現役医師、循環器内科医(Dr. I)が医療について、詳しくわかりやすく解説するブログ。 引用、転載は自由ですが、その際は必ず引用元を明記して下さいね!
大野病院事件、検察控訴断念
やりましたよー。
ついに。
ついに、福島大野病院事件で、
福島地検控訴を断念しましたよー。

一応、加藤先生の無罪が確定するのは、
控訴期限の9月3日以降なんですけど。
福島地検が断念する、って言っていますから。
もう、確定でしょう。

本当は、「加藤先生の無罪確定
ってタイトルにしたかったんですけどね。


昨日の段階では、まだ、
控訴断念の方向で検討」って事でしたけど。
今日のは、確実なものだと思います。


産科医の無罪確定へ
=帝王切開死、検察が控訴断念
−「今後は慎重に捜査」・福島
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080829-00000112-jij-soci

福島県立大野病院で2004年、帝王切開手術を受けた女性
=当時(29)=が大量出血して死亡した事故で、
業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた
執刀医加藤克彦被告(40)を無罪とした
福島地裁判決について、福島地検は29日、
控訴の断念を決めた。
控訴期限の9月3日が過ぎれば、無罪が確定する。

同地検の村上満男次席検事は
「裁判所が要求したほとんどのものが従っているという
一般性のある医学的準則も一つの考え方。
過失と(医師の)注意義務をどうとらえるかで、
検察と異なっていた」と説明。
控訴しても、裁判所の判断を覆すことは困難とした。

加藤被告の逮捕、起訴について
「法律と証拠に基づいてやった。判断としては間違っていない」
としたが、
「今後はより慎重、適切な捜査をしたい」
と述べた。 


「2008年8月29日:時事通信」


まあ、裁判官があれだけ検察側に気を遣って。
そいで、検察側の主張も最大限に
取り入れてあげても、無罪
っていう判決でしたからね。

いくら福島地検でも、勝ち目はない、
って事がわかったんでしょう。

まあ、実際は仙台高検と相談して、って事ですから。
仙台高検の意向の方が強かったかもしれませんけどね。
良くわかんないけど。


それにしても、福島地検はこの後に及んで、
>加藤被告の逮捕、起訴について
 「法律と証拠に基づいてやった。
 判断としては間違っていない」


って言って、何の反省もしていないのは、
ちょっと問題があるとは思いますがね。

とりあえず、検察が控訴しなければ、
加藤先生の無罪は確定しますので。

良かったですわ。。

控訴断念の署名運動には乗り遅れちゃって、
どうしようかと思ったのですがw

やっと一段落ついて、加藤先生。
ホントにお疲れ様でした。



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8/20,福島のシンポジウム3
8/20,福島大野病院事件の判決に合わせて、
福島で行われたシンポジウム
「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」
の傍聴記です。

『8.20、福島のシンポジウム0』
『8/20,福島のシンポ1』
『8/20,福島のシンポジウム2』
の続きっす。

今回も、順番が違って申し訳ないんですが。
昨日は当直で、夜中のコンビニ受診のおかげで、
ほとんど寝ていなくって。
その前の日も、夜中に呼び出されて、
寝不足で頭が働かないんで。

つよぽん先生に書いて頂いた、
福島のシンポジウムの傍聴記をアップしますね。



-困っている女性たちの声-
宮崎弘美(ママブルーネットワーク代表)

私はママブルーネットワークという団体で、
産後のうつ病の女性と家族を2
004年から支援しています。

今日この場に、なぜ私が呼ばれたのかと考えました。
私たちのところには心の病を持った
お母さんたちの相談がたくさん持ち込まれます。
その中には医療者とのトラブルもたくさんあります。
そういった事で呼ばれたのかなと感じています。

まずママブルーネットワークの紹介です。
インターネットの情報交換を中心に活動しています。
会員は4000名ほど、毎日悩みなどの
情報交換をしています。
インターネット以外では、私が福島市在住で、
福島市を活動拠点にしています。
0歳児のお母さんたちの中にも
孤立してしまう産後うつ予備軍がいるんじゃないか、
そういうお母さんたちのリフレッシュ、
リラクゼーションと情報交換のための
ママサロン」を月に1回、
第1木曜日に開催しています。

医療者ママの間に大きな溝があると感じます。
そもそも両者がものを見る視点が違う、
言語が違う、同じ日本語を話しているのに
なんでこんなに通じないんだろう
と思うことが多いです。

