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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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東京女子医事件、高裁も無罪
東京女子医大、心臓手術事件」で
不当逮捕された、佐藤一樹先生
無罪判決が出ましたよー。


平成13年に東京女子医大
心臓手術を受けた12歳の女児が
心臓手術中に死亡した、
東京女子医大、心臓手術事件

この事件で、
トカゲのしっぽ切りにあい、
罪を被せられ、逮捕、勾留されて
訴えられた先生が、
佐藤一樹先生です。

佐藤一樹先生は、
『紫色の顔の友達を助けたい』
というブログを書かれていて、
『名誉毀損で医師が勝訴!』
『紫色先生、名誉毀損でまた勝訴』
など、このブログでも何回か、
紹介した事がありますね。


東京女子医大、心臓手術事件」が
一般の人達に有名になったのは、
「カルテ改ざん」のせいですね。
「カルテ改ざん」は当然、違法行為ですから、
もちろん私も、それを行う医師
許すつもりはありません。

ただ、「東京女子医大事件」
逮捕、勾留、起訴されて、
今日まで裁判で争っていたのは、
「カルテ改ざん」ざんを行った医師とは
別の医師なんですよ。
結構、勘違いされてる人いますけど。


「カルテ改ざん」を行った医師は、
悪い事をしていますから。
罪を認めていたので、
逮捕されてない
んですけど。

佐藤一樹先生は、手術中に
工心肺の機械を扱っていただけで、
何も悪い事をしていないから、
罪を認めなかったんですよ。

否認をしたから、警察に逮捕され、
長いこと留置所、拘置所に入れられた。


しかも、その逮捕の根拠となったのが、
病院の内部報告書なのですが。

この内部報告書っていうのが、
心臓の手術にも関わらず、
心臓血管外科医が入らないで、
人工心肺の事がわかる人が
1人もいない。
そういう、専門家が1人もいない
チームが書いた内部報告書ですから。
内容は、いい加減この上ない物なんです。


佐藤一樹先生のブログから引用すると、

本件における検察官の主張、立証は、
医学的水準に立脚した
事実の解明にほど遠いものであった。

検察官は、非科学的な東京女子医大
報告書に安易に立脚し、その論理と
結論を無批判に受け入れた。

このことは、学会で全く
支持されることがなかった
「吸引ポンプの回転数を上げたことが
陽圧をもたらした」との結論、
さらには物理学の初歩も弁えない
「圧の(不)等式」が東京女子医大
報告書と検察官の冒頭陳述要旨だけに
現れていることからも明白である
(報告書〔甲17添付〕14頁、
12頁、冒頭陳述要旨6~7頁)。

医学の水準を無視し、それどころか
自然科学の考え方すら無視するという
非科学的な捜査、起訴


です。

病院が、1人の末端の医師に、
罪を押し付けるために書いた
内部報告書

これのみを元に逮捕した警察。
そして起訴した検察。

医療関係者にとっては、
こちらの方で有名な事件です。
東京女子医大、心臓手術事件」は。


早速yahooヘッドラインにも
出ているようですね。



人工心肺誤操作の
東京女子医大医師 
2審も無罪
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090327-00000559-san-soci


東京女子医大病院(東京都新宿区)で
平成13年、心臓手術中に
人工心肺装置の操作を誤り、
小学6年の平柳明香さん=当時(12)=
を死亡させたとして、
業務上過失致死罪に問われた
元同病院医師、佐藤一樹被告(45)の
控訴審判決公判が27日、
東京高裁で開かれた。

中山隆夫裁判長は、無罪とした
1審・東京地裁を支持、
検察側の控訴を棄却した。


17年11月の1審判決は、
人工心肺装置の
フィルターの目詰まりから
血液の循環が悪化、女児が重い
脳障害となり、死亡したと認めた上で
「危険性を予見できなかった」と判断。
被告の過失を否定した。

フィルターの目詰まりをめぐり、
控訴審で検察側は
「装置を適切に操作しないことが
患者の死亡に
つながることは予見できた」
として、1審の事実誤認を主張。
「十分な配慮をして操作していれば
事故を避けられた」と、
1審判決の破棄を求めた。

