現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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医療事故と交通事故の違い
医療っていうのは、そもそも危険が伴う行為ですから。
手術等の医療行為をしなかったら死ぬかもしれない。」
という患者医療行為を行う事によって、
生き延びさせる事が出来れば幸い。

というようなものなんですけどねー。
本来は。

火事があって、家が燃えて。
それを消火しようと思ったけど、
消防隊が家を消火できなくて、家が全焼した。
って事があっても、消防士が訴えられる事はないでしょ。

それと同じ様に、手術等の医療行為をしなかったら、
死んでしまったかもしれない

という患者を、手術をしたけど助けられなかった。
という事で、医者も訴えられる事はない
というのが、普通だと思うんですが。

何故か、医者の場合は訴えられて。
下手したら裁判で有罪になっちゃったりするんですよね。
業務上過失致死傷罪」で。
医療事故の場合でも、交通事故の場合と同じように。

正直言って、前からそれはおかしい。
って思っていて、ブログでも何回か書いた事はあるんだけど。

ちょうど、MRICメルマガで、こういうのに関しての専門家、
医療・法律研究者の方が、
福島大野事件判決の解説を書いてくれていたので。
ここで紹介しますね!



Medical Research Information Center (MRIC) メルマガ 

臨時 vol 142 「福島大野事件判決解説1」
2008年10月8日発行


■□ 結果回避義務について  
  ~医療事故と交通事故の違い~ □■

          大岩睦美(医療・法律研究者)

1 過失とは

業務上過失致死傷罪などの過失犯は、
過失により結果(人を死傷させること等)を
生じさせることにより成立するが、ここに過失とは、
行為者が自らに課せられた
注意義務に違反することをいう。

この注意義務は、具体的内容として、
結果の発生を予見すべき義務(結果予見義務)と
結果の発生を回避すべき義務(結果回避義務)の
二つに分けることができる。


2 結果予見可能性、結果回避可能性

そして、結果予見義務と結果回避義務が
あるというためには、それぞれの論理的前提として
結果発生の予見可能性及び結果発生の
回避可能性を考えるのが一般的である。

実務上は、結果予見可能性が存すれば
結果予見義務があり、結果回避可能性が存すれば
結果回避義務があるとされる。

すなわち、「過失がある」(注意義務に違反する)と認められるには、

 (1)結果予見可能性、
 (2)結果予見義務、
 (3)結果回避可能性、
 (4)結果回避義務

の各要件が検討されることとなるが、
実務上(検察官の立証上)は、
(1)が認められれば(2)は当然に認められ
(3)が認められれば(4)は
当然に認められることとなるため、
(1)と(3)が立証されれば足りることとなる。


3 一般的な過失犯の事例

よそ見運転で人を轢いてしまったという
自動車事故の例を考えてみると、

(1)結果予見可能性:
 よそ見運転をしたら人を轢いてしまうかもしれない

(2)結果予見義務 :
 「よそ見運転をしたら人を轢いてしまうかもしれない」と予見すべき

(3)結果回避可能性:
 よそ見運転をしなければ人を轢かなかったかもしれない

(4)結果回避義務 :
 よそ見運転をしてはいけない

となる。
 

自動車事故の例では、わざわざ危険な行為を
行うことが必要となる理由はないのであるから、
結果の発生を予見し回避することができるのであれば、
予め結果を予見しこれを徹底して
回避しなければならないのであり、
つまり、予見可能性、回避可能性さえあれば、
予見、回避する義務が生じるのは当然のことと言える。


4 医療行為の場合

では、医療行為においては、

(1)結果予見可能性:
 手術したら合併症で死んでしまうかもしれない

(2)結果予見義務 :
 「手術したら合併症で死んでしまうかもしれない」と予見すべき

(3)結果回避可能性:
 手術しなければ合併症で死ぬことはなかった

(4)結果回避義務 :
 手術してはいけない???

となることから、(1)~(3)が満たされるからといって、
当然に(4)の結果回避義務までも
当然に認められてしまうと、危険を伴う医療行為
医師は一切行えないこととなり、不合理となる。


5 福島県立大野病院事件一審判決

この判決で裁判所は、医師に結果予見可能性、
結果回避可能性を認めながら、結果回避義務を
否定するという画期的判断を下した。

判決は、「医療行為が身体に対する
侵襲を伴うものである以上,患者の生命や
身体に対する危険性があることは自明であるし,
そもそも医療行為の結果を
正確に予測することは困難である。

したがって,医療行為を中止する義務
(=結果回避義務)があるとするためには,
検察官において,当該医療行為に危険があるというだけでなく,

(a)当該医療行為を中止しない場合の
 危険性を具体的に明らかにした上で,
(b)より適切な方法が他にあること
 を立証しなければならない。」としている。

本件では,
(a)子宮が収縮しない蓋然性の高さ、
子宮が収縮しても出血が止まらない蓋然性の高さ、
その場合に予想される出血量,及び
(b)容易になし得る他の止血行為の有無や
その有効性を、検察官が明らかにして立証しなければ、
医師には医療行為を中止する義務
(結果回避義務)は認められないとされたのである。

そして、これらを立証するためには,少なくとも,
(ア)相当数の根拠となる臨床症例,
あるいは (イ)対比すべき類似性のある臨床症例
の提示が必要不可欠であるといえる。


6 まとめ

本判決により、医療行為によって
患者の生命・身体に対する危険性があることは
医療行為の性質上自明のことであり、したがって、
医療行為においては、結果予見可能性、
結果回避可能性があったとしても、それだけで、
直ちに結果回避義務があるとは認められないこととなった。

