現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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軽症患者から特別料金、断念
時間外重症患者割引制度
というか、時間外に受診した
軽症患者から加算金を取る制度


「時間外重症患者割引制度実現か」
の記事にも書いたけど、
2010年度からの診療報酬改定で、
もしかしたら導入されるかも、
って思ったんだけど。
断念、というか見送りになりましたね。

まあ、予想通りではあるんですが、
はっきり言って、すごく残念です。



軽症救急患者から特別料金、
10年度は見送り

症状が軽く必要性が低いのに
救急外来を受診する患者から
特別料金を徴収できる仕組みについて、
中央社会保険医療協議会(中医協=
厚生労働相の諮問機関)は1月27日、
新年度の診療報酬改定での
導入見送りを決めた。

委員間で合意が得られず、断念した。
ただ、救急医療の適正な利用を
求めていく点では一致し、当面は
啓発活動を充実させることで対応する。

軽症患者が、自分の都合で夜間や
休日に受診するケースがあり、
救急医療現場の負担増加に
つながっていると指摘されている。

中医協は、医師らの負担軽減策の
一環として特別料金の徴収を検討。
対象を重度の患者を受け入れる
救急救命センター(全国で221施設)に
限定したうえで、診療前に患者側に
周知することや診療の優先順位の
基準を各医療機関で策定する
――などを条件に徴収できる
仕組みが検討されていた。

徴収対象の典型例として
「虫さされがかゆい」「海外旅行なので、
いつもの薬をたくさんほしい」
が示されていた。
 
この日の中医協では、患者ら
支払い側委員が、「患者自身が
軽症か)判断できないことが多い」
「逆に、お金を払えば(救急に)
行っても良いとなりかねない」
など導入に反対。
患者に適正利用を働きかける
取り組みをしたうえで、
検討すべきだとの意見が出た。

これに対し、医師ら診療側委員は
「本当に救急医療が必要な人が
受けられないことがある」など
導入の必要性を訴えたが、
新年度からの導入は時期尚早
と結論づけられた。

ただ、現在も一定の条件を満たして
救急外来で特別料金を徴収している
場合は、今後も継続できる。


『asahi.com: 2010年1月28日』


まあ、救急救命センターに限定
っていうのも、あまり意味ないし。
適正な価格でないと意味がないので。

最初に安い値段で始めて、
徐々に高くしていく、っていうやり方だと、
むしろ逆効果っていう事もあるんで。
中途半端に始めるよりは、
適正な価格と、どの病院で適応するのか。
っていう事をきちんと決めてから始める、
って方が良いかもしれないので。
逆に良かったのかもしれませんけどね。



医療ではないんだけど。
実例があるんで、ちょっと紹介しますか。

安すぎる値段でペナルティを課したら、
減るどころか逆効果だった
、って実験です。


「ヤバい経済学」
という、経済の本から引用。



経済学者達が、イスラエルの保育園
10カ所で20週間行った実験。

保育園って子供を預かっている訳なんだけど。
親が子供を迎えに来るのに、
遅れてくる事がよくあるんですよ。

そこで、どうやったら迎えに来る
親の遅刻を減らせるのか、
っていう実験をしました。


最初の4週間は、遅れてくる
親の数を数えます。
平均で、保育園一カ所当たり、
週に8件の遅刻がありました。

5週目に、罰金制度が実施されます。

迎えに来るのが10分以上遅れた場合。
その親には毎回子供1人につき
3ドルの罰金を課すって事にしました。


さあ、遅刻してくる親は、
減ったのでしょうか、増えたのでしょうか。





すると、どうでしょう。
罰金制度が始まると、
親の遅刻はすぐに、増えました。

以前は平均で、保育園一カ所当たり、
週に8件の遅刻があったのですが。
罰金制度が導入されると、すぐに
週当たりの遅刻は20件に増えました。
約2.5倍ですね。



インセンティブが完全に
裏目に出てしまった例です。

インセンティブには、
経済的インセンティブ
社会的インセンティブ
道徳的インセンティブ
の3つがあります。

「タバコ」の例を出すと。

タバコ税を取って、購入意欲をくじくのが、
経済的インセンティブ。
レストランやバーでの喫煙が
禁止されているのは、社会的インセンティブ。
アメリカ政府が、テロリストは
ヤミでタバコを売って資金を調達している
って主張するとき、あれは
道徳的インセンティブです。


