「たらい回し」っていう言葉は、
さすがに最近はあまり聞かなくなりましたが。
去年くらいまでは、マスコミでも
連発されていましたよね。
「病院が救急車を断るなんて、けしからん」
という意見もたくさん出ましたけど。
「24時間365日、患者を絶対に断らない」
というのは、実際には無理ですよ。
百歩譲って、それを出来る病院があるとしたら、
たくさん医師も看護師もスタッフもいて。
空きベッドもたくさんないと無理ですから。
ほんの、一握りの病院しか出来ません。
現在の日本の医療では、医療費抑制政策で、
診療報酬が低く抑えられていますから。
ほとんど、満床にしないと、病院が赤字に
なってしまうんですよ。
だから、多くの病院では、空きベッドは少なく
ほとんど満床の状態です。
空きベッドが多い病院っていうのは、
医師が少なくて、患者が少ない。
そして、赤字の病院くらいしかないですから。
そんな人手も足りない、金もない病院で、
「絶対に断らない救急」なんて出来るはずありません。
たくさん医師も看護師も医療スタッフもいる病院、
というのは、救急隊や近隣の病院、
周辺の患者さんからも信頼されている事が多いので。
毎日たくさんの患者さんが来ますから。
受け入れられる患者の数も多いのですが、
受け入れられる数以上の患者が来てしまえば、
断らざるをえない、という場合もあります。
まあ、「断らない救急」というのを前提としているから、
ますます医療崩壊が進む、っていう事もあるので。
むしろ、「断る救急」というか。
こういう患者は断る、こういう患者は受ける。
という基準を、最初からきちんと決めてしまう、
という事にしてしまった方が良いと思いますよ。
医師のための専門検索メディア
MT proに、「断る救急」に関しての記事が
出ていたので、ここで紹介させていただきますね。
救急医療立て直しの好手「断る救急」
○洛和会音羽病院は「断らない救急」
を展開しています
皆様こんにちはorこんばんは。
洛和会音羽病院の谷口です。
相変わらずこのコラムも脈絡なく,
しかし確実に進んできております。
ご覧の先生方の休息の一服に貢献しているでしょう。
と言いつつも,今回もがんばっていってみましょう。
ご存じの方もおられるとは存じますが,
私の勤務している洛和会音羽病院は,
「断らない救急」を展開しています。
救急車の応需率は99.8%以上,
実際年間に断ったのは2例です。
そして,この2例は,本当に断らないと
ERが破綻してしまいそうだから断ったものです
(当院では断ると,後でその断ったことが
正当であるのか,院長先生の前で
検証会議が開かれます)。
しかし,これは別に当院に限ったものでなく,
日本全国でいくつもの救急病院で見られる姿勢です。
ですから,当院ばかりを取り上げて「断らない救急」
としてテレビで紹介されるのは,かなり問題があると,
谷口は本気で思っています。
さらに,もっと苦労されていたり,
いいことをされている施設があるでしょうから,
当院の未熟さを振り返ると,
ある種の申し訳なさも感じています。
また機会がありましたら,このマスコミ報道などに
ついても,このコラムで述べてみたいと思っています。
いつのまにか脱線、うーむ。
閑話休題。
○管理職は患者を診療せず,
現場のマネージメントに徹する
「断らない救急」は基本だー!!と,いつの間にか
谷口も本気で,唱えるようになっていました。
また,そう思わないと,とても次から次へと
訪れる救急患者に献身的に(?)
