現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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東京も土日は「無医村状態」
脳出血を起こした東京都内の妊婦さんが、
8つの病院で受け入れる事が出来なくって。
結局、最終的には出産後に死亡したって話が、
いろんな新聞等のメディアで報道されていますね。

ちょうど、2年前の今頃、奈良で同様の事がありました。
大淀病院事件」という名前で、
医師ブログでは非常になった事件です。

病院19件たらい回し」
「6時間放置」

というような、酷い報道があって。
その後、奈良の南部では、
お産が出来る病院が消滅しました。

福島の大野病院事件と並び、日本の産科医療崩壊
大幅に加速させた事件が「大淀病院事件」です。

こういった事件を経て、日本中で産科を筆頭に
医療崩壊が進んでいて。
それは、東京都いえども例外ではない。
という事は、我々現場の人間はもちろん知っていますから。
そういう人間にきちんと話しを聞くだけでも
わかる事なんですが。

今までのマスコミ報道を見ても、国民の反応を見ても。
自分には関係がない。
東京では関係ない。

というような、他人事のようだったんですよね。
なんとなく。

それが、東京でも同様の事が起きるんだ。
という事がはっきりとわかってしまったので。
これだけ大きく報道されているんでしょう。



産科医不足」はここまで来た 
東京でも土日祝日は「無医村状態」

脳内出血を起こした東京都内の妊婦が、
緊急時の受け入れ先になっている病院
たらい回しにされて出産後に死亡した問題は、
大都市「東京」でも深刻な「産科医不足」が
起きていることを浮き彫りにした。
中でも土日祝日は当直医が少なく、
無医村状態」だと指摘する声もある。


「当直医が1人で、受け入れられない」
東京都内の妊婦(36)は2008年10月4日の夜、
脳内出血による激しい嘔吐と頭痛を訴えて、
かかりつけの「五の橋産婦人科」(江東区)に
救急車で運ばれた。

担当した女性医師は緊急手術が必要との判断から、
都立墨東病院(江東区)に受け入れを要請する。
病院はリスクの高い妊娠に24時間対応する
「総合周産期母子医療センター」に指定されている。
ところが返ってきた答えは、
「当直医が1人で、受け入れられない」
というものだった。

病院は04年から医師の退職が相次ぎ、
産科の場合は常勤1人と研修医1人が辞めた。
現在は6人が勤務している。
人手が足りず、08年7月から土日祝日の当直医を
2人から1人に減らしていた。
妊婦が運ばれた日は、不運にも土曜日だった。

五の橋産婦人科の担当医は、さらに
6病院にも受け入れを求めたがすべて断られる。
結局、墨東病院は2回目の要請で
妊婦を受け入れたが、最初の要請から1時間以上が経過。
帝王切開で子供は無事に生まれたが、
女性は3日後に亡くなった。

受け入れを断った6病院は、ほとんどが
地域周産期母子医療センターに指定されていた。
ところが、多くの病院で当時、産科の当直医は
数人しかいなく、手が回らなかったようだ。

10月23日付け「朝日新聞」の記事によると、
順天堂大学医学部付属順天堂医院(文京区)には
2人いたが、いずれも別の出産に対応していた。
東京慈恵会医科大付属病院(港区)には2人いたが、
破水した妊婦が待機中で
受け入れられる状況ではなかった。
日本赤十字社医療センター(渋谷区)には3人いたが、
別の妊婦も搬送されていて、対応できなかった。

10月23日に放送されたテレビ朝日系情報番組
「スーパーモーニング」で、医学博士の中原英臣氏は
こんな衝撃発言をした。

「土日祝日の場合、東京の産科無医村状態だ」
「東京でまさか、このようなことが起こるとは…」

妊婦が緊急時に受け入れを断られて死亡する例は、
この数年でも起こっている。
奈良県大淀町立大淀病院で06年8月、
分娩中の妊婦が意識不明になり、
19病院に受け入れを断られて
搬送先の病院で亡くなった。
07年8月には下腹部痛を訴えた奈良県の妊婦
病院に受け入れを断られ、救急車で
大阪府内の病院に運ばれる途中に死産した。

たらい回しにあうのは、産科医が不足している
「地方」の話だと、もはや言えない。
日本産婦人科医会の担当者も、
「報道ではじめて知りました。
東京でまさか、このようなことが起こるとは…」
と驚きを隠せない様子。
休日や夜間の体制は、病院内部でしかわからないという。