イスラエルの保育園の場合。
子供1人が毎日遅刻しても、
月に60ドル追加で払えば良いだけです。
これは、基本料金の1/6ほどで、
ベビーシッター料としても安いですから。
経済的インセンティブとしては、
軽すぎです。

替わりに罰金が100ドルだったら、
かなり効果があるんでしょうが。
大変な恨みを買うでしょうねー。

この罰金制度の問題は、
経済的インセンティブが軽すぎた、
って事と。
道徳的インセンティブ
(遅れた親が感じる罪の意識)を
経済的インセンティブ(罰金3ドル)に
置き換えてしまった、って事です。

毎日ほんの3ドルで免罪符が変える。
そのうえ、罰金が少額なので、
迎えに来るのが遅くなっても
たいしたことじゃない、
というシグナルが親御さん達に
送られてしまったんです。


この実験の続き。

調査の17週目になって、
経済学者が罰金をやめても、
遅れる親は減らなかった。
遅れて来た人達は、罰金を払わされる事もなく、
そのうえ罪の意識もなくなったんです。





ここで本題に戻って。

柏原とか東金とかのやり方は、
道徳的インセンティブに訴えるやり方です。
参照:
「県立柏原病院の小児科を守る会」
「NPO法人:地域医療を育てる会」
これは、間違ってはいないと思います。

そして、軽症患者から時間外加算金を取る
っていうのは、経済的インセンティブです。

軽症患者時間外加算金が、
300円とか500円っていう少額で、
免罪符が買える
、という事になれば、
イスラエルの保育園の例と同じ。

経済的インセンティブを
道徳的インセンティブに
置き換えただけですから。

逆に受診者の数が増える事がありえます。

だから単に少しだけでもお金を取る、
っていうやり方ではなくて、
時間外は5千円とか1万円くらいの、
ある程度痛みの伴う額
にしないと、
逆効果になる可能性はあると思います。

お金を取るなら、受診が抑制されるくらい、
しっかり取る。

数百円とか1000円とかじゃ、
経済的インセンティブが軽すぎるので。
時間外加算料金5000円位取りなさい

っていうのが私の主張です。


それと、前回の記事にも書いた通り、
「時間外重症患者割引制度実現か」

1、軽症患者への加算金は、
  普通の人であれば、そこそこ痛いな。
  という「適性な金額」にする事。

2、「軽症かどうかを現場の医師に
  決めさせて、余計な負担をかけさせない」。

3、「救命救急センター」だけでなくて、
  2次救急の病院にも適用する事。


この3つ揃っていないと、
中途半端なことになって。
安い値段だと、逆にモラルの低下を
引き起こして、患者数が増える

なんて事もありえるんで。

今回、制度として導入しなかったのは
しょうがないですから。
2年後か、いつかわからないですけど、
やる時には、きちんとした金額、
それと、適切な病院に適用する。
という事を、しっかり考えてから
やって欲しいものですね。



保育園の迎えに遅刻する親の話だけでなく、
相撲の八百長とか、マフィアの経済学とか。
普通の本とは全く違った経済の話が
おもしろおかしく書いてある本がこれ!


→ 「ヤバい経済学」
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この記事へのコメント
政治的に正しい……
Dr.I様>
 結局、軽症患者から特別料金を徴収することはできなかったようですね。なかなかに「固定観念」を覆すことは難しいですね。どうしたものでしょうか……
Lich[URL] 2010/02/02(火) 20:24 [EDIT]
>Lichさん
患者側からの反対の声も大きいでしょうから、予想通りといえば、予想通りなんですけどねー。
残念です。
Dr. I[URL] 2010/02/03(水) 00:20 [EDIT]
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
[] 2010/04/23(金) 14:11 [EDIT]

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