現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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8/20,福島のシンポジウム2
8/20,福島大野病院事件の判決に合わせて、
福島で行われたシンポジウム。
「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」
の傍聴記です。

『8.20、福島のシンポジウム0』
『8/20,福島のシンポ1』
の続きになるんですけど。

本当の順番なら、ロハスメディア代表の川口恭さん
の番になるんですけど。
昨日、何故か録音ファイルが聞けなくなっちゃって(汗)

ちょっと順番がずれちゃって、すいませんけど。
パネリストの最後の先生。
東京女子医大事件で、不当逮捕された、
綾瀬循環器病院、心臓血管外科医

佐藤一樹先生の話です。

ブログ「紫色の顔の友達を助けたい」の
『大野病院事件 無罪判決 前夜、当日、シンポジウム』
に当日のスライドのコピーを置いて頂いたので。
それを参照にさせて頂きます。


青字がスライドのコピーです。



司会、上先生: 
最後に佐藤一樹先生,
正当な治療行為を行った医師逮捕勾留するな』、
ということでお話をいただきます。
よろしくお願い致します.


【佐藤一樹先生】 (綾瀬循環器病院 心臓血管外科)
『正当な治療行為を行った医師逮捕勾留するな』


福島大野病院事件が産科医療にもたらした影響を考える

正当な治療行為を行った医師逮捕勾留するな

綾瀬循環器病院 心臓血管外科
東京女子医大心臓手術事件 被告人
大野病院事件 初公判 傍聴報告者)
佐藤一樹


こういう立場で私,お話させていただくことに
なったんですけれども。
今現在はですね,東京の足立区という
下町にある病院で循環器の救急をやっています。

この足立区の隣の葛飾区に
東部地域病院という病院があります。
ここでおそらく腸閉塞なのに医者が
それを放置して亡くなってしまった,
先ほど豊田さんのご紹介が上先生から
ありましたけれども,豊田理生ちゃん。
この子の亡くなったときの報道の新聞,
この新聞を私はラミネート加工して
自分の机の隣に置いてあります。
そういうつもりで臨床医をやっています.


大野病院事件:直接的即時的影響

・「一人医長」逮捕勾留
・大野病院産科 ⇒実質的廃止
・福島県双葉郡大熊町近隣地区⇒地域産科医療崩壊
 ⇒医療医師人権が軽んじらた証拠
逮捕請求:捜査機関 ⇒ 裁判官の令状
 (警察・検察)   (許可状)
勾留請求:検察官  ⇒ 裁判官の処分  
        (命令状)
 実際には、勾留の方が問題。(逮捕前置主義)


この大野病院事件のまず直接的,
即時的影響ということで逮捕された直後から
始まった医療崩壊
ですね。
一人医長を逮捕勾留してしまった。

このために大野病院事件産科というものは
実質的に廃止になってしまいました。
福島のこの地区の産科医療は
その時点から崩壊しているということです。
私はこれは医療,それと医師の人権
非常に軽んじられた証拠だと,
こういう風に思っております。

ほんの二日くらい前のネット上でですね,
医師が「逮捕を出した警察や検察が悪いんだ」,
なんていう話があったんですけれども,
実はこれ,逮捕状というのは
裁判官の令状
なんですね。

警察が逮捕すると言って裁判官が
それに許可を与えて逮捕する。
勾留っていう話はあんまりないんで,
専門家に聞きますとどちらかというと
勾留の方が問題なんだ,と話をするんですが。

勾留の方はこれはですね,裁判官の命令です。
裁判官の命令で加藤先生や私は勾留されました.
といった意味では裁判官は「最後の砦」の部分が
あるのではないかと思っております.


大野病院事件:間接的波及的影響

 産婦人科医の『正当な治療行為』⇒逮捕・起訴
 ・日本全国産科医療崩壊⇒決定的増幅
 ・“立ち去り型サボタージュ”の拡大
 ⇒小児救急、小児科、救命救急科、外科・・・
 ⇔医療だけをやってきた医師
  ⇒社会構成員としての覚醒
  ⇒医師達からの医療政策への意見発信開始 
  

それで,いわゆる一般的な医療崩壊ですね,
間接的に波及していった影響が
日本全国の産科の医療崩壊
これを増幅させました.