対応できないからという理由もあります。
今から数年前,総合診療科副部長と
救急部副部長を兼任することになり,
主として救急に
従事するようになった当初,この音羽病院の
「断らない救急」が
「常に危険と隣り合わせだー!」
と背筋が寒くなったことを覚えています。
前任地での救命救急センターでは,
救急外来の状態などで断ることができましたので,
何が何でも断らないという形態には
初めて出くわしたのです。
しかし,これは,組織や診療の仕方で
かなり改善できました。
つまり,われわれ管理職が基本的には
自ら患者を診療せず,ERの現場の
マネージメントに徹することでした。
もちろん,研修医のスーパーバイズは
同時にできましたし,言い方は悪いですが,
軽症疾患のwalk-inは,さっさと診ることも
できましたので,そこで患者さんが滞らないように
していた部分もありました。
研修医教育も工夫すれば,
いかようにも行えました。
しかし,基本的にはマネージメントに徹します。
救急車で重症患者が来て,さらにもう一台
というときに,どこに患者さんを入れてもらうか,
誰が診るのか,などを限られた短時間で
マネージします。
このことは以前,Medical Tribune
でも書かせていただきました(関連記事)。
おそらく,上記したことは,
どの施設でもされているでしょう,
特に目新しいことではないと思います
(じゃあ,そんなにスペースとって力説するな,
なんて言わないで)。
しかし。
○増える救急医療の需要,
でも即効的な救急医補充は期待できません
最近,思いもよらない救急診療形態が登場しました。
それは「断る救急」です。
こう書くと,ちょっと語弊あります。
いや,かなり語弊があります。
詳しく解説してみましょう。
この数年,救急医療の崩壊が叫ばれ,
限界に達してきていることは言うまでもありませんし,
このコラムでも何度となく書かせていただいています。
昭和大学救急医学講座教授の有賀徹氏は
「救急医療の需要は増える一方なのに,
供給側は逆に減る傾向にある」
とおっしゃっているようです。
落ちこぼれの崖っぷちERドクターの
谷口もそう思います。
さらに,別の医大の高度救命センターの教授先生は
「医療は公的サービスなのだから,
利用できるサービスはしっかり活用しないと損,
という患者の権利意識の高まりがあると考えられる」
とおっしゃっていたようです。
このコラムは基本的には
医療従事者しか見えませんので,
多くの方がアグリーするところと思います。
これまでもこのコラムで述べてきたように,
おいそれと救急に従事する医師は増えません。
研修医の救急志向が高まっているようにも
現場では感じますが,仮に彼らが救急専従医を
目指したとしても,一人前になるには
5~10年はかかるでしょう。
すると即効的な救急医補充は期待できません。
でも患者は増えていく悪循環にさらに陥っていきます。
ととと。
これでは,救急医がいかにスーパーマンみたいな
医師の集まりでも,いつか疲弊が見えてくるのは
言うまでもありません。
そこで,上述した,ある意味新しい
救急診療形態「断る救急」が登場してきたのです。
これでも,まだまだ誤解を生じますから,
さらに解説を続けます。
○救急医療崩壊を回避した事例
walk-in患者を0時まで受け入れないなど
北海道函館市は,1976年に早くも
夜間救急体制を整えていた素晴らしい都市です。
しかし,この函館市もご多分にもれず
患者が急増し,2次・3次救急を担う
市立病院は火の車となっていました。
さらに市内の2次救急の輪番病院も
当番日を減らしてほしいといい,
「救急医療崩壊」は目の前であったそうです。
2007年,医師会や市が中心となって
救急体制を見直し,2008年から9つの
2次救急病院はwalk-inの患者に限り
0時まで「基本的に受け入れない」
方針となりました。
病院の玄関に受入制限の趣旨を記した
ポスターを貼り市民に周知させ,
さらに玄関付近の電気を消したのでした。
では,0時までのwalk-in患者はどうしたのか?