弁護側は「当時の医学水準として、
フィルターが水滴などで詰まる
可能性を予見できなかった」
と改めて無罪を主張した。

佐藤被告は13年3月、
人工心肺装置を不適切に操作し、
脳障害で死亡させたとして
14年6月に逮捕され、
翌月、起訴された。


『2008年3月27日:産経新聞』



まあ、記事にはなっていますけど。
これ、名誉毀損で訴えられますよ。

地裁でも高裁でも、「無罪」判決が出て、
人工心肺誤操作ではない。
っていう事が裁判で
明らかになっていますから。

>人工心肺誤操作の
 元東京女子医大医師


って何ですか?
完全に「誤報」ですね、これ。

今だにこういう報道がされる、
って事が残念でなりません。


他の新聞社も報道していますから、
比べたい人は、くらいふたーん先生
ブログを読んでみてね!
『サッカーと地域医療の部屋:無罪判決』


まともな医療関係者から見たら、
当たり前の結果なのですが。
無罪の結論が出るまで、6年半という
長い年月がかかってしまいました。

地裁でも無罪判決
出ているのですが、
検察が無謀にも控訴したため、
こんなに時間がかかったんです。


法律判断ではなく、事実認定で
2度目の無罪を勝ち取ったからには、
法律判断しか出来ない上告には
もう意味がないと思います。
であれば、実質的には、
これで終わりでしょう。


判決文は、うろうろドクター先生が、
書いてくれているみたいなので。
詳しく知りたい人は、
こちらを読んでくださいね!

『東京女子医科大学事件、高裁判決文です。』
『東京女子医科大学事件、高裁判決文です。(その2) 』


主文:
本件控訴を棄却する。

理由の要旨:
控訴を申し出た
検察官の控訴の趣意は、
事実誤認の主張である。

結論:
以上の次第であって、
本件事故に関し被告人に
過失責任を問うことはできないから、
被告人に対し、無罪を言い渡した
原判決は、総論において、正当であり、
事実誤認をいう所論は、理由がない。


「手術中の脱血カニューレの
位置不良等により上大静脈からの
脱血が相当な時間にわたって不良となり、
その間送血は続けられていたため、
頭部に鬱血が生じたことによる
可能性が高いとの結論に達した。」

と認定したことが1審との大きな変化です。




判決後に開かれた記者会見の様子が
m3.comで書かれていますね。

m3の会員しか読めないみたいなので、
一部コピーさせていただきますne。


◆控訴審も医師無罪
東京女子医大事件
(2009年3月27日配信のMR君より)

「一審の無罪判決後、
ブログで主張してきたことが
ほぼ100%認められた判決。

医療事故においては、原因究明と
再発防止が非常に
重要になってきますが、
そこまで踏み込んで
判決を書いていただいて、
いい判決文だと思っています。

裁判長が最後に
『医療事故にかかわった一人として、
またチーム医療の一員として、
この事故を忘れずに
今後を考えていただきたい』
とおっしゃいました。

この再発防止については
ブログでも書いており、
また今年10月の日本胸部外科学会の
医療安全講習会の講師を私は務めます。
院内調査報告 書がテーマで、
心臓外科医として死因はどうであったか、
今後の再発防止にはどうすればいいかを
学術的にも発表していきます」


最後に、「遺族への思い」を
記者から聞かれた
佐藤氏のコメントをご紹介します。

「なぜ亡くなったのかを知りたい
という思いを、裁判所が
示してくれたことは、
ご家族への礼儀に
なったのではないかと思います。

女子医大が作成した
(事故調査原因に関する )
内部報告書は、患者さんの死因を
科学的に考えなかった、
あるいは根拠なく書いてしまった。

その態度を女子医大に
反省していただきたい。
僕も同じ病気(心房中隔欠損症)
だったのであり、
子供を亡くす親の気持ちは
計り知れないものがあります。
せめて今回、死因が
分かったということに
関してはご家族にも
ほんの一部ですけれども
納得ができたので は
ないかと思っています」




