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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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医師の当直勤務は時間外労働
医師当直勤務っていうのは、
本当はただ寝ているだけとか。
そういう事になっているので。
実際に患者を診察したり、
たくさん働いている場合は、
時間外労働として、
時間外手当を貰える。
っていう事に、法律上はなってるけど。
実際に、そういう事で訴訟を起こして
医師が勝った、っていう裁判は、
今までにはなかったんです。

でもついに、
画期的な判決が出ましたよ。

奈良県立奈良病院で、奈良県を相手に
裁判を起こした医師が、当直中の
時間外割増賃金
を勝ち取りました。

一番詳しいのは、産経ニュースですね。



当直医に残業代支払え 
「断続的勤務」に該当せず 
奈良地裁

奈良県立奈良病院(奈良市)の
男性産婦人科医2人が、夜間宿直
休日などの勤務に対し、正当な
労働対価が支払われていないとして、
県に平成16~17年の
割増賃金未払い分計約9230万円
の支払いを求めた訴訟の判決が
4月22日、奈良地裁であり、
坂倉充信裁判長は県に
計約1500万円の支払いを命じた。

原告側弁護士や県によると、
公立病院では、医師宿直
休日勤務に一定額の手当の支払いで
済ませているケースが大半。

こうした勤務にも割増賃金を支払うべき
と認定した判決は、産婦人科などで
目立つ医師不足や
偏在の要因となってきた
労働環境をめぐる議論に
影響を与えそうだ。

弁論では、医師らの宿直
休日(宿日直)勤務が、労働基準法や
人事院規則にのっとって県が定め
た条例で割増賃金を支払う必要が
ないと定められた「断続的勤務」
かどうかが大きな争点となった。

坂倉裁判長は判決理由で、
断続的勤務に該当する
宿日直勤務について、
「構内巡視や文書・電話の収受など
常態としてほとんど労働する
必要のない勤務」と判示。

同病院の産婦人科医師らの
勤務実態は「宿日直の24%の時間、
救急患者の措置や緊急手術などの
通常業務に従事していた」と認定し、
断続的勤務には該当しないと判断した。

その上で、宿日直中は
「奈良病院の指揮命令下にあり、
割増賃金を支払うべき対象の
労働時間にあたる」と指摘。
訴えのうち、時効が未成立の
平成16年10月末以降の
割増賃金の支払いを命じた。


「2009.4.22:産経ニュース」


産経には書いていない事が、
読売には書いてあったので。
大事なことなんで、
こっちも引用しますね。



医師当直勤務は「時間外労働」、
割増賃金支払い命じる判決


奈良県立奈良病院(奈良市)の
産婦人科医2人が、県を相手取り、
夜間や休日の当直などは
時間外労働に当たり、手当支給だけで
賃金を払わないのは労働基準法に
違反するとして、2004、
05年分の時間外割増賃金
計約9200万円の支払いを
求めた訴訟の判決が22日、
奈良地裁であった。

坂倉充信裁判長
(一谷好文裁判長代読)は
「当直時間に分娩(ぶんべん)や
新生児の治療など
通常業務を行っており、
割増賃金が不要な
勤務とは到底いえない」
として、県に対し、労働基準法上の
請求期限の時効分を除く、
当直分の割増賃金として、
それぞれ736万円と
802万円の支払いを命じた。

通常勤務並みという医師
当直勤務を時間外労働
認めた初の判断。
産科医の過重労働が
問題となる中、全国の
病院運営に影響を与えそうだ。

また、坂倉裁判長は、緊急時に
備えて医師が自宅で待機する
宅直」については「医師間の
自主的な取り決めで病院の
内規にもなかった」として、
割増賃金を認めなかった。



『2009年4月22日:読売新聞』



医師当直勤務が通常勤務並み
って病院はたくさんあるけど。
ほとんどの場合は、
どんなに働いても、「当直代
以外のお金は出ません。

当直代」ってのは、
ただ寝てるだけの分だから。
実働時間に関しては、
その分の時間外手当を出す。
っていう病院すら、ほとんどありません。

それが、当直中は、
実働時間だけでなく、
待機時間も全部含めて、
時間外労働
だって
認定されていますから。
非常に画期的な判断です。

そういう意味では、評価しても
良いと思いますが。

ちょっと問題なのは、

>緊急時に備えて医師
 自宅で待機する
 「宅直」については「医師間の
 自主的な取り決めで病院の
 内規にもなかった」として、
 割増賃金を認めなかった。


この「自主的」っていうとこですね。

産婦人科の場合、緊急帝王切開
という事になれば、手術ですから。
1人では出来ないんですよ。
だから、当直は1人でも、
帝王切開とか手術が必要な
患者が来た時に備えて、
必ずもう1人、自宅待機
いわゆる「宅直」の医師がいるんです。