それは,夜間急病センターや開業医さんが
カバーしたのでした。
このおかげで2次救急病院の当直医の
負担が減り,激務に耐えられずやめる医師も
減ったとのことでした。
この「断る救急」はどうなのか。
救急による収支などの面は,
前線の将校である谷口にはよくわかりません。
しかし,最前線の将校・兵士の負担や
疲弊を見ていると,こちらのほうが,
救急現場では現実味を
帯びているかもしれません。
ほかにも,各地で涙ぐましい,いや,
一時的でない将来にも続けられる継続性があり,
問題の生じない救急体制の構築は
いくつかあるようです。
ER看護師が電話相談する体制を整えた病院
(焼津市立病院),住民がどのような状態な
救急受診すべきか参考になるようなテキストをつくって
配布した病院(大垣市民病院),救急医の
疲弊を心配しながらも受診してしまう問題に
地域住民とともにどう立て直していくか
ともに考えたり(いくつかの自治体)。
いつも解決の糸口の見えない終わり方で恐縮ですが,
救急当直医が疲弊せず,それでいて救急の
質や体制を落とさないためには,結局は
行政主導の救急体制の再構築がいる
ということなのでしょうね。
音羽病院は,元気な研修医が多く,
内心は嫌かも知れないけど協力してくださっている
専門科の先生方が多いので,「断らない救急」
ができているのですね。
これは,全ての救急の
モデルケースにはしにくいですね。
「断る救急」をうまく構築して
医者も患者もうまく共存できる救急体制を
つくることが崩壊目前,否,
一部崩壊した救急を立て直す好手の
1つであることは確かなようです。
洛和会音羽病院 京都ER救急センター
谷口 洋貴
「2009年10月14日:MT pro」
会員制のため、ログインが必要です。
「walk-in患者」っていうのは、
時間外に歩いて救急外来に来る患者の事です。
時間外じゃなくても良いのかな。
救急車で来る患者以外の患者、
って言った方がわかりやすいかな。
函館の話は、一年くらい前に
どっかのメディアで見た事があります。
たしか、函館では、時間外の患者の数が
10年で2倍になったんじゃかったかな。
でも、救急車の数は横ばい。
という事は、時間外の軽症患者の数が、
2倍以上になった、っていう事です。
そいで、救急をやっている医師が疲弊して
どうしようもなくなって。
行政が重い腰を上げた、っていう
経緯だったと思います。
0時までは、救急車以外の患者は
全員近くの救急センターに行ってもらう。
っていう事にしたら、それ以外の時間も
歩いてくる患者の数が減った。
という話も、ちらっと聞きました。
もちろん、行政だけでなく、
地方の医師会の協力も必要なんですけど。
こういう事が、全国で行われれば、
多少は救急医療も良くなるんですがねー。
あと、「輪番体制」っていうのは、
絶対にやった方が良いですよ。
民間病院が多いとこだと、
輪番日以外の患者の数が減るから、
売り上げが減って困るんで、輪番制には反対。
なんて、馬鹿な事を言って
現場の医師を疲弊させる病院。
なんてのもありますけど。
輪番、当番制にして、当番日の病院は、
救急患者のために空きベッドを作ったら、
その分は一部補助しますよ。
という事にすれば良いんですよ。
そうすれば、100%患者を断らない、
っていうのは無理としても。
当番の病院は、「ベッドが空いていない」
という理由で患者を断る事は少なくなるし。
当番日以外の病院は患者の数が少なくて、
当直の医師もそんなに疲弊しない。
当番の病院は、患者がたくさん来るのが
最初からわかっているわけですから。
その分、当直の医師数、看護師やスタッフの
数を増やして、対応できますし。
当番日の数に応じて、空けたベッドの数に
応じて補助金の額も増えれば、
たくさん地域の救急に貢献している病院に
たくさんの補助金を出す。
っていう事になりますから。
良い制度だと思うんですけどねー。
今は、当番病院が「勝手に」
当番日の日かその前の日までに、
患者を退院させてベッドを空けているから。
もし、救急の患者が思っていたよりも
少なかったとしたら、
完全に赤字になってしまう。
というのが現実です。
赤字になったら、医師やスタッフも雇えないし、
新しい医療器材なんかも買えないですから。
より良い医療が出来なくなってしまうんですよ。
だから、赤字にならない程度、
でしかできないんですよ。
当番日、輪番日に関しては、
空きベッドを作ったら、その分を
一部でも補助しますよ。