結果回避義務(治療中止義務)があるとするためには、
(a)治療を続行した場合の具体的な危険性
(b)より適切な他の方法があること が要件となる。

しかし、結果回避義務が発生するための要件として、
(a)(b)で必要十分といえるか、(a)(b)の立証のために
必要な事項は何かについては、法曹界、
医療界を交えての議論を重ね、
具体的内容の検討が必要となるであろう。

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『MRIC:臨時 vol 142』



手術をする場合。
出血がない、って思う医者はどこにもいないし。
大量に出血すれば、死ぬこともある。
っていう事がわからない医師はいません。

手術じゃなくて、の場合でも似たようなもんです。
には必ず副作用があります。
体に良い方の作用が強ければ「薬」で、
反対に有害な方の作用が強ければ「毒」です。
そんな事がわからない医師は、どこにもいません。

何万人とか何十万人に1人位だけど、
めったに出ない薬の重篤な副作用が出れば死ぬこともある
っていう事も医者であれば誰でも知っている事です。

ですから、医療行為を行う場合に、
全ての医者は、万が一の場合は患者が死ぬかもしれない。
という事がわかっていますので。
医師医療行為をする場合、

>(1)結果予見可能性

に関しては、全て当てはまってしまいます。


例えば、ガン患者の場合。

ガンを切除する手術をしなければ、
その患者手術で死ぬ事は絶対にありません。

でも、手術をしなければ、ガンで死にます

じゃあ、手術をしたら死ぬかもしれないから。
ガンで死ぬ事はわかっているのに、
手術をしてはいけないのか。

って。
そんな事にはならないでしょ。


本文にも書いてあるとおり、

(3)結果回避可能性:
 手術しなければ合併症で死ぬことはなかった

(4)結果回避義務 :
 手術してはいけない???


という事になれば、医療はそもそも成り立ちませんよね。


ガンで死ぬ可能性と、手術をして、もしかしたら、
手術してすぐに亡くなってしまう可能性もあるけど。
どっちにしますか、っていう事をきちんと説明して。

それを聞いて、患者自身が手術をする。
という判断
をしたのであれば、
結果的にガンの手術をしてすぐに亡くなったとしても。
それを業務上過失致死に問うべきではないんじゃないかな。
と、個人的には思います。

医療というものの本質を考えれば、
医療事故交通事故を一律に扱うのは、
そもそもがおかしいんじゃないですかね。



こういう話をすると、

医療業界には隠蔽体質があって。
カルテの改ざんとか、診療報酬の不正請求とか。
そういう事もあるのに、
医者だけ特別扱いするのはけしからん。


っていう論調の人が出てくるんですけどね。

カルテの改ざん、診療報酬の不正請求
っていうのは、いわゆる「医療事故」ではなく、
医療犯罪」なんですよ。

私は、医療犯罪に関してまで、医師を訴えてはいけない。
という事は、一言も言っていません。

むしろ、そういうけしからん奴は、
厳しく扱うべきだ、というように思います。

ただ、一生懸命に患者を救おうと思って。
その場で、できる限りの医療行為を行って、
結果的に患者が亡くなってしまった。
というように、結果が悪かったからといって、
医師を罪に問う、というのは、
医療の性質上おかしいのではないか

と思います。




本の紹介。

『噂の健康情報「ホントの話」』

最近、事故米の問題が話題になっていますよね。
輸入米にメタミドホスって農薬が入っていた、とか。
カビとかメタミドホスとか、そういうのは
テレビなんかでもいろいろ報道されていますけど。
実は、日本で作られているお米にも、
恐ろしいものが含まれている可能性があるんですよー。

カドミウム」って知ってますか。
公害、「イタイイタイ病」の原因となった物質ですよ。
こういう一般的には、ほとんど報道されていないような、
健康に関する裏話が満載の本が、これっす。

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この記事へのコメント
論理的に……
Dr.I様>
 論理的に考えれば、引用文が正しいのは自明だと思うのですが、どうにも、「感情」で「100%助けられなければ犯罪」とする風潮が強いですよね。そもそも不可能な前提を人間に課すこと自体無茶だと思うのですが……
Lich[URL] 2008/10/09(木) 07:07 [EDIT]
>Lichさん
人が死んだんだから、って言われても。
医者のせいで死んだんじゃなくて、病気で死んだ人にまで医師が責任を取れ。
っていうのは、明らかにおかしいと思うんですが。
そういう人に限って、こちらの言う事を聞いてくれないんですよねー。
Dr.I[URL] 2008/10/10(金) 00:09 [EDIT]
理不尽な訴えもなかにはあるかもしれませんが、訴訟のおかげで従来の治療行為が見直され、救命率の上昇につながったということもあります。
http://blog.livedoor.jp/momochan1tarochan2/archives/51025956.html

患者側は医学知識がありませんから、正当な訴訟かそうでないかを判断させるのは難しいですね。逆に故人のことを思い出し悲しくなるからとあえて踏み切らない人も多いとききます。
モモちゃんタロちゃん[URL] 2008/10/10(金) 23:48 [EDIT]
>モモちゃんタロちゃんさん
医療訴訟そのものが全て悪い、というつもりはないですよ、私は。
ただ、理不尽な医療訴訟が多発して、萎縮医療が起こっているという事実がある、という点もあるので。
そこらへんは、システムとしてきちんとしなければいけない、と思います。
Dr.I[URL] 2008/10/13(月) 00:41 [EDIT]

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???Τ??????????Τ?ΤΤ??????ФФ??ηФ??ΥХ?Τ?λĴ?¿Τ???????????????个???????????ξ????????ξ???ä??  [つづきを読む]
?ΤΥ?? | 2009/08/07(金) 01:25
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