現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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福島産科医不当逮捕事件、初公判
はーっ。
今日も疲れたー。
昨日当直で、夜中までメルマガ書いていて、
明け方呼ばれてあんまり眠れなかったし。
先週末は忙しかったから、今日は早く帰って寝るぞー、って思ってたのに。
今日も当直明けの日の夜に、重患が来てしまいました(涙)
そいで、さっき帰ってきて、ブログ書いてまーす。

ま、でも今日(もう昨日ですが)の話題は、当然これ!
医療関係者にとっては、2006年で一番大きな事件だったかもしれない。
福島の産科医、不当逮捕事件
これの初公判が、本日行われましたね。


被告は無罪主張/福島県立大野病院医療過誤事件の初公判

福島県大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、
業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた
産婦人科医K被告(39)
の初公判は26日、福島地裁で開かれ、
K被告は起訴事実を否認し、無罪を主張した。

K被告は同病院に勤務していたことなどを認めたうえで、
「(手術前に)検査をしたうえ、血液も十分に用意した。
普段より慎重に医療行為をした。
冷静にできる限りのことを精いっぱいやった」などと述べた。
患者が死亡したことについては
「じくじたる思い。患者のめい福を祈っている」と語った。

起訴状によると、K被告は平成16年12月17日、
楢葉町の女性=当時(29)=の出産で帝王切開手術を執刀し、
癒着した胎盤をはがし大量出血で女性を死亡させた。
女性が異状死だったのに24時間以内に警察署に届けなかった。

公判では数千例に1例といわれる癒着胎盤という症例に対する
措置の是非が大きな争点になっている。
医師法21条の異状死についても
事件をきっかけに学問的な議論が生じている。

多くの医療団体が捜査に抗議するなど全国的な話題を呼んだ事件は、
発生から約2年を経て本格的な法廷論争に入った。

初公判には一般傍聴席26席に、349人の傍聴希望者が列をつくった。


「2007.1.26,福島民報」


この事件。
まさに医療崩壊元年と言っても良い2006年
その医療崩壊が始まった、元になった事件と言っても過言ではない事件です。

この医療事故医療ミスと叫んで、逃亡の恐れも、証拠隠滅の恐れも
ないのに善良な医師を公衆の面前で逮捕したおかけで。
全国で、お産ができる病院が激減したとも言えるでしょう。
だって、一人でお産をしていたら、いつ刑事事件で訴えられて、
逮捕されるかわからないんですからね。
まあ、当然とも言えるでしょう。

>「(手術前に)検査をしたうえ、血液も十分に用意した。
普段より慎重に医療行為をした。
冷静にできる限りのことを精いっぱいやった」


これでも、結果的に不幸にも患者が亡くなったら、逮捕
こんな世の中では、医療をする人間が減っていくのは当然です。


そうならないために、私はブログ上で、
マスコミが言っているおかしな点を指摘する。
医療現場での過酷な労働条件を記載する。
世界の他の先進国と比較して、日本の医療は少ないとか、
医師が少ないとか。
そういった事実を書いているんですよ。

それで、少しでも多くの人が事実を知って、
世論を形成できれば、マスコミ政府も動く。
そしたら、今の間違った医療費削減政策。
医師削減政策。

マスコミの医師叩きの傾向を変える事ができるかもしれない。

可能性はわずかですが、そう思って書いているんです。


で、長―い目で見て行う事はそれで良いとして。
それが仮に叶っても、後数年後数十年後でしょうから。
それまでに、自分が訴えられているかもしれないので。
やっぱり自己防衛はしなきゃならないんですね、今の世の中。
残念な事なんですけどね。

そいで、私が必ずやっている事は、
「起こるかもしれない危険な事は、事前に患者や家族に言う。」
という事です。

ま、当たり前の事なんですけどね。
でも、私ほど、きつい事を言う人は
少ないんじゃないかなーって思います。

具体例)

患者(特に老人)が入院してきたら。
まず、何故入院になったか、患者や家族に説明します。
これは、当然なんですが。
そいで、どういった治療を行うかって事も説明して。

その時に、患者及び患者の家族に、必ず釘を刺しておきます。
どんな事を言うかと言うと。

「入院して治療をします。
今は、この病気で入院して、その治療をしますが、
治療をしていて、合併症が出る場合もあります。」

と言って、個々の合併症治療をした時に起こる、
避けられない不具合、とか病気の事)の説明をします。

ま、ここまでは、みんなやりますよね。
治療に関する合併症を最初に説明していない医師は、
このご時世、まずいと思いますよ、正直。
もし、説明していないのであれば、
最低限、それは行った方が良いと思いますよ。