佐藤一樹先生
今日はお疲れでしょうから、
ゆっくり休んで下さい。
近々詳細をブログに書いてくれるでしょう。


無罪だったので明日、
お父さんのお墓参りに行くのかな。
詳しく報告してあげてください。

本当に、お疲れ様でした。



この事件の概要を知りたい人は、
日経メディカル2008年7月号を
読んでくださいね!
『「200807.pdf」をダウンロード』



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この記事へのコメント
本当に嬉しい
長い道のりでしたが、もう終わりにして欲しいですね。
このまま無罪が確定することを祈ります。
bamboo[URL] 2009/03/28(土) 05:47 [EDIT]
日本の司法も捨てたもんじゃない
「手術中の脱血カニューレの
位置不良等により上大静脈からの
脱血が相当な時間にわたって不良となり、
その間送血は続けられていたため、
頭部に鬱血が生じたことによる
可能性が高いとの結論に達した。」

うちの嫁(某大学病院看護師)もこの事を指摘していましたが、今回の判決で司法も正確な原因究明が、なされたのではないでしょうか。

自分は医療関係者ではないので、こういった報道は専門用語がいっぱいで、さっぱり分かりませんが、嫁から色々説明して貰えるので、理解できました。

御遺族の方も、真実が究明されたと思われておられれば幸いです。

今回の事件は「女子医大」の不誠実な対応と、検察側の無知が、ここまで長引かせたのではないでしょうか。

また、報道業界のいい加減さも露呈し、色々と飛び交う情報も、鵜呑みに出来ない時代になったのですね。
通りすがりの者ですが[URL] 2009/03/28(土) 08:57 [EDIT]
よかったですね
I 先生、こんにちは。佐藤先生よかったですね。
佐藤先生の裁判を長引かせたのは、私達、一般市民の無関心にあったのではないでしょうか。今、とても反省しています。
ななこ[URL] 2009/03/28(土) 09:53 [EDIT]
判決文です。
絶対に上告はないと考えます。
まさに完勝といっていい判決文です。

http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/28624180.html
http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/28632920.html
うろうろドクター[URL] 2009/03/28(土) 15:55 [EDIT]
やっと……
Dr.I様>
 ようやく無罪が確定しそうですね。
 しかし、専門家による調査がきちんと検察に評価されない(理解せずに起訴される)現状は恐ろしいですね。我が国日本の有罪率を考えると、なんとも言えないですね。しかし、今回のように無罪も出るようになりましたから、まずは一安心ですか。あとは、マスコミがきちんと「無罪の推定」に基づく当たり前の報道を行って欲しいものですが、難しいでしょうか……(嘆息)。
Lich[URL] 2009/03/28(土) 17:28 [EDIT]
>bamboo先生
無罪が本当に確定するのは、2週間後ですけど。
ほぼ間違いないと思います。
Dr. I[URL] 2009/03/28(土) 20:01 [EDIT]
>通りすがりの者ですがさん
検察もマスコミも、先に結論ありきで、見込みでやっていますから。
そういうのが、医療崩壊の一因になってるんですよね。
女子医大の内部報告書は、それこそ犯罪だと思うんですが。
それに関しても、きちんとやって欲しいですね。
Dr. I[URL] 2009/03/28(土) 20:03 [EDIT]
>ななこさん
そうですね。
世間がもっと正しい知識を知って騒げば、もうちょっと違ったのかもしれませんね。
Dr. I[URL] 2009/03/28(土) 20:04 [EDIT]
>うろうろドクター先生
報告、ありがとうございます。
まさに完勝ですね、ブログのまんまって感じですもん。
Dr. I[URL] 2009/03/28(土) 20:05 [EDIT]
>Lichさん
無罪なのに、まだ医者が悪いって報道してるとこもあるので。
なかなか難しいんでしょうけどねー。
まあ、でも無罪でよかったですよ。
Dr. I[URL] 2009/03/28(土) 20:07 [EDIT]
佐藤先生はもちろん悪くない
けど、女子医大の医療ミスで患者が死んだ事実は消えません。今時ASDの手術で死ぬような病院は大いに問題があります。
元外科医[URL] 2009/03/30(月) 09:46 [EDIT]
>元外科医先生
そうですね。
大学側には問題がありますから、その点はきちんとしないとダメだと思います。
Dr. I[URL] 2009/03/31(火) 22:11 [EDIT]
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[] 2009/04/01(水) 20:43 [EDIT]
>名無しさん
あ、すいません。
変更しました。
Dr. I[URL] 2009/04/04(土) 21:55 [EDIT]

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