現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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時間外勤務、月120時間
過労死には認定基準があって、

発症前1か月間に100時間、又は
発症前2―6か月間にわたって、
1か月当たりおおむね80時間を
超える時間外労働が認められる場合、
業務との関連性が強い


という具体的な基準(労働時間基準)
があります。

そいで、この基準を上回るような
労使協定が結ばれた、って事で。
滋賀県立成人病センターが、
また話題になっていますねー。

時間外勤務、月120時間
だそうです。

滋賀県立成人病センターは、
2008年4月、管理職と
されながら権限がなく、
残業代が支払われない医師
いわゆる「名ばかり管理職」で、
全国的に有名になった病院です。

ちょうどこの時期、マック(マクド)
の店長が「名ばかり管理職」で
経営側が負けたのと同時期だったんで。
インパクトありましたよね。
NHKの全国ニュースでも流れたし。


ネタ元は、Yosyan先生
『先例は作られた』
です。
いつもお世話になっております。
コメントでも、賛否両論。
活発な議論が行われているようですね。



勤務医の労働改善に高い壁 
時間外勤務の上限
過労死ライン”超

 
滋賀県立成人病センター(守山市)など
県立3病院医師らの時間外勤務
労働基準法違反があった問題で、
病院事業庁などは先月末までに
労使間の協定を結び、
大津労働基準監督署に届け出た。

協定内容は現場の実態を考慮して、
厚生労働省が示す過労死
認定基準を超える時間外勤務
労使ともに認めるしかなかった。

人員不足の解消など、
勤務医の労働環境の改善が
急務となっている。 
(林勝)

 
「(3病院で6割にあたる)過半数の
勤務医が労組に加入すること自体が
全国的にも画期的なこと。

労働の適正化を求める意識が
医療現場で高まっている」。
病院側との労使間協議に臨んだ
県自治労幹部はこう話す。

 
1日8時間の法定労働時間を
超えて勤務させる場合、勤務時間の
上限を定める労使協定を結び
労基署に届け出なければならない。

県立3病院は従来、この労基法の
規定を守らず、勤務医らの
裁量に頼った運営をしてきた。


この結果、脳神経外科や
産婦人科などの診療科目によって
違法な長時間勤務が常態化。
昨春、内部告発を機に労基署が
センターを立ち入り調査して
是正勧告を行った。

同庁は自治労など
職員団体と協議を開始。
病院医師の労組加入も相次いで、
熱心な議論が続けられた。


しかし、医療現場と労基法の
両立は現実的に不可能
とする勤務医は多い。

ある医師
「我々は労基法を守る前に、
医師法または医師の倫理に
従って仕事をせざるを得ない」
と強調。
医療従事者の長時間労働の上に
日本の医療が
成り立っている現実を指摘する。
こうした状況に慢性的な人員不足が
拍車を掛け、勤務医の負担は
増える一方になっている。

今回の労使間協議では現実を踏まえ、
時間外勤務の上限を決め、
当直を見直した。
病院側は厚労省が定める
過労死認定ラインを下回るように、
勤務医時間外勤務
月80時間以内とする案を提示した。

しかし
「最初から破られることが分かっている
協定を結ぶべきでない」とする
現場の意見があり、
滋賀県立成人病センターでは
月120時間を上限とすることで決着。
これに沿って労働改善に
取り組んでいくとした。


滋賀県立成人病センター医師
「労基法と診療に対する責任を
両立させるため、互いが
譲り合った現実的な協定だと思う」
と評価する。

ただ、協定を継続して守るためには
勤務医の負担軽減策が急務だ。
病院事業庁は
「欠員となっている診療科の
医師確保に努め、事務作業などで
医師の業務をサポートする
方法も考えていく」
と話している。