その溝を少しでも埋める活動を、
と両者の間に入って中間管理職的な位置で
奮闘しています。
両者のコミュニケーションを取ろうという目的で、
産後うつから回復したママたちの体験談を
8月に本にして出版しました。

健康なママ産後うつママ
両方に共通する悩みが2点あります。

ひとつめは、ママ自身が体調を崩したときに
赤ちゃんをあずけて医療機関に
行くことが出来ないという問題。

実家や一時保育に預ける?
急な体調変化のときに実家の母も
用事があるかもしれない、一時保育も
事前に予約をしなければならない。

急に頼んでオーケーというわけではない。
産後のうつなどでは治療が長期にわたったりして
家族全部が倒れるような状況になりえます。
ママたちが望んでいること。

受診時の数十分をその医療機関で
赤ちゃんを見ていてもらえる
スペースがあればいいのに、と思います。

これはママたちのニーズ。
そのニーズに耳を傾けないでいるのは、
お客様を逃していると言うことだと思います。
福島ではないけれど「お子様広場」
というのを作ってニーズに応えている医療機関もあり、
そういうところは人気があり繁盛しています。
ママが受診しやすい医療環境を作ってもらいたい。

二つめはコミュニケーションの不足の問題。

診察の段階で「傷ついた」
と感じるママがたくさんいます。
あるママの例。

ある病院で離乳食や赤ちゃんの
服薬の仕方を指導してもらっていた。
転居にともなって次にかかった病院で、
同じ感覚で小児科の先生に相談したら
「そんなことをボクに聞かれても困るよ。
そういうことは保健師さんや
市の相談窓口で聞いたらどう?」
と言われたそうです。

先生にしてみれば、本当にわからないからそう言った、
当然の正しい対応なのかもしれないのですが、
言われたママはビックリしました。

先生は専門家だ、と思いこんでいたから
とてもがっかりしたそうです。

別な例では、病気のお子さんを持つママ
いろいろな医療機関で医師ごとに
違うことを言われて混乱し、
わけがわからなくなってしまったケース。

また、心に病気を持つお母さん。
「服薬するなら母乳をやめなさい。」と指導される。
その場で医師に向かってはにっこり笑って
「はい、わかりました。そうします。」
と言いながらも、その後実は私たちのところに来て
「こういうことを言われた。
あそこの病院にはもう行かない。
先生は何もわかってない。」と言う。

産婦人科では「母乳をあげなきゃだめ。」
みたいな指導を受け、今度は「やめろ」と言われる。
そういう診療科間の連携のなさ、
先生ごとの意見の違いで
信頼は失われていきます。

そういったとき、私たち自助グループはどうするか。
最初は体験をお話します。
そして「先生と何度も何度も話をして
納得して結局は服薬をしたほうがいいんだよ。」
とお話します。
何回もお話をすれば最終的に
ママたちはわかってくれるんです。
彼女たちも治りたいんですから。

コミュニケーションがないままに
“正しいこと”を言われたり“指導”をされても
お母さんたちの心には響かない。
指導にも従わず、信頼は失われていく、
ということを是非是非知っていただきたいと思います。




発起人の野村先生が、講演者が医療従事者
だけにならないように
、って事で。
相当苦労して、この方に講演をしていただいた様ですね。

おっしゃっている事は、すごくわかります。
医者の方も、患者さんと信頼関係を築きたいんですよ。
でもね、一回の診察で30分お話しできれば、
お互いに納得して信頼関係を築くことができるかもしれないけど。
一回、3分では無理、っていう事もあるんですよ。

それは、医師の数が不足しているからなんですよ。
そういう事もある、っていう事を
患者さんの側にも理解していただきたいなー、
って思います。

まあ、この後の質疑応答のところでも、
そういう話が出てくるんですけどね。



ちなみに、ちょうど良いタイミングで、
今日のyahooヘッドラインに「産後うつ
についての記事が出ていたので。

紹介してみますね。



妊産婦の「心」ケア 
宿泊型施設を設立 厚労省、来年度から
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080828-00000092-san-soci

出産前のマタニティーブルーや
産後の鬱(うつ)に陥っている妊産婦を
サポートするため、厚生労働省は
精神科の医師や助産師を配置した宿泊型の
「ケアセンター」(仮称)を来年度から
全国数カ所に設立することを決めた。