という事になれば、今以上に
ベッドを開けておく事も可能ですから。
「空きベッドがない」という理由で、
患者を断る事は少なくなるし。
経営的にも、病院は助かるんですよ。
地域医療っていうのは、公立病院だけで
守っているのではなく。
むしろ、民間の病院でも赤字覚悟で
救急患者を受け入れている。
という所も、実際には多いのですけど。
民間だから、補助金はほとんどない。
っていうのは、やっぱりおかしいですよ。
民間病院で、自分の利益しか考えないで、
当番制なんかやらない。
という病院には、補助金なんか
あげる必要はないと思うけど。
民間病院、公立病院にかかわらず、
地域が行政ぐるみで、地域医療を
崩壊から逃れるような取り組みを
しているところには、補助金を出す。
という事をすべきだと思うんですよね。
もちろん、病院だけでなく、
開業医が軽症患者は診る。
っていうところも含めてね。
厚労省も、いろんな補助金を
考えているみたいだけど。
効果のあるやり方でやってほしいですね。
さすがに最近はあまり聞かなくなりましたが。
去年くらいまでは、マスコミでも
連発されていましたよね。
「病院が救急車を断るなんて、けしからん」
という意見もたくさん出ましたけど。
「24時間365日、患者を絶対に断らない」
というのは、実際には無理ですよ。
百歩譲って、それを出来る病院があるとしたら、
たくさん医師も看護師もスタッフもいて。
空きベッドもたくさんないと無理ですから。
ほんの、一握りの病院しか出来ません。
現在の日本の医療では、医療費抑制政策で、
診療報酬が低く抑えられていますから。
ほとんど、満床にしないと、病院が赤字に
なってしまうんですよ。
だから、多くの病院では、空きベッドは少なく
ほとんど満床の状態です。
空きベッドが多い病院っていうのは、
医師が少なくて、患者が少ない。
そして、赤字の病院くらいしかないですから。
そんな人手も足りない、金もない病院で、
「絶対に断らない救急」なんて出来るはずありません。
たくさん医師も看護師も医療スタッフもいる病院、
というのは、救急隊や近隣の病院、
周辺の患者さんからも信頼されている事が多いので。
毎日たくさんの患者さんが来ますから。
受け入れられる患者の数も多いのですが、
受け入れられる数以上の患者が来てしまえば、
断らざるをえない、という場合もあります。
まあ、「断らない救急」というのを前提としているから、
ますます医療崩壊が進む、っていう事もあるので。
むしろ、「断る救急」というか。
こういう患者は断る、こういう患者は受ける。
という基準を、最初からきちんと決めてしまう、
という事にしてしまった方が良いと思いますよ。
医師のための専門検索メディア
MT proに、「断る救急」に関しての記事が
出ていたので、ここで紹介させていただきますね。
救急医療立て直しの好手「断る救急」
○洛和会音羽病院は「断らない救急」
を展開しています
皆様こんにちはorこんばんは。
洛和会音羽病院の谷口です。
相変わらずこのコラムも脈絡なく,
しかし確実に進んできております。
ご覧の先生方の休息の一服に貢献しているでしょう。
と言いつつも,今回もがんばっていってみましょう。
ご存じの方もおられるとは存じますが,
私の勤務している洛和会音羽病院は,
「断らない救急」を展開しています。
救急車の応需率は99.8%以上,
実際年間に断ったのは2例です。
そして,この2例は,本当に断らないと
ERが破綻してしまいそうだから断ったものです
(当院では断ると,後でその断ったことが
正当であるのか,院長先生の前で
検証会議が開かれます)。
しかし,これは別に当院に限ったものでなく,
日本全国でいくつもの救急病院で見られる姿勢です。
ですから,当院ばかりを取り上げて「断らない救急」
としてテレビで紹介されるのは,かなり問題があると,
谷口は本気で思っています。
さらに,もっと苦労されていたり,
いいことをされている施設があるでしょうから,
当院の未熟さを振り返ると,
ある種の申し訳なさも感じています。
また機会がありましたら,このマスコミ報道などに
ついても,このコラムで述べてみたいと思っています。
いつのまにか脱線、うーむ。
閑話休題。
○管理職は患者を診療せず,
現場のマネージメントに徹する
「断らない救急」は基本だー!!と,いつの間にか
谷口も本気で,唱えるようになっていました。
また,そう思わないと,とても次から次へと
訪れる救急患者に献身的に(?)
