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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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外科医「過剰労働」
外科医の労働が過剰だ、
っていうアンケート結果が、
日本外科学会から発表されましたね。

私は循環器内科なので、
外科ではないんですが。
循環器内科っいうのは、どっちかと言うと、
内科の中では外科に近い科なんですよ。


外科っていうのは、大雑把に言うと、
手術をする科」。

内科っていうのは、
手術をしない科」という言い方で分類されます。

循環器内科内科ですから、
基本的には手術はしないんですが。
ペースメーカー植え込み術、
っていうのは小さい手術はします。

それに、いわゆる「血管内手術
と言われているような手術もします。
医学的な言い方をすると、
「冠動脈形成術(PCI)」
とか、「心臓カテーテル手術」、
「冠動脈ステント留置術」
という言い方をされるものです。


心筋梗塞」っていう病気は、
心臓に血液や酸素を与えている、
心臓の表面にある「冠動脈」という血管。
これが、突然詰まる病気です。

日本人の死因の第二位は、
「心不全」、「心筋梗塞」といった
心臓に関する病気ですから。
死亡する事もある重大な病気です。

こういう病気は、「突然」なりますから。
ほどんどの場合、緊急手術(検査)になります。

外科っていうのも、急に腸が詰まった、とか。
腹膜炎になった、とか。
緊急でやる手術が多いから大変。
というのは、全国どこでも一緒です。

緊急手術検査が多い、という意味では、
外科循環器内科は似ている、
という言い方もできると思います。

日本循環器学界では、こういうアンケートは
行われていないんですけど。
是非、やってもらいたいものですね。



改善なく依然「過剰労働」 
日本外科学会が労働実態調査


日本外科学会・外科医労働環境改善委員会は、
外科医療のシステム改革を推進する
基礎データとする目的で、学会員の
典型的な1週間について
タイムスタディ調査を実施した。

調査機関は昨年12月4日から
今年3月2日までで、学会員約3万8000人のうち
電子メールアドレスが明らかな
2万人余の会員を対象にアンケート調査を案内し、
1744人から回答を得た。
回答率は全会員数に対し4.5%だった。

外科医の週間平均労働時間は全体で97.6時間。
診療に要した67.2時間のうち、
手術が15.2時間であったのに対し、
手術以外の医業・仕事(以下、手術以外診療)
が52.0時間だった。

診療以外の教育・研究・管理・院外の仕事
(以下、診療以外)に要した時間は、
30.4時間だった(図1)。

特に診療以外の所要時間では、卒後年数が
増えるに従ってカルテ以外の書類書きや
雑事などが増えることが分かった(図2)。
また教育・会議系業務も卒後年数の
増加に伴って増えることが示された。


当直明け勤務はほぼ100%

当直については、回答者の46%が
当直ありと回答し、週間当たりの当直回数は
1回が79%、2回が15%、3回が5%だった。

卒後年数で比べると、当直ありの回答者は
平均16.2年、当直なしの回答者は
平均23.9年だった。

当直明け日の労働時間は12.2時間で、
このうち手術が2時間、手術以外診療が7.1時間、
診療以外が3.2時間。

当直明け日に手術があるとした回答者は42%に達し、
当直明け日に仕事があるとした回答者は99%だった。

調査では平日昼夜以外の労働実態も明らかになった。
休日(土曜午前8時から月曜午前8時前まで)の
勤務時間は、平均19.1時間だった。

手術2%に対し、手術以外診療が62%、
診療以外が37%を占めた。

年収に関する回答では、卒後年数が増えるにつれ、
外勤時間は減り、年収も増えることが示された。

卒後年数1-10年では外勤が12.4時間で
年収は882万円だったのに対し、
卒後31年以上では外勤は2.9時間、
年収は1607万円となった。

国公立・私立を問わず大学病院は
外勤時間が15時間を超えた。

回答者の卒後年数は平均20.3年で、
男女構成(不明を除く)は男性91%、
女性7%だった。

診療科別では消化器外科が37%で最多となり、
次いで心臓血管外科、呼吸器外科が続いた。
調査結果の詳細な解説は、
7月下旬に発行される学会誌に掲載される。


2010年6月7日
提供:Japan Medicine(じほう)




外科医の週間平均労働時間は
全体で97.6時間。


いわゆる「法定労働時間」というのは、
一日8時間で週5日労働ですから。
週40時間

平均で97.6時間という事は、
並の外科法律で決められた労働時間
2.5倍働いている、って事ですね。

過労死の認定基準っていうのが、
月80時間の時間外労働が3ヶ月、
または月100時間の時間外労働が1ヶ月


ですから。
週45時間オーバーしているというのは、
月に直すと、約4倍で200時間ですか。

過労死の基準の2倍ですね。
しかも、あくまでこれ「平均」ですから。
若い外科はもっと働いている、
って事になりますよね。

厚生労働省は、そういう事を
認識しているんでしょうかねー。



検査や治療など、
医者にしか出来ない仕事」
っていうのもありますし。

急に胸が痛くなったとか、お腹が痛い。
だから、緊急の手術や検査が必要だ。
という事に関しては、
医者であるからには、しょうがない。
という事で、ほとんどの医師
納得していると思います。

患者数が多すぎて対応できない、
とかそういうのはあるかもしれませんけどね。

でも、事務員や医療秘書にも出来る仕事を
全部医者に押し付けた結果、
医師の仕事が多すぎる。
その結果、医師労働時間が長い
という事で納得していないという
医師の方が多いんじゃないでしょうかね。
実際のところ。

看護師や事務員は労働組合に入っているから、
そういう力の強い所には遠慮して。
個人主義で労働組合に入っていない医師
全部仕事を押し付けている。
という病院も、残念ながら多いです。


医師の場合は、給料がそれなりに良いですから。
お金の問題で文句を言う人は、
他の職種に比べたら多くないと思いますけど。

逆に言うと、時給の高い医師に、
時給が安い職員でも出来る仕事をやらせる。
という事は、「医療経済額的に損」です。

アメリカなんかは、そういうのが
徹底していますから。
いわゆる「コメディカル」と言われる、
医師以外の医療関係職員が日本の病院の
10倍くらいいるのが平均的です。


日本でもいわゆる「勝ち組病院」
と言われている病院のやり方の基本は。
医師には医師しか出来ない仕事に集中させる」
というやり方をして、そのために、
医療秘書や事務員、助手などのスタッフを雇う。

その結果、患者の数も増えるし、単価も上がる。
人件費は当然増えるけど、それ以上に
収入も増えて病院の利益も増える。

というやり方をしています。

病院で働く「100床当たりの人員」と
「病院の利益率」が比例する、

というのは有名な話です。


看護助手とか医療秘書とか事務員とか。
そういう職種は、医師や看護師、薬剤師など、
資格のいらない職種ですから。

そういう人たちを多く雇ったら、
地域の雇用にも貢献できるし。
病院の利益も上がるし、地域住民の
信頼も得られるんですけどねー。

残念ながら、多くの病院の上の人は、
「目先の利益」しか考えられずに、
力の弱い医師をこき使う
事しか出来ていないのが、今の日本の現状です。

医療崩壊の原因は、国の医療費とか、
政策とか、そういう「マクロの視点」
の問題もあるんだけど。

半分くらいは、理解のない病院の上層部、
とか患者側の問題とか、
「ミクロの視点」でもあるんですけどね。
実際は。




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