少子化対策の一環で、心身が不安定になりがちな
産前産後の母親に地域の受け皿を提供し、
安心して産み育ててもらうのが狙い。
産後うつを原因とする育児放棄や
虐待の防止にもつなげる考えだ。

厚労省の構想によると、入院の必要がない程度に
心身の不調を訴える母親や、出産前後に
近親者の協力がなく、孤立する可能性が
高い妊婦らが対象。

乳児が問題を抱える場合も、
母親の不調や虐待を引き起こすケースがあるため
対象に含める。

入所期間は約1週間。
低料金で医師らのカウンセリングのほか、
母親が悩むことの多い授乳や
入浴指導などが受けられる。
本人の希望以外に、乳児健診などで
自治体が必要と判断した場合も入所できる。

センターの数や利用料など詳細は今後詰めるが、
当面は既存の病院への併設となる見通し。
設置や運営に必要な費用の2分の1を国が補助、
残りを都道府県が負担する。
全国に先駆け、4月から同様の事業を
実施している東京都世田谷区の場合、
利用料金は食事とケア付き1泊2日が
5600円、日帰りは1600円という。

                   


【用語解説】産後うつ

無事に出産したのに、涙ぐむ、
気分が沈むなどの抑鬱(よくうつ)感や
疲労感があり、育児や家事に支障をきたすようになる。

多くの場合、出産後2週間から数カ月以内に発症し、
数年の経過をたどる。
衝動的に自殺したり、攻撃的になって
子供を虐待したりするケースもある。

『2008年8月28日:産経新聞』


話は変わるけど。
福島大野病院事件
検察が控訴しない方向に行きそうですかねー。
そのままいってくれれば良いのですが。


誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実


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8/20,福島のシンポジウム2
8/20,福島大野病院事件の判決に合わせて、
福島で行われたシンポジウム。
「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」
の傍聴記です。

『8.20、福島のシンポジウム0』
『8/20,福島のシンポ1』
の続きになるんですけど。

本当の順番なら、ロハスメディア代表の川口恭さん
の番になるんですけど。
昨日、何故か録音ファイルが聞けなくなっちゃって(汗)

ちょっと順番がずれちゃって、すいませんけど。
パネリストの最後の先生。
東京女子医大事件で、不当逮捕された、
綾瀬循環器病院、心臓血管外科医

佐藤一樹先生の話です。

ブログ「紫色の顔の友達を助けたい」の
『大野病院事件 無罪判決 前夜、当日、シンポジウム』
に当日のスライドのコピーを置いて頂いたので。
それを参照にさせて頂きます。


青字がスライドのコピーです。



司会、上先生: 
最後に佐藤一樹先生,
正当な治療行為を行った医師逮捕勾留するな』、
ということでお話をいただきます。
よろしくお願い致します.


【佐藤一樹先生】 (綾瀬循環器病院 心臓血管外科)
『正当な治療行為を行った医師逮捕勾留するな』


福島大野病院事件が産科医療にもたらした影響を考える

正当な治療行為を行った医師逮捕勾留するな

綾瀬循環器病院 心臓血管外科
東京女子医大心臓手術事件 被告人
大野病院事件 初公判 傍聴報告者)
佐藤一樹


こういう立場で私,お話させていただくことに
なったんですけれども。
今現在はですね,東京の足立区という
下町にある病院で循環器の救急をやっています。

この足立区の隣の葛飾区に
東部地域病院という病院があります。
ここでおそらく腸閉塞なのに医者が
それを放置して亡くなってしまった,
先ほど豊田さんのご紹介が上先生から
ありましたけれども,豊田理生ちゃん。
この子の亡くなったときの報道の新聞,
この新聞を私はラミネート加工して
自分の机の隣に置いてあります。
そういうつもりで臨床医をやっています.


大野病院事件:直接的即時的影響

・「一人医長」逮捕勾留
・大野病院産科 ⇒実質的廃止
・福島県双葉郡大熊町近隣地区⇒地域産科医療崩壊
 ⇒医療医師人権が軽んじらた証拠
逮捕請求:捜査機関 ⇒ 裁判官の令状
 (警察・検察)   (許可状)
勾留請求:検察官  ⇒ 裁判官の処分  
        (命令状)
 実際には、勾留の方が問題。(逮捕前置主義)


この大野病院事件のまず直接的,
即時的影響ということで逮捕された直後から
始まった医療崩壊
ですね。
一人医長を逮捕勾留してしまった。

このために大野病院事件産科というものは
実質的に廃止になってしまいました。
福島のこの地区の産科医療は
その時点から崩壊しているということです。
私はこれは医療,それと医師の人権
非常に軽んじられた証拠だと,
こういう風に思っております。

