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現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
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医者に必要な能力1
医者必要な能力ってのは、いくつかあると思うんですが。
いくつあるのかはわからないんですが、あくまで私が思う医者必要な能力を、独断と偏見で述べていきたいと思います。

一応、どんな科の医者にも必要な能力ってのを挙げていきたいと思います。

私が思うに、医者っていうのは、人間の命を扱う職業ですから。
医者に最も必要な能力っていうのは、この人が死にそうだとか、死ぬかもしれないって事を早く気づく能力だと思うんですよね。


眼科とか耳鼻科とか皮膚科とか、そういう科は、今すぐに死ぬような患者を自分の専門の科で診る事は少ないと思うんですが。


病院には必ず当直医っていうのが最低1人はいるんですよ。
夜でも正月でも24時間ね。

大きい病院だと、当直医が2人とか3人の病院もあるんですが。
そんなに大きい病院でなければ、当直医は1人の事が多いです。

夜に1人で病院にいるんですが、患者何科医者が当直だろうが、重症だろうが軽症だろうが、いろいろ来ます。

そういう時に、最初は必ず当直医が診るんですね、患者を。
そして軽症であれば、その場で処置をする。

そして、重症で自分では診ることが難しいと判断したら、その時に始めて他の科医師を呼ぶんですよ。

例えば、明らかに心臓が止まりそうとか、麻痺があるとか、意識がないとか、誰がどう見ても重症って場合は、すぐ専門医者を呼びますよね、普通。

まあ、循環器内科医が当直であれば、心臓が止まりそうな場合は、自分で処置しますけどね。
大けがしている人が来たら、すぐ外科の先生を呼びますけど。

で、ただの風邪とか、ちょっとぶつけたとか位だと、自分で診るので、まあこれも良いでしょう。


問題になるのは、重症軽症かちょっと微妙な時ですね。


例えば、胃が痛いって患者が来たと。
当直医消化器内科医で、結構若い。

で、まあ胃痛だから専門で、たいした事ないだろうって事で、自分で診て胃薬を出して家に帰すと。

で、そのちょっと後に、心臓止まりかけて救急車で運ばれてきて、心電図を取ったら心筋梗塞だったとかですね。

心筋梗塞でも胃潰瘍でも、みぞおちの当たりが痛くなるって事あるんですよ。
で、患者の中にはみぞおちが痛いのは胃の痛みって、勝手に思って胃が痛いって来る人がいるんですよ。

そういうのを医者は鵜呑みにしちゃいけないんですよ。


急患でやばいのは、心筋梗塞、肺梗塞、胸部大動脈解離等の循環器系の病気と、脳梗塞、脳出血等の脳外科系の病気ですね。
心臓は、適切な処置が遅れると、あっという間に死んでしまいますからね
まあ、他にもあるんですけどね。

脳外科がない病院だと、脳梗塞とかも循環器が診る事もあるんで。
やばそうな人が来ると、全例循環器内科が呼ばれるって病院もあるんですが。

おかげさまで、商売繁盛ですわ(笑)


こういう明らかにやばいって、診てすぐにはわからないけど、危ない病気を頭に入れた上で、更に話を聞いたり、検査を追加すればわかる病気っていうのが、一番危ないんですよ。


こういうのを気づく為に必要なのは、一つは経験

経験っていうのは、ただ患者を100人診たら気づくとか、1000人なら大丈夫って事ではありません。

もちろん、100人より1000人診た方が良いに決まっているんですけどね。
でも、医者になって数年で何千人もの患者を診るのは、普通は無理です。
じゃあ、医者歴数年の医師には、絶対にそういう危ない病気に気づくのは無理かって言うとそうでもないと思います。

