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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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心臓弁膜症手術、青森で提訴
民事訴訟を起こす権利は誰にでもありますから。
医療に関してだけは、民事訴訟を起こす事を禁止する
なんて事はできるはずもないし、
そんな事を求めはしないんですけど。

マスコミには、報道する価値のある事だけ報道する、
とい事にしてもらえないものでしょうか。

それに、自分でも何を言っているのか
理解しないで記事にする、
というのは、やめませんかね。

どの新聞とは言いませんけど。
これなんかも、そうじゃないかな。


提訴:71歳男性死亡で遺族が県を訴え 
医師過失」損賠求め /青森

県立中央病院で心臓手術を受けた男性
(当時71歳)が医師の過失で死亡したとして、
遺族が県に慰謝料など約4600万円の
損害賠償を求める訴訟を青森地裁
(貝原信之裁判長)に起こした。

1月21日にあった第1回口頭弁論に県側は
出廷せず、答弁書で争う姿勢を示した。

訴状によると、男性は09年に心臓弁膜症と
診断され、人工弁を付ける手術を受けた。

手術中、心臓からの出血を理由に
約5時間半にわたって心停止状態にされたため、
心機能が低下して死亡したという。
【高橋真志】


『毎日新聞 2011年1月22日 地方版』



記事に書いてある内容が少なすぎて、
議論するにしても、想像の域を出ないんですけど。

ある男性が、青森の県立中央病院で
心臓弁膜症の手術を受けた。

という事は良いですよね。

そして、手術後、残念ながら亡くなった
という事も事実だと思います。

そいで、その理由というのが、
この記事を見る限りでは。

心臓からの出血を理由に約5時間半に
わたって心停止状態にされたため、
心機能が低下して死亡した


という事らしいんですけど。

心臓から出血しているのに、
心臓を動かしたら、助かったんですか?


と聞きたいですね、私は。

もしそうであれば、この記事は正しいんですけど。
そんな事、ありえるんでしょうか。

心臓というのは、血液を全身に送り出す
臓器な訳ですから。
心臓から出血しているのに、心臓を動かしたら、
ますます出血がひどくなると思います。

もしそうじゃなくて、心臓から出血しているのに、
心臓を早く動かしていたら、この患者は助かった。
というのであれば、この記事の内容も
正しいのかもしれませんけど。

そんな事、ありえないと思いますけどね。


例えば、明らかにやってはいけない事、
いわゆる「医療ミス」をしたために、
心臓から大出血してしまった。
そのために、患者さんは亡くなった。

という事であれば、そのミスした内容に
過失があるから、訴訟を起こした。
という話だったら、わからないでもないですよ。

手術をして、血が出るのは当たり前ですから。
出血というのは、「医療ミス」ではなくて、
普通は「合併症」なのですけど。

例えば、絶対に使ってはいけない医療器具を
使って、その結果として心臓から大出血した。
とか。

薬の種類を間違えた。
薬の量を10倍とか使ってしまって、
血が止まらなくなって出血した。
とか。
そういうのであれば「医療ミス
という言い方も出来るとは思いますけどね。

でも、心臓から出血が続いている状態で、
人工心肺を回しても、
出血が止まるはずはありませんから。

心臓を止めたまま処置を続ける、
という手技自体は、医療ミスとは言えない
と私は思います。
というか、心臓止めてないと無理でしょ、逆に。

まあ、確かに、心臓弁膜症の手術で、

>約5時間半にわたって心停止状態

というのは、普通の手術に比べて長いな。
とは思いますけどね。
ミスかどうかは別として。

でもだからと言って、心臓からの
出血が続いているのに
心臓を動かせば助かったはず。
というのは、全く見当違いだと思います。



医療だけとは限らないんですけど、
こういう民事訴訟の記事の弱点は、

>「訴状によると」
というように、情報ソースを「訴状」だけに
限定しているからなんですよ。

訴状」というのは、裁判を起こした方が、
一方的に主張している事。
ですからね、簡単に言うと。

両方から意見を聞いたから正しい、
という保障はもちろんないんですけど。
少なくとも、異なる意見を聞いて、
それを検討してから記事を書いた方が、
信憑性は増す、という事は言えると思います。

つーか、2つの異なる情報ソースから
情報を収集してから記事を書く。
というのは、マスコミの基本だと思うんですが。

医療に関して全くわかっていない記者が、
一方からの意見を鵜呑みにして記事を書く。
しかも、医療訴訟のほとんどは、
訴訟を起こすのは、患者や家族など、
医療とは関係ない人たちですから。

医学的にはおかしな話も多い、
というのは当たり前だと思います。
ですから、詳細に検討してから記事を書く、
という事が必要なのではないでしょうか。

医療記事は、専門的な内容が多いんだから、
もうちょっと、きちんと考えてから
やってもらいませんかねー。

やっぱり、無理なのかなー。

新聞と言っても、いろいろありますしね。
やはり、新聞社によっても違うんでしょうか。
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