ほんの二日くらい前のネット上でですね,
医師が「逮捕を出した警察や検察が悪いんだ」,
なんていう話があったんですけれども,
実はこれ,逮捕状というのは
裁判官の令状
なんですね。

警察が逮捕すると言って裁判官が
それに許可を与えて逮捕する。
勾留っていう話はあんまりないんで,
専門家に聞きますとどちらかというと
勾留の方が問題なんだ,と話をするんですが。

勾留の方はこれはですね,裁判官の命令です。
裁判官の命令で加藤先生や私は勾留されました.
といった意味では裁判官は「最後の砦」の部分が
あるのではないかと思っております.


大野病院事件:間接的波及的影響

 産婦人科医の『正当な治療行為』⇒逮捕・起訴
 ・日本全国産科医療崩壊⇒決定的増幅
 ・“立ち去り型サボタージュ”の拡大
 ⇒小児救急、小児科、救命救急科、外科・・・
 ⇔医療だけをやってきた医師
  ⇒社会構成員としての覚醒
  ⇒医師達からの医療政策への意見発信開始 
  

それで,いわゆる一般的な医療崩壊ですね,
間接的に波及していった影響が
日本全国の産科の医療崩壊
これを増幅させました.

立ち去り型サボタージュですね.
小児救急,小児科,救命科,外科,
こういったところから医師達が
どんどん離れて行きました.

ここでですね,私,ロハスメディカルの
川口さんに指摘されて,あっと思ったんですけれども,
医者はそれまで,医療だけをやっていることを
誇りに思っていたんですね。
医者は一生懸命医療をやっていればいい。

ところがそうではないということに気がついたんです.
やっと気がついた.医者も社会の構成員として覚醒して,
それなりの社会の構成員として意見を
発していかなければいけない.
そういったことで医師達からやっと医療政策への
意見の発信
が始まったと思います.


医師側の主張:医療刑事訴訟への不満

・過失の構成要件の類型化が不明慮:
   「何すると罪か」が事前に定まっていない
・結果⇒遡及的結果回避義務の指摘:
   後出しジャンケン
・恣意的証拠の取捨選択:客観的証拠文献の不同意
   訴訟戦略上の「卑怯な証拠隠し」
・刑事処分の再発防止は機能不全:
   萎縮医療の誘発
・真の原因究明の阻害
   医学発展の停滞 etc.  ⇒「免責」の主張


まあいろいろあるんですけれども,
大体医師側からの刑事訴訟への不満,
簡単な言葉で言っていきますと,
「何をすると罪か」というのが
事前に決まっていないのに逮捕されちゃう.

後だしジャンケン,後になってから
こうなんだって言われたって,
っていうのがあります.

あと訴訟戦略上の検察官の証拠隠し.
文献などを証拠として認めない,
そういったようなことがある.

刑事処分をしても萎縮医療が誘発されるだけだ
真の原因究明がならなくて,
医学の発展が停滞していく,
そういったことで医師側からいわゆる「免責」の
主張がでてくるようになりました.


グ属廚別叛媼臘イ量簑蠹澄免責と犯罪

・免責:法律上、責任を免れること
・犯罪:構成要件に該当する、違法かつ有責な行為
 構成要件該当:犯罪類型に当てはまること
  刑法条文⇒メニューの各料理の名称「きつねうどん」
  構成要件⇒メニューから観念される各料理のイメージ


私はもちろん法律に関しては
全く大学生のレベルにもいってないんですけれども,
ちょっと勉強してみました.

免責というのは「法律上の責任を逃れる」,
ということですね.
犯罪,これはですね,
ちょっと難しいんですけれども,
構成要件に該当する違法かつ有責な行為」,
責任のある行為,のことです.


μ叛媼臘イ量簑蠹澄免責の対象

医師免責?   犯罪は「行為」
・刑事免責?   意味不明   
医療免責?   意味不明 
医療行為免責? 適応外手術(不要子宮摘出術)
 ⇒法曹界、メディアに使い回されて批判される
・業務上過失致死罪 第3項新設案:
第2項交通事故=「刑の免除」*
         *免除は免責でない
・救急救命行為に限定?


免責.皆さんの医者のネット上での
主張を聞いてますと,『医師免責
なんていう言葉があります.