宅直」の場合は、病院にずーっと
泊り込む必要はないけど。
いつ緊急の患者
来るかわからないから、
いつ呼び出されても良いように、
病院の近くで待機しているし。
もちろん、お酒も飲めません。

欧米では、待機している
時間も労働時間
、という事は、
常識になっているのですけど、
日本ではそこまでいってないんです。


ちなみに、以前に私が
ブログに書いた記事はこちら。

『医師の超勤手当』



更に詳しい記事が
m3.comに載っていたので、
こちらも引用しますね。

橋本佳子編集長の記事です。



宿直問題で画期的判決!
時間外手当の支払い命じる

奈良県立奈良病院の
産婦人科医2人が、未払いだった
時間外手当の支給を求めていた
裁判の判決が4月22日
午後1時10分から、
奈良地裁であり、A医師
736万8598円、B医師
802万8137円の支払うよう、
奈良県に命じました。
判決後の記者会見で、代理人の
藤本卓司弁護士は、
こうコメントしました。 


宿直勤務は、待機時間を含めて
すべて勤務時間とした画期的判決。
宅直勤務分の支払いは
認められなかったのは不満だが、
最も主張していたのは宿直
勤務時間として認めるべき
という点だったので、
6-7割は勝訴したと言っていい」


提訴したのは、2006年12月4日
(提訴の経緯は、『時間外手当支払いを
求めて提訴したわけ』

にまとめています)。

賃金の支払いを求めたのは、
2004年と2005年の2年分。
当時、奈良病院では、宿日直に対し、
1回2万円の手当が
支払われていたのみで、
宅直(オンコール)については
手当が付きませんでした
(その後、手当の体系は一部、見直し)。

しかし、実際には、宿日直と言っても、
入院患者の急変や救急患者への
対応など、通常勤務と
変わらなかったため、
「時間外・休日労働に対する割増賃金」
(時間外手当)の支払いを
求めたわけです。

A医師は2年間で、
宿日直155日のほか、
オンコールが120日、B医師
宿日直158日、
オンコール126日でした。
これらがすべて時間外勤務に該当し、
未払いの賃金として請求したのは
A医師4427万9189円、
B医師4804万9566円でした。

今回の判決では、宿日直分に
ついては支払いが認められました。
額がやや少ないのは、提訴したのが
2006年12月4日で、時効が
成立した分があるためです。
「時効が成立していない分については、
すべて時間外割増賃金の
支払いが認められた」(藤本氏)。

一方、オンコール分が
認められなかったのは、
県の命令ではなく、
医師たちが自主的に
行っていたためです。

しかし、当時、奈良病院の
産婦人科は5人体制で、
宿直は1人体制でした。
「帝王切開手術のほか、
夜間の救急外来への対応などがあり、
1人体制では無理。
本来なら2人体制で宿直を
すべきところなのに、それを
補うために医師たちが
自主的にオンコールをやっていた。
したがって、このオンコール分が
認められないのはおかしい」(藤本氏)。


なお、2006年と2007年分の
未払い分については
別途提訴しています。
この裁判は進行中のため、
ここでオンコール分の
支払いも求めていくそうです。
また、現時点で原告側が
控訴するかどうかは未定だそうです。


この判決の影響について藤本氏は、
医師不足の中で、医師は過酷な
労働を強いられている。
しかし、今は予算がないなどの理由で、
1回当たりいくら、という
宿日直手当てを支払い、
『これで我慢してくれ』
と言われている状況。

しかし、今回の判決では、
こういう扱いは許されず、
勤務させるなら割増賃金を
支払うよう求めている」と分析。

裁判はあくまで個別ケースで
反対されるので、「どこまでが
宿直扱いで、どこからが通常勤務か」
の線引きは難しいのですが、
宿日直勤務は
「常態としてほとんど労働する
必要がない勤務」ですから、
他の病院勤務医でも宿日直ではなく、
「通常勤務」として認められる
可能性は高いのです。
その意味で、この判決の影響は
大きいと言えるでしょう。