まあ、10人20人では難しいかもしれませんけどね。

どうすれば良いかっていうと、危険な病気を常に頭に入れて、診察すれば良いんですよ。
ま、教科書的には、全員そうしているはずなんですけどね。
超基本ですから、これ。

でも、だんだん経験を積んでくると、このくらいなら大丈夫だろうって、余裕が出てくるんですよ。

車の運転でも、初心者よりも、ちょっと慣れた時の方が事故る確率が高いっていうのと似ていますね。

そして、自分が間違ったら、何故間違ったかって検証する事ですね。

今までに診断が間違った事がない医者ってのは、医者になって数日の医者とか、患者を全く診ない医者くらいしかいませんからね。
それか、間違いに気づいていない医者か。

だから、間違う事は恥ずかしい事ではないんですよ、はっきり言って。
一般の人達は絶対間違ってはいけないと思っているかもしれませんが。

しかし、限られた時間と検査しかしていなくて、専門も細かく分かれている現代の医療で、100%間違わないっていうのは不可能ですから。

で、間違ったら、何故自分が間違ったか。
合っていても、完全に合っているわけではないでしょうから、どこまで合っていて、どこは間違っていたか

危ないと思って、他の科の医者に診てもらったら、その後、専門の医者はどんな診察や検査をして、どういう風に診断したのかってのを勉強する事ですね。

他の科に送ったから大丈夫って、安心しているだけじゃ、それ以上成長しませんから。

そういうのが、経験を積むって事だと思います。
ただ数を診れば良いってものではないと思います。

麻雀でも、半荘100回やった人と、半荘1000回やった人では、半荘1000回やった人の方が、たいていは強いんですが。

半荘1000回で自分が何故負けたかしっかり検証して、その後勉強している人と、何も考えず半荘2000回やった人では、多分半荘1000回で検証した人の方が強いですからね。


もう一つは、自分の能力を知るって事です。

極端な話、自分に能力がないってわかっていれば、早めに専門の科医者を呼びますから。
結果的には重症患者を見逃す事は少なくなりますからね。

一番危ないのは、医者数年でちょっといろいろできるようになって、自分はなんでも出来るって過信した時ですね。


自分の能力を客観的に判断して、常に危険な病気を念頭に置いて患者を診察する。
そして、たくさんの患者を診て、間違ったり危ない患者がいたら、他の科に頼むだけでなく、自分でもその後見学したり、勉強する。


こういう事をしていれば、医者最も必要(だと私が勝手に思っている)な能力危険を察知する能力(危機察知能力?)が身に付くと思います。


医者が100%間違わないって事は実際には不可能なんですが。
命に関わる危険な病気の場合は、100%に限りなく近い確率で、診断するまでいかなくても、専門医者を呼べないとまずいですからね。


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この記事へのコメント
専門の先生が専門の先生を
おはようございます。出勤前に見たら私が疑問に思っていた内容でした。
今回は違う科の先生が専門の先生にお願いする場合ですよね。では専門の先生が同じ専門の先生を頼るのはお医者さんには難しい事なのでしょうか?
私の父は消化器の難病で亡くなりました。当時消化器の専門の先生に診て戴きましたが二ヶ月診断つかず絶食のまま体力も病状も限界で他の大きな病院に移されてすぐに診断がつきましたが重症で手厚くして戴きましたが亡くなりました。
最初のO先生に私は最初に「潰瘍性大腸炎ではないのでしょうか」と伺いました。親友がクローン病なので私も一緒にご飯を食べに行く際にmenu選び等に気をつけたいなと思って素人ですが消化器の病気の本を読んでいたのです。O先生は素人の聞きかじりと怒る事なくクローン病とか知ってるのスゴイねと褒めてくれる優しい先生でしたが父の病気は潰瘍性大腸炎に似てるけど違うと言い続けました。
父と私は自分達から違う病院へ行きたいとは言い出せずにO先生の決断を待ってしまいました。
輸血しながらの救急搬送になってしまったのはそういう事だったのです。
三年経った今も自分を責めて泣いてしまいます。母の後を追う様に亡くなってしまいました。二人共若かったのにな。
「僕も専門だから」とO先生はおっしゃっていましたが専門だからこそ難しい時はなりふり構わず仲間を頼る勇気を持って欲しいなと思います。それを私はスキルと呼びます。
エビ[URL] 2006/07/11(火) 08:46 [EDIT]
自分の能力を客観的に知る
自分の能力を客観的に見るっていうのは大切ですよね。
ボクも中国で研修しているとき間違いもよくありました。
しかしそれがあるからこそ同じ失敗は避けれると思うんですよね。
しかし、間違いはもちろん極力避けるべきですし、
わからないときは同じ専門医であれ、他の専門医であれ、
頼ることって大切ですよね。
やな社長[URL] 2006/07/11(火) 18:32 [EDIT]
>エビさn
たしかに、他の科に関するって問題という見方もあるんですが。
それもあるんですが、自分の専門の科の事でも、自分の能力を過信しないでって意味もあるんですよね。

間違う事は恥ずかしい事ではないって書きましたが、知らない、わからないって言う事も恥ずかしい事ではないので。
診断が難しい場合は、同じ科の場合でも、他の医師に相談するって事も必要だと思います。

