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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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大野病院事件、メディアの功罪
日本の医療崩壊を加速させたのは、
2006.2.18福島県立大野病院事件です。

このブログを読んでいる読者であれば、
ほとんどの方はもうすでにご存じだとは思いますが。
福島県立大野病院で、産科の先生
難しい症例の患者さんを救おうとして、
一生懸命に努力したけれど、命を救えなかった。
でも、患者さんが亡くなったという、結果が悪いというだけで、
故意でも医療ミスでもないのに、産科医のK先生
2006.2.18逮捕されてしまった、という事件です。

そして、逮捕という衝撃的な事だけでなく、
その後のマスコミの報道の仕方も酷くて。
その為に、日本の医療崩壊、特に産科
医療崩壊が加速的に進みました


具体的には、産科が1人でお産をする病院が、
日本中で大幅に減った。
そして、「妊婦のたらい回し」報道に代表されるように、
妊婦を受け入れる事のできる病院が、少なくなった。
という事ですね。

医療崩壊の一因として、「マスコミ
が与えた影響というのは、
「行政」の次、くらいに大きい。
と個人的には考えています。

その、医療報道を検証するシリーズ
っていうのがありましたので。
ここで紹介させて頂きますね。

You tubeの画像です

『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件1』
『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件2』
『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件3』


第一回の動画を、文字で書き起こしてみました。
癒着胎盤の説明など、非常にわかりやすかったので、
是非見てみてくださいね。



黒岩祐治のメディカルリポート #49
「検証!医療報道の光と影2
大野病院妊婦事件 、メディアの功罪1~


 黒岩祐治
メディアが医療崩壊を加速させた
と言われている事件を検証します。

医療福祉チャンネル774 
 森まどか

ゲスト
福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座
 佐藤章 教授

東京大学医科学研究所探索医療
ヒューマンネットワーク部門
 上昌弘 准教授(医師

参議院議員(民主党)
 鈴木寛議員

コメンテーター
医師・作家
 和田秀樹医師


 森まどか
さて、今回とりあげるのは、4年前に起きた
妊婦の死亡事故ですけどね。

 黒岩祐治
福島県立大野病院で起きた、妊婦の死亡事故なんですけどね。
警察が逮捕に踏み切った事から、
メディアが一斉に、殺人医師事件として
取り上げたわけですね。

その結果、どういう事になったのか。
まずはVTRからご覧下さい。



VTR

医療事故、病院崩壊、薬害訴訟など、
一連の医療報道が現実を改善する場合もありますが、
逆に事態を悪化させることもあります。

2004年、福島県立大野病院で起きた、妊婦死亡事故。
医師逮捕というマスコミ報道をきっかけに、
産科医療崩壊の危機が起こりました。

 佐藤章教授
「私はマスコミに対して、クレームをつけたい。
まだ有罪か無罪かも決まっていない時に、
あたかも殺人者なんだ、という感じで取り扱われたと。」


マスコミの報道で萎縮した産科医の立ち去りが
各地で起こり、産科の閉院が相次ぎました。
このメディアの報道に対し、危機を感じた医師達が、
インターネットを使い、真相を訴えました。

医療報道の光と影を検証するシリーズ。
第三回は、大野病院事件のメディアの功罪です。


県立大野病院は、福島県双葉郡の周辺で
分娩のできる数少ない病院でした。
当時、年間200件~250件の分娩を
1人の医師で行っていました。

妊婦は前置胎盤のため帝王切開で出産をしましたが、
癒着胎盤があり、その剥離中に出血多量で死亡しました。

福島県は医療ミスとして、遺族に謝罪。
事故報告書を公開しました。
警察は報告書が出たことにより、医療事故として捜査を始めました。
事故から1年4ヶ月後、担当の医師は、業務上過失致死罪と
異常死の届け出義務違反の疑いで、逮捕、起訴されました。

メディアは一斉に警察報道を伝えました。
それらの多くが医師の治療ミスを伝える内容でした。

福島県立医科大学産科の佐藤章教授は、
医師逮捕とマスコミの報道に異論を唱えています。

 佐藤章教授
「彼はまだ有罪か無罪かも決まっていないときに、
あたかも犯罪者のようにテレビでは画像で彼が(医師が)
逮捕されたところを映されるのが、
あれが非常に私、気持ちとしては沈みました。」

公判では前置胎盤の妊婦に癒着胎盤があり、
その判断と処置の仕方をめぐって争われています。

 佐藤章教授
前置胎盤事態が特殊な状態にある妊娠だった訳です。
それで手術してみたら、後壁に癒着があったと。
また、癒着胎盤というのも非常に
珍しい症例でありますので、
分娩前に把握できれば、それに対する処置は
対応できたかと言えたかと思いますけど。
それが予測が出来ない珍しい症例であったという事。」


医師の犯罪としてかたずけられようとした事件に
まったをかけたのはインターネットでした。
果たして過失なのだろうか。
医師逮捕に危機感を抱いた、他県の産科医師
事故報告書を入手し、それをインターネットで公開したのです。