『2009年4月9日:中日新聞』


Yosyan先生も言ってるけど、

これのポイントは、

>滋賀県立成人病センターでは
 月120時間を上限とすることで決着


これっすね。
確かに、労働基準法で言う、
過労死の基準よりも長い時間働く

という事で決着。
とうのは、ちょっとどうかな、
というのが率直な感想です。

ただ、「月120時間」という
言葉にだけとらわれるのも
問題あるのかな、と思ったので。
もうちょっと冷静に分析すると。


良かった点、悪かった点、
両方あると思うんですがね。

ちょっと問題だった、悪かったかな、
っていう点は、多くの方がおっしゃる通り。

過労死の認定基準を超える時間で、
決着してしまった。


そういう、悪しき前例を作ってしまった
という事でしょうか。


理想論としては、もちろん
月80時間以内という、病院
厚労省が定めるライン。
これを基準とすべきなんでしょうけど。

>脳神経外科や
産婦人科などの診療科目によって
違法な長時間勤務が常態化。

>「最初から破られることが
分かっている協定を結ぶべきでない」
とする現場の意見があり、


って事ですから。
脳神経外科や産婦人科などの科は、
月に80時間の時間外労働では、
患者さんを守る事が出来ない。
と、現場が判断したのでしょう。

本来であれば、脳外科医とか
産婦人科医の医師の数を増やす

そして、1人当たりの仕事時間を
減らして、月80時間以内の
時間外勤務にする。


という事がベストなんでしょうけど。
医者はすぐには集まらないですよ。
現実問題としては。

だから、とりあえず半年、一年の
猶予として120時間までならオーケー

ただし、それをちょっとでも超えたら、
完全に違法ですから。
次はないですよ。

という協定だったんじゃないかな、
と思います。

医者を増やすのは難しいから、
医師の事務仕事を減らすために、
医療秘書をもっと雇うとか、
事務員や看護師に、もっと医師
仕事を手伝ってもらう。
というような、医師の労働時間を
減らすためのもっと別の案。
なんかも、あると良いと思いますね、
個人的には。

まあ、県立病院だから、
定員の問題もあるんで。
実際は難しいんでしょうけどね。


それと、特別協定なので、
120時間っていうのは、
一年のうちの半年間しか、
適用されないという事
です。

これ、私も含め勘違いされていた
人も多いかと思いますが。


コメントの中に埋もれちゃったので、
そこから引用させてもらうと。
具体的には、

>特別協定 120時間x6か月
 36協定 45時間x6か月

 の年間、720時間+270時間
 =990時間の年間協定です。


という事のようですね。

平均すると、月82.5時間ですから。
これでも、過労死の認定基準を
超えてしまいます
ので。
ちょっとどうかなー、とは思いますが。

脳外科や産婦人科の先生は、
月に80時間の時間外勤務では、
きちんと患者を診る事ができない。

っていう事なんでしょ。
内部の人間が、これじゃないとダメだ。
っていう人がいるんなら、
しょうがないのかなー。


でも、月120時間ばっかりに
焦点が当たっているけど。
実際問題としては、良かった点
っていうのもあるんですよ。
ホントは。

というか、実は画期的な
事なんですけどね。
労働協定結んだだけでも
進歩
ですよ、正直。


だって、今までは極端な話、
ほとんどサービス残業だった。
って話ですよ。

80時間までの時間外勤務
って協約になって、
120時間働いても、80時間以上は
時間外手当は出ません。
という事になるよりも、ましでしょ。

そういうもんでもないのかなー。

それに、自治労が過半数を取って、
36協定を結んだんですよ。

これが意味する事は、
時間外賃金等、時間外労働に
ついての協議で決裂すれば、
残業行為が全て違法になりますから。
だから、組合の協力なくして、
病院経営なんて絶対にできない

