現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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医療訴訟の問題を注視しる
『医療崩壊と医師ブログ』
の記事で紹介した、
「農家こうめのワイン」
を書かれているkoumeさんが。
また、新しいコンテンツを作ってくれましたよ!

もう既に、第4弾。
→ 『☆医療問題を注視しる!その4 加古川事件とJBM☆』

いやー、医者でもないのに、
これだけ医療の事を理解をしてくれて。
しかも、すごくわかりやーすく、
医療訴訟に関して説明してくれていますよ。

ホント、こういう人がいてくれて、助かります。
私だけでなく、医師でもファンは多いと思いますよ。
もちろん、一般の方でも多いと思いますが。


今回は、「加古川心筋梗塞事件」に代表される、
医療訴訟についてです。

加古川心筋梗塞事件」っていうのは、
このブログでも何回も書いていますけど。

心筋梗塞患者が、病院に来て。
心筋梗塞って診断して、内科的な治療をして。
すぐに転送先の病院を探そうと思って、
いろんな病院を探していたら、70分かかっちゃって。
結局、心筋梗塞患者が亡くなったんだけど。

すぐに、もっと高度な治療(心臓カテーテル治療;PCI)
が出来る病院に搬送したら助かったはずだから。
3900万円払え、っていう事件です。

すぐに転送先の病院を見つけようと思って、
いろんな病院に電話をかけまくって。
でも、なかなか転送先の病院が決まらなくって。
結局、70分かかった。

心筋梗塞という診断も、すぐに行って。
その間にできる内科的な治療も、
ほとんど完璧
に行った。

相手の病院が、満床とか処置中とかで、
搬送先の病院が決まるのに時間がかかっただけなのに。

すぐに搬送できなかったのは、病院の責任だ。
って事で、3900万円払え。
っていう事件です。

テレパシーか魔法を使える医者以外は、
民事訴訟で負けちゃう
っていう事かな。
この判決。

これは、非常に有名なトンデモ判決の一例です。


私、循環器内科医なんで、心筋梗塞は専門なので。
加古川心筋梗塞事件」に関しては、
このブログでも相当詳しく書いています。
おそらく、日本で一、二を争う位だと思っています。

私が、自分のブログを売り込んだ、
っていうのもあるんですけど(笑)
紹介して頂きましたよ。

加古川心筋梗塞事件に関しての細かい話は、

「加古川、心筋梗塞事件」
「加古川、心筋梗塞事件2」
「加古川、心筋梗塞事件。衝撃の事実」
「加古川心筋梗塞事件、判決文」
「加古川心筋梗塞事件、判決文2」
「加古川心筋梗塞事件、判決文3」
「加古川心筋梗塞事件、判決文4」

に書いてあるので、そちらも参考にしてね!



☆医療問題を注視しる!その4 
加古川事件とJBM☆


「ま、だからこそトンデモ訴訟
とか言われるわけだがな。
もともと理不尽でない、合理的な判断で
訴訟が行われているなら
JBMって言葉が出来るわけも無いしな。」

「えっ、JBMって何?」

「トンデモ訴訟は医療者の
モチベーションを大いに損ないます。
けど、医療訴訟にはそれとは別にもう一つ、
大きな問題点があるんです。」
「それがJBMの確立だ。
こちらは医学そのものに影響を与えている。」

「JBMとはJudgement Based Medicineの略で、
判例に基づいた医療のことです。
EBM・・・Evidence Based Medicine
(医学的根拠に基づいた医療)のもじりで、
2ちゃんねるで作られた造語だそうです。」

「判例に基づいた医療?何それ?」
「判例主義って知ってるか?」
「訴訟で、過去の判例や裁判例を
根拠にして判断するって事でしょ?」

「過去の判例と違う判決を出すと、
過去に判決を受け取った原告・被告に対して
不公平が出る可能性がありますからね。」

「俺は以前あれだけ賠償したのに、
同じような事をしたこいつは何故これだけなんだ?
ってことになるのね。」

「このあたり、英米法がどうとか大陸法が
どうとかの議論もあるようだが、
作者はよく分からないし関係もないから避けておくぞ。
で、JBMの話に戻るんだが、
ある医療訴訟医師側敗訴確定となって、
その判決事由に
「○○の症例に△△の治療法を選んだから」
なんて出たら、
今後○○の治療に△△は出来なくなる。」

「あそうか、もし今後同じことをやって
不幸な結果になったら、裁判されたら
ほとんど負けちゃうのね。」

「もちろん判例が覆ることも無くは無いんだが、
よほどのことをしない限り覆らないからな。
それだったら最初から裁判の火種になりそうな
治療法は避けるんだ。」

「なので、判例に基づいた医療
なんていわれるわけですね。」

「・・・てことは事実上、裁判官が
治療の方法を決めちゃうって事?」

「そうだ。医療の素人の裁判官が
法的な拘束力のある
ケーススタディ集を作るようなもんだ。
その中でも医学の常識から外れたものや
守ることが現実的に非常に困難なもの、
守ろうとすると患者に不利益を
及ぼすようなものが特にJBMと呼ばれている。」