すると、同じ様に疑問を感じていた複数の医師達が
ブログで意見を発信。
次第に新聞の記事だけではわからなかった、
手術の内容が明らかになってきました。

「ある産婦人科医のひとりごと:2006/02/19」


医師も意見を発した1人です。

 上昌弘准教授
「自分たちの知り合いにどんどん転送して、
お知らせしていったんです。
その方たちが、また周囲に知らせる形にして、
医療者の中、あるいは周辺の人達の中で、
どんどん世論ができていって、そういう合意形成。
メディアの報道はおかしいんじゃないか。
今回の事件の取り扱いはおかしいんじゃないかとか、
という議論が盛り上がっていたわけなんです。

医師達は逮捕された産科医を救う署名活動を展開。
わずか一週間で6520名の署名が集まりました。

その声に押され、厚生労働省は、
医療関連死の事故調査委員会を組織するため
検討会を開きました。
メンバーは、医師、法学者、有識者、被害者家族で構成され、
外部からもインターネットで意見を募集しました。

 上昌弘准教授
「30万人弱、一般の医師達がどんどん声を
上げていった訳なんですね。
ITや情報流通システムが整備されてこなければ、
今回の運動はなかったと思うんです。」




 黒岩祐治
「メディアのあり方っていうものも、
この機会にじっくり考えたいと思うんですけど。
佐藤さん、その前に、この手術ですけどね。
前置胎盤だった、癒着胎盤だったと。
これ、どういう風な手術だったんですか?」

前置胎盤


 佐藤章教授
「絵をお見せして、説明したいと思います。
普通、胎盤っていうのは、こちら側(右側)にありますように。
子宮から赤ちゃんが出てくる所ではなくて、
子宮の上とか前壁とか、後壁とかにくっついているんですけど。
今回の患者さんの症例は、出口のところに
胎盤がくっついているわけです(前置胎盤)。

ですから、赤ちゃんはふさがれているわけですから、
どうしても帝王切開せざるをえない
という症例なんです。
だいたいこれが、妊娠している症例の0.5%位
という事ですから。
これ自体が珍しい。

癒着胎盤図1


更に、癒着胎盤も、図を使って説明しますと。
普通、子宮の中は、胃もそうですけど。
表面は粘膜というのがあります。
同じ様に、子宮の中も内膜というのがあります。
内膜が妊娠しますと、脱落膜と、これ名称なんですけど。
そういう名称に変わるんですけど。
元々は子宮内膜なんですけど、そこに受精卵がくっついて、
はがれないように、絨毛っていうんですけど。
これが、根っこを張るんですよ。
で、お産の時になると、脱落膜も剥がれて、
胎盤も出てくるという風になっているんですけども。

この脱落膜が、何らかの原因で欠損していたり、
ものすごく薄くなったりすると、胎盤の根を張るのが
直接筋層の中に入ってしまう。(癒着胎盤

だから、お産が終わってからも剥がれなくなっちゃう訳です

 黒岩
「はー、そうすると、ここにメスを入れて切る
って事になるわけですか?」

 佐藤
「いや、普通はですね、全部がくっついているっていうのは、
まずないですから。
一部ですから、手を使ったり、一部はメスを使ったり。
まあ、メスはあんまりないですけど。
クーパーで、ハサミの一種ですけど。
そぐようにしてはがす、という事がやられている訳です
。」

 黒岩
「基本的に、非常に珍しいケースであったという事。
そして非常に難しい症例であったという事。」

 佐藤
「そして付け加えますと、前置胎盤の症例で
癒着胎盤の症例というのは、前置胎盤のうちの
だいたい3%位しかないんです。
ですから、0.5%と3%をかけあわしますと、
おおざっぱに言うと、1万例に1例くらいしかない。
という事です。」

参照:You Tube 『医療報道の光と影~大野病院妊婦事件1』

本家は、こちらでーす。
『医療福祉eチャンネル』



第一回は、癒着胎盤とか前置胎盤とか。
そういう医学的な専門用語の解説中心だったんですが。
この後が、本論になりますよー。

結構、書き起こしするの大変なんですけど。
気合いが乗れば、第二回、第三回も書いていきますね!

福島大野病院事件の判決が、8/20にあります。
検察側の人間からも、医師を逮捕、起訴したのはおかしい。
福島地検のスタンドプレーだ、という声も上がっていますし。
公判の内容が、詳細にネットで書かれており、
それを見ても医師が有罪になる。
という確率は非常に低いとは思いますが。

もし、医師が有罪になる事があれば、
その時には日本の医療は完全に崩壊するでしょうね
そうならない事を祈っています。


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→ 『医者のホンネが丸わかり!(改)』

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この記事へのコメント
本家で期間限定配信
本家で期間限定配信されているようです。
http://www.ch774.com/
要WindowsMediaPlayerです。
SORA[URL] 2008/07/03(木) 22:32 [EDIT]
>SORAさん
ありがとうございまーす。
こっちも、付け加えておきますね。
Dr.I[URL] 2008/07/04(金) 20:58 [EDIT]

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