ということなんですよ。


良かった点としては。

1、時間外手当が
  きちんと付くようになった
2、使用者側の義務が厳しくなった
3、労働者側は協定破棄という
  カードを手に入れた


この3つですかね、おおざっぱに言うと。



これだけ「名ばかり管理職
とか医師の過労とかが、
一般の方達でも話題になってるのに。
今だに
医師は管理職だから、
時間外手当はつかない。」

とか、
医師は年棒制だから、
時間外手当はつかない。」

とか言ってる人もいるんですよ。

まあ、こっちが何も知らないと思って
言っているのかもしれませんけどね。

そんな人の言う事を信じて
奴隷のように働かされて。
サービス残業ばっかで、
時間外手当は貰えない。
っていうよりは、数倍まし

だと思いますけどね、正直。

そんな病院なら、立ち去れば良い。
って簡単に言う人もいるけど。
いざとなったら辞めてやる、
とは正直思っていますけどね、私も。

でも、実際に目の前に患者がいるのに、
病院を辞めたら、
患者にも迷惑かかるし、
同僚にも迷惑かける。
とか思ったら、行動を起こすのは、
結構大変ですよ。

まあ、経営者と交渉するのは、
もっと大変かもしれませんけどね。

でも、そこで働いている医師にとって、
少しでも以前と比べて良くなった。

って事なのであれば、
外部の人間が非難する筋合いの
ものではないような気がします。


医師の意見が比較的感情的で、
専門家の意見が
非常に冷静だったので。
ちょっと、Yosyan先生のブログの
コメントから引用させてもらいますね。

法務業の末席 さんは、
労働問題のプロだそうです。



法務業の末席

三六協定そのものは時間外労働に
対する法律上の絶対的な
許可要件ではなく、労基法32条での
週40時間&1日8時間の
法定労働時間を超えて労働させた場合に、
労基法119条の罰則(6箇月以下の
懲役又は30万円以下の罰金)が
免除される「免罰規定」に過ぎません。

ですので労働大臣告示の時間外労働の
上限基準時間は、直ちに労基法13条の
『この法律で定める基準に達しない
労働条件を定める労働契約は、
その部分については無効とする』
の対象となる「強行規定」ではない、
とするのが労基法の一般的解釈になります。

ただし、この「三六協定=免罰規定」
の法律論は、平成10年の改正で
労基法36条に現行の2項以下が
付加される以前の解釈論であり、
改正により大臣告示が法的な
裏付けを得たからには
「大臣告示の上限時間=強行規定」
とする意見も含め、
三六協定=免罰規定は誤りだ
とする解釈論も従前よりあります。

しかし現時点の労働基準行政当局
(厚労省労基局~都道府県労働局~労基署)
では「三六協定=免罰規定」であり、
大臣告示を超える時間数の
協定内容も直ちに無効とは言えない、
とする立場です。

なお、法律学者でも労働基準行政当局でも
共通していることは、三六協定だけでは
個々の労働者に時間外労働を
義務付けることは出来ず、
個々の労働者に時間外労働義務を
発生させるには、個別の労働契約
または就業規則或いは労働協約によって、
三六協定の内容に従って
使用者が時間外労働を命じうる旨が
明確に定めれている必要があります。

これは平成3年の最高裁判例
(日立製作所事件)で示された
司法判断で、個別の労時契約という
私法上の権利義務と、免罰規定としての
協定との整合性を説く部分と言われます。

ただ今回の滋賀県立病院の労働組合
(自治労の分会)の場合では、
上限時間の枠内の三六協定を
結ぶことにより病院の診療体制を
縮小せざるを得なくなることを避けて、
上限基準を超える時間外労働
(100時間程度?)の三六協定締結を
組合が自発的に決断したのは
事実であるようです。

労働契約の私法としての
任意合意の原則から見れば、
これはこれで滋賀県立病院
勤務医(労働者)の
任意自発的な判断であり、
軽々しく論評することは
差し控えるべきと思います。

ただ滋賀県の勤務医
どうしても組合の協定締結に
納得できない人が居るならば、
それは司法の場(裁判所)での
判断を仰ぐしかありません。



法務業の末席

>特別条項の「臨時的なもの」に
医師のいわゆる当直業務が含まれる
と解釈できそうです。
>いや解釈したから
労基署が許可した事になります。


これは、そのように解釈して
労基署が三六協定届出を受理しないと、
滋賀県の医療体制が
崩壊してしまうから、やむを得ず
受理したと善意に解釈してあげて下さい。


労働基準行政の現場では
「厳格な労基法適用を強制した結果、
事業の倒産や閉鎖あるいは
人員削減などで、労働者の働く
機会が失われては元も子も無い」
というジレンマに常にさらされています。