Dr. I[URL] 2006/07/11(火) 19:58 [EDIT]
>やな社長さん
敵を知り、己を知らば、百戦危うからずって言葉もありますしね。
まずは自分を知るって事は大事ですね。

客観的に自分の能力がどのくらいか、何が足りないのかって事がわからないと、それ以上にはなかなかなれませんからね。
Dr. I[URL] 2006/07/11(火) 20:00 [EDIT]
ありがとうございます
>やな社長さん
間違いが間違いで終わらず”同じ失敗を避ける事に繋がっている”…そう信じることにします。また涙が出てしまいましたがこれはホッとしたからです。
中国でお勉強…スゴイです~!
>Dr.I先生
お医者さんだけじゃなく、どんな場面でも謙虚さやしなやかさは大切ですよね。優しい気持ちを大切にしたいです。
エビ[URL] 2006/07/11(火) 20:35 [EDIT]
私の今までの経験上、I先生みたいに聡明な
判断をだす先生にはであったことがなくて、私
自体はおおきな病気はなったことないんですが
身内で病人がでて悪化する様子なんかをみて
ると素人ながらにも調べたらもっとふみこんだ
検査をしてくれてもいいのにと感じます。
最近はネットで簡単に調べたりできるのでいいの
ですが親の世代の人は先生を信頼しきってると
いうかなすがままというか。。I先生みたいに
勤勉なお医者さんがもっと増えてくれるといいん
だけど・・
asami[URL] 2006/07/11(火) 20:56 [EDIT]
>エビさん
そうですね。
優しい気持ちを大切にして下さいね。
Dr. I[URL] 2006/07/11(火) 22:19 [EDIT]
>asamiさん
聡明ってわけでは(汗)

患者も自分でいろいろ調べてくれると、良いんですけどねー。
なにも考えずに、お任せしますっていうよりもね。

勤勉っていうか、当然だと思うんですけどねー。
医者として。
給料もらっている、プロなんですから。
Dr. I[URL] 2006/07/11(火) 22:23 [EDIT]
思わず…
I 先生の今日の記事を読んで某大学病院で起きた割り箸の事故のことを思い出してv-31
しまいました。。。。たまたま当直に専門医がいらっしゃらないという条件も重なってしまったし、当事者となってしまわれた先生には気の毒な事件でしたよね。。。v-74
来夢[URL] 2006/07/11(火) 23:23 [EDIT]
>来夢さん
あの事件は、ちょっと難しいケースですけどね。
正直言って。
最悪の場合を想定していれば、回避できた可能性はあるんですが。
結果論っていう場合もあるので、難しいんですけどね。

あれを医者の責任って言うのなら、親の責任はどうなるんだってのもあるんですよね。
Dr. I[URL] 2006/07/11(火) 23:33 [EDIT]
やっぱり、すごいです!
貴方のようなお医者さんばかりだといいのにと思います。

というか、「間違ったことを間違ったと反省し、勉強する」ことは、お医者さんに限ったことではなく、全てにおいて言えると思います。

ちょっと、お聞きしたいのですが、分野が違ってすみませんが、アトピー治療についてどう思われますか??
私と私の子供がアトピーなのです。
ただの事務員[URL] 2006/07/12(水) 12:33 [EDIT]
はじめまして。
いつも、勉強させてもらってます。
I先生の言うとおり、最初に診た先生がちゃんと適した専門医に紹介してくれればいいのですが、明らかにあやしいのに、紹介してもらえず、でも悪化している状況で、結局看護師の判断で、その先生を無視するような形で他科に受診しなければなったとき、その最初に診た先生に対して余計な気を使わなければならないのが、つらいことがあります。
でも、患者さんのことを考えたら、そんなこと言っていられないのですけどね。
先生達は自分が診た患者が自分がちゃんと診断をつけたつもりでも、結局、別の医師に診察されて、それで確定診断をつけられてしまうことに対して、不快を感じるのでしょうか?
ちゃんと、自分の手に余る患者さんを、他科に依頼しているI先生なら、こんなことはないのでしょうけれども・・・
むかいのととろ[URL] 2006/07/12(水) 21:01 [EDIT]
>ただの事務員さん
仰るとおり、、「間違ったことを間違ったと反省し、勉強する」ことは、医者以外にも通用する事だと思いますね。

アトピーに関しては、専門ではないのでなんとも言えませんが。

ステロイドを使う事は、根本的な治療にはならないんです。
だから、だらだらずーっと使う事には賛成はしませんが。
だからって、ステロイドは絶対に悪だとも思いませんし。
さじ加減とか、そういう具体的な事に関しては、私には何とも言えませんねー。
Dr. I[URL] 2006/07/12(水) 21:21 [EDIT]
>むかいのととろさん
はじめまして。

まあ、患者のことを考えたら、そんなこと言っていられないですよ、ホント。

>先生達は自分が診た患者が自分がちゃんと診断をつけたつもりでも、結局、別の医師に診察されて、それで確定診断をつけられてしまうことに対して、不快を感じるのでしょうか?