犯罪というのはもともと「行為」ですから
医師免責』ということはあり得ない.
刑事免責』とか『医療免責』,
これは意味不明だと思います.

あと,医療行為の免責というのはありますけれども、
先ほどの怠慢によってお子さんが
亡くなったこととかですね,
昔の富士見産婦人科ですか,
というような子宮を摘出したりするような,
適応外の手術,こういったようなものも
免責するのかどうか.

こういったですね,非常に安直な言葉を使って
主張しますと,悪意のある法曹界とか
メディアの方にですね,使いまわされて,
批判されて,医者はやっぱりだめなんだ,
ということになると思います.

少し建設的な意見として業務上過失致死の
第3項を新設しよう,というのがあります.

第2項には交通事故,これは刑の免除というのが
なっているんですけれども,
この「免除」は「免責」ではありません
後で説明します.

えーあと,救命救急行為に限定する,
という意見もあります.
これに関しても考える必要があると思います.


免責主張の問題点:免除と免責の相違点

免除:「罪」はある、「刑」はない
 構成要件に該当し、違法かつ有責であって、
 犯罪は成立するが、刑は科さない
 犯罪:構成要件に該当する、違法かつ有責な行為
 免責:法律上、責任を免れること


えーと先ほど「免除」ということが出ましたけれども,
第2項の「免除」ですが,
これは「罪はあるけど刑はない」というものです.

構成要件に該当して違法かつ有責であって
犯罪は成立するけれども,刑は科さない.
つまり「罪はあるけれども刑は科さないよ」
というものです.
これは医者が納得するようなものでしょうか.


免責主張の問題点:医療行為と治療行為

・治療行為⇒医学的正当性
 医学的適応性:手術が行われるべきか否か
   医術的正当性:どのように行われるべきか
・治療行為傷害説−刑法学者の見解
  ⇒日本では、治療行為が傷害として争われた
   刑事訴訟判例なし


いろいろ少し勉強してみました.
それでやはり「医療行為」という言葉よりも
治療行為」,これはドイツの刑法の考え方,
医学的な正当性のあるもの.
つまり,医学的な適応とか医術的な正当性.
手術が行われるべきか否か,
どのように行われるべきか.
そういった正当性がバックボーンにあるもの

治療行為」といいます.

日本ではまだ,実は刑事訴訟法上,
刑事訴訟で争われたことがないんですけれども,
治療行為は傷害である,というふうなことが
ドイツの憲法学者なんかでは言われていて,
日本ではまだこの論議が進んでおりません.


免責主張の問題点:過失論

旧過失論:結果無価値論型−主観的要件
  ・予見可能性中心←注意義務違反
  ・刑法学で再び優勢(若い学者)
新過失論:行為無価値論型−客観的要件
  ・客観的に要請される注意を尽くした場合 
   ⇒構成要件該当性否定される⇒犯罪不成立
  ・(医師に)遵守が要求させる行動基準想定


ちょっとこの話をするのも,
私が話すのもなんなんですけれども,
いわゆる「過失」という考え方は
刑法学者の中では大きく分ければ
旧過失論」というのと「新過失論
というのがあるんですけれども,
これの話をしたら非常に長くなってしまうんですけれども,
旧過失論の考え方としてはですね,
客観的に要請される注意を尽くした場合,
構成要件の該当性が否定されて犯罪は不成立,

というような考え方が一応あります.

ところが,交通事故も実は業務上過失致死なので,
それにちょっと引き摺られている面もありまして,
どちらかといえば今,学者の中の若い学者には
特にこの旧過失論の方が
優勢になっているという状況です.

新過失論の方は一番下に書いてありますけれども,
医者の方に遵守が要求される行動基準を
自分達で想定してくれ
,といったようなことが
新過失論の学者が言っております


免責主張の問題点:ガイドラインは?

・客観的注意義務の類型化: 
  過失の不法構成要件の内容の具体化
・学会等の作成したガイドライン:
  遵守規定?
  実際の臨床の多様性に対応不可能?


医者側としてはガイドラインというものを
学会で作ってそれを遵守するようなことが
行われているんですけれども。
ただしこのガイドラインというものも
ちょっと問題がありましてですね,
実際の臨床というものは
非常に多様な面がありますので,
ガイドラインに沿ってないからと言って
それが医者側に責任があるかどうか,
これは一つ一つの症例をみないと
わからないことだと思います.