で、その後が、ちょっと厳しい言い方になります。

「また、その病気と関係ない病気にかかる場合もあります。
それは、入院していても避けられない事です。
例えば、寝たきりになると、誤嚥性肺炎になりやすくなります。
老人で誤嚥性肺炎になると、命を落とす場合もあります。
年を取ったら、心筋梗塞や脳梗塞、
肺梗塞などの病気になる事もあります。
これらは、一度なってしまうと、
命を落とすかもしれない病気です。

病院にいれば、そういった病気になっても、家にいるよりも
早く気づいて、早く治療ができるかもしれませんが。
入院したからといって、病気にならないわけではありません。
病院には、看護師がいて、必ず当直医もいますけど。
心臓が止まったら、5分位で脳は死にますから。
病院の中にいても、間に合わない場合もあります。」


と、いうような感じです。
医療訴訟のほとんどは患者や家族が思ってもみなかった
事が突然起こって、それで家族が納得がいかなくて訴える

という事だと思うので。
事前に最悪の事態もある、ってわかっていれば、
患者の家族も感情的になって訴える事は
少ないんじゃないかなー、って思っています。

良くあるパターンとしては、
「元気に歩いて病院に来たのに、なんでこうなるんだー。」
みたいなパターンです。

万が一の事でも、事前に言っておけば、
不幸にもそうなってしまった患者がいた場合に、
家族に説明しても、納得して貰える確率は高いと思いますので。

後からいくら説明しても、「単にいい訳を言っている
と思われたら、何回説明しても聞いてくれない事も多いですし。

後から10回言うよりも、事前に1回言う方が
効果があるって事もありますので。
時間がない場合でも、ベッドサイドでも良いから、
簡単には説明しますね、私は。

後、訴訟対策って事に関しては、
患者に説明する時に、看護師に一緒に付いてもらって、
その説明内容を、カルテと看護記録に書くって事っすかね。

これは基本だと思いますが。
看護師も忙しいから、付いてくれない時もあるし。
メモには書いても、看護記録には書かない。
って所もありますので。
注意した方が良いですよ、医師の方々は。

カルテへの記載でも、時間が無いときでも、最低限、
合併症とか、そういう悪い方の事柄を説明した、
って一言だけでも書くようにしています。



今日も結局気管内挿管をして、レスピ(人工呼吸器)
ついた私の患者が2人並んでます(汗)

先週末は私が当番で、今週は少し休めるかなー、
って思っていたんですが。
あっさり、その小さな幸せが吹き飛んでしまいました(涙)
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この記事へのコメント
ほんとに.....
医療崩壊元年、だったかもしれないですね。
福島と奈良はかなり鮮烈でした....。
この裁判の行方は大注目です。
無罪だったら不当逮捕で訴えたいですね~。
あの検事!!

ところで、誤飲性肺炎ではなくって「誤嚥性肺炎」ではないかな~と
ちょっと気になった次第です。
yuki[URL] 2007/01/27(土) 02:35 [EDIT]
いやな時代ですな。
 先日、十数年来の腎結石持ちの患者さんを拝見しましたが、前医の受診を自己中止したとやらで、当院で精査したところ、おそらく腎結石によるものと思いますが、片腎が水腎症でかつ高度腎機能障害に陥っていました。
 そのことを説明すると、当の患者さんいわく、「定期通院だけだったから、大丈夫だと思って通院をやめてしまった。腎臓の機能が落ちるなんて聞いてなかった。」なんてことをおっしゃる。
 もちろん、前医が何言ったかは私にはわからないので、なんとも言いようがないのですが、今はホントに事細かいことまで説明しないと、どこからか足下をすくわれてしまう時代です。昔のようになあなあじゃ済まされない。これでは外来にかかる時間が増えて当然だけども、病院の患者は増えていく一方…やっぱりいっぺん崩壊したほうがいいね、と私は常々思っています。
mosriteowner[URL] 2007/01/27(土) 06:43 [EDIT]
We need to solve this problem in any way we can!
このblogから確実に医療費・医師削減政策に反対する潮流が形成されていると思います。
あと、患者さんに対するご説明、自己防衛と書いてらしてますけどそれは患者さんやご家族の心情を護り、安心させることでもあると思います。きつい事を言える人はあんまりいないですよね。
むしろ、内科系の先生なので言葉が丁寧なのかなと思って読みましたヨ。エビは外科の先生と父の緊急手術のお話しをした時は「死んじゃうかもしんないけど俺頑張るから!今0時でしょー、眠いけど頑張るねっ。」という感じで^_^;でも今も尊敬している先生です。
重い患者さんがたくさん見えて大変ですね。皆さん「先生ありがとう!」と思ってますよ…きっと!隙を見て食べて寝てチャージされて下さいませ…(^-^)
エビ[URL] 2007/01/27(土) 07:46 [EDIT]
お疲れ様です。
僕は最近30代の仲間入りをしましたが、やはり当直明けの勤務はしんどいですね。休みの日も病院に行って仕事して、家に帰ると家内にボロクソに怒られてって生活をしています。orz...