「つまりこの加古川訴訟の場合、
PCIの出来ない病院で心筋梗塞疑いの患者
受けてはならない・・・
突き詰めると最高度の設備が整っていない
施設で患者を受けてはならない、
というJBMが出来たわけです。」

「ひぇ~。じゃあ例えば加古川訴訟以外の
JBMにはどういうのがあるの?」

「一般的なのは・・・そうですね。
以前、医師や病院を批判する
医療バラエティ番組がよくありましたが、
「病院は金儲けのために、無駄な検査をいっぱいやる」
とか
「どんな手術であっても書類をたくさん渡されて
契約書みたいにサインさせられ、不快だ」
なんての、見たことありますか?」

「ああ、そういうのあったわね。」
「ほかの超ド級といわれるJBMと比べれば
軽いかもしれないし、必ずしも先に挙げた
定義どおりとはいえませんが、
あれが典型的なJBMじゃないでしょうか。」

「えっ、そうなの?」
「過去にこんなやりとりがあったんだよ。」


遺族 「ハラボジ(じいちゃん)が死んだのは、医者のせいニダ!」
医師 「通常必要な検査はしましたよ?
   けど1000人に一人の稀な病気だったんです。」
裁判官 「ふむ。しかしそれ向けの検査をすれば
   診断は可能だったんだろう。
   ミスだな。原告の請求を認める。
   被告は原告にアタマ下げろ。」
医師 「えっ!?」


「・・・なんで私がこんな役になってるニダ・・・」
「や、こういう役が似合うのはやはりリューシーかなと。
・・・というわけで一見無駄な検査も
行われるようになった。
批判もあるが、実は患者側の要望なんだ。」

「いや、これってつまり訴訟対策でしょ?
病院の都合を患者に押し付けてるんじゃないの?」
「実際、検査の網を細かくすれば
稀な疾患も見つけられる可能性が
高くなるって効果もあるんだがな。」
「けど、なんだか納得しにくいわ~。」

「じゃあ、どうしたら納得してくれるんだ?
と思うんだが・・・。
現在は、無駄な検査をするリスクを背負って、
そのぶん精度の高い医療を提供しているわけだ。
無駄な検査はするな!
と言うのはいいが、だったら稀な疾患は
見逃してもしょうがないと言う
コンセンサスが無いとな。」

「検査などせず、しかしごく稀な疾患も見つける、
ってそんなの神様でもなければ
両立できませんね。
もっとも疾患を100%確定できる検査
と言うのも存在しませんし、
そういう意味でも神業レベルですけど。」

「実際、無駄と言うなら
病院側にとっても無駄だ。
特に検査で儲かってるわけでもないし、
激務に拍車をかけてるだけだからな。
それでもやはり、少しでも多くの
患者を助けられるなら、と言う思いで
こちらを選択してるんだろう。」

「手術前に患者の同意を得るために
ムンテラ(治療法やリスクについてなどの説明)を
長々とやってサインをもらう、
というのも同じですね。」


遺族 「ハルモニ(ばあちゃん)が死んだのは、
   医者の説明が足りなかったせいニダ!」
医師 「ちゃんと治療前に説明はしました!」
裁判官 「ふむ、当時のカルテには
   ちゃんと説明したなんて記録はないな。
   原告の請求を認める。
   被告は原告にカネ払え。」
医師 「そんなっ!?」


~その後~
遺族 「アボジ(父ちゃん)が死んだのは、
   医者の説明が足りなかったせいニダ!」
医師 「ちゃんと治療前に説明はしたし、
   カルテにも記載しました!」
裁判官 「ふむ、確かにカルテには記載があるようだが・・・
   患者が理解できるまで説明すべきだったろう。
   説明不足、請求認容。
   とっとと賠償しろ。」
医師 「ええっ!?」


~その後~
遺族 「オモニ(母ちゃん)が死んだのは、医者のせいニダ!」
医師 「ちゃんと治療前に説明して、
   カルテに記載して、しかもわかりやすく
   丁寧に納得いくまで説明したんです!」
遺族 「あの場では納得したような気がしましたが、
   やっぱり説明不足だったんですよ。」
裁判官 「そうだな。
   患者が納得したと言う証拠が無い。
   原告の言い分を認めるから
   被告はカネを出せ。」
医師 「くぁwせdrftgyふじこlp」


「また私がクレーマー役に・・・」
「ほんとにこんな事あったの?」
「日常茶飯事だ。
そしてこんな事例でも慰謝料は
数千万円になることもある。
病院側が神経質になるのも理解できるだろう。」

「しかも・・・一部ですが、医療ミスは
医師の責任であるとして、慰謝料は
医師個人に払わせ、病院としては関知しない、
と言った病院幹部までいたそうです。」
「そ、それはやる気なくなるわね。」
「もちろん、そんな病院から医師
蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。」
「おい、まだ裁判ネタは続きがあるぞ。」