参照:『大野病院事件 無罪判決 前夜、当日、シンポジウム』


佐藤先生の話に加えて、スライドのコピーも
一緒に出すと、とても長くなってしまったので。
前半部分だけで、一回切りますね。

筆記されたのは、sui先生です。
佐藤先生、sui先生
ありがとうございました。

後半部分は、次回書きまーす。


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8/20,福島のシンポ1
『8.20、福島のシンポジウム0』
で、ちらっと予告した、8/20
福島大野病院事件の判決の後に行われた、シンポジウム
「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」
の様子です。

午後1時から、福島グリーンパレスっていうホテルで
このシンポジウムが行われたんですけど。
ロハスメディカルの川口さんが、
裁判を傍聴していたようなので。
間に合うのかなー、って心配していたんですけど。
ぎりぎりになって、裁判の傍聴を切り上げて、
シンポジウムに向かってくれたようですね。

聴衆者は150人くらいで、
医療関係者と一般人の割合は半々くらいでしたね。

前にも書いたので、ご存じの方も多いとは思いますが。
今回のシンポジウムの呼びかけ人は、国立病院機構、
名古屋医療センター、産婦人科医師
野村麻実先生

そして司会は、東京大学医科学研究所、
特任准教授の上昌広先生でした。

パネリストは。

○野村麻実 (国立病院機構 
 名古屋医療センター 産婦人科医師
○川口恭 (ロハスメディア代表)
○岸和史 (和歌山県立医科大学放射線医学講座准教授)
○山崎輝行 (飯田市立病院 産婦人科部長)
○宮崎弘美 (産後うつとマタニティブルーの自助グループ:
 ママブルーネットワーク 代表)
○佐藤一樹 (綾瀬循環器病院 心臓血管外科 医師
○加治一毅 (弁護士、医師


席の並び順は、左からこんな感じだったかな。
そいで、基本的には左の方から順に
話をしていっていました。


司会、上先生

本日午前、加藤医師に対する無罪判決が、
福島地裁でありました。
今日この日が、おそらく日本の医療の一つの転換点になる日
だと考えております。

加藤医師及び、ご遺族ご家族にとっては、
非常につらい、この2年半だったと考えております。

本日のシンポジウムでは、医療はもちろん、
地域の皆様、及びご家族、ご遺族の皆様にとって、
この国の医療を少しでも良くしたい。
どうすれば良くできるのか

という事を考えてみたいと思っています。

本日のシンポジウムは、前半の部分は
シンポジストの先生に、短く問題点のご説明、
ご意見を承ります。
その後一時間弱、会場の皆さんと
議論をさせていただきたいと思います。

そして、シンポジストの紹介をして、
最初に野村先生のお話しが始まります。


野村麻実先生

呼びかけ人として、このような会を開かせていただくにあたって、
この会の趣旨を説明させていただきます。

この会が、何故今日でなければいけなかったか、
っていう理由
がありまして。
有罪か無罪かわからない状態で、どれだけの
社会的影響を及ぼしたのか、っていう事を
一度検証してみないといけない大きな事件

だったと思っています。

民事訴訟っていうのは、全国で母体死亡は
年に50件〜100件位
、起こっています。
その中で、福島で逮捕というセンセーショナルな事件になって。
それから、産科の崩壊が、私たちのような
都会の産科にとっても、身近に。
真綿で首を絞められるように感じられるようになったのは、
やっぱり、この事件が契機になっていると思います。

それは何でかって言うと、
それは民事ではなくて刑事だったから
無罪か有罪かは関係なく、私たちにとっては。
刑事で有罪ということは、前科者になっちゃうんですね。
普通にやってて、前科者になっちゃう

やっぱり、亡くなってしまう患者さんは中にはいます。
私は幸いにして、まだ亡くなった事はないんですけど。
産科10年やっていれば、1人か2人は死ぬ
って言われていて、運が良い人は当たらないでいく。
っていうような状況なんです。

それを刑事で問われているようではやっていられない。
10年やっていれば1人は当たるんだよ。

っていうような世界なのに、
っていうのがどうしてもありまして。

どうしてこの事件を民事ではなく、刑事で扱ったのか。
結果的に福島県の産科医療がどうなったのか

っていう事を考えていきたい。

それから、報道を通して、どうしても患者さんと
医療が対立
するもののようにみられてしまうんですけど。
そうではなく、病気と戦う時っていうのは、
医療者と患者が手を結んで一緒にやっていくもの
ですよね。