立ち去り型サボタージュですね.
小児救急,小児科,救命科,外科,
こういったところから医師達が
どんどん離れて行きました.

ここでですね,私,ロハスメディカルの
川口さんに指摘されて,あっと思ったんですけれども,
医者はそれまで,医療だけをやっていることを
誇りに思っていたんですね。
医者は一生懸命医療をやっていればいい。

ところがそうではないということに気がついたんです.
やっと気がついた.医者も社会の構成員として覚醒して,
それなりの社会の構成員として意見を
発していかなければいけない.
そういったことで医師達からやっと医療政策への
意見の発信
が始まったと思います.


医師側の主張:医療刑事訴訟への不満

・過失の構成要件の類型化が不明慮:
   「何すると罪か」が事前に定まっていない
・結果⇒遡及的結果回避義務の指摘:
   後出しジャンケン
・恣意的証拠の取捨選択:客観的証拠文献の不同意
   訴訟戦略上の「卑怯な証拠隠し」
・刑事処分の再発防止は機能不全:
   萎縮医療の誘発
・真の原因究明の阻害
   医学発展の停滞 etc.  ⇒「免責」の主張


まあいろいろあるんですけれども,
大体医師側からの刑事訴訟への不満,
簡単な言葉で言っていきますと,
「何をすると罪か」というのが
事前に決まっていないのに逮捕されちゃう.

後だしジャンケン,後になってから
こうなんだって言われたって,
っていうのがあります.

あと訴訟戦略上の検察官の証拠隠し.
文献などを証拠として認めない,
そういったようなことがある.

刑事処分をしても萎縮医療が誘発されるだけだ
真の原因究明がならなくて,
医学の発展が停滞していく,
そういったことで医師側からいわゆる「免責」の
主張がでてくるようになりました.


⑤安易な免責主張の問題点:免責と犯罪

・免責:法律上、責任を免れること
・犯罪:構成要件に該当する、違法かつ有責な行為
 構成要件該当:犯罪類型に当てはまること
  刑法条文⇒メニューの各料理の名称「きつねうどん」
  構成要件⇒メニューから観念される各料理のイメージ


私はもちろん法律に関しては
全く大学生のレベルにもいってないんですけれども,
ちょっと勉強してみました.

免責というのは「法律上の責任を逃れる」,
ということですね.
犯罪,これはですね,
ちょっと難しいんですけれども,
構成要件に該当する違法かつ有責な行為」,
責任のある行為,のことです.


⑥免責主張の問題点:免責の対象

医師免責?   犯罪は「行為」
・刑事免責?   意味不明   
医療免責?   意味不明 
医療行為免責? 適応外手術(不要子宮摘出術)
 ⇒法曹界、メディアに使い回されて批判される
・業務上過失致死罪 第3項新設案:
第2項交通事故=「刑の免除」*
         *免除は免責でない
・救急救命行為に限定?


免責.皆さんの医者のネット上での
主張を聞いてますと,『医師免責
なんていう言葉があります.

犯罪というのはもともと「行為」ですから
医師免責』ということはあり得ない.
刑事免責』とか『医療免責』,
これは意味不明だと思います.

あと,医療行為の免責というのはありますけれども、
先ほどの怠慢によってお子さんが
亡くなったこととかですね,
昔の富士見産婦人科ですか,
というような子宮を摘出したりするような,
適応外の手術,こういったようなものも
免責するのかどうか.

こういったですね,非常に安直な言葉を使って
主張しますと,悪意のある法曹界とか
メディアの方にですね,使いまわされて,
批判されて,医者はやっぱりだめなんだ,
ということになると思います.

少し建設的な意見として業務上過失致死の
第3項を新設しよう,というのがあります.

第2項には交通事故,これは刑の免除というのが
なっているんですけれども,
この「免除」は「免責」ではありません
後で説明します.

えーあと,救命救急行為に限定する,
という意見もあります.
これに関しても考える必要があると思います.