対応できないからという理由もあります。
今から数年前,総合診療科副部長と
救急部副部長を兼任することになり,
主として救急に
従事するようになった当初,この音羽病院の
「断らない救急」が
「常に危険と隣り合わせだー!」
と背筋が寒くなったことを覚えています。
前任地での救命救急センターでは,
救急外来の状態などで断ることができましたので,
何が何でも断らないという形態には
初めて出くわしたのです。
しかし,これは,組織や診療の仕方で
かなり改善できました。
つまり,われわれ管理職が基本的には
自ら患者を診療せず,ERの現場の
マネージメントに徹することでした。
もちろん,研修医のスーパーバイズは
同時にできましたし,言い方は悪いですが,
軽症疾患のwalk-inは,さっさと診ることも
できましたので,そこで患者さんが滞らないように
していた部分もありました。
研修医教育も工夫すれば,
いかようにも行えました。
しかし,基本的にはマネージメントに徹します。
救急車で重症患者が来て,さらにもう一台
というときに,どこに患者さんを入れてもらうか,
誰が診るのか,などを限られた短時間で
マネージします。
このことは以前,Medical Tribune
でも書かせていただきました(関連記事)。
おそらく,上記したことは,
どの施設でもされているでしょう,
特に目新しいことではないと思います
(じゃあ,そんなにスペースとって力説するな,
なんて言わないで)。
しかし。
○増える救急医療の需要,
でも即効的な救急医補充は期待できません
最近,思いもよらない救急診療形態が登場しました。
それは「断る救急」です。
こう書くと,ちょっと語弊あります。
いや,かなり語弊があります。
詳しく解説してみましょう。
この数年,救急医療の崩壊が叫ばれ,
限界に達してきていることは言うまでもありませんし,
このコラムでも何度となく書かせていただいています。
昭和大学救急医学講座教授の有賀徹氏は
「救急医療の需要は増える一方なのに,
供給側は逆に減る傾向にある」
とおっしゃっているようです。
落ちこぼれの崖っぷちERドクターの
谷口もそう思います。
さらに,別の医大の高度救命センターの教授先生は
「医療は公的サービスなのだから,
利用できるサービスはしっかり活用しないと損,
という患者の権利意識の高まりがあると考えられる」
とおっしゃっていたようです。
このコラムは基本的には
医療従事者しか見えませんので,
多くの方がアグリーするところと思います。
これまでもこのコラムで述べてきたように,
おいそれと救急に従事する医師は増えません。
研修医の救急志向が高まっているようにも
現場では感じますが,仮に彼らが救急専従医を
目指したとしても,一人前になるには
5~10年はかかるでしょう。
すると即効的な救急医補充は期待できません。
でも患者は増えていく悪循環にさらに陥っていきます。
ととと。
これでは,救急医がいかにスーパーマンみたいな
医師の集まりでも,いつか疲弊が見えてくるのは
言うまでもありません。
そこで,上述した,ある意味新しい
救急診療形態「断る救急」が登場してきたのです。
これでも,まだまだ誤解を生じますから,
さらに解説を続けます。
○救急医療崩壊を回避した事例
walk-in患者を0時まで受け入れないなど
北海道函館市は,1976年に早くも
夜間救急体制を整えていた素晴らしい都市です。
しかし,この函館市もご多分にもれず
患者が急増し,2次・3次救急を担う
市立病院は火の車となっていました。
さらに市内の2次救急の輪番病院も
当番日を減らしてほしいといい,
「救急医療崩壊」は目の前であったそうです。
2007年,医師会や市が中心となって
救急体制を見直し,2008年から9つの
2次救急病院はwalk-inの患者に限り
0時まで「基本的に受け入れない」
方針となりました。
病院の玄関に受入制限の趣旨を記した
ポスターを貼り市民に周知させ,
さらに玄関付近の電気を消したのでした。
では,0時までのwalk-in患者はどうしたのか?