「奈良の件をきっかけに、救急時の対応について
産科関係者間で論議が高まりましたが、
生かされていないのが残念です」

救急体制の問題は、産科だけにとどまらないようだ。
総務省消防庁の調査によると、07年中に
救急搬送されたのは全国で491万8479 人。
そのうち、受入医療機関が決定するまでに
照会した回数が、4 回以上は1万4387 件、
6 回以上は5398 件、11 回以上は1074 件だった。
もっとも多い照会回数は50 回にもなる。
地域別でみると、首都圏や、近畿圏などの
大都市周辺部で回数が多い傾向にある。
医師不足の問題は、東京の最先端の現場でも起こっている。


「2008/10/25 J-CASTニュース」


うわっ。
2年前ならともかく。
ここ一年で、医療報道も少しは改善して。
「たらい回し」という言葉が、
大手新聞ではもう使われる事がなくなった、
というのが私の認識だったんですけど。

>脳内出血を起こした東京都内の妊婦が、
緊急時の受け入れ先になっている病院
たらい回しにされて出産後に死亡した問題


思いっきり、今でも「たらい回し
って言葉が使われていますね。
ちょっとがっかりです。

それはちょっと置いておいて。

奈良、大淀病院事件」の時に、
私が自分のブログでも書いた事で。
伊関先生の本でも同様の事が書かれましたけど。


>このような妊婦の出産の場合、
最悪の事態を想定すれば、産科医2人以上
+麻酔科医(リスクの高い手術を
しなければならない場合がある)
+小児科医+NICU(新生児特定集中治療室、
胎児が未熟児の場合に必要)が必要なんですよ。


参照:
「奈良県妊婦救急搬送会議2」
『奈良県橿原市の妊婦の搬送中の死産問題について考える』

今回の場合は、NICUは必要ないんじゃないか。
っていう意見もあるようですけどね。

それでも、夜中や土日に、緊急でこれだけの人数を
集める事のできる病院は、日本でもそんなに多くない。
という話も書いたんです。

同様の事が東京で起きても、
やはり救命する事は難しかった。
というのが、今回の事件でしょうかね。

一言で言うと、こういう重症の患者を救うには、
マンパワー」が必要なんですよ。

手術をするにも、救命をするにも。
医師や看護師などの人でが必要なんです。

昼間だけでなく、夜間や休日でも
緊急事態は起こりますから。
そういう時の為に、たくさんの人を
雇っている病院
、というのが必要なんです。

その為には、お金が必要です。

当たり前ですね、そんな事は。


妊婦さんが脳出血になったら、
どこにいても死亡率はすごく高いですから。
例え東京でも、昼間でマンパワーがあっても、
病気で亡くなる」という可能性も高いですから。
そういう事は、皆さんには
わかって貰いたいことではあるんですがね。

東京ですら、土日や夜間に妊婦が脳出血になったら、
受け入れる病院は非常に少ない。

というのが、今の日本の現状なんですよ。

無医村状態」という言い方は、
ちょっと大げさな気はしますけど。

産科自体はいるにはいるんだけど。
1人当たりのお産の数の方が多すぎて、
緊急事態が起こっても、手が回らない状態

日本一の大都会、東京ですら、
産科というのはそんな状況なんですよ。


おざっぱな原因は、いつも私が言っている、
医師不足」と「医療費不足」
これにつきると思います。

桝添厚生労働大臣と石原東京都知事は、
お互いに人のせいにしているようですけど。

責任は両方にあります。

医療費抑制政策、医師数抑制政策。
というのは、国、自民党の方針ですから。
当然、政府に責任があるのですが。

東京都は、他の地方自治体に比べたら
法人税などの収入も非常に多いですから。
銀行や、オリンピック誘致とか。
そんなもんに金をたくさん使わないで、
もっと医療にお金を使って。
医師や医療関係者を集める事
だって、
やる気になればできるんですよ。

例えば、今回の件で何度も報道されている
東京都立墨東病院
ここのHPを見てみると。

参照:『東京都立墨東病院』

これをちょっと下の方にスクロールしてみると。
予想通り、産科医の募集を行っていますね。
定員が9人で、今は6人(4人)しかいないんだから、
当然ですけどねw

その条件ってとこを見てみると。
周産期センター産科 常勤医師募集(PDFファイル:9KB)


>都 立 墨 東 病 院
周産期センター産科 常勤医募集

1 担当診療部門:周産期センター産科
2 応募資格:医師免許取得後5年目以上
3 募集人員:若干名
4 選考方法:書類選考その他
5 採用予定日:随時(要相談)
6 身分:東京都職員(地方公務員)
7 給与等:給与、休暇、勤務時間等は、
 東京都職員の条例に基づきます。
 なお、給与の実支給与額は、勤務状況により異なります。
※ 給与月額(給与+地域手当+初任給調整手当)の例
 医師免許取得 5年目の場合 519,300円程度
 10年目の場合 598,500円程度
※ 上記の他に、扶養手当、住居手当、通勤手当、
 宿日直手当等が支給され、
 6月・12月・3月には期末・勤勉手当の支給があります。
 また、福利厚生については
 東京都職員共済組合員としての待遇を受けます。