中にはそういう医師もいるでしょうけど。
でも、自分に能力がなくて診断がつけられなかったのに、別の医師に診断をつけられたら、不快になるってのは、ちょっと違うと思うんですけどねー。

ただ、後からつけた診断の方が違うって事もあるんですよ、実際は。
そういう時は、こっちでちゃんと診断してるのに、わけわかんない診断しやがって。
って事はありますねー。

その後の検査で、もっと詳しい検査をして、本当に確定診断をつけたのであれば、文句は言いませんけどね。
Dr. I[URL] 2006/07/12(水) 21:26 [EDIT]
はじめまして。お聞きしたいのですが、ホリゾン使用して血圧が100代から60代とかに下がってしまう場合って、状態的にもどういう処置が一般的なんですか?
らい[URL] 2006/07/12(水) 21:54 [EDIT]
>らいさん
はじめまして。

うーん。
普通は薬を使わないで、足を上げて安静にする位だと思うんですが。
それでも血圧が上がらなければ、アトロピンを使ったり、カテコラミンを一時的に使うかでしょうね。

脱水に近い状態であれば、補液という方法もありますけど。

まあ、ホリゾンを使った使わないに関係なく、一般的な血圧が下がった時の対処法なんですけどね。
Dr. I[URL] 2006/07/12(水) 22:24 [EDIT]
 お久しぶりです。I先生。
 私は、なにかと診断こそつけられないけれど、これは重症だと感じる 自分では「妖怪アンテナ」と呼んでますが、これはあったんですよね。循環器しかり、小児科しかり。
 すべての医師は、分からないときや、万が一の可能性も考えてしまうとき、専門やよりスキルの高い先生を頼ることは、恥でもなんでもないと、私は思います。そのより高いスキルを自分が身に付けていれば言うことないのでしょうけど、一人の医者がすべてに専門性を高くスキルをUPするのは不可能だと思うので、的確にトリアージしていく能力、そして、他科の先生や同じ科であってもよりスキルのある先生の意見を聞くようなことは、それは自分にとっても勉強になりますし、なにより患者さんのためだと思っています。できもしないことを、抱え込むよりは、うんといいと思う。同じ科であっても、さらなる専門性はありますし、それを把握し、患者さんをよりよい医療を受けられる窓口になれるだけでも、自分に処置はできなくとも、私は意味があると思う。
 患者さんがセカンドオピニオンを申し出たとしても、行って来い・行って来いって思う。自分と同じ意見だったら、やっぱりなーって思うだけだし、違ってたら、そういう考え方もあるのかって思う。セカンドオピニオンをするのに、医師に気を使って言いづらいということ自体が問題があるように思います。
りん[URL] 2006/07/12(水) 23:00 [EDIT]
>りん先生
そうですね。
患者は医者に完璧を求める事もあるんですが。
実際は無理ですからね。

それなら、できる人に診てもらえば良いんですよね。
変なプライドなんか持たずに。
そっちの方が、絶対患者の為にもなりますし。
Dr. I[URL] 2006/07/13(木) 01:06 [EDIT]
ありがとうございます。
専門外のことを聞いてすみませんでした。
でも、
>ステロイドを使う事は、根本的な治療にはならないんです
医師の方からこの言葉を聞いたのは、初めてです。
いろんな皮膚科を回りました。
大学病院にもいきましたが、結局ステロイド。

おかげで、皮膚科恐怖症になりました。
だから、私は皮膚科に頼らず、自分はステロイドをきっぱりやめ、今は少しかゆくなるぐらいで薬はつけておりません。

I先生の言葉で少し救われました。
どうもありがとうございました。
ただの事務員[URL] 2006/07/13(木) 14:59 [EDIT]
>ただの事務員さん
いえいえ。
こちらこそ、よろしくお願いします。
Dr. I[URL] 2006/07/14(金) 19:31 [EDIT]

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