地域医療を守るっていうのも、やっぱり住民と医者が
手を結んで一緒にやっていかないといけないんです。
そういう事を、みんなだんだん忘れていってしまったからこそ、
こういう事件を契機にみんな辞めてしまおう。
って思って辞めてしまっているのかな、
っていうのを少し感じました。


そして、ここから本題です。

【大野事件による福島県の産科地方医療崩壊】

厚生省が10年位前から調べている医師ですけど。
福島県の産婦人科医の減り方は、
全国に比べて酷い(多い)です。


全国的に医師っていうのは、増え続けているんですけど、
福島県の伸び率は、めちゃくちゃ悪いです

それから福島県の施設数(病院、診療所)と
産婦人科の標榜科の変化
です。

事件前と事件後では、産婦人科標榜数は
15.3%、減っています

(病院数は、6.9%減、診療所数は、4.4%増)
圧倒的に減っているのが見て頂ければわかると思います。


「大野事件後、分娩休止した病院一覧」

○公立岩瀬病院
○呉羽総合病院
○福島労災病院
○わたり病院
○県立会津総合病院
○福島県立三春病院
○松村総合病院
○福島県立大野病院
○公立藤田総合病院
○県立南会津病院
○坂下厚生病院
○公立相馬総合病院(10月撤退予定)

2年半で、31→20(10月で19)病院に

今度閉鎖する、公立相馬総合病院も入っていますけど。
これだけの病院がやめて。
医師も事件前には、分娩施設が減るなんて
考えてもみなかった、って言うんですね。
だから、調べてなかったって言って、
分娩施設の数がわかっていた医師会が、
4つしかなかったんですね


それで現在の分娩施設を調べてみると、
こんなような状況になっていました。
グラフにしてみると、一目瞭然ですね。
大野事件後は、ぼこんと減っています。
いわき市の共立病院は、
ハイリスク分娩しか扱っていません。

福島における分娩可能施設の地図なんですけど。
見て頂ければわかるように、南部はほとんど真っ白けっけです。
これは、豪雪の時になると、4時間くらいかけて、
会津市まで行かないといけないんです。

今、緊急医師派遣があって、福島
医師を防衛医大から受けていますけど。
それで、妊婦検診だけを受けられるようにはなりましたけど。
それまでは、ガン検診も会津若松まで行かなければいけない、
というような状況になっています。

それから、いわき市も南部はほとんど
お産施設がなくなった、というような状況です。

茨城県の北の方のお産を支えています日立総合病院は、
年間1200の分娩をとっていますけれども。
この病院は、来年4月をもって閉鎖される事が
決定しています。

栃木県は南側にどうしても多い、というような状況です。
福島県の産婦人科自体が倒れかけなんじゃないかな、
って私は思っています。

ここからどうしていくのか、っていうこと。
今日、無罪で良かった、って。
それは良かったんですけど。
失ってしまったものを戻していくのは、
なかなか難しいと思います。

住民の皆さんが残った産科のスタッフを
どうやって守っていくのか。
そういった事を考えていただきたいな、と思います。

よろしくお願いします。


司会、上先生

本日配布致しました資料は、野村先生ご自身が、
各地区の地方自治体や電話等で取りまとめられた物です。
私が知る限り、福島内の影響について
調べられたものは、これだけだと思います。
今回配布された資料によりまして、
こういう事がこの地域で起こっている。
という具体的なデーターでございます。


という事で、今日は司会の上先生の話と、
福島シンポジウム呼びかけ人の野村先生の話
まででした。
スライドがないのに、文字だけで書いたから、
ちょっとわかりにくくなっちゃったかな。
言葉だけだとわかりにくいので、一部
私の言葉で変更している部分もありますので、あしからず。

8/20,福島でのシンポジウムの様子は、
『2008年8月20日:医療介護CBニュース』
にも書いてありますから。
興味ある人は、こちらも見てね!


大学病院に興味のある人は、これも読んでね!
→ 「大学病院のうそ」 〜現役医師(Dr. I)が暴露する、大学病院の秘密


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8.20、福島のシンポジウム0
8/20福島大野病院事件の判決に合わせて。
夏休みを取ったんですよね、私。
そいで、福島まで行っていたんですよー。

裁判は、もちろん傍聴できなかったんですけど。
その後に福島で行われたシンポジウム
「福島大野事件が地域産科医療にもたらした影響を考える」
には行ったので。
その時の様子をおいおい書いていきますね!