遺族 「ナムドンセン(弟)が死んだのは、医者のせいニダ!」
医師 「ちゃんと治療前に説明して、
   カルテに記載して、しかもわかりやすく丁寧に
   納得いくまで説明したのに、
   治療を患者さんが断ったんです!」
裁判官 「断られても、それでも治療を
   受けてもらえるように治療の重要性を
   もっともっと説明すべきだったんだ。
   やはり請求認容だな。」
医師 「・・・。」


~その後~
遺族 「ヨドンセン(妹)が死んだのは、医者のせいニダ!」
医師 「ちゃんと治療前に説明して、
   カルテに記載して、しかもわかりやすく
   丁寧に納得いくまで、薬の副作用も
   何もかも全部伝えたのに
   患者さんが勝手に病院に来なくなって、
   薬を中止したおかげで
   副作用が出て亡くなったんです!」
裁判官 「なんで、患者が来なくなった時点で
   連絡を取らなかったんだ?
   努力不足だ。謝罪と賠償をしる。」
医師 「・・・もう殺す・・・」



 「なんでこんな訴訟が起きちゃうのかしらね?」
 「ま、クレーマーに関しては元々の人柄が
影響してる部分も大いにあると思うが・・・
個人的な考えだが、
医師には患者を治す義務がある、
と広く誤解されている点が
大きく悪影響があると思う。
こういう思い込みがあるから、
治らなかったときは訴訟に走っちゃうんだろうな。」

 「・・・ちょっと待って。
医師には患者を治す義務があると誤解されてる、
ってそういう義務はほんとにあるんじゃなかった?」
 「ん?もしかして応召義務のことか?
だとしたら誤解だぞ。」

医師法第19条 
診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には
正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

 「この19条のことを応召義務と言うが、
ここにある通り

治療する義務はあるが
治す義務は無い。」

 「ってちょっと待ってよ!
治療するって事は治すんじゃないの?」
 「治療しても治るとは限らないだろう。
どんな病気でも治せるとしたら神様だけだ。
末期ガンの患者を治せなければ義務違反だ、
なんて言われたら全ての医師が逃げ出すぞ。」
 「もちろん、いい加減な治療をしてもいい
という意味ではありませんよ。」
 「そ、それはそうよね。」

 「患者医師に対して疾患の治療を
任せるわけですが、このときは
準委任契約と言う形になります。
これは、最善の治療を行うよう努力する
義務はありますが、
結果についてまでは責任を求められません。」




後半の、遺族、医師、裁判官のやりとり
これが、非常にわかりやすかったですね。
細かい例を挙げたら、きりがないのですが。
全部これ、実例あるんですよ。
非常に良く勉強してると思いました。

それと、医師応召義務に関しても良いですね。

医師法19条、応召義務っていうのは、

医師には患者を治療する義務はあるが、
治す義務は無い。

って事っすよ。

そりゃあ、そうですよ。

病気が治った方が、患者さんだけでなく、
医者も嬉しいんですけど。
最高の治療をしたって、
治らない病気だってある
んですから。

医師患者の契約も、
準委任契約」っていうものなんですが。
なぜか、医師にだけは、
それ以上の義務を果たさないといけない
っていう様な判決が多いような気がします。


こういう、いわゆる「トンデモ判決」が続くと、
医師の側は萎縮医療を行わざるを得ないし。
加古川心筋梗塞事件の例を見たら、
心筋梗塞が疑われる患者は、
最初から高度の治療(心臓カテーテル治療:PCI)
出来る病院に行ってもらう。
って事しかできませんからね。

医療崩壊の原因として、医療訴訟が占める割合、
っていうのも、かなり大きいと思いますので。
これも、なんとかして欲しいなー、って思います。

訴訟大国のアメリカでさえ、
加古川心筋梗塞事件のような例で、
医師、病院側が負ける、って事はないんですけどねー。

日本も、医療訴訟の問題をなんとかしないと、
更に医療崩壊が進む事になると思いますよ。


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この記事へのコメント
司法の過剰な介入が……
Dr.I様>
 現在の医療破壊の原因の一端は、明らかに「違法の過剰な介入」ですね。
 司法の法令解釈がそうだと、というなら、司法に行政・が介入できない以上、新たに医師の責任範囲を明示した新法を立法が制定するべきなのでしょうが、それを放置して医療費の削減だけに熱心なのですから、呆れるしかありません。
 国として、「医療のあるべき姿」を明示していただきたいものです。
Lich[URL] 2008/05/10(土) 08:51 [EDIT]
>Lichさん
明らかに、過剰に介入していますよね。
司法が。
これが医療崩壊の原因になっている、っていう事を自覚してもらいたいです。
Dr.I[URL] 2008/05/10(土) 16:52 [EDIT]

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