詳細は別途、医療維新の
コーナーでお届けします。

『2009年04月22日:So-net M3』



当直も、実際に働いている分は、
労働時間として、
時間外手当を払いなさい。

っていう事ではなくて、
当直で病院に泊まっている時間は、
ずーっと待機しているんだから。
その分も時間外手当として払いなさい。

っていう判決なんですよ、これ。

それが、
>「宿直勤務は、待機時間を含めて
 すべて勤務時間とした画期的判決。


の意味です。

確かに、画期的です。
でも家で待機している時間は、
自主的だったから、
払わなくても良い。
っていう理屈のようですから。

逆に言うと、「業務命令」で、
家で待機「宅直」をしていたら、
時間外手当を貰える。
っていう事なんでしょうかね。
この裁判官の理屈は。


医師の皆さんは、「自主的
宅直、当番の表を作らないで、
業務命令」でやるようにして下さいね。


ちなみに、動画はこれっす。

『2009.4.22:読売テレビ』


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この記事へのコメント
当然の判決ですね
全国の総合周産期センターの”当直”も今回の判決に従って改善していただきたいものです。いったいいくつのセンターを残すことが出来るのか(人員的にも金銭的にも)、心の底から心配で心配でなりませぬ。
ただ、福島大野事件の際、一審(地裁)の判決は判例にはならない、なんてコメントをどこかで見かけたような記憶があるのですが、どうなんでしょうか?
REX[URL] 2009/04/23(木) 13:45 [EDIT]
判例ではありません
刑法学の大家がそうおっしゃってました

でもこの事案は、サラ金過払いのように、全国の病院に燎原の火のごとく広まることを期待してwktkですよ
元外科医[URL] 2009/04/23(木) 16:04 [EDIT]
当然の判断ですが……
Dr.I様>
 当然と言えば当然の判決なのですが、これも結局は「隠れ当直」のようなことが横行しかねない気がします。医師の皆さんに限らず、「サービス残業」を全廃して、経営者を甘やかすのをやめる必要があると思うのですが、結局、「経営者に逆らうことを悪徳とする」我が国日本では、労働基準監督署の怠慢(最近は勧告することが増えているようですが)とあいまって、「公共性」を言い訳に過重労働を強いられる傾向は続くのでしょうね(嘆息)。
Lich[URL] 2009/04/23(木) 17:24 [EDIT]
>REX先生
結局、金がないから払わない、って事になる可能性もありますけど。
全国に広がると良いですねー。
Dr. I[URL] 2009/04/23(木) 22:01 [EDIT]
>元外科医先生
たしかに、地裁の判決は判例にはならないんですけど。
こういう訴訟は、どんどん出てくるでしょうから。
全国に広がる可能性はあるでしょうね。
裁判官も世論を考えていますから。
Dr. I[URL] 2009/04/23(木) 22:03 [EDIT]
>Lichさん
当然といえば当然なんですけど。
今後どうなるか、ちょっと見守っていきたいですね。
Dr. I[URL] 2009/04/23(木) 22:06 [EDIT]
控訴してくださいました
判例とすべく活動されてるようです、知事
奈良県が判決不服で控訴 産科医の時間外手当訴訟
ttp://www.asahi.com/kansai/news/OSK200905010054.html
>記者会見した荒井正吾知事は「当直勤務時間すべてを割増賃金の対象とする判決は適切ではない。診療をしていない待機時間は労働時間から外すべきだ」と話した。

グレーな領域を作らないよう、とことん議論していただきたいものです。
REX[URL] 2009/05/01(金) 13:23 [EDIT]
最高裁で判例にして頂きたいですね
賃金(時間外)が増えるか、はたまた不当判例が出て逃散加速か、いずれにしても個人的にはwktkですね
元外科医[URL] 2009/05/01(金) 22:49 [EDIT]
>REX先生
まあ、最高裁で判決がでないと、判例にならないので。
それでも良いっていえばよいのかもしれませんが。
予想通りですかね。
Dr. I[URL] 2009/05/03(日) 00:30 [EDIT]
>元外科医先生
単なる時間稼ぎなんでしょうけど。
それまで持たずに、医療崩壊が進みますかねー。
Dr. I[URL] 2009/05/03(日) 00:32 [EDIT]

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