年を取ったら、心筋梗塞や脳梗塞、
肺梗塞などの病気になる事もあります。
これらは、一度なってしまうと、
命を落とすかもしれない病気です。


僕はさすがにここまでの説明はしていないです。確かに循環器の患者さんは梗塞のリスクの高い患者さんが多いから、ここまでの説明も必要かもしれませんね。。。
しかし、「自己防衛のためにICを行っている感」はかなりありますよね。本当、「患者さんや家族のためにICしてる」ときのほうが少ないような気がする最近です。
ss[URL] 2007/01/27(土) 11:44 [EDIT]
今日もお疲れ様でした。
ムンテラは大切ですよね。

高齢の方で、状態が悪いのにCPRすらつめていない場合があります。
そういうときは是が非でもムンテラしてもらいますが…

ムンテラした後にカルテに内容を記載したら、家族の方にそれをみてもらって、納得できたかどうかの一筆をもらうようにしたほうがいいんじゃないかと思うんですよね。

それが時間的に、本当にできるのかはまた別の話ですが(汗)
ナースマン[URL] 2007/01/27(土) 14:34 [EDIT]
お疲れ様です。
I 先生、お疲れ様です。
このコメントを読まれる頃には、ちょっとは睡眠補給が出来てらっしゃるといいですねーと思いつつ、書いてます。
福島の不当逮捕v-31本当に医療崩壊の引き金というか、産科医だけでなく、全国の死に物狂いで患者を診てらっしゃる医師全員に弓を引いた事件となってしまいました。
一人の医師の誇りと人生をめちゃくちゃにした罪は許しがたいです。しかし、それを「表彰」した人間もいるなんて…。v-239
裁判の行方を見守るしかないでしょうかねぇ…。
来夢[URL] 2007/01/27(土) 16:02 [EDIT]
お疲れ様でした。
こういう問題はなくならないんでしょうね、こと現在はマスコミが過剰で人の不安を確実にあおってますから。
自分の都合ばかり押し付ける人が昔以上に多くなりましたし、今まで見えなかったこともマスコミのおかげ?で見えやすくなりましたから^^;
警察も消防もきっとあらゆる職種で動きづらくはなってますが、こと医療は命に直結してるからお医者さんの重圧はすごいものがあるでしょうね。
死亡=医療ミスには必ずしもなりえないのに、一部の資格のあやうい医師のせいもあるとは言え、どこまで完璧さを求められるんでしょうね;;


I先生、いきなりですが相互リンクお願いできますでしょうか?
小太郎[URL] 2007/01/27(土) 17:56 [EDIT]
>yukiさん
個人的には、有罪になるはずがないと思っているんですが。
他のマスコミの記事とかみても、なんかこの医者のせいで死んだとか、医療ミスとか、今だにそんな感じの口調ですからねー、世間は。
どうなるか、わかんないですよ。

あ、明らかに漢字の変換ミスですね。
うまく変換できないなー、って思っていろいろやって。
そのままになってましたね。
すいません。
訂正しました。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 18:19 [EDIT]
>mosriteowner先生
ホントに嫌な時代ですねー。
勝手にこなくなったのが悪いのに、それを医者のせいにされたらたまったものじゃないですよね。

ま、前医がどんな話をしていたか、わからないですけどね。

崩壊したら、得するのは一部の利権をもった人だけで、弱者は切り捨てられるのは、目に見えているので。
崩壊させないように、頑張っているつもりなんですけどねー。
ちょっと無理かもしれないですね、正直。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 18:25 [EDIT]
>エビさん
でも、こんな事を言われたら、安心はできないんじゃないですかねー。
いざ、なった時に、納得がいく可能性は高いとは思いますが。

Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 18:27 [EDIT]
>ss先生
循環器は高齢者や、重症患者が多いですからねー。
他の科よりも、亡くなる可能性は高いと思いますね、残念ながら。
そんな中で、苦肉の策って感じでしょうかねー。

説明するのに、かなりの時間を要するんですが。
手技量とか、検査と違って、無料ですけどね、残念ながら。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 18:29 [EDIT]
>ナースマンさん
>ムンテラした後にカルテに内容を記載したら、家族の方にそれをみてもらって、納得できたかどうかの一筆をもらうようにしたほうがいいんじゃないかと思うんですよね。

おー、これは確かに一番良いですよね。
でも、カルテに記載するのは、全部終わって夜中とかになる事も多いですからねー。

でも、ここまでやっても良いのかもしれませんね。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 18:32 [EDIT]
>来夢さん
これだけ騒がれても、まだマスコミはこれが医療ミスでそのせいで、患者は死んだって報道の仕方ですからねー。

裁判の行方を見守るしかないんでしょうね。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 18:33 [EDIT]
>小太郎さん
たしかに、マスコミの影響は大きいと思いますねー。
でも、どうしてそれを信用しちゃうのか、良くわかんないんですよねー、正直。


相互リンクは勿論構いませんよ。
相互リンクしときました。
こちらは、リンク集、医療・健康3
http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-120.html

ってところにしときましたので。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 18:45 [EDIT]
お仕事お疲れさまです。

なんだか、「説明されていなかったから。。。」「こんなことになるかもしれないなんて聞いていなかった」というのは、インターネットや家電製品なんかのトラブルでもよくありますね。

インターネットや家電製品を医療と同列で考えていいものかどうかはわかりませんが。すみません、工学部でそれが1番身近なものでしたので。

「説明書に書いていなかったから」で訴えられたという話もたまに聞きますし、それゆえ、説明書には常識的に考えてわかるような注意書きもありますよね。

お米の袋にも「かぶって遊ぶと窒息の恐れがあります」とか棒つきアイスの袋にも「咥えて遊ばないでください」とか書いてありますし、子どもが読めない漢字で書いてあるので、子ども向けに書いているとは思えませんけど。

治療や手術もこれからはそういう時代なのかもしれませんね。世知辛いぜ(T_T)そのうち、治療や手術前には分厚い冊子(説明書)を渡して危機回避する病院が普通になったりしそうだなんて想像してしまいした。


Dr. I さん、ヤな感じですが、しっかり説明して危機回避がんばってください。私なら本当、説明の様子を録音してきちんとした証拠として残して身の安全を確保したいくらいです。もっともそんなことをすると今度はプライバシーで訴えられますが。。。(^_^;)

ゆきら[URL] 2007/01/27(土) 20:22 [EDIT]
衝撃的でした
本当にK先生の逮捕は衝撃的でした(その後のマスコミの報道姿勢も含めて)。
脳外科やってると循環器と同じように重症が来ますが、緊急で治療が必要な患者さんにも、必要以上に細かな合併症まで説明して、承諾書を何枚も書いてもらって。結局患者さんは情報が多すぎても理解しきれないんですよね..
「医療の限界」が広く理解されて、こんな変な手間や時間を一秒でも早い治療にかけることができる日が戻ってくるのか、治療の度に保険や不動産のように束のような書類に(ほとんど理解できないまま)サインしてもらう世の中になってしまうのか。

厚生労働省主導の医療制度改悪とマスコミ・警察主導の医師バッシング、医療崩壊へ向けての大きな動きを止める事は不可能かもしれません。人間は一度痛い目にあわないと、過ちに気付かない生き物なのかもしれません。
でも、どんな結果になろうとも、医師にしか見えない日本医療の問題点を医師以外に伝え続けるI先生の姿勢、後に大きな力になってくれると信じております。
k104[URL] 2007/01/27(土) 21:11 [EDIT]
>ゆきらさん
>そのうち、治療や手術前には分厚い冊子(説明書)を渡して危機回避する病院が普通になったりしそうだなんて想像してしまいした。

これ、本当になる可能性がありますね。
多分、後数年先の話、近い将来なると思いますよ。

残念ですが、やむを得ないと思いますね、今の現状では。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 22:45 [EDIT]
>k104先生
医者は医療そのものに打ち込める時代が来ると良いのですが。
今の時代は逆行しているようですね、それと。
命を救うよりも、訴訟対策の為に、細かい説明をするとか、事務的な書類とかに、貴重な時間が奪われてるってのが、残念ですね。
Dr. I[URL] 2007/01/27(土) 22:49 [EDIT]

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