H20.6.1  604  8400
 
榛原総合病院          
 静岡  H20.6.2  408  4800


*時間外の受診数(外来・入院)に関する
資料の開示がなされなかった医療機関
(平成21年8月3日現在)

『表 選定療養(時間外診療)国公立病院』


臨時vol 268 「選定療養導入による時間外受診への影響について」



時間外患者の料金を増やす。
時間外加算金をとる。
って言うと必ず来る反論が、
「値段を上げると時間外に来る患者が、
来にくくなって、重症化してしまうからダメだ。」

っていう事なんですけど。

今回の論文では、12病院と
数が少なかったっていう面もあるけど。
入院患者(重症患者)の数は
減っていない
んですから。

そういう事はないようだ、
って事が言えるんじゃないですかね。
あくまでも、今のところですけどね。

一方、外来患者軽症患者)に関しては、
平均値が80%って事ですから。
2割減った、っていう事ですよね。

具体的に、どの位の値段なのかを見てみると。

850円から8400円、
とかなりばらつきがあります。

数が少ないので、微妙ですけど。
おおざっぱに、850円―1000円。
っていう病院と、
4000円―8400円。
っていう病院と、2通りに分けられるんで。

どの位の値段だとどの位患者が減ったのか。
っていう事までわかると良いですよねー。

1000円以下だとたいした効果ないけど。
4000円以上なら、
軽症患者の数が3割以上減った、とか。

だって、五百円自己負担増えますよ。
って言われても、病院に来るけど。
五千円ならやめようかな、
って事だってありますよね。

もう少し病院の数が増えたら、
どの位の値段なら軽症患者数の
抑制効果があったのか。

っていう事までわかると
非常に良いと思います。



ちなみに、鳥取大学医学部付属病院は、
5250円時間外加算金をとったら、
軽症患者の数が半分になったようですよ。

「勤務医 開業つれづれ日記・2」
からの情報です。
いつもお世話になっております。




「特別料金」が効果 
救命救急軽症受診 大幅に減る


鳥取大学医学部付属病院
(米子市西町、豊島良太病院長)は、
夜間や休日に受診する軽症患者
特別料金の負担を求めている
救命救急センターについて、
料金の徴収を始めた今年8月の
軽症患者数が昨年同月に比べて
半減したと発表した。

時間外診療特別料金を負担するのは、
診療時間外や休日に治療を受けて
入院を必要としなかった患者

診療費とは別に5250円を求められる。

今年4月以降の軽症患者数を
昨年同月と比較すると、4月が181人(26・1%)減の
512人、5月が126人(15・2%)減の701人、
6月が233人(33・8%)減の457人、
7月が304人(36・5%)減の529人。

本年度は減少傾向にあるが、8月は375人(50・9%)減の
362人と、減少幅が大きかった。

同病院は「8月は重症患者数が増え、
広域から受け入れるなど本来の役割を果たせている。
軽症の方にはできるだけ
かかりつけ医を受診してほしい」としている。

同センターは、重篤な患者を受け入れる
救急医療機関。

しかし、2008年度の受け入れ総数
1万1511人のうち85・7%の
9859人が軽症患者と、
軽症患者の対応に追われるのが実態で、
重篤な患者の治療への支障が懸念されていた。


『開業つれづれ:「「特別料金」が効果 
救命救急軽症受診 大幅に減る」 
5250円で防げたかもしれない救急崩壊』


『日本海新聞:2009年09月27日』



個人的には、五百円とか千円では、
受診抑制効果は少ないと思います。

もちろん、地域性とか病院に来る
患者の属性なんかもあるでしょうから。
一概には言えないのですが。

2年前くらいから言っているように、
五千円くらい、というのが
一つの目安になるんじゃないかな、
と思います。

鳥取でも軽症患者半減していますしね。

それと、救急車の有料化ですね。
これも、軽症患者に関してだけ、
というのでも良いと思いますけど。

軽症患者の救急車の料金は、
1万円とか2万円位
良いんじゃないでしょうかね。

もしくは、全員からもらって、
医療費に含めて保険適応にする、とか。
重症患者は後から返す、
とかでも良いのかもしれませんけどね。


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