それは,夜間急病センターや開業医さんが
カバーしたのでした。
このおかげで2次救急病院の当直医の
負担が減り,激務に耐えられずやめる医師も
減ったとのことでした。
この「断る救急」はどうなのか。
救急による収支などの面は,
前線の将校である谷口にはよくわかりません。
しかし,最前線の将校・兵士の負担や
疲弊を見ていると,こちらのほうが,
救急現場では現実味を
帯びているかもしれません。
ほかにも,各地で涙ぐましい,いや,
一時的でない将来にも続けられる継続性があり,
問題の生じない救急体制の構築は
いくつかあるようです。
ER看護師が電話相談する体制を整えた病院
(焼津市立病院),住民がどのような状態な
救急受診すべきか参考になるようなテキストをつくって
配布した病院(大垣市民病院),救急医の
疲弊を心配しながらも受診してしまう問題に
地域住民とともにどう立て直していくか
ともに考えたり(いくつかの自治体)。
いつも解決の糸口の見えない終わり方で恐縮ですが,
救急当直医が疲弊せず,それでいて救急の
質や体制を落とさないためには,結局は
行政主導の救急体制の再構築がいる
ということなのでしょうね。
音羽病院は,元気な研修医が多く,
内心は嫌かも知れないけど協力してくださっている
専門科の先生方が多いので,「断らない救急」
ができているのですね。
これは,全ての救急の
モデルケースにはしにくいですね。
「断る救急」をうまく構築して
医者も患者もうまく共存できる救急体制を
つくることが崩壊目前,否,
一部崩壊した救急を立て直す好手の
1つであることは確かなようです。
洛和会音羽病院 京都ER救急センター
谷口 洋貴
「2009年10月14日:MT pro」
会員制のため、ログインが必要です。
「walk-in患者」っていうのは、
時間外に歩いて救急外来に来る患者の事です。
時間外じゃなくても良いのかな。
救急車で来る患者以外の患者、
って言った方がわかりやすいかな。
函館の話は、一年くらい前に
どっかのメディアで見た事があります。
たしか、函館では、時間外の患者の数が
10年で2倍になったんじゃかったかな。
でも、救急車の数は横ばい。
という事は、時間外の軽症患者の数が、
2倍以上になった、っていう事です。
そいで、救急をやっている医師が疲弊して
どうしようもなくなって。
行政が重い腰を上げた、っていう
経緯だったと思います。
0時までは、救急車以外の患者は
全員近くの救急センターに行ってもらう。
っていう事にしたら、それ以外の時間も
歩いてくる患者の数が減った。
という話も、ちらっと聞きました。
もちろん、行政だけでなく、
地方の医師会の協力も必要なんですけど。
こういう事が、全国で行われれば、
多少は救急医療も良くなるんですがねー。
あと、「輪番体制」っていうのは、
絶対にやった方が良いですよ。
民間病院が多いとこだと、
輪番日以外の患者の数が減るから、
売り上げが減って困るんで、輪番制には反対。
なんて、馬鹿な事を言って
現場の医師を疲弊させる病院。
なんてのもありますけど。
輪番、当番制にして、当番日の病院は、
救急患者のために空きベッドを作ったら、
その分は一部補助しますよ。
という事にすれば良いんですよ。
そうすれば、100%患者を断らない、
っていうのは無理としても。
当番の病院は、「ベッドが空いていない」
という理由で患者を断る事は少なくなるし。
当番日以外の病院は患者の数が少なくて、
当直の医師もそんなに疲弊しない。
当番の病院は、患者がたくさん来るのが
最初からわかっているわけですから。
その分、当直の医師数、看護師やスタッフの
数を増やして、対応できますし。
当番日の数に応じて、空けたベッドの数に
応じて補助金の額も増えれば、
たくさん地域の救急に貢献している病院に
たくさんの補助金を出す。
っていう事になりますから。
良い制度だと思うんですけどねー。
今は、当番病院が「勝手に」
当番日の日かその前の日までに、
患者を退院させてベッドを空けているから。
もし、救急の患者が思っていたよりも
少なかったとしたら、
完全に赤字になってしまう。
というのが現実です。
赤字になったら、医師やスタッフも雇えないし、
新しい医療器材なんかも買えないですから。
より良い医療が出来なくなってしまうんですよ。
だから、赤字にならない程度、
でしかできないんですよ。
当番日、輪番日に関しては、
空きベッドを作ったら、その分を
一部でも補助しますよ。
という事になれば、今以上に
ベッドを開けておく事も可能ですから。
「空きベッドがない」という理由で、
患者を断る事は少なくなるし。
経営的にも、病院は助かるんですよ。
地域医療っていうのは、公立病院だけで
守っているのではなく。
むしろ、民間の病院でも赤字覚悟で
救急患者を受け入れている。
という所も、実際には多いのですけど。
民間だから、補助金はほとんどない。
っていうのは、やっぱりおかしいですよ。
民間病院で、自分の利益しか考えないで、
当番制なんかやらない。
という病院には、補助金なんか
あげる必要はないと思うけど。
民間病院、公立病院にかかわらず、
地域が行政ぐるみで、地域医療を
崩壊から逃れるような取り組みを
しているところには、補助金を出す。
という事をすべきだと思うんですよね。
もちろん、病院だけでなく、
開業医が軽症患者は診る。
っていうところも含めてね。
厚労省も、いろんな補助金を
考えているみたいだけど。
効果のあるやり方でやってほしいですね。
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