労基法は労働条件の改善を図って
労働者の福祉向上を目的とする
法律であって、労働者福祉の
最大の敵は「失業」なんです。

常に労働者福祉と労働条件との
バランスに苦慮するのが、
労基署なり我々労務士などの
職務の特性です。

今回の滋賀県の事件では、
労働者福祉と労働条件との
バランス取りと同じように、
医療崩壊と労働環境の
バランス取りに悩んだ結果の
苦渋の三六協定であることを、
使用者(滋賀県当局)も、
労働者(病院職員や勤務医)も、
また指導監督の責に任ずる
大津労基署も、三者が均しく
肝に銘じるべきでしょう。

今回の協定締結で未来永劫に
滋賀県立病院は年間990時間でも
OKなんだと思って欲しくない。

来年は10時間でも良いから
協定の時間を短くできるよう、
労使は努力する義務があると思います。
毎年少しずつでも時間短縮を
積み重ねる継続的努力に期待して、
見守っていきたいものです。



労働基準法を師の世界で
厳密に当てはめたら、
日本中で医療は崩壊してしまいます


だからと言って、
医者は奴隷の様に働け。
っていう主張には大反対です。

そういう地道な主張をする為に、
私はブログを書いています。

でも、急に労働基準法を守れ、
と言われても、無理なものは無理ですよ。

その分の医師の数が増えるか、
医療秘書とか医療従事者が増えて、
医師の替わりに仕事をしない限りは。

そのためには、時間がかかるし、
法律が変わって、看護師とか事務員、
救急隊の出来る範囲が、
もっと広がらなければなりませんから。

医師の労働基準法は守ったけど、
地域の医療は崩壊した。
という事になっては困るでしょうから。
そうならないために、
ある点で妥協しなければいけない。
っていう事も、実際問題としては、
必要なんじゃないでしょうかね。




本当に病院がなくなったら、困るよね!
まちの病院がなくなる!?―地域医療の崩壊と再生


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この記事へのコメント
最近は……
Dr.I様>

 過労死基準を超えたとはいえ、一定の枠がはまったのは、まずは一歩前進でしょうか。
 それにしても、一向に医師の勤労条件が改善されない現状を見ると、いっそ一度医療を崩壊させて、そこから再建したほうが世のため人のためのような気もしてきますね(嘆息)。
Lich[URL] 2009/04/15(水) 14:13 [EDIT]
>Lichさん
一定の前進だと思うんですけど。
そうではない、って思っている医者の方が多いんですよね、実は。

医療は一回破壊しなければダメだ、っていう論調もあるんですけど。
壊れ方ってのもありますからね。
Dr. I[URL] 2009/04/18(土) 13:30 [EDIT]
月に120時間とは毎日4時間の残業です
これがどういう意味かシロートでもわかるでしょ。常軌を逸した蟹工船状態です。こんな協定など笑止千万。無意味。アホ丸出しです。

どうしてまともな方策、すなわち、月に残業は50時間以下として、足りない分は外注(バイト医師雇用)するか、診療縮小(ベッド数減少か、外来日削減)を言わないのでしょうね。

まさか、( )の手法は経営的に儲からないからと言うことはありませんよね。医師や患者の健康や安全より、病院の儲けを優先している経営陣なんか日本には居ないですよね。
元外科医[URL] 2009/04/19(日) 08:48 [EDIT]
>元外科医さん
正直、この条件が良かったのかわかりません。
普通に考えたら、ちょっと問題なんですけど。
今まではサービス残業だったのに、手当てが出るだけましなのかな、っていう見方もできるのかな、と。
ほとんどの人、特に医師は厳しい見方をしているのは知っていますけど。
あえて、反対の記事を書いてみました。

Dr. I[URL] 2009/04/19(日) 21:15 [EDIT]

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