⑦免責主張の問題点:免除と免責の相違点

免除:「罪」はある、「刑」はない
 構成要件に該当し、違法かつ有責であって、
 犯罪は成立するが、刑は科さない
 犯罪:構成要件に該当する、違法かつ有責な行為
 免責:法律上、責任を免れること


えーと先ほど「免除」ということが出ましたけれども,
第2項の「免除」ですが,
これは「罪はあるけど刑はない」というものです.

構成要件に該当して違法かつ有責であって
犯罪は成立するけれども,刑は科さない.
つまり「罪はあるけれども刑は科さないよ」
というものです.
これは医者が納得するようなものでしょうか.


⑧免責主張の問題点:医療行為と治療行為

・治療行為⇒医学的正当性
 医学的適応性:手術が行われるべきか否か
   医術的正当性:どのように行われるべきか
・治療行為傷害説-刑法学者の見解
  ⇒日本では、治療行為が傷害として争われた
   刑事訴訟判例なし


いろいろ少し勉強してみました.
それでやはり「医療行為」という言葉よりも
治療行為」,これはドイツの刑法の考え方,
医学的な正当性のあるもの.
つまり,医学的な適応とか医術的な正当性.
手術が行われるべきか否か,
どのように行われるべきか.
そういった正当性がバックボーンにあるもの

治療行為」といいます.

日本ではまだ,実は刑事訴訟法上,
刑事訴訟で争われたことがないんですけれども,
治療行為は傷害である,というふうなことが
ドイツの憲法学者なんかでは言われていて,
日本ではまだこの論議が進んでおりません.


⑨免責主張の問題点:過失論

旧過失論:結果無価値論型-主観的要件
  ・予見可能性中心←注意義務違反
  ・刑法学で再び優勢(若い学者)
新過失論:行為無価値論型-客観的要件
  ・客観的に要請される注意を尽くした場合 
   ⇒構成要件該当性否定される⇒犯罪不成立
  ・(医師に)遵守が要求させる行動基準想定


ちょっとこの話をするのも,
私が話すのもなんなんですけれども,
いわゆる「過失」という考え方は
刑法学者の中では大きく分ければ
旧過失論」というのと「新過失論
というのがあるんですけれども,
これの話をしたら非常に長くなってしまうんですけれども,
旧過失論の考え方としてはですね,
客観的に要請される注意を尽くした場合,
構成要件の該当性が否定されて犯罪は不成立,

というような考え方が一応あります.

ところが,交通事故も実は業務上過失致死なので,
それにちょっと引き摺られている面もありまして,
どちらかといえば今,学者の中の若い学者には
特にこの旧過失論の方が
優勢になっているという状況です.

新過失論の方は一番下に書いてありますけれども,
医者の方に遵守が要求される行動基準を
自分達で想定してくれ
,といったようなことが
新過失論の学者が言っております


⑩免責主張の問題点:ガイドラインは?

・客観的注意義務の類型化: 
  過失の不法構成要件の内容の具体化
・学会等の作成したガイドライン:
  遵守規定?
  実際の臨床の多様性に対応不可能?


医者側としてはガイドラインというものを
学会で作ってそれを遵守するようなことが
行われているんですけれども。
ただしこのガイドラインというものも
ちょっと問題がありましてですね,
実際の臨床というものは
非常に多様な面がありますので,
ガイドラインに沿ってないからと言って
それが医者側に責任があるかどうか,
これは一つ一つの症例をみないと
わからないことだと思います.

参照:『大野病院事件 無罪判決 前夜、当日、シンポジウム』


佐藤先生の話に加えて、スライドのコピーも
一緒に出すと、とても長くなってしまったので。
前半部分だけで、一回切りますね。

筆記されたのは、sui先生です。
佐藤先生、sui先生
ありがとうございました。

後半部分は、次回書きまーす。


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この記事へのコメント
法律の議論は……
Dr.I様>
 法律の議論は難しいですね。
 やはり、「法律に詳しい医師」と「医療に詳しい法律家」といった「対話を行える人材」の育成が、医療側・法曹側双方に必要な気がします。
Lich[URL] 2008/08/27(水) 01:36 [EDIT]
>Lichさん
正直、かなりややこしいですねー。
やはり、そういう両方できる人材も、どんどんでてきて欲しいですね。
Dr.I[URL] 2008/08/28(木) 22:19 [EDIT]

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