8/20
福島の朝は、日差しも強く、湿度はさほどではないけど、
気温は30度近くあったと思います。

8:50までに裁判所に行って、
整理券をもらって、それから抽選。
という事だったので。
8:30頃、福島地裁に着きました。

裁判所の正面には、5台の中継車が止まっており、
マスコミ関係者と思われる人も、数十人はいましたね。
正面にいただけで。
裏の方で、傍聴したい人は並ぶんだけど。
その時点で、既に100人くらい来ていました。

そっちに並んでいた人とか、裏にいた人も入れたら、
マスコミ関係者は多分100人位いたんじゃないかなー。
それだけ、世間というかマスコミも注目していた
判決だ、って事ですね。

日差しも強く熱い中、北海道とか九州からも含め
知り合いの医者も10人位いました。
皆さん、私と同じように夏休みを取ってきてるのかな。

その中で1人、野村まみ先生福島で午後一時から行われる、
シンポジウムの団扇を、並んでいる皆さんに配っていました。
すごく暑かったので、みんな感謝していましたよ。

その団扇を見て、シンポジウムに参加してくれた
一般の人達もいるようでしたし。
大成功だったと思います。
ホントに、暑い中お疲れ様でした。

8:50に抽選券というか整理券が配られると
思っていたんですけど。
実際は、9:15で。
私がもらった番号は
111番
でした。

なんか、縁起良いなー。
ラッキー。

そいで、全員に配り終わって、
15分後くらいに、抽選発表。

110番

おしい。
一番違いではずれてしまいました。

で、どんどん番号が読み上げられていって。
最後の人は、750番位だったかな。
そいで、25人ですから。
倍率、約30倍って事になりますね。

後で知った事なんですけど。
傍聴しようと並んだ人は、788人
これ、福島地裁の過去20年間では最多だそうです。

知り合いの医者10人ちょっとは、全員はずれ。
まあ、どうせ私が当たっても、ロハスメの川口さんとか、
キャリアブレインの記者の方とか。
もっと私よりも聞いて貰いたい人にあげようと思っていたから。
キャリアブレインとロハスメディカルの川口さんは
当たって中で聞けた様なので。
そういう意味では、我々に当たるよりは良かったのかなー、
って思いましたわ。

後からブログ読んだら、川口さんも、本人ははずれたけど。
どっかから廻って来たんだね、傍聴席の券。
「福島県立大野病院事件 判決公判」


全国紙大手のA新聞は100人くらい、
動員したようっすけどね。
露骨に、地元の人と思われる人から、
抽選の券をもらっている関係者がいました。


そいで、加藤先生が裁判所に入るのを見守って。
時代の流れか、一部の人がワンセグで視聴。
ちなみに、私はそんなもん持ってなくて。
私の近くの医師軍団も、みんな持ってなくって。
全然知らない一般の人が見ているのを、
隣で見せて貰っていました(笑)

無罪の場合でも、
「無罪」
という垂れ幕、みたいなやつを裁判所の前で見せる、
って事は弁護側はやらない、という事は知っていたので。
マスコミが報道するのを待つしかないんですよねー。
裁判所の目の前でも。

結局、10時に開廷して、10分ちょっとで、
無罪判決
が出たのを確認して。
午後からシンポジウムが行われるホテルに、
医者数人で帰って、お茶してました。

その後、ホテルの部屋に戻ってテレビを見て。
号外が出た、って事だったので、
福島まで取りに行ったりして。
シンポジウムの手伝いなんかをしていたら、
予定通り午後一時になって、シンポジウムが始まりました。


福島シンポジウムの書記を頼まれていたんで。
それはブログに書きまーす。
って言っちゃったんだけど。
前振りだけで長くなっちゃったんで。

詳細は、次回以降に書きますか。


要旨は、「産科医療のこれから」の
「こんなにも多彩な人々が加藤克彦氏の無罪を信じていた
―判決直後にシンポジウム」

に、もう書かれているみたいなんで。
その時の雰囲気を知りたい人は、
とりあえずこっちを読んでね!


平日の昼なのに、150人くらい集まって。
しかも、半分くらいは一般の人で、
シンポジウムは大成功だったと思いますよ。

特に、最後に発起人の野村まみ先生が語った言葉は、
涙なしには聞けませんでした。


加藤先生が無罪になってとりあえずは良かったけど。
大事なのは、これからどうするか、って事なんですよね。

誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実

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