という事ですかー。

東京の知り合いの医師の話では、
都立病院の医師の給与は、年収500円-600万円位
という話だったのですが。

月給50万―60万円というと、
年収で言うと、これに12をかけると、600万円―700万円。
それにボーナスがあれば、
年収700万円―800万円、という所でしょうかねー。

ちょっと思ったよりも高いのかな。
と思って、循環器の医師の給与を見ると。

循環器科医師(非常勤職員)募集

10 報酬     
   医歴:0~5年 ¥31,300  
   医歴:6~10年 ¥35,900
   医歴:11年~ ¥39,900
  ※別途当直1回につき¥43,500



ああ、これなら年収500万―600万円だわ。
産科は、これでも月20万円位、高いのね。
今年度から上がった、って某所に書いてありました。

医師の給料というのは、おおざっぱに言うと、
「地方、僻地に行く程高い」
ですからねー。

まあ、東京病院も多くて、激戦区だから。
高い給料を払ってでも医師を迎えます。
っていう病院もあるので。
必ずしも、これだけではないのですけどね。

おおざっぱに言うと、
東京とか都会の病院医師の給料は、地方よりも安い。
という事は言えます。

それでも、地方よりも都会に住みたい。
っていう人は、医師に限らず多いですから。
これは、資本主義社会では、当たり前の事です。

産科は、特に医師不足で大変ですから。
年収700万―800万円という給料は、
いくら都会と言えども、勤務内容に比べたら
さほど魅力的ではない値段。

という事なんだと思うんですよね。
だから、定員が9人のところに、6人(4人)しかいなくなった。
というか、最初はもっと安くて。
それだと産科が来ないから、これでも高くした。
という事なのかな。


やはり、石原東京都知事にも責任はありますよねー。

まあ、国や政府の責任も東京都、都知事にも
両方責任はあるんですから。
お互いに、人のせいにするだけではなく。
出来る範囲で、出来る事をやってもらいたいですね



伊関先生の本は、これっすよ!
→ まちの病院がなくなる!?―地域医療の崩壊と再生

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この記事へのコメント
けちなくせに要求だけは……
Dr.I様>
 国も東京都も、けちなくせに要求だけ大きいですね。解決策は簡単「出すものを出せば良い」だけなんですが、それを怠っておいて責任をお互いに押し付けあってるんですからあきれたものですね。もはや、日本の医療は絶望しかないんでしょうか……
Lich[URL] 2008/10/26(日) 01:37 [EDIT]
事件の側面
今回の不幸な事件は別の側面を明らかにしたと思います。それは関係した東京の医師と病院と地方の医師と病院との緊急時の連絡・対応能力の差です。
また東京都の税金収入に触れた書き込みがありますが、確かに東京都の税収は他の都市とは異なり特出しています。これを以って地方格差を叫ぶ方もいますが、現在はまだ地方交付税により都市間の格差は是正されています。この交付税の中に東京都が集めた税収も含まれています。批難する前に感謝することも忘れてはならないでしょう。
chengguang[URL] 2008/10/26(日) 12:18 [EDIT]
>Lichさん
お金がないと、できない事もあるんですけど。
金は出さないけど、なんとかしろ。
っていうのが、多すぎますね。
国も、地方自治体も。
Dr.I[URL] 2008/10/26(日) 19:55 [EDIT]
>chengguangさん
病院の差なのか、医師個人の差なのか、自治体の差なのか。
そこは何とも言えませんけどねー。
東京でもこういう事がある、っていう事が世間に広まっただけでも、良しとしなければならないんでしょうか。
東京の税金が地方にも分配されている事に関しては、たしかに感謝はすべきでしょうけど。
だからって、東京は医師や病院に金をけちっても良いって話にはなりませんけどね。
Dr.I[URL] 2008/10/26(日) 19:58 [EDIT]
リアル
月収とか年収の数字がリアルに出てるんですね。
リスクと責任を考えると、月収が低すぎる気がしました。どうでしょうか。。。

ss[URL] 2008/10/28(火) 00:35 [EDIT]
>ss先生
病院によっては、HP上でそんな事まで公開しちゃうんですねー。
時給とか、大変さを考えたら安いと思いますよ、私も。
Dr.I[URL] 2008/10/28(火) 23:31 [EDIT]

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